第2158回 桜への想い



 今年は例年になく暖かい春となり、早々に桜が満開の時を迎えてしまいました。各地で予定していたイベントの日程が間に合わないという声が聞かれ、南阿蘇も毎年開かれる桜祭りの頃には葉桜となっているものと思われます。

 それでも日程を決め、村の行事として予算も計上している事から祭りは実行され、花もないのに桜祭りという不評を受ける事になるのかと、行われる前から少々気の毒になっています。

 今では花見といえば桜の花を愛でる事となっていますが、当初は桜ではなく梅の花が愛でられていました。宴を伴う行事としての花見の始まりは奈良時代にまで遡るとされ、当時、中国からもたらされたばかりの梅の花を愛でる会となっていました。

 その事を裏付けるように万葉集に収められている歌のうち桜を詠んだものは40首ほどである事に対し、梅について詠んだものは100首と多くなっていますが、後の時代に編纂された古今和歌集ではその数が逆転し、同時に花というと桜の花を指すようになっている事が伺えます。

 徒然草にも片田舎の花見に関する記載があり、鎌倉時代の末期から室町時代には中央の公家だけの催しではなく、地方都市にも広く花見が普及していた事が判り、江戸時代に入ると庶民の行楽として定着する事となります。

 花見や開花宣言となると桜の代表としてソメイヨシノに注目が集まります。植えられた地域の気候に左右されますが、同じ地域や気候帯に植えられたソメイヨシノはほぼ一斉に開花する事が知られ、その理由としてソメイヨシノが種によって増えた家族ではなく、接ぎ木によって増えたクローンであるという事ができます。

 また、クローンである事から全国的に一斉に寿命を迎えつつあるともいわれ、場所によっては他の品種の桜に植え替えるなどの措置が採られ、その際、品種の違いによっては花の時期がずれてしまう事もあり、花見が行える時期を長くしているともいわれます。

 桜の魅力の一つに、さっと潔く散ってしまう儚さを上げる事があります。人の手によって全国に植えられたソメイヨシノが一斉に寿命を迎えてしまう。そんな儚さを思うと、残り少ない花見の機会を逃さないようにとも思えてきます。


 
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第2157回 長期の糖質



 最近の商品の特徴の一つとして「糖質○○%オフ」というものがありました。糖質の摂取量を制限する事でダイエットを行うアトキンスダイエットが話題となって以降、糖質を制限してタンパク質を多く摂る事はダイエットの基本的な考え方のようにもなってきていました。

 また、ダイエットに限らず血糖値が高めの人が糖質の摂取量を制限する事で、健康状態を改善するという試みも行われ、効果があるとされていました。

 少し悪者視されはじめたものを感じてしまう糖質ですが、長期的に摂取量を制限し続けた際の影響については結論が得られておらず、長期に渡る糖質の摂取制限は死亡リスクを高めてしまうとする研究もあり、糖質に対する接し方を見直す必要がある事も感じられてきています。

 そんな中、「極端な糖質制限食は勧められない」とする声明が日本糖尿病学会から出され、糖質の摂取制限に関する事情は微妙なものを感じるようになっています。長期的な影響を調査した研究が欠けているために、「現時点では」という一文が添えられていますが、主食である糖質さえ制限すれば他の栄養素である脂質やタンパク質は無制限という誤解が生じ、特に脂質の摂取量が懸念される今日では肥満を助長してしまう事も声明の背景にはあるとされます。

 何らかの栄養素を制限して日常的なバランスを欠き、一時的にダイエット効果を上げる手法はこれまでも繰り返し見られてきました。それが長期に及んだ場合の影響に関する研究は進んではおらず、糖質制限食にも同じ事がいえます。流行り始めの頃に見せられたパン抜きのハンバーガーのような不自然な食べ物がまかり通るのは、やはり何処かおかしいようにも思えてきます。


 

第2156回 糖分リスク



 世界中で年間18万人が命を落とすといわれると、かなり深刻な病気のように思え、世界的な規模となる事から何らかの感染症をイメージしてしまいます。しかし、18万人もの人々の命を毎年奪っているのは細菌でもウィルスでもない、身近な存在の清涼飲料水に含まれる糖分とされています。

