第2119回 高低リスク



 血液中の尿酸値が高い状態を放置しておくと、痛風を引き起こすリスクが高まってしまいます。痛風は「風が吹いただけても痛みを生じる」といわれるほど激痛を伴う事から、放置され続ける事は少ないと思われますが、尿酸値が高まった状態を放置し続けると心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる重大な疾患のリスクを高めてしまいます。

 そのため尿酸値は低い事が好ましいように思えるのですが、尿酸値が低過ぎる事は死亡のリスクを高めてしまう事が最近の研究によって判ってきています。

 痛風に罹った事のない健康診断の受診者35万4110人を対象に血液1デシリットル当りの尿酸値が2.9ミリグラム以下と極めて低いグループ、3.0~4.9ミリグラムと低いグループ、5.0~6.9ミリグラムと正常値のグループ、7.1~8.9ミリグラムと高めのグループ、9.1~10.9ミリグラムと高いグループ、11.1ミリグラム以上と極めて高いグループに分けて追跡を行ったところ、追跡期間中に3万3562人の死亡が確認され、死因を解析して各グループの1000人当りの死亡率が比較を行ったところ、極めて低いグループは52.5人、低いグループは19.7人、正常値のグループは17.4人、高めのグループが20.0人、高いグループが28.0人、極めて高いグループが41.1人という結果が得られています。

 死亡率が最も低くなっている正常値のグループと比較するとそれぞれの死亡リスクは極めて低いグループが2.79倍、低いグループが1.32倍、高めのグループが1.10倍、高いグループが1.42倍、極めて高いグループが2.21倍となり、死因を関連性の高い心臓や血管の病気に限定しても同じような傾向が観察され、極めて低いグループと極めて高いグループで顕著に死亡リスクが高いという結果が得られています。

 死因をガンに関連するものに限定しても同じ傾向が得られている事から、血液中の尿酸値は高過ぎても低過ぎても死亡のリスクを高めてしまう事が伺えます。血液中の尿酸値は生活習慣を通した管理が重要視されます。ここでも日常の生活を通した健康管理の大切さを感じてしまいます。


 
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第2118回 失われた時間



 最近ではQOL(生活の質)といった概念が定着した事もあり、人が生きる長さの「寿命」以外にも「健康寿命」という健康的な生活を送る事のできる年齢がいわれるようになってきています。どことなく機械類の入れ替え時を計る「経済寿命」のような感じがしてしまいますが、健康的に何事にもはつらつと生きる事は誰にとっても大切な事といえます。

 不幸にしてガンを発症してしまい、健康的な生活を送る事が妨げられてしまう、それは今日のガンの発症率を見ると、それほど遠い世界の事でもない事が判ります。ガンの発症によって生活に何らかの支障が生じてしまう事は健康寿命の短縮であり、世界的な規模で見ると膨大な時間に上る事が考えられます。

 先日、IARC(国際ガン研究機構)において行われた研究では、死に至るだけでなくガンによって何らかの障害、乳ガンによる乳房の切除や子宮ガンによる不妊、各種臓器の摘出など、健康な状態に支障が生じた例を考慮しながら世界の12の地域、184カ国のガン登録データに基いて世界全体での健康寿命の短縮について試算を行ったところ、2008年だけで短縮された時間の合計は1億6930万年に上るとされています。

 国ごとに見ると短縮された健康寿命の時間については同程度とされますが、平均所得の低い国ではガンによって早期に死に至る率が高く、所得の高い国では障害によって健康寿命が短縮される率が高くなる傾向が見られています。

 ガンによる負担が重い地域としてはアジアとヨーロッパが上げられており、中でも男性では東欧の健康寿命の短縮が10万人当たり3146年にも上るとされ、女性ではサハラ砂漠以南のアフリカで10万人当たり2749年とされていて、膨大な時間がガンによって損失されている事が判ります。

 ほとんどの地域で大腸ガン、肺ガン、乳ガン、前立腺ガンが高い比率で健康寿命の短縮に関わっており、サハラ砂漠以南のアフリカと東アジアでは感染症によって引き起こされる肝臓ガン、胃ガン、子宮頚ガンが大きく影響するという分析も出されています。

