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第3123回 輸血の釣り餌



 好奇心が旺盛でいろんな事に興味を持ち、何事も楽しく思えてしまうせいで周りの人達から多趣味な人と思われているのですが、実は無趣味で何か良い趣味と出会えないかと、いつも探し続けています。

 そんなある日、釣り糸を巻き取るリールが機能に徹した形状や使われている金属パーツの光沢、メカニカルな動作などから美しく見えてしまい、リールを使う釣りを趣味にするのも良いかもと思ってしまった事があります。

 知り合いから聞かされる釣りの話も楽しそうに感じられたのですが、結局、幾つかの理由から釣りは私には向かないと思って断念しています。一番の理由は陽射しの降り注ぐ中で長時間を過ごすのが無理と思えた事ですが、同じくらい生餌に触れる事に抵抗がありました。

 数えるほどしかありませんが、子供の頃、父親に連れられて釣りに行った事があり、その際に見掛けたプラスティック製の筒形の容器に入れられたウジ虫にしか見えないドングリ虫やパックに入ったミミズなど、いまだに関わりたくないものとなっています。中でも苦手に思えるのがゴカイで、同じ生き物にしか見えないイソメと合わせ、触れるどころかそれを食べて釣られた魚に触れる事も辛いように思えます。

 釣りに関する記事を読んでみるとゴカイはとても良い餌とされ、多くの魚種に対して有効な万能餌といわれています。画像で見た感じでは違いがほとんど判らないゴカイとイソメですが、ゴカイの方が「食い」が良いとされ、その分、購入する際の単価も高くなっているのですが、弱い事から運搬や保存には気を使う必要があるとされます。

 私を釣りから遠ざけているゴカイですが、まだ未解明な部分も多く、最近になって日本に棲息しているゴカイも単一ではなく、ヤマトカワゴカイ、ヒメヤマトカワゴカイ、アリアケカワゴカイの3種に分類される事が判っています。そんなゴカイに関し、興味深い研究結果が得られており、やがてゴカイは単なる釣りの餌だけではない役割を担う事になるかもしれないと思えます。

 私たち人間は呼吸によって肺に取り込んだ空気中の酸素を吸収し、血液中に含まれているヘモグロビンを使って体中に酸素を運搬しています。人間の場合、ヘモグロビンは赤血球の中に含まれているのですが、ゴカイの場合、血液中に溶け込んで存在しているため、人間の血液と比べて40倍以上もの酸素を運搬する事ができるとされます。

 将来的にゴカイの血液を利用する事で、体中のさまざまな器官に効率よく多くの酸素を届ける事が可能になり、機能を活性化させる事で傷や疾病からの回復を早める事が可能となるかもしれません。凄い発見と思いながら、実用化された際は、できれば素が判らない製剤名にしてほしいと思ってしまいます。


 
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第3122回 古くから繰り返す流行



 今年は流行の始まりが早いという事で、インフルエンザの大規模な広がりを警戒していたのですが、新型コロナウィルスによる肺炎の話題にかき消されてしまった感じで、ほとんどインフルエンザに関する情報が得られなくなっています。

 すでに日本語として定着しているような感じがするインフルエンザですが、語源は片仮名からイメージしてしまう英語ではなくイタリア語となっています。そのため正確な読みはインフルエンザではなく「インフルエンツァ」らしいのですが、18世紀にイギリスを経由して言葉として広まった事から英語読みのインフルエンザが一般化しています。

 16世紀のイタリアで何らかの原因で汚れた空気「瘴気」が発生し、それに触れた人が急な発熱を伴う体調不良を患うと考えられ、毎年のように冬になると流行し、春になる頃には収まる事から天体の運行や寒気の発生に影響されると考えた占星術師によって「影響」を意味する「インフルエンツァ」の名前が当てられました。