 米国心臓協会によると炭酸飲料やスポーツ飲料、果汁などのフルーツ飲料に糖分を加えた加糖飲料は世界中で身近な存在として親しまれており、日常的に飲用する事で過剰な体重増加を引き起こして糖尿病や心臓病、一部のガンなどのリスクを増大させいるとされます。

 昨年発表された論文では、日常的に加糖飲料を飲み続ける事で体重の増加や肥満を引き起こす遺伝子異常が誘発されるとされ、糖分が遺伝子レベルで肥満を引き起こしている事が示唆されています。

 それを踏まえた上で加糖飲料が肥満や糖尿病に関連した死亡に与える影響を解析したところ、全世界で1年間に起きた加糖飲料関連死は約18万人という推計が出されました。18万人のうち13万3000人が糖尿病、4万4000人が心臓病や動脈硬化などの心血管障害、6000人がガンによる死亡とされています。

 国民1人当たりの加糖飲料の消費量が最大とされるメキシコでは、加糖飲料が原因として考えられる死者が100万人当たり318人とされ、最も消費量が少ない日本の100万人当たり10人の約30倍にも上っています。

 今回の発表に対し米国飲料協会は声明を出し、研究自体の根拠の乏しさを上げて反論しています。どちらの主張を信じるべきかと思いながら、アメリカのファーストフード店で見たドリンクのセットを注文すると大きな空のカップが渡され、それを客がドリンクマシンから好きなだけ注ぎ、その後のおかわりも自由という光景を思い出し、程度問題のようにも思えてきてしまいます。


 

第2155回 分解と不快



 先日、珍しく夜の街を歩いていて物凄く酒臭い若い女性とすれ違い、時代は変わったという気がしていました。本人にはそれほど酩酊しているという感じではなかったのですが、他人事ながらあれだけの状態だと次の日まで大変なのではと思えてきます。

 個人差によるものが大きいとは思いますが、酒を飲む人のほとんどが二日酔いを経験するとされます。昔から著名な人々による二日酔いを後悔する名言はたくさん残されていますが、なくなる事なく繰り返される事には、後悔先に立たずの典型例なのかもしれないという事もできます。

 サプリメントの開発を行っている知り合いから、二度ほど二日酔いを防ぐ、不快な症状を軽減するという開発中のサプリメントを見せられた事があるのですが、いまだに製品化されていないという事は効果を生じさせる事が難しいのか、需要が見込めないのかと考えてしまいます。

 不快な症状が発生して初めて後悔する事から、事前に備えておくという事は難しいのかもしれませんが、最近注目されているナノ技術を使った新たな手法で二日酔いの予防に効果的な新薬が登場する可能性がいわれるようになってきています。

 共に働く酵素は細胞内で近い位置にある事にヒントを得た今回の研究では、アルコールを分解するアルコール酸化酵素とアルコールの分解によって生じ、有害な副産物となっている過酸化水素を分解する酵素、カタラーゼをナノ粒子内に閉じ込めるという試みが行われています。

 複数の酵素を微粒子の中に閉じ込めるという研究はこれまでも行われていますが、粒子内に閉じ込める酵素の数や比率、配置などを制御する事は困難となっていました。そのため今回の研究ではそれぞれの酵素の働きを阻害する薬剤をDNAで連結させたものを使い、酵素の量や比率、配置を固定化させるという手法が採られています。

 量や比率、配置を固定させた後、水に溶けるポリマーでコートして阻害薬をDNAで連結したものを取り除く事によって「ナノ粒子固定化酵素複合体」と呼ばれる薬剤が作り出されるのですが、飲酒後の服用で速やかにアルコールが分解される様子が観察されています。

 残念なのはコート剤のポリマーに発ガン性が懸念されているアクリルアミドが使われている事から、安全性に対する疑問が払しょくできない事やアルコールを速やかに分解する事はできても、副産物として生じ、二日酔いの際の頭痛の原因となるアセトアルデヒドを分解する酵素は扱いが難しい事から含まれていないため、頭痛を感じる時間の訪れが早くなってしまう事が考えられます。

 まだまだ先は長そうに思えながら、一番の二日酔いの予防法は適度な量を守るという簡単な方法にある事を考えると、最新テクノロジーを使った最先端の研究にも微妙なものを感じてしまいます。

 

第2154回 現代にあらず?