 高度な医療を受ける機会に恵まれている事は、肺ガンや胃ガン、肝臓ガン、すい臓ガンなどの病状の見通しが良くないガンの生存率の向上にはそれほど貢献していない事も判っており、生活習慣や食生活の改善が極めて重要である事が明らかにされています。

 今回の研究はガンに焦点を合わせたものでしたが、生活習慣や食生活を改善する事で防ぐ事のできる病の全てとなると、もっと大きな時間が損失されている事が容易に想像できます。日常の生活を通した健康作りの重要性がとても強く感じられてしまいます。


 

第2117回 対策カカオ



 昔から寒さに強かった事もあり、ほとんど意識する事がなかったのですが、最近になって自分が冷え症である事に気付きました。考えてみると寒さをそれほど強く感じない、我慢できるというだけで、冬場になると手がとても冷たくなり、小説に出てくる吸血鬼に対する描写、「ふと触れた手が死人のように冷たかった」という感じがするのではと触れられる事が苦手になっていました。

 日頃の不摂生な生活や運動不足のせいだとは思うのですが、体温の元となる筋肉の量が減少したり、肝臓の働きが弱めになったりしたためか、最近は寒さを前よりも強く感じ、すぐに手足が冷たくなってしまいます。軽い運動を通して筋肉量を増やすにしてもそれなりに時間が掛かりそうなので、何か食を通して体を温めてくれる物を探さなければと思っています。

 夏場や熱い地域にできる作物は、どちらかというと熱を冷ます働きを持つ物が多く、できるだけ冬場に旬を迎えたり、暖かくない地域にできる物が良いと思っていたのですが、意外にも私の中では熱帯の作物で、熱を冷まして体力を回復してくれるという夏の食べ物というイメージが強かったカカオに体を温める力がある事が報告されていました。

 食を通した冷え症の対策には、血行を促進して体温を末端まで届けられるようにする事が大切とされる事から、血行促進に繋がるビタミンEを多く含むナッツ類、魚介類、カボチャなどや、血液の素となる鉄分を多く含むレバーやほうれん草などの緑黄色野菜が薦められ、代謝を高めて発熱するという意味からコショウや唐辛子などの香辛料も良いとされます。中でもショウガは体を中から温めてくれるとして、寒さが増してくるとショウガが配合された製品を多く見掛けるようになるほど、冷え対策の定番の素材となっています。

 カカオによる温め効果はそんなショウガに匹敵するとされ、しかも長時間に渡って体を温め続けてくれるといいます。大手食品メーカーが行った研究によると、冷え症と診断された女性11名にココアを溶かした牛乳とショウガを溶かした牛乳を飲んでもらい、手足の冷えがはじまる23~24度の部屋にいてもらって、体温の変化をサーモグラフィーで経時的な変化を観察したところ、意外な結果が得られたといいます。

 ショウガを溶かした牛乳では体温が急速に大きく上がり、その後、緩やかに体温は下がっていったのに対し、ココアを溶かした牛乳では、ショウガほどの急激で大きな体温の上昇は見られませんでしたが、緩やかに上がった体温はショウガよりも長く保たれ続け、有効に冷え症を抑制していた事が観察されています。

 カカオに含まれるテオブロミンが血管を拡張させて血流を増やした事や、ポリフェノールがビタミンEと同じような抗酸化作用を発揮して血流を促したり、新陳代謝を高めた事などがそうした結果に結び付いた事が考えられ、いわれてみると納得できるものがあります。

 ココアはショウガとの相性も良い事から、温めた牛乳にココアとショウガを溶かしたジンジャーココアがこの冬の定番となるのかと考えています。


 

第2116回 有害論?(2)


 カルシウムを含むサプリメントの宣伝などでよく「牛乳○○本分の・・・」といういい方をされることがあります。水分の中にカルシウムが分散している牛乳と凝縮したサプリメントとでは状態のレベルが違うので比較するには無理があり、聞くたびに牛乳が気の毒に思えてきます。