 当時は感染症に関する概念が確立されておらず、インフルエンザが伝染性の病原体によって起こる事など想像もできるはずもなく、占星術師の登場となったのですが、当時の名称が今日もそのまま使われている事にはインフルエンザが毎年、繰り返し流行し続けてきた事を感じます。

 1889年にインフルエンザが大流行した際、ドイツの元軍医でコッホの衛生研究所に所属していたリヒャルト・プファイファーが患者からグラム陰性細菌を分離する事に成功し、1892年に「インフルエンザ菌」と命名した上でインフルエンザを引き起こしていた病原体として発表しています。その後、インフルエンザの病原体を巡っては論争が繰り広げられ、1933年になってようやく決着をみています。

 いつから人はインフルエンザと関わっているのかというと、人となる遥か以前からと思えてくるのですが、動物の間で感染していたウィルスが変異する事によって動物から人へと感染して、人から人への感染が確認されると新型インフルエンザと呼ばれる事を考えると、人が誕生した年の最初の冬であったと思えてきます。

 文献上、最も古いインフルエンザの様子を記したものは紀元前412年にヒポクラテスの手によるとされ、インフルエンザが急速に流行し、やがて収束していく様子が記録されています。

 日本でも平安時代に近畿地方で流行した記録が残されているのですが、質の悪い風邪の一種と考えられていたようで、その後、幾度も風邪の名前で流行し、被害が出た事が残されています。

 長い歴史を持つ古い付き合いのインフルエンザですが、幾度も感染の大流行を繰り返しながら人がインフルエンザを克服できなかった理由は、ウィルスが常に変化を続けてきたからといえます。進化論の提唱者、ダーウィンの名言、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残る事ができるのは、変化できる者である」を思いながら、この冬も無縁であってほしいと願ってしまいます。


 

第3121回 桜を守る



 我家の殺風景な庭に樹木を植え、少しでも安らげる風景にしなければと、数年前から少しずつ木や花の苗を植えたりしています。そんな事情を知っている母親からセンダンの苗木を持って帰るように薦められたのですが、いわれたセンダンの苗木は思っている姿と大きく違い、戸惑ってしまうという事がありました。

 私の中でのセンダンの木はゴツゴツした厚い樹皮を持ち、幹がいたるところで曲がっています。それが滑らかな薄い樹皮に真っすぐな姿で、とてもセンダンとは思えなかったのですが、成長によって姿が変化するとの事なのでとりあえず庭に移植してみる事にしました。

 移植の際に根の多くが切れてしまった事から根付かない事を心配したのですが、センダンは強い樹木という事で経過を観察していると、しっかりと庭に根付いてくれたようです。

 早く成長して木陰で一休みする時の事を考えていると、木の先端付近に大きな黒い虫がとまっているのが見えます。嫌な予感がしながら近付いてみると白い斑を持つカミキリムシで、未熟な柔らかい樹皮の多くが食べられています。

 慌ててカミキリムシを捕獲し、植物用の外傷薬を塗ったのですが、食べられてしまった面積が大きく、枯れてしまう事が心配になっていました。何とかセンダンは持ち直してくれて、元気に成長を続けているのですが、それ以来、カミキリムシには神経質なくらい警戒を続けています。

 子供の頃から怖い顔に如何にも強そうな顎、捕まえると首の後ろを動かして独特の音を出す事からカミキリムシが苦手だったのですが、最近、外来種のカミキリムシが大きな問題を引き起こしているといわれています。

 本来は中国や台湾、朝鮮半島、ベトナムの北部などに棲息しているクビアカツヤカミキリが外国産梱包材に紛れて国内に侵入したとされ、2012年に愛知県の桜や梅で被害が確認され、それ以降、2013年には埼玉県の桜、2015年には群馬県、東京都、大阪府の桜や徳島県の桃、2016年には栃木県の桜と各地へと被害が広まっています。

