第3075回 究極のエコ



 家庭でもできるエコ活動が意識されるようになって久しく、さまざまなエコに繋がる事が実践されています。ちょっとした工夫や節約が大きなエコに繋がる事もあるのですが、意外な事が意識されておらず、最も効果的な方法が見落とされているともいわれます。

 少々極端にも思えますが、家庭でもできて、大きな効果を上げるエコ活動、それは肉類と乳製品の消費をやめる事だといわれます。現在、肉類と乳製品は人が摂取するカロリーの約18%を占めるとされますが、それらを生産するために農地の83%が使われ、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量の60%の原因となっているとされ、その影響の大きさを覗わせます。

 オックスフォード大学とスイスの研究機関による共同研究チームが世界の4万にも及ぶ農場を対象にデータベース化を行い、水の使用量や温室効果ガスの排出に関する調査を行い、環境への負荷が大きな食品についての割り出しを行っています。

 世界119カ国に及び世界で消費される食料の90%をカバーできるというデータベースから割り出された食料の生産工程で、最も環境負荷が大きな食品は肉類と乳製品である事が判明し、牛肉100gを生産するために排出される温室効果ガスの量は豆腐100gを生産する際の25倍にも及ぶ事が判っています。

 さまざまな食品を100g生産するために排出される温室効果ガスの量は牛肉の50kgを筆頭にチーズ11kg、鶏肉5.7kgとなっており、同じタンパク源としても豆腐では2kgとなっています。

 試算によると世界中の人が肉類と乳製品の使用を完全にやめてしまえば、世界の75%の農場が不要となり米国、中国、EU、オーストラリアを合わせた面積の土地を自然環境に戻す事ができるとされます。人と陸上の哺乳動物の86%を占めているともいわれ、地球の生態系に大きな負担を掛けているともいわれます。

 研究チームによると「環境を守る上で最も効果的な手段は、完全ねベジタリアンになる事だ」と述べていて、温室効果ガスを排出しない電気自動車を購入したり、日常生活で使用するエネルギー消費を抑える努力をするよりも遥かに効果的であるとしています。

 全人類の完全ベジタリアン化や肉類、乳製品の全面禁止という事は現実的とは思えませんが、少しずつ消費量を減らすだけでも巨大な効果を生む事が考えられるといいます。廃棄食料の問題とも絡めて考えると、より効果の大きな環境保護の手法となるのかもと思えてきます。

 
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第3074回 不便の代償



 勝手な思い込みで頭が良いといわれる人は、子供の頃からたくさん本を読んだ、もしくはたくさん勉強をした事の副作用としてメガネを掛けているというイメージがあります。早くから目を酷使してしまったために目を悪くしてしまったと思ってしまうのですが、実はそうではなく、良い頭に生まれた人にはメガネを掛けるという運命が伴っていたという事が最近の研究で判ってきています。

 イギリス、エジンバラ大学の研究プロジェクトによる一般的な認知機能や視力、寿命といった健康に関わるさまざまな要因と遺伝に関する研究によると、幾つかの遺伝子的要素の間に関連がある事が判り、一般的な認知機能に優れる事とメガネを掛けている事の間にも相関関係が認められ、認知機能が高い人はそうでない人と比べて28%も高い確率でメガネが必要となる遺伝子を持っているという結果が得られていました。

 研究プロジェクトではCHARGE(ゲノム疫学心臓・老化研究コホート)やCOGENT(認知ゲノミクスコンソーシアム)、イギリスのバイオバンクに登録されている16歳から102歳までの30万486人を対象に認知データと遺伝子データを統合する事で、一般的な認知機能と関連のある148の遺伝子を特定しています。

 それらの遺伝子は、身長や体重といった身体的特質や肺ガンやクローン病などの医学的特質、統合失調症や自閉症などの精神医学的特質と関連しているとされ、さらに一般的な認知機能と健康にまつわる52の特質との遺伝的相関を分析した結果、36の特質において認知機能との間に顕著な相関関係がある事が認められています。

 それによると認知機能に優れているほど近視になりやすく、遠視にはなりにくい。高い確率でメガネやコンタクトレンズを必要としており、握力が強く、高血圧や心臓発作、狭心症、肺ガン、変形性関節症、抑うつ障害にも罹りにくいとされています。

 同じような研究結果は過去にも発表されており、1988年にデンマークで行われた研究では1万5834人の18歳の男性を調査した結果、37.5%が近視で試験の成績が他の学生よりも大幅に良く、教育レベルも高い状態にある事や2015年には双生児初期発達の研究の中で、近視と知能指数との間に遺伝子的関連性がある事が発表されていました。

 メガネを必要とするという事は、普段の生活の中では何かと不便な事も多いとは思うのですが、頭が良く、高血圧や心臓発作、狭心症、肺ガン、変形性関節症、抑うつなどのリスクが低減されるとなれば、悪くない天からの贈り物のようにも思えてしまいます。

 