 サプリメントの場合はそれだけの大量の牛乳を毎日飲用する事は不可能なので、このサプリメントを利用しましょうという話になるのですが、牛乳有害論においてはもっと辛辣に牛乳を批判する話が展開されています。

 牛乳は虫歯を助長するとして、子供の虫歯の原因を成長に必要となるカルシウムを確保するために牛乳を率先して飲ませるせいという意見を聞かされた事があるのですが、牛乳を日常的に飲用する事で虫歯の子供が増えたという学術的なデータは存在しないとされます。

 牛乳は栄養豊富である事から虫歯の原因となるミュータンス菌の増殖を助ける事は考えられるのですが、そうなると牛乳が原因というより口内に食物がある状態を放置しているという生活習慣の方が原因という事ができ、牛乳が有害とする事には根拠が薄い気がしてきます。

 牛乳には乳糖が含まれる事から、消化するには乳糖を分解する酵素が必要になります。乳糖を分解する酵素がないと牛乳をきちんと消化する事ができず、飲んだ後にいわゆるお腹がゴロゴロするといわれる状態になってしまいます。

 乳糖不耐性と呼ばれる状態ですが、乳糖不耐が体が牛乳を拒絶している事の表れという事も聞かされます。乳糖不耐は繰り返し牛乳を飲む事で、失活していた酵素が活性を取り戻し、以降はゴロゴロしなくなるので、牛乳を飲まない事による弊害のようにも思えます。

 牛乳を飲むとカルシウムの補給どころか、かえって体内のカルシウムの排出を促してしまい、骨粗鬆症を悪化させてしまうともいわれ、牛乳に含まれる悪いカルシウムが体内の良いカルシウムを一緒に連れ出してしまうというおとぎ話的なものから、飲用後、血液中のカルシウム濃度が上がり、一定のカルシウム濃度を保つために過剰にカルシウムが排出されてしまうという一見科学的な根拠を添えたものも見掛けられます。

 血液中のカルシウム濃度が上がった場合、確かに一定レベルを保つような仕組みは働くのですが、誤って必要以上のカルシウムが排出される事はなく、カルシウム濃度が高い状態では骨からのカルシウムの取り出しも行われない事から骨粗鬆症が悪化する事は考えられない事が判ります。

 牛乳の普及が進んでいる国では股関節の骨折が多く、普及がそれほどでもない日本では少ないとされますが、畳の生活で上下動が少なく、直に座る事による股関節の強化をはじめとする生活習慣の違いや、魚食をはじめとする食生活を考慮に入れると単純な比較はできないようにも思えます。

 牛乳には母牛のホルモンが含まれる、もしくは搾乳期間を少しでも長く、乳量を多くするために投与したホルモン剤が含まれていて、それが健康や子供の成長に悪影響を与えるともいわれます。

 ホルモン剤、特に人工的に合成されたホルモン様剤は微量でも影響が及ぶことがあるので、もっともらしく思えてくるのですが、かつて日本が子沢山だった頃、授乳期間中に次の子供を妊娠してしまったり、乳量が多い母親のために年長の子供が母乳を飲んでいるという話はよく聞かされ、人そのもののホルモン濃度が高まった母乳に接していても影響はなく、必要な期間を過ぎた後でも問題はないという事ができ、種が異なる牛の母乳の場合、より影響は少ないと考える事ができます。

 さまざまな角度から眺めてみて、飲用するかどうかは個人の好みの問題として、少なくとも有害論が唱えられるほどの事はないように思えるというのが現在の結論で、これから新たな何かが見付かるのかと興味深く思えています。


 

第2115回 有害論?(1)



 最近、それほど遠くない場所にディスカウントのドラッグストアができた事もあり、牛乳が安価に手に入るようになっています。コンビニエンスストアへ行くとPB商品として価格も手頃で、パッケージがお洒落な商品もあり、牛乳を購入する機会は増えてきているのですが、料理に使うだけで直接飲むという事は減ってしまっている事に気が付きます。

