第3053回 塩の効能



 健康のためには控えるべきもの、その一つに「塩分」が入る事は確実なように思えます。塩=塩化ナトリウムのナトリウムは水分を取り込む性質があり、血液中のナトリウム濃度が上昇すると水分量が多くなり、血液の量を増やして血圧を上げてしまうとされています。

 健康へのマイナスイメージが強いナトリウムですが、生命の維持には欠かす事ができない成分で、進化の過程においては充分に確保する事が難しかった事もあり、摂取したほぼ全量が吸収されるようになっています。

 そのため現代の生活ではナトリウムが過剰になる傾向があり、日頃から塩分を控える事が健康作りの第一歩とも考えられています。そんな塩分に意外な効能がある事が判ってきています。意外にも塩分はダイエットを助けてくれるという研究結果が発表されていました。

 最初の研究は2つのミッションで宇宙へ行く10名のロシア人宇宙飛行士を対象に、段階的に塩分量が異なる食事をしてもらって日常的な変化を見たところ、水分の摂取量が少ないにも関わらず最も多くの塩分を摂取したグループの尿の量が一番多いという事が判りました。

 同じ事をマウスを使った実験で再現すると、動物が塩分を多く摂ると新陳代謝に関わるホルモンの一種、糖質コルチコイドが分泌される事が観察されています。分泌された糖質コルチコイドは内分泌系や免疫系に影響を与え、脂肪と筋肉を分解して水分を産出する事が、宇宙飛行士やマウスが塩分を多く摂り、少ない水分摂取量なのに尿の量が増えた事のメカニズムと考えられます。

 塩分を摂り過ぎると喉が渇き、水分を多く摂取してしまいます。血液中のナトリウム濃度を下げるためと、尿を通じて排出しようとするためで、摂り過ぎた塩分対策には水が欠かせない事が判ります。その水分を体内で賄わなざるを得ない事から脂肪や筋肉が分解されるのですが、それには多くのエネルギーが必要とされます。

 その結果、さらにnエネルギー源となる脂肪が使われてしまう事から、ダイエット効果に繋がると考える事ができるのですが、やはり塩分の過剰摂取は健康への悪影響が考えられるだけでなく、体はエネルギーを確保するために食欲を高めるともいわれ、塩分ダイエットはあまりお薦めできないものと思えてきます。


 
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第3052回 制限の効果



 人にとって欠かせない栄養素というと、タンパク質、糖質、脂質が三大栄養素となっています。ダイエットの観点から長らく脂質は悪者視され、脂質の摂取を抑える事が健康的な食とされていました。

 ダイエットの主流が血糖値の上昇を抑える事に移ると、悪役は脂質から糖質へと代わり、糖質の摂取を抑えて血糖値の急激な上昇を引き起こさない事が、脂肪細胞の成長を抑えてダイエットを成功へと導くと考えられるようになっています。

 糖質の摂取量を抑える「糖質制限食」は、本来はダイエット法ではなく糖尿病の治療法として始まっています。2008年にイスラエルの研究チームによって中程度の肥満者や糖尿病の患者を対象とした研究が行われ、「低脂肪食」、野菜や豆類を中心とした「地中海食」「低炭水化物食」が及ぼす影響を調べたところ、「低炭水化物食」が最も血糖値の変化に関係している事が判り、糖尿病の食事療法の一環として糖質制限食が脚光を浴びる事となっています。

 2014年にはアメリカの糖尿病学会が発表している糖尿病臨床ガイドラインにも、「1型糖尿病と2型糖尿病を含むすべての糖尿病患者に糖質制限食が推奨される事が明記され、糖尿病患者にとって有効な食事療法となっている事が窺えます。

 しかし、2015年に発表された国立がん研究センターの研究では、40歳から69歳の男女6万人を5年に渡って追跡調査した結果として、女性は炭水化物の摂取量が少ないほど糖尿病を発症するリスクが低下した事に対し、男性では炭水化物の摂取量と糖尿病の発症リスクには関連が見られず、糖質制限食は治療法とはなっても予防法とはならない事が判ってきています。

 男性に限った事ではありますが、糖質制限が有効な予防法とならないとなると、今後も糖尿病の患者は増え続けていくのかと少々暗い未来を思ってしまいます。

 

第3051回 世界を変えるもの



 日本人が発明し、ノーベル賞の有力候補となっているといわれながら、実用化では欧米に先行されてしまっているもの、「PCP(多孔性金属錯体)」は未来を変えてしまう可能性を秘めた素材といわれています。

 PCPは多孔性材料の一つで、1997年に京都大学の北川進特別教授によって発表されています。北川教授にやや遅れてアメリカの研究チームも同じような多孔性材料を発表しており、その際、名付けられた「MOF(無機・有機骨格体」と呼ばれる事もあります。

 多孔性材料は身近なところでは活性炭やゼオライトが知られており、文字通りに無数の小さな穴が開いた材料全般を指しています。活性炭やゼオライトはその無数の穴でにおいの素となる分子を捕まえる事で消臭効果を発揮したり、排ガスの分離を行ったりといった働きをしています。

 PCPは金属イオンや有機体から作られており、公園で見掛ける遊具のジャングルジムのようなイメージの構造体で、無数に張り巡らされた骨組みの中に気体などの分子を取り込む事ができます。活性炭やゼオライトよりも多様な形に設計する事ができ、すでに2万3千種ものPCPの構造が知られていて、取り込む分子や目的に応じた設計が行われています。

 実用化されているPCPの用途としては、野菜や果物を腐敗させてしまう植物のホルモンであるエチレンの働きを阻害する分子を取り込ませ、食材の近くに置く事で飛躍的に野菜や果物の鮮度を保持するとされます。