 現代特有の病といわれると、物質的に豊かになり、その反面精神的なストレスは高い状態が続く事からくる生活習慣病が思い浮かんできます。生活習慣病の典型的症状となると糖尿病や高血圧、動脈硬化などが上げられるのですが、その中で少なくとも動脈硬化は現代病の生活習慣病ではない事が示唆されています。

 古代人の遺体を当時としては可能な限り最良の方法で後世に残したものとしてミイラの存在があり、ミイラというとエジプトのミイラが特によく知られています。そのエジプトのミイラにも動脈硬化の形跡が見られ、少なくとも古代にも動脈硬化が存在していた事が判ります。

 エジプトにおいてミイラとして保存されるのは非常に高貴な人に限られ、贅沢な生活が可能であった事から現代病を発症する可能性がある生活を送っていた事も考えられます。そのためエジプト以外の地域のミイラも同様の手法で分析する様にして、地域的、文化的、歴史的な影響を考慮に入れた研究が行われています。

 紀元前3100年~紀元384年の古代エジプト人、紀元200年~1500年の古代ペルー人、紀元前1500年~紀元1500年の古代プエブロ人、紀元1756年~1930年のアレウト族とそれぞれ時代や地域が異なる137体のミイラを対象にCT(コンピューター断層撮影装置)を使って全身の観察を行ったところ、動脈の壁に石灰化した脂肪やカルシウム、細胞の死骸などでできた塊であるプラークが観察され、時代を問わず動脈硬化が存在していた事が判ります。

 それらは生活背景よりも年齢による影響が大きい事が示され、動脈硬化が見られないミイラと動脈硬化が見られるミイラの平均年齢の差は10歳ほどとされています。動脈硬化が見られたミイラの中でも、年を重ねるほど症状や発生個所が顕著になる事から、動脈硬化は加齢に伴う症状という見方をする事もできます。

 4つの地域ではそれぞれ主食となる穀類や生活習慣が全く異なっていて、生活習慣が動脈硬化を発症させているのではない事が理解できます。現代においては人は血管と共に年を取るといわれますが、それは古代においても変わらない普遍的な事であったという事なのかもしれません。


 

第2153回 蔓延の理由



 以前、大好きなスティーブ・マックイーンの映画を見ていると、村に招かれた主人公のガンマンが食事会に招待され、そこで初めてロブスターを見るシーンが出てきました。初めて見る大きなロブスターに主人公は「大きな南京虫かと思った」とコメントするのですが、現代の私たちから見るとロブスターの姿はよく知っていても、南京虫は見た事がない事からちょうど逆の立場になるのだと興味深く感じられた事が思い出されます。

 南京虫は正式にはトコジラミと呼ばれ、すでに過去の衛生状態が思わしくなかった頃の存在としか思えないのですが、密かに世界的に蔓延してきているとされ、アメリカなどの先進国でも公衆衛生上の大きな問題となってきているとされます。

 今頃になって発生し、蔓延している事については人が手助けした結果ともいわれ、殺虫剤が効かないものも見られるようになってきている事から、事態の深刻さと対処の難しさが感じられてきます。

 各地の都市からトコジラミを集め、遺伝子を解析して現在主流となっているピレスロイド系の殺虫剤に対する耐性を確認したところ、すでにピレスロイド系の殺虫剤に対して高い耐性を獲得している事が確認されています。

 ピレスロイド系の殺虫剤は人やペット、家畜に対して比較的安全とされ、殺虫効果が優れているとされるだけでなく、価格も安価な事からトコジラミをはじめとした多くの害虫の駆除に使われる中心的殺虫剤となっています。そうしたピレスロイド系殺虫剤の多用がトコジラミの耐性獲得に繋がったと考える事ができ、トコジラミの蔓延を招いたという事もできます。