 牛乳の飲用に関しては以前から有害論の存在が気になっていて、情報を集めてはみるのですがどれも説得力に欠ける気がして、いま一つどのように結論付けて良いものかと悩んでしまいます。

 特に個人がインターネットを通じて情報配信を行うようになってから、ページ内で牛乳有害論を展開される例が多く、それだけ熱心に訴え掛けられているのだからそれだけの何かがあるのだろうと考えています。

 牛乳を飲んではいけないとする根拠の一つに、牛乳は幼牛のための物で、幼くもない成長した人間が飲むべきではないとするものがあり、成長しても乳を飲み続けるのは人間だけだといういい方もされます。一見、もっともなようにも思えるのですが、成長期にのみ有益で成長した後は害となる成分が含まれているのだろうかというと、そうした成分に関する言及がなく、根拠について考えさせられてしまいます。

 牛乳を飲むとアレルギーを助長し、アレルギー体質になるという意見も聞かされたのですが、牛乳自体がタンパク質を多く含む事からアレルゲンとなって牛乳アレルギーを起こす事は考えられても、牛乳以外の物質のアレルゲン化を促してアレルギーを誘発する事は考えにくく、あまり説得力を感じる事ができません。

 牛乳の一人当たりの摂取量が最も多い北欧で骨粗鬆症が多いという事については、牛乳の消費量よりも日照不足によるビタミンDの不足の方が関係しているように思えて、牛乳のせいではないように思えます。

 また、牛乳が今ほど普及していなかった頃の日本では、骨粗鬆症の患者はいなかったとされる事についても、昔話や古い文献に登場する高齢者の特徴として、腰が曲がって杖を突き、身長が縮んでいるという骨粗鬆症の特徴とも取れる姿をしていて、骨粗鬆症が病気ではなく加齢に伴う変化と捉えられていただけという事もできます。

 牛乳は血液から作られ、血液と同じ成分だから飲むべきではないという事に関しても、血液からではなく血液によって運ばれてきた栄養素によって作られるというべきであり、血液を口にするべきではないのであれば本場ドイツのソーセージも食べるべきではない物となってしまいます。中には酵素の働きを使って赤い色と血生臭さを抜いて乳として分泌されるというものもあり、あまりの事に驚かされてしまいます。

 それほど牛乳についてヘビーユーザーという訳でもなく、飲用に関して肯定的でも否定的でもないのですが、議論の結論を見たくて、気にしている事の一つとなっています。


 

第2114回 猫まんま(2)



 マグロといっても種類によって水銀の汚染度合が違うとされ、妊婦に対し一食分を80gと仮定して、週に一回以下の摂取に抑えるように推奨されているのはクロマグロ、メバチマグロ、メカジキとなっています。週に二回以下のグループにはマカジキとミナミマグロが含まれ、日本でツナ缶の原料として使われる事が多いキハダマグロは少ない部類に入れられています。

 人間用のツナ缶であればキハダマグロと原料であるマグロの種類までラベルに記載されているのですが、猫缶ではただ単にマグロとだけ記載されているだけで、マグロの種類を詳細に知る事はできません。

 個人の立場から猫缶の水銀含有量を調べたという方の資料を見せていただいた事があるのですが、その資料では意外と水銀の量は少なくなっていていました。水銀量が少ない種類のマグロが使われているのか、加熱によって水銀が気化したのか、マグロ以外の魚や鶏肉も使われているために結果的に水銀の比率が下がってしまったのかは不明という事でしたが、すべての製品が同じ傾向にあれば少しは安心と思えてきます。

 マグロにはセレニウムが多く含まれ、水銀の毒性を中和してくれるともいわれ、水銀と一緒にセレニウムを摂取する事で高濃度の水銀汚染が行われていても中毒症状が発生しにくくなるというレポートもあるのですが、それをもって安全と結論付けるのは難しいようにも思えてきます。