第3073回 絶滅の秘密



 子供の頃、恐竜図鑑を見る事がお気に入りとなっていて、それなりに恐竜の名前をいう事ができていたのですが、最近になって呼び名が変わっている恐竜がいたり、名前や全体的なフォルムは一緒でも見た目が変わってしまっているものがいたりして、戸惑ってしまう事があります。

 それでも恐竜が生きていた時代には尽きない興味を感じてしまったり、それまで大いに栄えていた恐竜があっという間に絶滅してしまったのか、ひょっとしたら今でも生き残りがいるのではといった事には、心躍るものを感じてしまいます。

 恐竜の絶滅に関してはずっと巨大な隕石が堕ちてきて、地球の環境が激変してしまった事が原因となったという説が有力視されてきました。時代や場所もほぼ特定されていて、約6600万年前にメキシコのユカタン半島付近に堕ちた隕石が原因とされ、今日でもユカタン半島にはチュクシュローブ・クレーターと呼ばれる直径180キロメートルにも及ぶ巨大な痕跡が残されています。

 それだけ巨大な痕跡が残されるほどの大きなな隕石がぶつかれば地球上には壊滅的な変化が訪れ、あらゆる生物の王者として君臨した恐竜でさえも絶滅してしまうはずと納得してしまうのですが、恐竜や翼竜、海棲爬虫類などは絶滅し、哺乳類や鳥類、爬虫類、魚類は生き残った事を考えると巨大隕石だけが原因ではないようにも思えてきます。

 1980年代の後半からいわれはじめ、最近になって存在感を増しつつある説の一つに、それまで無抵抗に食べられてきた植物たちの反抗ともいえる進化があったというものがあります。

 植物の進化に関しては未解明の部分が多く残されてはいますが、恐竜が栄えはじめていたジュラ紀頃には被子植物は出現していなかったと考えられ、被子植物の登場が当時の生態系に大きな変化をもたらし、恐竜から巨大隕石襲来を生き残る力を奪ったとされます。

 被子植物は風任せで生殖を行ってきた裸子植物に対し、昆虫と共生する事で花粉を運んでもらい、雌しべの中で受精するために受粉から受精までの時間が短く、環境に合わせた進化の速度が早くなるという優れた点が多く、急速に多様化していきます。

 進化の速度を早めた被子植物の仲間は、成長を効率化させるために葉を柔らかくして光合成の機能を高め、代謝の速度を高めたと考えられています。種子を運んでもらうために果実には栄養が蓄えられ、受粉をより良く行うために目立つ花と蜜が供えられるようになり、そうした変化はジュラ紀から白亜紀にかけての恐竜の進化に強い関係があるとされます。

 草食の恐竜は栄養価の高い被子植物を食べる事で繁栄し、草食恐竜の繁栄は肉食恐竜の繁栄にも恩恵を与えました。しかし、美味しく、栄養価に富んだ被子植物はある時を境に素直に食べられ続ける事を止め、自分たちを食べる動物に対し毒を持つ事で天敵を増やさない工夫をするようになりました。

 その直撃を受けたのが草食恐竜で、進化が遅い恐竜は新たに登場した毒に対応する事ができず、弱体化が進んでいたとされます。そこへ巨大隕石の襲来が起こり、恐竜は乗り切る力を失っていて絶滅への道をひた進む事になったといいます。

 巨大隕石だけでは説明できない部分を植物の毒素によって補った形になるのですが、植物の毒素を効能という形で利用している現代人の生活を思うと説得力があるように思えてきます。植物の中にはあくを抜かないと食べられないものがあります。経験的に蓄えられてきた知恵ですが、恐竜たちも知っていれば、ふとそんな事を考えてしまいます。


 

第3072回 長き者の毒



 世界最大の生き物といわれるとシロナガスクジラの巨大な姿が思い浮かんできて、陸上でといわれるとアフリカゾウの巨体を思ってしまいます。しかし、地球上には彼らを遥かに超えるスケールの生き物が存在していて、世界最大の生き物は東京ドーム684個分にもなるキノコだと聞かされた事があります。

 そのキノコの名は「オニナラタケ」で、その大きさは8.9平方キロメートルに及ぶとされます。そうはいっても大空を覆い尽くすほど巨大なキノコの傘が開いていた訳ではなく、菌糸の状態で広範囲に張り巡らされ、すべて同じDNAを持っていた事から単体の生物とみなされて世界最大の称号を得ています。

 同じような存在としては、カナダの湿地帯に棲む粘菌があり、森や枯葉の下に棲息する微生物を吸収しながら形や大きさを変えながら成長し、その大きさは数キロに及んでいるとされますが、残念な事に具体的な大きさは計測できない事から世界最大をキノコと争うには至っていません。

 目に見える動物で最大となると、やはりシロナガスクジラが思い浮かんでくるのですが、全長だけならシロナガスクジラの33.58メートルを遥かに凌ぐ55メートル超とされるヒモムシがいます。しかも幅は5~10ミリ程度なので、かなり長い印象を持ってしまいます。