 クビアカツヤカミキリの成虫は約4cm程度の大きさで、その名の通り全体に艶があり、実際には胸部ですが首に見える部分だけ赤い色をしています。別名「クロジャコウカミキリ」と呼ばれるように独特の香りを持つという特徴がありますが、見た感じでは我家のセンダンを襲ったマダラカミキリの方が悪者に見えます。

 しかし、クビアカツヤカミキリの破壊力は強大で、果樹の幹や樹皮の割れ目に産卵し、孵化した幼虫は果樹に寄生して内部を食い荒らして枯死させます。1~3年かけて成虫になると果樹から這い出してきて春から夏にかけて飛び回り、新たな果樹に産卵するとされます。

 一回の産卵で在来種のカミキリムシの十倍近い数を産み付ける事もあるといわれ、高い繁殖力に加え、使える農薬が少なく農薬の効きも弱いとされる事から、被害が一気に拡大する恐れがあります。今のところ被害が確認された場合、樹木を根ごと引き抜いて処分するしかなく、果樹園では廃園に追い込まれる事も考えられます。

 天敵もいない事から現状ではやりたい放題という感じがしますが、このまま充分な対策が確立されない状況では、数十年後には日本国内で花見ができなくなるという怖ろしい予測も囁かれています。

 カミキリムシの被害というと、松の木が伝染病のように枯死させられてしまう「マツ材線虫病」が思い浮かんできて、被害の大きさを考えてしまいます。桜や梅、桃は日本の文化とも深く関わっています。拡大する怖ろしい被害から樹木を守る良い対策はないものかと考えながら、被害の収束を願ってしまいます。


 

第3120回 サンゴのために



 2018年7月3日、ハワイで日焼け止めを禁止する法案が成立したという事が話題になっていました。法律は2021年1月1日から施行されるという事で、暑さと陽射しが苦手な身としてはますますハワイへ行く理由がなくなったというか、日焼け止めもなしに強い陽射しの中を歩くのは自殺行為のようにも思えます。

 実際には紫外線をカットする成分としてオキシベンゾンとオクチノキサートを含む市販の日焼け止めの販売と流通が禁止されるだけで、他の成分が使われている日焼け止めの使用は可能で、全面的に日焼け止めが使えなくなったわけではないといいます。

 ハワイで日焼け止めが禁止と聞くと、すぐにサンゴの保護に本格的な取り組みが始まったと思えました。以前から多くの研究で日焼け止めに含まれる成分がサンゴの白化現象を引き起こし、海洋生命体の遺伝子損傷を引き起こしているとされていました。

 その場に行く事はないにしても美しいサンゴ礁の海には憧れてしまうので、ハワイの取り組みが世界的に広がる事を願ってしまいます。世界各地でサンゴの白化現象が確認されていて、このままではサンゴが絶滅してしまうのではという声も聞かれています。そんなサンゴについて朗報となりそうな論文が公開されていました。

 論文では海中に設置したスピーカーから特定の種類のサウンドを流す事で、死滅しかかったサンゴの再生を促す事が明らかになったとされます。サンゴも音楽によって勇気付けられるのかと思わず考えてしますのですが、研究で使われたのはクラシックやロックなどの音楽ではなく、健康的なサンゴ礁に満ちている自然の音だといいます。

 生きたサンゴ礁が発する音を流す事で、死にかけたサンゴの群れの周辺にも魚を呼び寄せる事ができるという仮説に基いたもので、実際に実験を行う事で仮説の正しさが裏付けられ、音の効果で魚の数は2倍にも増えています。

 40日間行われた実験の期間中には魚だけでなく、サンゴ礁の活性化に欠かせないバクテリアの数の上昇も観察され、新しい生命が生まれる場所を確保するために、魚たちはサンゴを良い状態に保とうとしていました。

 サンゴ礁を安全な生活の場としているだけに見える魚たちですが、実際はサンゴの健全な育成には欠かせない存在で、互いに助け合っている事に気付かされ、この技術が有害な日焼け止めの成分の使用禁止と共に世界中に広がる事を願ってしまいます。