 また、猫缶には内側からの金属の腐食を防ぐためのコート剤からにじみ出す溶剤によって甲状腺機能亢進症を誘発するという懸念もいわれていて、水銀以外の部分も心配になってきます。

 日頃から与えているドライフードにしても本来ならば猫が口にする事のない穀物が中心となっている事から、炭水化物が過多となり、尿路結石や慢性腎不全、糖尿病などに繋がるとも考えられる事から、それだけで済ませる事には大いに不安があります。

 排出された毒素が再吸収されないように繊維質を増やしたり、小魚由来のタンパク質を増やしたりと、自分の食事よりも気を使う場面が増えてきています。猫も私の事を気にしてくれているように感じられる事も多いので、お互いに持ちつ持たれつという関係が成り立っているのかもしれません。


 

第2113回 猫まんま(1)



 我家の猫は食にあまり興味を示さず、人の食べ物にもほとんど関心を持ちません。私が何かを食べようとすると、それが何か確認に来るのですが、匂いを嗅いで安心すると去って行ってしまいます。二人の共通した食べ物といえばカタクチイワシのいりこと食パンくらいのもので、食パンは珍しく匂いを嗅ぎながら一口だけ噛み千切って小片を食べてしまいます。

 猫専用のドライフードが基本的な食事となっているので、時折銘柄を変えたり、ウェットフードをおやつとして与えたりして飽きないようにしているのですが、なかなか気に入った物が見付からず、気に入ってくれないと食べてくれません。

 そんな猫が最近、とても気に入ってくれた猫缶があるのですが、猫缶についてとても気になる事があるので、毎日食べさせてやる事ができずにいます。

 外国へ行くと猫用の缶詰のフードは肉が主流で魚の物は少ないとの事ですが、日本では魚が主流となっていて、魚以外では鶏肉のササミが中心となっています。

 以前、調べたところでは、猫缶は人間用のツナ缶を作る製造ラインの横で作られていて、マグロをさばいて人間用に使う部分を除いた後の部位を使って作られているとの事で、日本国内の製造工場よりもタイなどの工場の方が設備が充実していると聞かされています。

 大手メーカーの猫缶は、人間用とほぼ同じ製造ラインで作られている事から安全性は高いとされますが、原材料となるマグロの方に水銀による汚染という心配が出てきていて、猫という解毒力が弱く、毒素を体外へ排出する事が苦手な生物に水銀汚染の心配がある物を与えてよいものかと悩んでしまいます。

 アメリカ、次いで日本でも妊婦や小児のマグロをはじめとする一部の魚種の摂取量を少なくするように薦める報告が行われ、当初はツナ缶はその中に含まれていませんでしたが、後にアメリカではツナ缶もリストに含まれるようになっています。

 汚染の元となっている水銀については、自然に循環している水銀がプランクトンから小魚、小魚から大型の捕食魚へと生態濃縮されていくために、大型の魚ほど汚染が進んでいるとされ、食物連鎖の頂点に近い魚種ほど体内での水銀の濃縮が多くなる傾向があるとされます。

 水銀の出所についても常温で気化しているものが雨によって流され、海へと辿り着くとする意見もありますが、かつて使われていた有機水銀を含む農薬の影響とする意見もあり、汚染された土壌から浸み出す水銀は、これからも長い期間に渡って海を汚染し続けるともいわれます。

 水銀の汚染がいわれはじめた頃、ツナ缶はマグロの身を高温で処理するために、常温以上では気化してしまう水銀は一気に気化されてしまい、残存量が僅かとなっているともいわれていましたが、メチル化した水銀はタンパク質としっかりと結合し、筋肉などの組織の中に蓄積していて加熱くらいでは含有量はほとんど変わらないとされ、実際、後にリストに加えられている事からも、業界団体からの圧力によって当初はリストに加えられなかったという事に変なリアリティを感じてしまいます。

 体重比で考えると猫は人間の10分の1の大きさしかなく、その割には猫缶で食べるマグロの量は多くなっています。解毒力が弱い事を考えると、食べさせられる量や頻度はかなり少なくなり、あまり食べさせられないと思いながら、楽しみにしている姿を見ると胸が痛んでしまいます。