 トコジラミが獲得した耐性は二系統に分かれ、一つはピレスロイド系殺虫剤から身を守る堅牢な鎧を得た事で、殺虫剤が体内に染み込まないようにする事で殺虫効果を無効にしています。もう一つは体内に侵入したピレスロイドが殺虫効果を発揮する前に、毒性を中和してしまうというもので、興味深いのは遠く隔てられた地域のトコジラミが同じ耐性を獲得していた例も確認されている事です。

 本来であれば到底トコジラミの移動が不可能な距離にある地域での同じ耐性獲得に繋がる遺伝子の発現は、人の移動、特にトコジラミの移動に唾がる家具などの移動によって耐性を獲得したトコジラミを拡散させ、駆除できないトコジラミの蔓延を手助けした結果になった事を物語っています。

 今後は耐性を更に詳しく研究する事で、獲得した耐性を無効化する駆除方法の開発が行われると同時に、耐性が発言した時期を特定し、トコジラミの進化の速度についても解明される事が期待されています。

 トコジラミに限った事ではありませんが、薬剤に対する耐性の発現には腸内細菌が関わっているとする意見もあり、細菌の進化となると圧倒的な速度であるとされる事から、トコジラミとの闘いも困難を極めるのかと少々悲観的な未来を想像してしまいます。


 

第2152回 ハムリスク?



 サンドイッチを作る際、茹でた卵を潰して作る卵サンドとハムと薄切りにしたキュウリを使った二種類は、定番のサンドイッチという感じで必ず作るようにしています。

 ハムは市販の薄くスライスされたロースハムを使っていたのですが、添加物として硝酸ナトリウムが加えられている事が少し気になっていました。

 以前、硝酸ナトリウムが加えられていないというハムが売られているのを発見し、ハムへの硝酸ナトリウムに添加は法律で決められているのではと疑問に思いながら購入して使ってみたのですが、普段使っている物よりも色合いが白っぽく、一枚ごとに取り出す際にボロボロと破けてしまう事に、発色剤や結着剤、抗菌剤という役割を持つ硝酸ナトリウムの働きを思ってしまった事が思い出されます。

 硝酸ナトリウムの存在に限らず、あまり健康的なイメージで捉えられないハムなどの加工肉ですが、日常生活での摂取量が増えるごとに死亡リスクが向上するというありがたくないデータが公表されていました。

 ヨーロッパで23の施設を訪れた人の中から調査に協力しても良いと登録してくれた健康な44万8,568人を約13年間に渡って追跡調査を行い、牛や豚、羊、馬、山羊などの赤身肉、ハムやベーコン、ソーセージといった加工肉、鶏や七面鳥、アヒル、カモ、ウサギなどの白身肉の摂取量と健康状態について検討を行ったところ、赤身肉と加工肉を多く摂る事によって死亡率の高まりが確認され、特に1日に160g以上の加工肉を摂取するグループにおいて摂取量が30g増えるごとに死亡率が18%ずつ上昇するという傾向が確認されています。

 加工肉は赤身肉や白身肉に対して塩分や化学調味料、保存料などが多い事や脂肪分が多く、赤身肉や白身肉が調理する事で脂肪分が落ちてしまう事に対し、ソーセージなどの加工肉は脂肪分が残される事、加工時に脂身を加える事から50%近くも脂肪分である事が珍しくない事などが死亡率を胃高める理由として上げられますが、加工肉を多用して赤身肉や白身肉を利用しない食生活を送るという事は、食習慣の悪化を示していて、そうした習慣的な事が死亡率を高めているという意見もあります。

 今後、さまざまな要因を考慮しながら検討が重ねられる事となるとは思われますが、1日に160gも加工肉を食べるというのも大変な食生活のように思えてきます。


 

第2151回 健康寿命



 男性70.42歳、女性73.62歳。世界的な長寿国として知られる日本の平均寿命よりも10歳ほど若いこの年齢は、日本における「健康寿命」とされています。長生きという概念が介護を受けたり、寝たきりとなってただ年を重ねるだけでなく、自立して健康に生活ができる状態と捉えられるようになるにつれて健康寿命が注目を集めるようになってきています。

