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第3099回 天ぷらと大空



 高校、大学と同じ学校で学んだ後輩がバイクのレースに出場していて、一度、バイクメーカーの広大な工場の敷地内にあるサーキットで開かれた耐久レースの様子を見に行った事があります。

 50ccの原付バイク、レーシングライセンスを持たない素人も参加可能という事で、トップクラスのチームと中堅以下では相当な力の差が見受けられたのですが、休日を利用した地元の草レースという感じがほのぼの目に映った事が思い出されます。

 その際、後輩に聞かされたところでは、レース場に行く前に少し遠回りをすると熊本空港の近辺へ行ける事から、航空燃料を少し分けてもらい、燃料のガソリンに混ぜるとバイクの馬力が上がるという事でした。その話や巨大な航空機をものすごい勢いで飛ばすジェットエンジンの原動力になるという事から、航空燃料はガソリンよりも火力が強く、危険なものというイメージを持っていました。

 後に航空燃料はガソリンよりも可燃性が高く、爆発する危険性を持ったものではなく、「ケロシン」と呼ばれる家庭でストーブなどの燃料として使われている灯油のようなものである事を知り、燃えにくいものを燃やすからこそ巨大な力が得られるのだと、変な納得をしてしまいます。

 ケロシンという呼び名はギリシャ語で「ろう」や「ワックス」を意味する「ケロス」に由来していて、成分的にはほとんど灯油と同じとされ、実際、ケロシンランプなどでは灯りのための燃料として使用されています。しかし、日本ではケロシンというとほぼ航空燃料の事として認識されており、特殊で高価なものというイメージが定着しています。

 最近、そのケロシンの代替燃料としてバイオ燃料を使用する新たな手法が試みられ、家庭や加工メーカーから排出される廃食用油のリサイクルへの道が開かれる可能性が出てきています。

 これまで日本国内でもバイオジェット燃料を使った試験飛行は行われていますが、使用された燃料は外国製のものだけで、大手航空会社で最近になって導入が発表されたものも外国製となっていて、国産のバイオジェット燃料が商用化されるのはまだ先という感じがしていました。

 今回、新たなバイオジェット燃料を作り出したのは九州を中心とした産学官の連携で、広島のバイオ燃料の会社、佐賀市、北九州市立大がタッグを組み、佐賀市から無償提供された廃食用油をベースに製造が行われています。

 精製する工程で特殊な触媒を用いる事で水素消費量を抑えた事や、廃食用油を用いた事がコストダウンに繋がっているとされ、現在の試算価格は1リットル当たり販売段階で150円程度としています。近日中にバイオ燃料の会社が実証プラントを完成させると製造コストは大幅に下げられる事が考えられていて、やがては100円以下という現在の石油系燃料と同じ水準の価格となる事も予想されています。

 日本国内で排出されている廃食用油は54万トンにも上るとされ、今後も安定的に安価に原料の入手が行われる事が考えられます。二酸化炭素の削減にも繋がる事から期待が高まってくるのですが、バイオ燃料を搭載した車の横にいて、排気ガスが揚物屋の排気ダクトのような臭いがする事に気付いたり、その後、その車が燃料に含まれていた不純物によって燃料フィルターを目詰まりさせて止まってしまった場面を見てしまうと、バイオジェット燃料の飛行機には少しだけ乗りたくない気がしてしまいます。

 新たなバイオジェット燃料はまだ試作段階ですが、すでにジェット燃料の国際規格も満たしているとされ、早ければ第一便が東京オリンピックの応援へと向かう佐賀空港から東京への便に採用されるといいます。揚物はあまり作らない我家ではあまり貢献はできそうもないですが、廃食用油のリサイクルがさらに広がるその時を待ちたいと思っています。

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第3098回 ブルブル効果



 春が来ると隣県の福岡、太宰府天満宮では「鬼すべ」という神事が行われ、松の葉を燃やして煙を出し、その煙で鬼を燻して追い払うという事でその年の災難消除や開運招福が祈願されます。そんな大切な神事が松葉不足のために開催を危ぶまれるという事がありました。