 

第2112回 Dの働き



 ビタミンとは健康を維持する上で欠かせない物でありながら、体内で合成する事のできない微量元素とされる事から、体内で合成する事のできるビタミンDはどこか異色の存在のようにも思えます。しかし、消化吸収によるビタミンDの吸収量が低下すると、すぐにビタミンDの欠乏症を起こしてしまう事から、ビタミンDは不可欠な存在としてビタミンの仲間入りをしています。

 ビタミンDは皮膚を紫外線に当てる事によってコレステロールから合成され、羽毛や毛皮を持たない人間の場合、陽射しが強くなる午前10時から午後3時に10分程度の日光浴を週に2、3回も行えば充分な量を合成する事ができるとされます。

 最近では紫外線の有害さがいわれるようになった事もあり、日光を避けたり日焼け止めによって皮膚の内部に届く紫外線量を少なくする工夫が行われたり、ビタミンDを多く含む食材を食べる機会が減ったりして、ビタミンDは不足する傾向があるとされます。

 従来は腸管からのカルシウムの吸収を助け、体外へのカルシウムの排出を抑え、血液中のカルシウム濃度を一定に保つなどの働きがいわれていたビタミンDですが、最近になってそうしたカルシウムに関わる働き以外の事が知られるようになってきています。

 先日行われた研究では、結核の治療に高濃度のビタミンDを併用する事で大きな効果が上げられる事が判っていました。結核患者95人を対象に行われた研究では、治療開始からの最初の8週間に高濃度のビタミンDを投与するグループと偽薬を投与するグループにランダムに分け、経過を観察しています。

 その結果、ビタミンDを投与されたグループでは、体内の炎症反応を示す血液中の数値が急激に低下し、痰に含まれる結核菌も短期間に消失した事が確認され、顕微鏡で結核菌の存在が確認できなくなるまでの日数が偽薬グループが36日掛かった事に対し、ビタミンDグループでは23日であった事が確認されています。

 今回の研究でビタミンDが体内の炎症反応を速やかに抑えた事が判り、結核において患者に大きなダメージを与える肺組織の炎症反応を抑えるという、極めて重要な働きがある事が判ってきています。

 結核に限らず、疾病の末期に肺炎を併発して命を落とす例は良く聞かされます。今後、ビタミンDによって肺の炎症を抑える事ができれば、最終的な病名が肺炎という事も少なくなると考えられます。脂溶性ビタミンである事から、過剰症の兼ね合いもあり、今後、最適な容量も含め研究を進めてほしいと思ってしまいます。


 

第2111回 乳酸菌の力



 ナイシン、最初にその名称を見た際、ビタミン類のナイアシンの間違いではないのかと思ってしまった事が思い出されます。ナイシンはアミノ酸が複数に連なったペプチドと呼ばれる物の一つで、34個のアミノ酸からなるペプチドであり、乳酸菌の一種である「ラクトコッカス・ラクティス」が産生する物質として乳酸発酵によって作り出されています。

 日本では乳酸発酵が古くから食文化に採り入れられていて、代表的なところではなれ寿司や漬物、味噌やしょうゆなどに利用されてきています。乳酸発酵を行う事で風味や旨味が増すだけでなく、保存性が高まるという事も乳酸発酵が利用されてきた理由として上げる事ができます。

 乳酸菌は糖分を分解して乳酸と二酸化炭素を大量に発生させ、乳酸の働きによって食品を酸性にする事で腐敗菌や病原性菌の発生を抑えて、食品を安全に食べる事ができる状態を長持ちさせてくれます。乳酸菌の食品の保存性を高める働きは乳酸のみではなく、乳酸以外の物質も関与している事が知られるようになり、ナイシンは乳酸菌が創り出す抗菌物質として知られています。

