第2990回 ジャムのコツ



 今年の春、庭にたくさんの野イチゴが成っているのを発見しました。これから冬にかけて庭の管理を適切に行っておくと、来年の春には豊作となるような気がして今から楽しみになっています。

 庭を訪れる野生動物が食べている様子がない事から、野イチゴは独り占めの状態となってしまう事もあり、食べ切れない分はジャムでも作ってみようかと考えています。

 子供の頃、たくさんイチゴをいただき、食べ切れない事から母親がジャムを作ってくれた事がありました。大きな鍋でコトコトとイチゴを煮込んでいったのですが、なかなかジャムとしてのとろみが着かず、仕方なく固まらせるために家にあった寒天を加えてしまった事から、明らかにジャムではない別な物ができてしまいました。

 トーストに塗るという事に適さない硬さと、煮込まれたイチゴの濃厚過ぎる香りが明らかな失敗作である事を感じさせてくれたのですが、今だったらすぐにペクチンを買いに行って、上手に手伝う事ができるのにと当時の事を思い出してしまいます。

 ジャムは日持ちがしない果物の長期保存を可能にする保存法の一つではありますが、果物の美味しさを濃厚にして向上させてくれ、トーストだけでなくヨーグルトやお菓子などのフルーツソースとして活用する事もできるなど、果物を味わう楽しさをより大きくしてくれます。

 長時間鍋で煮込み、植物に広く含まれているペクチンを使ってとろみを着けるなど、どこか難しげに思えてくるジャム作りですが、幾つかのコツさえ押さえておけば比較的簡単に完成度が高いジャムを作る事ができます。

 最初のコツは、水洗いをしてよく水気を切った果物に砂糖をまぶしておく事で、砂糖の浸透圧を使って果物に含まれている水分をしっかり脱水させておきます。鍋に果物を入れて水を加えて煮込むと思いがちなのですが、果物の内部に含まれている水分を使う事で、より美味しく、手早く仕上げる事ができます。素材によって違いはありますが、半日ほど砂糖をまぶして寝かせておくと意外なほど水分が出てくるので、その水分を使って煮込み始めます。

 第二のコツは、あまり煮込まない事で、ジャム作りというと弱火でコトコトと長時間煮込むイメージがありますが、煮込み過ぎると果物の繊細な風味が損なわれてしまうので、20分ほどの短時間で一気に煮詰める方が良いとされます。火に掛けて沸騰してきたら丁寧にアクを除き、煮汁にとろみがでてきたら少し緩い感じがしても火から下ろすのがポイントで、冷めながらもとろみが着く事から、粗熱が取れる頃には良い加減に仕上がってくれます。

 意外と見落としがちなのが第三のコツで、ジャムを作る際に使用する鍋とヘラの材質も重要となってきます。アルミなどの金属製の鍋やヘラを使ってジャムを作ると、果物に含まれる酸と金属が反応してジャムの色合いや風味が変化してしまいます。ホウロウ鍋や木べらなどを使う事で果物本来の持ち味を活かしたジャム作りができます。

 シンプルなだけに奥深いジャム作りですが、三つのコツを押さえるだけで上手に仕上げる事ができます。パン食が多い身としては、次の春には庭の恵みに感謝しながら作ってみなければと思っています。


 
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第2701回 時短の試み



 先日、とても興味深い実験のレポートを拝見しました。カレーなどの洋食を作る際、タマネギを時間を掛けて炒め、飴色のトロトロの状態に仕上げる事があるのですが、その際に必要となる時間を短縮するというもので、面白い事を考える人もいるものだと興味深く見てしまいました。

 タマネギには旨味成分のグルタミン酸や果物並みの甘味が含まれているのですが、刺激的な辛味と臭味のためにそれを感じる事ができなくなっています。薄切りにしたタマネギを時間を掛けて炒める事で揮発性のある辛味や臭味の成分がなくなり、水分が除かれて味が濃縮され、メイラード反応によって飴色と呼ばれる色合いと独特な風味が加わるとタマネギの旨味や甘味は料理の美味しさを引き立ててくれるようになります。

 そのため時間を掛けてタマネギを焦がさないように炒めるのですが、実験ではその際に必要となる時間を短めるための手法として、飴色タマネギの成立に重要な役割を担うメイラード反応を円滑に発生させるという事に焦点が当てられていました。

 メイラード反応はさまざまな状況下で生じますが、アルカリ性でより良く起こる事から、実験では重曹を加える事で薄切りにしたタマネギをアルカリ性にして早期にメイラード反応を起こさせてタマネギを炒める時間の短縮が図られていました。重曹であれば65度以上の熱によって急激に分解し、炭酸ナトリウムや二酸化炭素、水になるだけなので、それほど味にも影響しないと思えます。

 結果としては通常の炒め方と同じような質感と色合いになるのに半分の時間で仕上がったのですが、食べてみると甘味が少ないとの事で、その理由を炒める時間が短い事から水分が除かれた量が少なく、味が濃縮されていないためとされていました。