 幸いにも近隣のゴルフ場などから松葉が提供され、無事に神事は執り行われたのですが、聞かされていた松枯れ病の猛威はそんなところにまで影響を与えていたのかと驚かされると同時に、松枯れ病の深刻さを実感させられた事が思い出されます。

 松枯れ病は「マツノザイセンチュウ」と呼ばれる線虫によって引き起こされるとされ、その媒介には「マツノマダラカミキリ」というカミキリムシが関与しているといわれます。マツノザイセンチュウはそのままでは松に感染する事はできないのですが、マツノマダラカミキリと協力し合う事で感染を広げ、マツノマダラカミキリもその恩恵に与るという関係が構築されています。

 マツノマダラカミキリは松の若い枝の樹皮を食べ、松の表面にできた傷からマツノマダラカミキリの体内に潜んでいたマツノザイセンチュウは松の内部へと侵入します。松の内部でマツノザイセンチュウは急激に数を増やし、やがて松の各部へ水を送り届ける仮道管を侵されると松は枯死してしまいます。

 マツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウに体内に入られても影響がなく、良い運び手であり、松の内部への道を切り開く者ともなっています。松が生きている状態ではマツノマダラカミキリが卵を産み付けても松脂によって卵が巻かれて孵化する事ができないのですが、枯れてしまうと卵を産み付ける事ができるようになり、結果的にマツノマダラカミキリを増やす事になります。

 枯れた松に産み付けられた卵が孵化すると、やがて幼虫は松の内部へと穴を開けて入り込んみ、蛹となって成虫へと成長します。蛹になるために開けられた穴にはマツノザイセンチュウが集まり、成虫となったマツノマダラカミキリの体内に侵入する事から、ほとんどの成虫がマツノザイセンチュウの媒介者となってしまうといわれます。

 そのため枯れた松を放置すると松枯れ病の拡大に繋がってしまうとされ、有効な殺虫剤を使う、もしくはチップ状に粉砕して内部に隠れたマツノマダラカミキリを駆除しなくては感染拡大を阻止できないと考えられていました。

 最近、新たな松枯れ病予防策が発見され、殺虫剤などの薬剤を使わない環境にも優しい手法という事で、普及が期待されています。新たな手法は松の木を一定の周波数で揺らすという単純なものですが、マツノマダラカミキリは振動を感じると天敵のキツツキが来たと勘違いして、松の木から離れてしまうといいます。

 マツノザイセンチュウは100年以上前に日本へ入り込んできたとされ、1901年に長崎で起こった大規模な松の枯死が最初の記録とされています。線虫とカミキリムシの絶妙な関係が各地で猛威を振るうという事になっていたのですが、100年を超える問題が木を揺する事で解決すればと大いに期待してしまいます。


第3097回 熟成の魚



 以前は実家の牛深で早朝に水揚げされた魚をさばいて刺身にし、その日の夕方に宅配便で送られてくるという事がありました。たくさん食べてもらおうという気持ちが溢れたような量が届くので、頑張って食べようと思うのですが食べきれず、次の日に持ち越すというのが毎回の事となっていました。

 次の日も刺身でいただくのですが、やはり食べてしまえず、三日目に持ち越す事となります。刺身で大丈夫だろうかと不安になりながらいただくのですが、新鮮だった初日よりも遥かに美味しく、こんな事ならもっと残しておけばよかったと思ってしまう事があり、やみくもに新鮮でも美味しくはない事に気付かされてしまいます。

 刺身に限らず肉や魚は時間の経過と共に含まれているタンパク質の分解が進み、アミノ酸へと変化してしまい、その中には旨味に関わるものが多く含まれる事から、鮮度と引き換えに旨味が増してくるという事があります。その事を裏付けるものとして肉に冷風を当てながら熟成させる「熟成肉」が人気となっていて、鮮度が美味しさにとって最重要課題ではない事が判ります。