 気体のエチレン阻害物質はそのままでは扱いに手間が掛かってしまうのですが、PCPを使う事によってシリカゲルや消石灰の乾燥材のように小さなパックとして食材に添える事ができ、数か月に渡って野菜や果物の鮮度を保持し、安全性も高い事からアメリカではFDA(食品医薬品局)の承認も取得しています。

 応用の範囲は非常に幅広いとされ、ガンの分野でも危険なイメージが強い一酸化炭素や一酸化窒素といった気体を直接臓器に送り届けるという事も可能な事から、新たな治療法の確立に繋がるとされます。

 やがては世界の産業構造を変える存在ともいわれ、京都大学ではアップルやグーグルのように世界を一変させ、多くの人が恩恵を得られるようにしたいと意気込み、研究が進められているといいます。

 長期に渡って野菜や果物の鮮度を保持してくれるだけでとてもありがたい存在なのですが、これからどのように世界を変えてくれるのか、期待が膨らんでしまいます。


 

第3050回 雨の日の猫



 雨の日、坊ちゃんは睡眠時間が長くなり、どこか物憂げな感じがしてしまいます。好きな野鳥の観察ができないためか、それとも灰色の空に気分が沈んでしまうのかと考えてしまうのですが、坊ちゃんに限らず雨の日の猫は物憂げだといわれます。

 子供の頃、雨に濡れないように軒下で雨宿りをしていると、雨をものともせずに犬が濡れながら近付いてきて、横に来て体をブルブルと振るわせます。一瞬、「やめて!」と思いますが、瞬時に犬の体から弾き飛ばされた水滴で雨宿りしていた服が濡らされてしまいます。

 これまで幾度も坊ちゃんをお風呂に入れたのに、思い返してみると全身ずぶ濡れの坊ちゃんは犬のようなブルブルをしません。実はこのブルブルをしない事が雨の日の猫の物憂げな表情に繋がっているといわれます。

 犬も猫も二層になった毛を持っています。犬は固い毛と柔らかい毛の二層となっていて、外側の固い毛で雨を受け止めて内側の柔らかい毛が濡れないようにしています。固い毛で受け止めた雨をブルブルと体を震わせる振るわせる事で弾き飛ばし、皮膚が濡れて体温を奪われないようになっています。

 それに対し猫は二層の毛を持ってはいてもどちらも柔らかい毛で構成されていて、雨を受けると水分は両方の毛に伝わって皮膚に達してしまいます。体をブルブルと振るわせてもうまく水玉を飛ばす事ができず、皮膚を濡らした水分は体温を奪ってしまいます。

 猫の祖先となるリビアヤマネコが棲む砂漠は、昼間は乾いた高温の世界となっていますが夜は急激に気温が下がり、濡れた体では一気に体温を奪われてしまって低体温症となると命に関わる事になってしまいます。

 そんな事がDNAに刻み込まれているため、猫は雨の日はよく眠り、エネルギーをセーブしているのかもしれません。獲物が見つけにくくなり、濡れてしまうと命に関わる雨の日、リスクを冒すよりはエネルギーをセーブして雨が上がるのを待つ。「あーあ、今日は雨か。濡れるよりも空腹を我慢しなくちゃ」そんな祖先の嘆きが、現代の猫に物憂げな表情をさせてしまうのかもしれません。


 

第3049回 名サバイバリスト?



 普段はあまり見掛ける事がないため、その存在を意識する事はないのですが、ひとたび雨が降ると激しい鳴き声で庭に大量のカエルが棲み着いている事を感じます。

 不思議な事にカエルたちの活動が活発になるシーズンのはじめと、そろそろ肌寒さを感じるシーズンの終わりには、決まって一匹のカエルが目に留まる場所に座っていて、まるで庭を使う事の挨拶をしてくれているようでお気に入りの存在ともなっています。

 きれいな緑色で小さな姿は、如何にもか弱そうに見えて、厳しい自然の中でどのように生き抜いているのかと心配にすらなってしまうのですが、意外にもカエルはそのか弱いイメージとは正反対の非常にタフな生き物だといいます。

 6600万年前、地球に小惑星が衝突し、大量のチリが放出されて地球全体を覆って日光を遮り、暗くて寒い気候が10年に渡って続きました。追い打ちを掛けるように隕石の衝撃によって世界中の火山が噴火を起こし、有毒な火山ガスが大気中に放出されました。

 そうした環境の急激な変化がそれまで長きに渡って地球上を支配してきた恐竜を絶滅させ、過酷な状況を生き延びた哺乳類がその後の繁栄を享受したとされますが、その際、哺乳類と共に生き抜いてきたサバイバルの達人がカエルであったと最近の研究で判ってきています。

 カエルの歴史は2億年前にまで遡るとされ、爆発的に増えた時期があった事が明らかにされています。その時期は隕石の衝突が起こる3500万年前とされていますが、その当時は環境が非常に安定していた事から進化を促す要因が乏しく、変化が生じる事は不自然ともいわれていました。

 最近のミトコンドリアのDNAを使った研究で、細胞核のDNA情報を元に進化の過程を辿ったところ、カエルに爆発的な進化がもたらされたのは6600万年間という事が判り、隕石の衝突を生き延び、その後の繁栄を掴んだ事が窺えます。

 地球を覆ったチリが徐々に晴れて太陽光が射すようになると植物たちが勢い付き、地上を緑で覆いつくすようになると、それまで地表で生活していたカエルたちは生態を大きく変化させて木に登るようになり、そうしたライフスタイルの変化を果敢に採り入れてきた事がその後の繁栄に繋がったとされます。

 一見か弱そうで実は強か、そんな存在なのかもしれませんが、個別に見掛けるカエルはやはりか弱く、厳しい自然の中で生きていく事を心配してしまいます。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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