第3050回 雨の日の猫



 雨の日、坊ちゃんは睡眠時間が長くなり、どこか物憂げな感じがしてしまいます。好きな野鳥の観察ができないためか、それとも灰色の空に気分が沈んでしまうのかと考えてしまうのですが、坊ちゃんに限らず雨の日の猫は物憂げだといわれます。

 子供の頃、雨に濡れないように軒下で雨宿りをしていると、雨をものともせずに犬が濡れながら近付いてきて、横に来て体をブルブルと振るわせます。一瞬、「やめて!」と思いますが、瞬時に犬の体から弾き飛ばされた水滴で雨宿りしていた服が濡らされてしまいます。

 これまで幾度も坊ちゃんをお風呂に入れたのに、思い返してみると全身ずぶ濡れの坊ちゃんは犬のようなブルブルをしません。実はこのブルブルをしない事が雨の日の猫の物憂げな表情に繋がっているといわれます。

 犬も猫も二層になった毛を持っています。犬は固い毛と柔らかい毛の二層となっていて、外側の固い毛で雨を受け止めて内側の柔らかい毛が濡れないようにしています。固い毛で受け止めた雨をブルブルと体を震わせる振るわせる事で弾き飛ばし、皮膚が濡れて体温を奪われないようになっています。

 それに対し猫は二層の毛を持ってはいてもどちらも柔らかい毛で構成されていて、雨を受けると水分は両方の毛に伝わって皮膚に達してしまいます。体をブルブルと振るわせてもうまく水玉を飛ばす事ができず、皮膚を濡らした水分は体温を奪ってしまいます。

 猫の祖先となるリビアヤマネコが棲む砂漠は、昼間は乾いた高温の世界となっていますが夜は急激に気温が下がり、濡れた体では一気に体温を奪われてしまって低体温症となると命に関わる事になってしまいます。

 そんな事がDNAに刻み込まれているため、猫は雨の日はよく眠り、エネルギーをセーブしているのかもしれません。獲物が見つけにくくなり、濡れてしまうと命に関わる雨の日、リスクを冒すよりはエネルギーをセーブして雨が上がるのを待つ。「あーあ、今日は雨か。濡れるよりも空腹を我慢しなくちゃ」そんな祖先の嘆きが、現代の猫に物憂げな表情をさせてしまうのかもしれません。


 
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第3034回 紙の魚



 以前、住んでいたマンションで、とても素早く動き回る銀色の小さな虫を発見した事がありました。部屋の電気を点けると明るいのが苦手なのか、そそくさといなくなってしまいます。何か害を及ぼす虫という感じもしなかったので放置していたのですが、やがて形は同じなのですが銀色ではなく黒い虫を見掛けるようになり、あまり光から逃げるという様子もなくなった事から、黒くなった事で光を克服したのかと短時間で進化してしまったような不気味さを感じた事がありました。

 ある時、ティッシュペーパーを使って捕まえてみた事があるのですが、ティッシュペーパーには黒い鱗粉のようなものが残され、光を遮るためのもののようで、光を苦手としなくなった事は確かなように思えます。

 何の虫なのか気になって調べてみると、その独特の存在感から「紙魚(しみ)」と呼ばれる虫である事が判ります。迷惑害虫に入れられているらしく、部屋に紙魚が出た事で絶望感に苛まれたという話まできかされると、部屋にいるという事があまり愉快な事ではないと感じられてきます。

 紙魚は通常の虫のように卵から孵化すると幼虫として過ごし、やがて蛹になって成虫となるという成長の段階を経ず、孵化すると小さい成虫の姿で生まれてきて、その後、脱皮を繰り返しながら大きくなっていき、一生脱皮をし続けます。

 小さな姿からは考えられないほどの長寿で、8年ほどは生きるとされ、甲虫の中では長生きする存在となっています。屋内では紙や乾物、布などの表面を舐め取るように食べるとされ、よく書物に細長いトンネル状の穴をあけて紙魚の仕業といわれますが、紙魚は表面を削るだけで書物に穴を開けてしまうのはシバンムシの仕業となっています。

 マンションの天井は木目調とはなっていたのですが、紙製のクロスを貼っただけのもので、クロスが貼られた板には隙間があるらしく、その継ぎ目の部分に穴が開いているのを発見すると、部屋で紙魚を見掛ける頻度が高まり、やがて天井の穴が広がっていきました。

 紙魚が繁殖して天井のクロスを食べている事が確実になってきたので、さすがに大家さんに報告すると業者を呼んで駆除してくれ、それ以降、紙魚を見掛ける事はなくなってしまいました。

 天井のクロスも新しいものに張り替えてもらえたので、それほど紙魚に困らされたという感じもなく、見掛けて絶望感という事には実感が沸かないのですが、紙魚の語源ともなった魚のように体をくねらせて逃げ去る姿を懐かしくも思える半面、もう見なくても良いかと思えてきます。


 

第3026回 疲労回復定食



 かつて美味しいけど健康を考える上ではあまり良いとはいえない、そんなメニューの一つとうのが「とんかつ」の位置付けにあったように思えます。サクサクに揚げられた衣に包まれた柔らかな豚肉と、それに合わせられる酸味と旨味、甘味が利いたソースという組み合わせは、ダイエットの強力な敵のようにも思われていました。

 そんなとんかつの評価が変化し始めたのは、ダイエットの考え方の主流がカロリーや脂質の摂取の制限といったものから糖質を制限して血糖値の急激な上昇を抑えるといったものへと移っていったためで、高カロリーや揚げ油、豚肉に含まれる脂肪といった呪縛からとんかつを解き放ってくれたともいえます。