 炒め時間が短い事で除かれた水分が少ない事も考えられるのですが、硫化アリルなどの成分が残されていて甘味をマスキングしてしまう事やアルカリによってグルタミン酸が分解されてしまった事も考えられるので、細かな分析を掛けるとどういう結果が得られるのかと気になってしまいます。

 似たような事は自分でも行っていて、タマネギを炒めはじめた際、少量の塩を加えるようにしています。塩によって浸透圧が高まり、タマネギの水分が素早く出てきてくれる事からタマネギが柔らかくなるのが早まり、炒める時間も短くなってくれます。

 最近、カレーを作っていないと思いながら、次は飴色タマネギをたくさん作って、タマネギの甘味を活かしたカレーを作ってみようと考えています。


第2546回 餃子のように



 知り合いから雑誌の特集記事で、「ソーセージは餃子のように焼け」という内容のものがある事を聞かされ、同じ挽き肉を材料としている事やソーセージはケーシング、餃子は小麦粉を練った皮に包まれている共通点や、ソーセージは燻製にしてあるため加熱済みで餃子は生という大きな違いに思いを巡らせながら、どのような内容なのか雑誌を取り寄せてみようかと考えたりもしています。

 ソーセージというと本場とされるドイツが思い浮かび、ドイツが発祥の地という感じがするのですが、非常に古い歴史を持ちソーセージに関する最古の記載は古代ギリシャの詩人、ホメロスによる叙事詩「オデュセイア」に登場する「山羊の胃袋に血と脂身を詰めた兵士の携行食」とされています。

 それだけ古い歴史を持ち、世界の食文化にも溶け込んでいて、各地でさまざまなバリエーションを見る事ができるソーセージの中で弁当のおかずの定番といわれる赤いウィンナーソーセージは日本固有の物で、それがアニメなどの影響で世界へ広がりつつあるともいわれると、切り込みを入れて焼き上げたタコのウインナーが大好きだった身としては、陰ながら応援したいと思ってしまいます。

 子供の頃、ソーセージというと魚肉ソーセージかタコにする赤いウインナーソ-セージくらいのものだったのですが、最近では街中に専門店ができたり、通信販売で取り寄せが可能であったりと本格的な製品に触れる機会も増えただけでなく、一般的な市販品にも本格的な物が増えてきています。

 そんな本格的なソーセージを前に、いつもどのように調理するのが一番美味しいのだろうと考えてしまいます。選択肢としてはフライパンで焼くか鍋で茹でるというものが中心となるのですが、今のところお気に入りとしてはオリーブ油をひいたフライパンを弱火にかけ、ソーセージを並べた後、蓋をして弱火でゆっくりと焼き上げます。

 しばらくして中で弾ける音がしたら蓋を開けてソーセージを裏返して片側を焼くのですが、その間も遅れて弾けるソーセージがあって、結構、毎回怖い思いをさせられてしまいます。両面に軽く焦げ目が着く頃には、表面の皮に裂け目ができてパリッと焼き上がっているのですが、餃子を焼くように焼くとどのようになるのかと気になります。

 以前、メーカーの開発者の話を聞いた際は、焼く、茹でるのどちらが美味しいかという事に解答はなかったのですが、茹でる場合は煮立てないようにして90度くらいのお湯で3分。旨味が逃げ出さないように茹でると皮はパリッとして、中はふっくらという美味しい仕上がりになり、焼く場合はソーセージから出る脂を使って焼くので油はひかず、旨味がたっぷりの脂も調味料と考えて弱めの中火で5分ほど焼くのが良いという事でした。

 結局、一番美味しい調理法は判らないまま焼いていると、茹でた方が良かったのではと思えてきて、茹でていると、焼いた方がと思えてきます。それでもでき上がりを食べると、それぞれの調理法で良かったと思えるので、このまま結論は得られないようにも思えます。そんな中に舞い込んできた特集記事の話、チェックしてみなければと思っています。


第2421回 バゲットを目指して(2)



 料理の手順を見ていると、表面にさっと火を通して煮崩れを防いだり、旨味を閉じ込めるといった手法が登場するのですが、最近の研究によるとステーキに関しては表面を高温で焼き固めたくらいでは肉汁を封じ込める事は不可能で、容易に表面の加熱された肉の層を肉汁は通過してしまう事が判っています。

 肉の表面を高温で焼く最大のメリットは、肉の表面にメイラード反応を起こさせるという事と考える事ができます。高温の下で糖分とタンパク質が反応して起こるメイラード反応は、肉の表面に美味しそうな褐色の焼き色と特有の風味を加えてくれ、ステーキの美味しさを左右する重要な要素となっています。

 また、高温で表面の水分を一気に気化させてしまう事も香ばしさを作り出し、ステーキの調理には高温が欠かせないようにも思えてきます。しかし、ステーキ肉のような厚さがある肉の場合、高温で調理すると中心部に充分な火が通る前に表面を焦がしてしまい、焦げた表面と固い中間層、生の中心部という結果になってしまう事が考えられます。

