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第3107回 鏡への反応



 まるでドレスを着ているような長くて優雅なヒレと、全身を覆う青い色がとても綺麗で思わず熱帯魚のベタを飼ってしまった事があります。ベタは縄張り意識がとても強く、同じ水槽に二匹を入れてしまうと片方が死ぬまで闘うともいわれ、仕方なく一匹だけをキッチンに設置した水槽に入れて飼っていました。

 夜になると水槽に入れてあげたマグカップの中で寝ていたのですが、私がキッチンに入る気配を感じるとフワフワとカップから出てきてこちら側へとやってくるので、水槽のガラス越しに撫でてあげていた事が思い出されます。

 ベタを飼育する際、水槽の近くに鏡を置いてしまうと、鏡に写った自分の姿を縄張りを荒らしに来た外敵と思い、攻撃してしまう事があるので注意が必要と聞かされていたのですが、そんな事はなさそうな研究結果が公表されていました。

 大阪市立大の幸田正典教授を中心とした研究チームが行った実験によると、太平洋やインド洋に広く棲息する体調10cm程度のベラ科のホンソメワケベラを放した水槽に鏡を設置すると、最初の2、3日は鏡に写った自分の姿に噛み付くなどの威嚇行動をしていましたが、数日経つと鏡の前で踊るような行動を初め、鏡に写っているのが自分の姿である事を確かめている行動が観察されています。

 同様の行動は象やチンパンジーでも見られていて、自分の行動と鏡の姿が完全に連動している事を確認し、写っている姿が自分のものである事の確証を得ているとされます。鏡の中に自分に気付くと、ホンソメワケベラは鏡を覗き込む仕草が増えたとされ、自分を客観的に見詰める習慣が生まれた事を示しています。

 ホンソメワケベラは大きな魚に付いた寄生虫を取り除くという、「海の掃除屋」という役割を持っています。研究チームがホンソメワケベラの喉の部分に寄生虫に似た茶色い印を付けると、鏡を見たホンソメワケベラは水底の砂や石に喉をこすり付ける行動を繰り返し、寄生虫を取り除こうとする行動を採っています。鏡がない場合は、寄生虫に似せた印に気付く事がなく、こすり付ける行動はしなかった事から、完全に自分の姿と理解している事が伺えます。

 幸田教授は、鏡像が自分である事を認識していなければ一連の行動は起こさないと説明し、人間や類人猿より下等と考えられてきた生き物の賢さについて、根本的に考えを改める必要があると話しています。

 我家では鏡やガラスに写る姿を利用して、隠れた位置から私の事を観察している坊ちゃんの姿を何度も見ています。最近になって動物の賢さが再認識される事が増えてきていますが、多くの動物が人と変わらない賢さを持っているのでは、そう思えてしまいます。


 


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第3104回 枯渇という悲劇



 簡単な筒状の機材に電気を流し、空気と水からアンモニアを作り出す技術が開発され、やがては水素を取り出すための化石燃料も大規模なプラントも必要なくなり、農地の一角で肥料が作れるようになるかもしれないという明るい未来が予想される反面、肥料という点からは非常に未来を不安視する要因も聞かれています。

 南太平洋にナウルという島国があります。バチカン市国、モナコ公国に次ぐ世界で三番目に小さい国で、その面積は東京都の港区とほぼ同じくらいだといわれます。目立った山もなく、川もなく、南太平洋らしさが感じられるビーチもない事から観光業などの産業が成り立たず、非常に貧しい国だといわれます。

 現状は貧しくてもかつては非常に裕福で、医療費や教育費、税金、公共料金は無料というだけでなく、ベーシックインカムとして生活費が政府から支給され、新婚のカップルには新築の2LDKの家が無償でプレゼントされていました。まるで産油国のようですが、そうしたナウルの豊かさを支えていたのがリンの鉱石で、岩礁に海鳥の糞などが堆積してできたナウルからは質の高いリン鉱石が豊富に産出されていました。

 リン鉱石は世界中で化学肥料の材料として使われていて、ナウルのリン鉱石は純度が高く良質な事で知られ、最盛期には170万トンものリン鉱石が採掘されていました。ナウルがリン鉱石で得た収入は5000億円以上ともいわれ、人口が5000人ほどであった事から国民一人当たり1億円にも達します。

 一時は島には主要な道路は1本しかなく、自転車でも1時間ほどで一周できてしまいそうな島なのにベンツやフェラーリが所有され、まさにバブルとも呼べるような状態となっていました。そんなナウルが破綻したのは、主要な産業であるリン鉱石を採掘し尽くしてしまったためで、潤沢な資産を使った海外投資なども試みられましたが尽く失敗してしまい、現在のような状況を迎えてしまっています。

 リン鉱石からは、肥料に欠かせない三大栄養素のアンモニア、リン、カリウムの中のリンが得られます。植物には欠かせないものであっても鉱石である以上、採掘を続けるといつかは埋蔵量が尽きてしまいます。アンモニアのような化合物であれば幾つかの元素を組み合わせて作り出す事も考えられますが、リンは元素である事から合成する事ができず、埋蔵量を使い尽くしてしまうと新たに得る事ができなくなっています。