 熟成によって旨味が増すのは肉に限った事ではなく、魚も熟成させる事で美味しさをさらに引き出す事ができるとされ、最近では「熟成魚」も見られるようになってきています。鮮度が良い魚を良い状態を保ちながら、一番美味しくなる状態まで寝かせる。一番美味しいタイミングで食べるには熟成しないと出てこない旨味があるともいわれ、肉よりもタンパク質の分解が進みやすい魚ならより旨味が引き出せそうな気がします。

 魚の熟成は素材ごとに最適な熟成方法が異なっていて、分解が進みやすいサバなどは冷凍してゆっくり熟成、サンマなどの冷蔵で熟成するものは体液と同じ塩分濃度の0.9%の塩水に漬けた状態で熟成されます。

 かつては新鮮ではない魚しか手に入らなかった事もあり、鮮度が良いという事は美味しさに直結する事でしたが、流通、保存が発達した現在では鮮度が良い状態で入手した魚をより美味しく食べるために熟成するという選択肢も得られたという事ができます。

 今のところ熟成魚は一部の料亭や寿司屋でしか出会う事はできませんが、先日、肉を熟成させるために使われるエイジングシートを魚にも使う事ができるという事が発表されていて、手軽に熟成魚を味わう事ができるようになる可能性が出てきています。

 エイジングシートは肉を熟成させて熟成肉を手軽に作り出せるように開発されたもので、熟成を促進する有用菌を付着させてあり、シートで肉を包んで冷蔵庫で保管するだけで熟成肉を得る事ができます。

 今回、その技術が魚にも応用できる事が明らかになったもので、保管場所が通常の冷蔵庫でも良い事から、家庭でも手軽に魚を熟成させる事ができるようになり、魚の熟成に必要とされていた特別なノウハウや設備が不要になるとされます。

 今後、さらに家庭での活用を視野に入れた研究が進められるそうで、いずれは新鮮な魚を買い求め、冷蔵庫で寝かせてから食べるという事が一般化する事にも期待してしまいます。三日目の刺身の美味しさに気付いて以降、漁船の上で釣り上げられた直後にその場で調理された魚を食べて、これ以上の美味しさはないというグルメレポーターのコメントを嘘臭く見ていたのですが、それが一般的にも認識される日が来る事が楽しみに思えてしまいます。


 

第3096回 緑か紅か



 巷にマスクをしている人が増えたり、周りに急な発熱の話を聞かされたりすると、そろそろインフルエンザの流行が本格化してきた事を感じます。できる事なら辛い発熱や節々の痛み、激しい咳などには悩まされたくないので、良い予防法を講じなければと考えてしまいます。意外にも季節が冬へと移った事で水分補給を水から緑茶へ変えていた事が、インフルエンザの予防にも効果を上げてくれそうといわれています。

 緑茶に含まれる成分としてはカテキンの風邪予防効果は広く知られていて、外から帰宅したらお茶でうがい、水分補給にこまめにお茶を飲むという事はカテキンの効果を期待した冬場の健康管理として聞かされます。

 カテキン以外にもお茶に含まれる成分として、「テアニン」もカテキンと同じような抗ウィルス作用がある事が判ってきています。テアニンというとお茶の旨味にも関係した成分で、お茶の美味しさを決めるアミノ酸の半分以上を占めるとされ、お茶のほんのりとした苦味の中に感じる旨味と甘味はテアニンによるものとされます。

 最近では、テアニンは旨味、甘味を左右するだけでなく、お茶を飲んだ際に感じる安心感にも関与している事が知られるようになり、リラックス効果を生むアミノ酸としてサプリメント化も進められ、眠りの質を良くするものとしても知られるようになってきています。インフルエンザ予防にも効果があるとなると、ますますテアニンの人気は高まっていくと思えます。

 カテキンやテアニンだけでなく、お茶に含まれる成分でインフルエンザを予防してくれるものとしては「エピガロカテキンガレート」が広く知られていて、その働きは抗ウィルス薬の「アマンタジン」よりも高い効果を持つとされます。