 

第3118回 殺虫剤と魚



 ネオニコチノイド系と呼ばれる殺虫剤には、現在、農薬取締法に基づいて7つの化学物質が登録されていて、昆虫の神経伝達を阻害して高い殺虫作用を発揮し、適応する害虫の種類も広く、人をはじめとする脊椎動物への急性毒性は低いという優れた効果を持っているとされます。

 環境中でも分解されにくく、残効性があるだけでなく水溶性で植物への浸透移行性も高い事から、植物に使用する事で食害する昆虫を待ち伏せして駆除するといった便利な使い方をする事も可能なため、農作物の生産性向上に役立つ農薬として広く使用されています。

 優れた効果と便利さから急速に普及したネオニコチノイド系殺虫剤ですが、近年、無脊椎動物だけでなく毒性が低いと考えられていた脊椎動物に関しても免疫機能や生殖機能の低下といった慢性毒性が報告されるようになり、使用を制限する動きが世界的に広がってきています。

 特に生態系への直接的、間接的影響は大きな問題として捉えられてきていて、世界各地で起こっているミツバチの減少の原因物質として疑われています。水溶性である事から水環境へ移行する事も考えられ、実際、河川水からの検出も報告されていますが、環境中濃度の測定例はまだ少なく、汚染実態についてはまだ明らかにはなっていません。

 そんな中、興味深い論文が11月1日付けの科学誌「サイエンス」に掲載されていました。1993年5月、島根県の宍道湖付近の稲作農家が「イミダクロプリド」という殺虫剤を使い始めます。時を同じくして周辺の甲殻類や動物プランクトンなどの節足動物の数が減りはじめ、翌年にはそれらを餌にする二ホンウナギやワカサギが激減しています。その後もイミダクロプリドをはじめとするネオニコチノイド系殺虫剤の使用は増え続け、魚の数の回復は見られていないとされます。

 この論文によって世界で最も広く利用されているネオニコチノイド系殺虫剤が水界生態系に漏れ出し、漁獲量を激減させて漁業に多大な打撃を与える事が明らかにされた事になります。

 宍道湖ではネオニコチノイド系殺虫剤の使用がはじまる10年以上前の1980年代初頭から漁場の調査が継続的に行われており、水質や節足動物と動物プランクトンの数、魚の漁獲量などを幅広く記録していました。このようなデータは非常に珍しいとされ、論文の筆頭著者で産業技術総合研究所と東京大学に所属する山室真澄氏は、このデータを使用してネオニコチノイド系殺虫剤の使用と食物網の混乱との間の明確な繋がりを見出したとされます。

 ネオニコチノイド系殺虫剤の使用を開始した1993年の前後12年に関して、魚の餌になる微小な甲殻類などの動物プランクトンの量を集計したところ、平均で83%も減少していたとされ、中でもオオユスリカの幼虫は2016年には全く見付ける事ができなかったという衝撃的な結果も得られています。

 ネオニコチノイド系殺虫剤の代表的なメーカーであるバイエル社からは、水の環境は動的なシステムであり、いろいろな物理的、化学的な変化の影響を受ける可能性があるとして、直接的な関連を否定する声明が出されていますが、変化がネオニコチノイド系殺虫剤の使用を開始した直後に起こり始めた事や塩素イオン濃度、堆積物の成分、酸素濃度などの水質の指標にはほとんど変化がない事からも関連は明らかだと思えます。

 別な研究ではネオニコチノイド系殺虫剤の使用と鳥類の激減の関連が明示されており、便利さの副作用がもたらすものの大きさを感じさせてくれます。世界的な人口の増加で食糧増産の重要性がいわれる昨今、食糧生産の必要性と環境に及ぼす影響のバランスについて早急に考えなければならない時期に差し掛かっているのかもしれません。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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