 リン鉱石の枯渇はナウルに限った事ではなく、世界中の鉱山で埋蔵量の減少がいわれています。将来的な人口爆発を支えるための食糧増産に欠かせない肥料ですが、このままでは三大栄養素を揃える事ができなくなり、危機的事態を迎えてしまう事も考えられます。

 一説には2060年には世界中のリン鉱石が枯渇してしまうともいわれ、それ以降、近代的な農業が成り立たなくなるという怖ろしげな話もあります。農耕という食糧確保の術を手に入れた事で人は定住する事を可能にし、文明を築いてきました。その農業を失った時、何が起こるのか、とても怖い気がしてしまいます。


第3103回 水と空気から



 今後、世界的な問題となるとされる事の中に人口の増加があります。日本では少子高齢化と人口の減少がいわれていますが、日本人が減少したくらいでは追い付かないほどの勢いで世界の人口は増え続け、さまざまな問題へと繋がっていくと考えられています。

 人口の増加に対応するために欠かせない事の一つとして、食料の確保が重要となります。食料を増産しなければ増え続ける人口を支える事ができなくなってしまうのですが、そのために必要となるものがアンモニアといわれます。

 アンモニアというと蜂に刺された時に必要になるものという事が思い浮かび、試合中に意識が朦朧としたボクサーに特有の刺激臭を嗅がせ、その刺激によって意識をはっきりさせるという用途を聞かされた事が思い出されます。

 それ以外の用途というとあまり浮かんでこないのですが、アンモニアは農業には欠かせないものとなっていて、化学肥料の原料として広く使われています。その生産量は年間で1億7千万トンが世界中で生産されているとされ、その8割が肥料の原料として使われているとされます。

 地中に含まれているミネラルなどの栄養素は、植物の成長によって植物中へと移動し、収穫する事でその土地から奪われてしまいます。そのため、どんなに肥沃な土地でも畑として繰り返し植物の栽培、収穫を繰り返す事でやがては植物を育てる事ができない痩せた土地へと変わってしまいます。

 土地が痩せてしまう事を防いだり、不足する栄養素を添加して植物の成長を円滑にするために必要なものが肥料であり、その歴史は極めて古いとされます。今から1万年ほど前、旧石器時代に農耕がはじまり、人々が定住するようになると、食料を生産するために畑が作られ、切り開いた平野で刈り取った雑草などが燃やされ、その灰が最初の肥料となったと考えられています。

 肥料に欠かせない三大栄養素といわれるのが窒素、リン、カリウムの三成分で、その窒素の供給源として肥料作りに使われているのがアンモニアとなっていて、肥料作りに欠かせないものといわれる所以となっています。

 現在、アンモニア生産はハーバー・ボッシュ法と呼ばれる鉄の触媒を使って高温高圧で水素と窒素を反応させる方法で行われています。高温高圧という環境を作り出す事や、水素を化石燃料から作り出している事からそれなりにコストが掛かっているとされ、製造施設も大規模なものが必要になっています。

 そんなアンモニアを簡単に、しかも水と空気から作り出せるという夢のような技術が開発されています。開発者は九州工業大学大学院生命体工学研究科の春山教授で、春山教授は気体と液体の境界で起こる反応を研究している中、水の表面では水素原子が他の原子と反応しやすくなる性質に着目。空気に電気を流しながら刺激を与え、空気中の窒素原子と水の表面の水素原子が結合して水中にアンモニアが溶け出すという仕組みを考案しました。

 まだ実験室レベルではありますが、筒の中に水と空気を入れ、電気を流す事でアンモニアが得られる反応器を完成させ、すでに世界各国へ特許の出願が行われています。使用するエネルギーが小さい事や設備も簡単に済む事から、将来的に普及すればインフラの整備が遅れている地域で直接肥料の製造を行うという事も可能になると考えられ、人口爆発が懸念される未来を支える技術となるといえます。

 化石燃料から水素を取り出す必要もなくなり、二酸化炭素の削減に繋がる事も考えられ、植物に必要なものを植物と同じように水と空気から作り出すという事は、どこか夢のある技術のようにも思えてしまい、未来の農業というものを考えてしまいます。


第3100回 草食系?



 ずいぶんと前になりますが、当時遊んでいたテレビゲームにどこから見てもただのウサギにしか見えないモンスターが登場し、可愛い姿に油断しているとクリティカルヒットと表示されてキャラクターが即死させられるという場面がありました。

 草食動物の代表格のようなウサギが人を瞬殺するというのはイメージしにくいと思っていたのですが、草食動物の代表というウサギの位置付けが揺らぎそうな場面が撮影され、動物は一概に草食、肉食といった括りには収める事ができない可能性が出てきています。

 カナダ、アルバータ大学の生態学博士候補生のマイケル・ピアーズ氏が学術誌の発表したところでは、ユーコン準州に生息する野ウサギの一種、カンジキウサギは、長く厳しい冬の間、栄養の補給のために動物の肉を食べていたとされます。