 少しずつ評価が変わってきているとんかつの新たな位置付け、それは現代人に必要な疲労を回復させてくれる滋養食となっています。特にさまざまな食材と合わせられるとんかつ定食は、多くの栄養素を含んでいる事から疲れた時には食べておきたい、そんなメニューとなっています。

 もともと豚肉はエネルギーの生産に欠かせない栄養素であるビタミンB1が豊富とされ、定食として一緒に食べられるごはんや味噌汁、薬味のネギや付け合わせのキャベツ、味付けのソースなどにもビタミンB1は含まれる事から、一食で一日に必要とされる推奨量を遥かに超えるビタミンB1を摂取する事ができます。

 また、同じく疲労回復に役立つビタミンB2やナイアシン、パントテン酸なども多く含まれている事や傷んだ筋肉を補修するタンパク質も多い事も疲労を速やかに軽減してくれると考える事ができます。

 店によっては最初にすり鉢に入れられた大量のごまを渡され、注文した定食が出てくるまでにごまをすって待つという事もあるのですが、その場合、ごまに含まれるビタミンEやセサミンが活性酸素の除去に働きかけて、疲労による酸化ストレスやエネルギー生産の際に発生してしまう活性酸素を除去してくれます。

 カロリーばかりが意識されていたとんかつですが、体内で利用されやすさの指標を示すアミノ酸スコアに優れた豚肉が使われている事を考えると、再評価されてきている事にも納得してしまいます。


 

第3011回 猫の禁忌



 坊ちゃんはあまり食には興味がないらしく、私が食べている物を確認する事はあっても、それを食べたがるという事はありません。これまで二人が共通して食べた物というと、私が食べていたので興味を持ち、一口だけ齧って飲み込んだ食パンのみで、魚や鶏肉、カニカマなど猫が好みそうな物を用意しても、ことごとく食べないといわれてしまいます。

 二人で共通した物を美味しくいただくという事は、ペットを飼う人なら普通に願望として持ってしまいそうに思えるのですが、人は大丈夫でもペットには毒になる物があり、その一環としてネギやチョコレートは広く知られています。

 そんな人は普通に食べている物で、猫には毒となってしまう食べ物の一つに「イカ」があります。イカは魚介類であるだけでなく、猫が好きそうな食感をしている上に猫に欠かせない栄養素のタウリンが豊富なので食べさせたいと思ってしまうのですが、昔から「猫にイカを食べさせると腰が砕ける」と伝えられていて、イカを食べてしまった猫は「腰砕け」と呼ばれる歩行困難な状態に陥るといわれます。

 イカには猫を歩行困難にしてしまうような神経毒は含まれていないのですが、チアミナーゼと呼ばれる酵素が含まれていて、大量に摂取してしまうと体内のビタミンB1を破壊されてしまいます。

 ビタミンB1が破壊されてしまうと、ビタミンB1の欠乏症である脚気の症状が出てしまい、猫は歩行が困難になってしまう事が考えられ、昔からの言い伝えは根拠のないものではない事が判ります。

 チアミナーゼは漁獲後、イカの鮮度が落ちる際に生成されるので、新鮮なイカであれば安全とされ、酵素としての活動ができないように加熱する事でも無害化する事ができると考えられています。

 とびきり新鮮なイカを選び、充分に火を通せばタウリンが豊富なイカを食べさせる事ができるとなれば、牛深へ行った際にイカを購入し、私は刺身で坊ちゃんにはボイルしてと思うのですが、いつものように嫌われそうで、少々ためらってしまうものがあります。


第3005回 スプーン効果



 たまたま購入したそうめんに付録として金属製の円盤のような物が貼り付けてありました。説明書によるとその円盤を鍋の中心に置いておくと、そうめんを茹でる際に鍋が噴きこぼれにくくなるといいます。

 気になってさっそく試してみると、説明書に書かれていたように噴きこぼれず、いつもは鍋に付きっきりで茹でていたものが、鍋を放置して薬味の準備もできてしまいます。

 便利な物もあるものだと思いながら仕組みを調べてみると、円盤が鍋の中心部にある事で通常では鍋の真ん中から上へ向かって水の対流が上昇し、鍋の外側に向かってしまうものが逆に鍋の外側から中心へと流れが変わるために、噴きこぼれにくくなるとされ、同じような効果は大きめのスプーンを入れておいても得る事ができるとされます。

 そうめんやうどんなどの麺を茹でる際、溶け出した小麦の成分も手伝って鍋のお湯は噴きこぼれやすくなってしまいます。鍋のお湯が盛り上がり、今にも噴きこぼれそうになると登場するのが「差し水」で、少量の水を加える事でお湯の温度を下げる事で噴きこぼれを防いでくれます。

 また、差し水をする事で麺の茹であがりにコシが出るともいわれますが、麺を茹でる際は一旦沸騰させたらその温度を維持し続ける方がより美味しい麺に仕上がるとされます。麺を茹でる際にたっぷりのお湯を使った方が良いとされるのは、お湯の温度変化を最小限に抑える目的もあるといえます。

 差し水をしてしまう事は大きくお湯の温度を下げてしまう事から、麺を茹でるという事に関してはあまり良い事ではないと考えられ、差し水は火力の調整が利かない釜戸による調理の名残りとも思えてきます。

 急に噴きこぼれる鍋の事を考えると、差し水で一気に事無きを得たいとも思えてきますが、麺の仕上がりを思うと事前にスプーンなどを沈めておく方が良いのかもしれません。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
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