 ステーキ肉とは牛の筋肉を輪切りにした物という事ができ、筋肉は筋繊維を束にしてコラーゲンの膜で覆った物と考える事ができます。そうした観点からステーキ肉と温度の関係を見てみると、筋繊維を構成するアクチンは49~55度、ミオシンは66度、それを包むコラーゲンは77度で変性してしまうとされています。

 肉の内部の温度が77度を超えてしまうと、アクチン、ミオシン、コラーゲンが変性してしまい、変性によって縮んでしまったコラーゲンが筋繊維の間の肉汁を絞り出す形で肉汁の流出が起こると考えられます。

 肉の旨味を引き出しながらパサ付いた固さを感じさせないようにするには、アクチンは変性してもミオシンは変性させない事が重要といわれるので、内部の温度はミオシンとコラーゲンを変死させない60~65度の間というのが好ましいと思えてきます。

 表面にメイラード反応を発生させるには177度の温度が最適とされる事から、表面を180度程度にしながら内部は65度というのが最良の焼き方と考える事ができます。

 温度管理が難しく、理論上の事でしかないと思えてくるのですが、意外にも簡単な方法でそれを実現する事が可能となっています。まず多めの油をひいたフライパンを強火で充分に熱し、肉を焼き始めたら30秒で裏返す。片側も30秒焼いたら裏返し、それを30秒ごとに繰り返して3分ほどで焼き上げると、理想の焼き加減になるとされます。

 肉がフライパンに触れると表面の水分が気化して熱を奪い、裏返されると表面から立ち上る蒸気でフライパンに触れていない側の肉の温度は急激に下がるため、短い時間で裏返す事を繰り返す事で火の通りも早まり、均一に内部まで熱を伝達できる事が美味しい焼き上がりに繋がると考えられます。

 表面を高温で焼き固めて肉汁の流出を防いで旨味を封じ込め、裏返しは一回という焼き方を提唱したのは1850年代のドイツの化学者、リーヴィッヒだとされます。そろそろ古典的な手法から脱却する時が来たのかもしれません。


第2420回 バゲットを目指して(1)



 上手に焼けたステーキの褒め言葉に、「バゲットのようだ」というものがあると聞かされています。フランスパンのバゲットのように表面はパリッと香ばしく、中はふんわりと柔らかく焼き上がっている事を表現した言葉との事で、見事な表現と思えてきます。

 外食して肉類を食べるという事がかなり少ない事もあり、その最たるものといえるステーキを食べたという記憶がほとんどないため、そのような褒め言葉を贈る場面にも出会わずにいるのですが、父親が焼いてくれたステーキは、比較的近い物であったように思っています。

 残念な事に父親と一緒に台所に立つという事がなかったのでレシピやコツといった事は聞いておらず、どうやって焼いていたのかは謎のままで、若い頃、お気に入りの店に通い詰め、店員さんと仲良くなってコツを聞き出したという自慢話の思い出だけが残されています。

 以前、シェフに聞かされたところでは、まずステーキ肉を室温に戻す事が重要で、料理の本などには30分程度と書かれていますが、30分では全然足りず、2時間近くも掛けてゆっくりと中心部まで均一な温度にする必要があるといわれました。

 その後、フライパンを高温になるまで強火で熱し、方側の表面を短時間で一気に焼き上げ、一旦、肉をバットに移動させて休ませ、その間に再びフライパンを高温にし、もう片面を同じように焼き上がる。再びバットに移して肉を休ませ、後は弱火で中までゆっくりと温めるのが最良の方法と聞かされています。

 ステーキのレアは中心部はほとんど火が通っておらず、生の状態のように見られてしまうのですが、実際にはきちんと火が通っていながら赤みを残しているというのが正しい状態で、生では肉の旨味を充分に引き出す事ができないとされます。

 そのため最初に高い温度で表面を焼き固めて肉汁が流れ出し、肉のパサ付きや旨味を失ってしまう事を防ぎ、後の加熱で内部にまでゆっくりと火を通すという非常に論理的な焼き型のように思えます。

 教わったやり方では、肉は2回ほど裏返された結果となり、バットへも2度の移動という手の掛かったものとなっています。それに対し、肉はあまり裏返すべきではなく、中火程度の火加減で片側を焼き、表面に肉汁が浮いてきたら裏返し、同じように焼くのが正しい焼き方であり、裏返したりフライパンの中をむやみに動かしたりするのは、焼き上がりを悪くするという情報もあります。

 同じような意見でも、中火で焼き上げて肉汁が浮いてくるのを待つ間にフライパンを揺すって肉を動かし、肉とフライパンの間に充分な油を入れてやる事で表面をカリッと仕上げられるというものもあり、だんだん肉の正しい焼き方どれなのかと迷ってきます。シンプルなだけに難しいという言葉を聞かされる事がありますが、焼くだけというステーキはまさにそれなのかもしれません。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
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