 夏の間は植物を食べているウサギたちは、地面が雪で覆われて気温がマイナス30度以下まで冷え込む冬になると、餌を見付ける事ができなくなり、お腹を空かせて他のウサギや鳥の死骸を食べるようになるといいます。死骸であれば本来は天敵であるカナダオオヤマネコも例外ではない反面、ヒグマなどが食べに来る可能性が高い鹿などの大型の動物の死骸には近付かない事が判っています。

 動物の死骸のそばに遠隔操作のカメラを設置し、2年半に渡って撮影を行い、観察した死骸の数は161体にも上ったそうですが、そのうちの20体は野ウサギによって食べられていました。

 野ウサギが肉を食べたという記録は1901年には報告されていますが、カメラで撮影された事によって裏付けられるのは今回が最初となっています。雪に覆われ、大地が凍る中、必要な栄養を確保するための行動とも思えますが、可愛く、攻撃のための手段を持たないようなウサギがハゲタカやハイエナのように死肉をあさるというのは受け入れがたいものを感じてしまいます。

 見方によっては死さえも無駄にしない、死しても無駄にならないという自然の決まり事のようにも思え、自然とは豊かで優しい反面、残酷でもあるという事を改めて思ってしまいます。自然豊かな環境で暮らしながら、まだまだ知らない事の多さに驚かされてしまいます。


第3099回 天ぷらと大空



 高校、大学と同じ学校で学んだ後輩がバイクのレースに出場していて、一度、バイクメーカーの広大な工場の敷地内にあるサーキットで開かれた耐久レースの様子を見に行った事があります。

 50ccの原付バイク、レーシングライセンスを持たない素人も参加可能という事で、トップクラスのチームと中堅以下では相当な力の差が見受けられたのですが、休日を利用した地元の草レースという感じがほのぼの目に映った事が思い出されます。

 その際、後輩に聞かされたところでは、レース場に行く前に少し遠回りをすると熊本空港の近辺へ行ける事から、航空燃料を少し分けてもらい、燃料のガソリンに混ぜるとバイクの馬力が上がるという事でした。その話や巨大な航空機をものすごい勢いで飛ばすジェットエンジンの原動力になるという事から、航空燃料はガソリンよりも火力が強く、危険なものというイメージを持っていました。

 後に航空燃料はガソリンよりも可燃性が高く、爆発する危険性を持ったものではなく、「ケロシン」と呼ばれる家庭でストーブなどの燃料として使われている灯油のようなものである事を知り、燃えにくいものを燃やすからこそ巨大な力が得られるのだと、変な納得をしてしまいます。

 ケロシンという呼び名はギリシャ語で「ろう」や「ワックス」を意味する「ケロス」に由来していて、成分的にはほとんど灯油と同じとされ、実際、ケロシンランプなどでは灯りのための燃料として使用されています。しかし、日本ではケロシンというとほぼ航空燃料の事として認識されており、特殊で高価なものというイメージが定着しています。

 最近、そのケロシンの代替燃料としてバイオ燃料を使用する新たな手法が試みられ、家庭や加工メーカーから排出される廃食用油のリサイクルへの道が開かれる可能性が出てきています。

 これまで日本国内でもバイオジェット燃料を使った試験飛行は行われていますが、使用された燃料は外国製のものだけで、大手航空会社で最近になって導入が発表されたものも外国製となっていて、国産のバイオジェット燃料が商用化されるのはまだ先という感じがしていました。

 今回、新たなバイオジェット燃料を作り出したのは九州を中心とした産学官の連携で、広島のバイオ燃料の会社、佐賀市、北九州市立大がタッグを組み、佐賀市から無償提供された廃食用油をベースに製造が行われています。

 精製する工程で特殊な触媒を用いる事で水素消費量を抑えた事や、廃食用油を用いた事がコストダウンに繋がっているとされ、現在の試算価格は1リットル当たり販売段階で150円程度としています。近日中にバイオ燃料の会社が実証プラントを完成させると製造コストは大幅に下げられる事が考えられていて、やがては100円以下という現在の石油系燃料と同じ水準の価格となる事も予想されています。

 日本国内で排出されている廃食用油は54万トンにも上るとされ、今後も安定的に安価に原料の入手が行われる事が考えられます。二酸化炭素の削減にも繋がる事から期待が高まってくるのですが、バイオ燃料を搭載した車の横にいて、排気ガスが揚物屋の排気ダクトのような臭いがする事に気付いたり、その後、その車が燃料に含まれていた不純物によって燃料フィルターを目詰まりさせて止まってしまった場面を見てしまうと、バイオジェット燃料の飛行機には少しだけ乗りたくない気がしてしまいます。

 新たなバイオジェット燃料はまだ試作段階ですが、すでにジェット燃料の国際規格も満たしているとされ、早ければ第一便が東京オリンピックの応援へと向かう佐賀空港から東京への便に採用されるといいます。揚物はあまり作らない我家ではあまり貢献はできそうもないですが、廃食用油のリサイクルがさらに広がるその時を待ちたいと思っています。

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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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