 乳酸菌由来という事から乳製品との相性が良い事もあり、ナイシンはチーズやクリーム類などの保存料として使われ、多くの国で食品添加物として認可されています。日本では2007年に新たに認可されるようになり、それまでナイシンを含んでいるために輸入できなかった乳製品が輸入可能となり、これまで認可されていなかった添加物を含む食品が出回るようになったとして、攻撃的な論調の情報が多く出回った事は記憶に新しいところとなっています。

 最近の研究でナイシンの新たな効果として、ガン細胞に対して選択的に働き掛け、細胞死を誘発させるという抑制作用を持つ事が判ってきています。

 ナイシンをガン細胞に加えると細胞死に関する特殊なタンパク質が増加し、細胞内へのカルシウムの流入が増えて細胞死が誘導されます。健康な細胞ではなくガン細胞のみに選択的に働き掛ける事については、細胞がガン化した事によって細胞膜が変化し、ナイシンが作用しやすい状態が作られていると考えられています。

 ナイシンはすでに食品添加物として認可されている事から、今後、人への応用を含めた研究が進めやすい状態にあるとされ、新たな抗ガン剤の登場も近いと思えてきます。

 ナイシンは構造が複雑過ぎる事から、乳酸発酵によって作られたものを抽出するしか得る方法はありませんが、ヨーグルト作りと合わせてガン治療が進むというのも良いものだと思えてしまいます。


 

第2110回 妖しき緑光



 以前、蛍光灯の光を受けてぼんやりと光を放つというガラス玉を持っていました。捨てた覚えはないので、今もどこかにあるとは思うのですが、途中に引っ越しがあり、多くの荷物がその際に消失している事から、無くなってしまっている可能性も高いかと思っています。

 一度も光を放つところを見た事がないのですが、今ならブラックライトを持っているので、ブラックライトの暗がりの中で緑色の独特な光を放つようであれば、あの玉はウランガラスでできていたと確認する事ができると考えたりもします。

 ウランガラスはガラスに微量のウランを混ぜる事で黄色や緑色の着色を施した透明なガラスで、1830年頃からウランが原子力の燃料として本格的に利用されるようになる1940年代頃まで、コップや花瓶、アクセサリーやオブジェなどとして盛んに作られていました。

 現在のチェコにあたるボヘミア地方で発明されたとされ、当初はボヘミアの特産品的な商品として盛んに作られていましたが、その後イギリスやフランス、ドイツ、ロシア、イタリア、スウェーデン、フィンランドなどでも作られるようになり、現在ではアメリカとチェコで少量が収集家向けに作られているとされ、市場に出回っているウランガラス製品の多くは骨董品であるとされます。

 日本でも大正から昭和にかけて国産化され、食器やガラス工芸品として大量に製造されています。蒸気機関車や電車のヘッドライトに使ったり、日常的な食器なども作られていましたが、第二次世界大戦を境に作られなくなっています。今日では天然ウランの産地として名高い人形峠の特産品として製造されるようになり、アンティークではない国産品のウランガラスを見る事ができます。

 ウランガラスの発明は1830年頃とされますが、1世紀頃のナポリ近郊では1%程度の酸化ウランを着色料として混合したガラスが作られており、その意味では1830年代の発明は再発見という事ができます。

 ウランガラスの最大の特徴は紫外線に当てると緑色の蛍光を放つという事で、可視光線を抑えて紫外線を照射するブラックライトで照らすと暗がりの中で妖しい光を放ってくれます。製品によっては緑色や黄色以外の色の物が存在し、水色や茶色、ピンク色などのウランガラスも存在しますが、全ての製品に紫外線を照射すると元の色に関わらず緑色の蛍光を放つ事となり、それを使って見分ける事ができます。

 最も盛んに作られていた頃、ブラックライトや蛍光灯はありませんでしたが、夜明け付近の青みが増してきた空には紫外線が満ちている事から、夜明けが近付くと妖しい光を放つウランガラスは神秘的に見えた事と思います。

 アンティークとなると敷居が高く、縁遠い物となってしまいますが、ウランガラスの製品が手に入る、もしくは無くなったと思っているガラス玉が出てきたら、今度こそは妖しい光を確認してみたいと思っています。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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