 また、最近報告されたところでは、お茶に含まれる抗アレルギー成分である「ストリクチニン」にはエピガロカテキンガレートを上回る感染抑止力を持つ事が確認されたそうで、お茶のインフルエンザ予防効果をさらに高めてくれている事が判ります。

 緑茶と同じ「チャノキ」から収穫され、製法によって別物となってしまう紅茶にもインフルエンザ予防効果がある事が判ってきていて、その効果は緑茶にも引けを取らないともいわれます。

 茶葉が酸化発酵する過程で茶葉に多く含まれていたカテキン同士が結合し合い、新たなポリフェノールである「テアフラビン」となります。テアフラビンは強力な抗ウィルス作用を持つだけでなく、発酵の過程で分子構造が変化し、より強力な抗ウィルス作用を持つ事になるとされます。

 そうした一連の成分による抗ウィルス作用は、「スパイク」と呼ばれるウィルスが正常細胞に取り付く際に使う突起を捕らえて感染力を奪う事で作用している事から、免疫のように未知のウィルスには対抗できないという事がなく、新型にも対応できるようになっています。

 緑茶と紅茶、さまざまな働きがインフルエンザから守ってくれる事が考えられるのですが、紅茶にミルクを加えてしまうと、ミルクに含まれているタンパク質と抗ウィルス成分が反応して有効性が下がってしまうため、大好きなミルクティーはインフルエンザの季節には封印しなければと思えてきます。美味しいだけでなく、怖いインフルエンザからも守ってくれるというのは、お茶とは如何に良いものかと思えます。



 

第3095回 ギラギラの光



 以前、視野に突然ギラギラと光るものが現れ、片目で見ても、両目で見ても見え方が変わらない事から、脳に出血などの急な病変が生じたのではないかと心配になった事があります。脳溢血などであれば動けるうちに身の回りを整理したり、異常を誰かに伝えなければとも思えたのですが、視野の多くの部分をギラギラの光が占めている事から思うように動けず、途方に暮れてしまうという事がありました。

 それから何度か同じ事を経験したのですが、最初の時ほどには心配にはならず、「あの時も何ともなかったのだから」と考えながら、車の運転中などではなかった事に感謝したりもしながら、自然と収まるまで20~30分程度の時間を動かずに過ごしていました。

 その後、突然目の中に現れるギラギラした光は、「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれるものであり、偏頭痛の予兆の一つとしてよく見られるものである事を知りました。閃輝暗点は偏頭痛の15%で見られるとされ、頭痛持ちで知られた芥川龍之介も度々経験していて、遺作となった「歯車」は閃輝暗点のギラギラの様子を表しているといわれます。

 偏頭痛は原因が判らないものも多く、閃輝暗点も原因不明とされますが、脳内の血管が収縮し、その後、弛緩した際に起こるともいわれます。閃輝暗点が起こった30分ほど後に偏頭痛が訪れる事が多いとされますが、私の場合は毎回ギラギラした光を見るだけで偏頭痛には悩まされていません。

 一部の記事では閃輝暗点の後の偏頭痛は、年齢を重ねると起こらなくなる傾向があるとされ、私の場合、若くなかった事が幸いしたのかと偏頭痛に悩まされなかった事を微妙な思いで見てしまいます。

 症状の感じからストレスとの関連を考えてしまうのですが、ストレスにさらされている状況下では発生せず、ストレスから開放された際に発生する事が多いとされ、仕事の締め切りを終えた次の日の休日に発生したという話も聞かされます。

 中にはヨガを実践している際に起こったという報告もあり、ストレスによって血管が収縮し、その後のリラックスによって収縮した血管が弛緩した際に発生しているのだと考えられ、思えば私も一人で寛いでいた時だったと思い出してしまいます。

 父親が酷い偏頭痛持ちで、子供の頃、苦しんでいる姿が理解できなかったのですが、閃輝暗点はそんな父親の体質を受け継いでしまったもので、さすがに偏頭痛の痛みまで継がせてはと思った父親が光だけに留めてくれたのかと、偏頭痛を伴わない事に感謝しながら、次はどのような場面で見る事になるのかとギラギラの光について考えてしまいます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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