 それだけ細長いと外敵に狙われる可能性が非常に高まってしまうのではとも思えてくるのですが、ヒモムシは天敵から逃れるために体に毒を持つ事で攻撃を回避しています。その際に使用される毒は、フグの毒として知られたテトロドトキシンとされ、青酸カリの850倍という強力な毒性は、かなりの破壊力とも思えてしまいます。

 ヒモムシが持つテトロドトキシンはフグと同じく自ら作り出したものではなく、捕食によって蓄積、濃縮されるという生体濃縮によるもので、ヒモムシ自体はテトロドトキシンに耐性を持つ事から、危険な毒を使いながら安全に自らを守っているという事ができます。

 最近になってヒモムシの毒はテトロドトキシンだけではない事が解明され、研究が進められています。ヒモムシの一種であるブルーレースワームから発見された新たな毒は、構造的に安定したシスチン構造を持つペプチドとされ、神経伝達の機能を掌るナトリウムイオンチャンネルを破壊し、運動機能を麻痺させる作用を持つ事が判っています。

 新たな毒は神経伝達のためのナトリウムイオンチャンネルのブレーキの部分を破壊し、連続的な電気信号を全身に送らせ続ける事で麻痺させ、やがては死に至るとされます。興味深い事にこの毒はヒモムシの外敵となるカニなどの甲殻類や昆虫といった節足動物にしか利かず、哺乳類にはほとんど作用しないとされます。

 研究が進み、量産化されると効果と安全性が高い殺虫剤の登場となりそうな気がするのですが、夏場に我家を悩ませる牛小屋からのハエは、殺虫剤を噴射すると薬剤が到達する前の空気の動きでその場を逃れてしまう事から、殺虫剤の構造そのものが変わらない限り我家の問題解決には結び付かないとも思えてしまいます。


 

第3069回 表面カラフル

 

 以前、紫外線対策をしたいなら黄色い服を着るべきと教えられ、意外に思えた事があります。光を反射しやすい白か、吸収する黒ならともかく、黄色というのがとても納得いかないように思えて、少し考えてしまったのですが、光の三原色の事を思うと納得できる事と思えてきました。

 可視光線はいくつもの波長に分けられ、プリズムによって分光された虹の七色はそれぞれ固有の波長を持っていて、すべての波長を合わせた光の色が白となります。身の回りにあるすべての物質は光を受けて反射する際、一定の波長の光を吸収する性質を持っており、吸収されなかった波長の反射光を、私たちはその物の色として見ています。

 そのため青い光の波長を吸収する性質を持つ物質に光が当たった場合、白から青を除いた光が反射されて色として見える事から、私たちの目には黄色がその物質の色として映ります。紫外線は可視光線ではないのですが、青系の色を吸収する物質という事で、黄色い服が紫外線対策になるという理屈になります。

 最近、そうした物質の性質を応用したテクノロジーが公表されていて、金属の表面を塗装する事なく鮮やかな色で彩る事ができるというだけでなく、意外な分野への応用も期待されています。

 今回の技術を開発したのは理化学研究所でメタマテリアルの研究をしている田中拓男主任研究員で、アルミニウムの表面の微細な構造を変化させる事でさまざまな色を発色させる事ができるメタマテリアルシートの開発に成功しています。

 開発された構造体は、アルミニウムの基盤の上に一辺が数百ナノメートルという微細な無数の薄い四角形を並べたもので、四角形の一辺の長さや隣との間隔を変化させる事で吸収する光の波長を変え、反射光の色を変化させる事ができます。

 アルミニウムは表面がすぐに酸化されて腐食を防ぐ事から、塗料などのように色褪せたりする事もなく、半永久的に同じ色を発色し続ける事が可能とされ、塗装するよりも遥かに軽量に仕上げる事が可能ともいわれます。

 メタマテリアルシートの応用はカラフルで軽量、耐久性に優れた金属の表面加工に留まらず、ガンの検診という分野でも期待されています。最近の研究でガンは特有のにおいを持つ事が判ってきています。においの素は分子であり、分子は固有の赤外線を発している事から、得たマテリアルシートを使って人の呼気や汗からガンが発したにおいの素となる分子の赤外線を発見できれば、簡単な検査でガンを発見できる事になります。

 可視光線よりも波長が長い赤外線となると、アルミニウムよりも金の方が相性が良いため、金を使ってメタマテリアルシートを作る必要があるそうですが、金のシートは小さく、薄くても大丈夫で、繰り返し使える事から、実現すれば現在行われているどのガン検診よりも安価な検査となる事も予想されます。

 現在、田中研究員は2cm四方程度の大きさのシートを作成し、今後、5年間を掛けて検出できる分子の種類や分子の量などを見極めるとの事で、やがて医師が差し出したシートに息を吹き掛けるというのがガン検診の第一歩となるのかもしれません。

 「はい、息を吹き掛けてください」といわれると、飲酒運転の検問を思い出してしまいますが、飲酒の有無に併せてガン検診も行えるとしたらどこか不気味なものを感じてしまいます。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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