 日本は過去20年に渡って世界一の長寿国という地位を維持し、今後もそれが続くと考えられています。高い平均寿命を背景に健康寿命も高い水準を示しているのですが、平均寿命と健康寿命との差となる10年ほどの時間は、何らかの介護などを必要とする一人の力だけでは生活を維持する事が困難な時間という見方もできてしまいます。

 最近行われた調査で偏った食事や精神面に影響を与えるストレスの存在、喫煙の習慣などの問題を残したまま高齢化が進めば、平均寿命と健康寿命の差は広がり、長生きすればするほど病気や障害に苦しめられる時間が長くなるという悲劇的な未来への継承が鳴らされていました。

 東京大学や米国のワシントン大学などが共同で行ったプロジェクト、「世界の疾病負担研究(GBD)」によると日本の高齢者における死亡と障害の主な原因は脳卒中であり、次いで腰痛、心筋梗塞などの虚血性心疾患、肺炎などが上げられていて、20年以上も増加を続ける自殺も重要な健康上の負担要因とされています。

 脳卒中や心筋梗塞などは生活習慣に関係した部分が大きく、また高齢者のメンタルなケアも今日の難しい課題となっています。有効な対策が遅れたまま過去に例がないといわれる高齢化社会を迎えてしまう事は、社会全体の幸福感を低下させてしまう事にも繋がってしまいます。

 QOL(生活の質)が意識されるようになってきた昨今、健康寿命についてもしっかりと考えておかなければと思えてきます。


 

第2150回 馬肉食



 当地熊本の名物の一つに「馬刺し」があります。街中へ行くと専門店も存在し、居酒屋などでもメニューとして取り扱いのある店も多く見掛ける事ができます。子供の頃は苦手ではなかった事もあり、普通の刺身の一種として接していて、冬場に馬の筋肉が手に入ると柔らかく煮込んでおでんにしていた事もあり、馬肉を食べるという事は特異な食文化という意識は全然ありませんでした。

 その後、馬肉がそれほど一般的な食材ではない事を知るのですが、馬刺しの存在が全国的に広まっていった事もあり、熊本といえばという感じで話題を振られる事も多くなっています。

 熊本と同じく馬肉を食べる食文化を持つ地域として長野県があります。長野県、特に伊那市や飯田市、上田市などには馬の腸を使った郷土料理の「おたぐり」があり、たぐり寄せるほど馬の長い腸を使うという事でその名が付いているそうですが、馬肉料理が食文化に根差している様子を伺う事ができます。

 同じく馬肉を使う料理としては秋田県の発祥とされますが、北海道の空知地方の郷土料理となっている「なんこ鍋」があり、馬の肉や腸が味噌で煮込まれた素朴な鍋料理となっています。現地では「なんこ」というと馬の内臓を指すほど定着した食材となっているといいます。

 一部には定着しながら全国的にはそれほど例が見られない馬肉食ですが、最近、長野が長寿日本一となり、長寿の食文化として馬肉が注目された事から、全国的に更に広まっていくのではと思えます。

 馬肉は牛肉や豚肉と比べてカロリーが低く、良質なタンパク質に富んだ食材となっています。通常の馬肉であれば高タンパク低脂肪で、必須脂肪酸も豊富な食材なのですが、最近は牛肉の影響で霜降りの馬肉を見掛ける機会も増えてきました。

 本来、馬肉には脂肪が付きにくく、筋肉の繊維内に脂肪が入り込んだ霜降りの状態にはならないため、霜降りの馬肉を見るたびにどのような育て方をしたのかと思えてきます。せっかくのヘルシーな食材なだけに、できるだけ自然な状態で食べてほしいと思ってしまいます。


 

第2149回 感染るんです?(3)



 狂牛病に良く似た自己触媒型の神経変性症というと、「クロイツフェルトヤコブ病」が広く知られています。頭部の手術を行った際、縫合に使用してヒト乾燥硬膜を移植された多数の患者の中から不随意運動と急速に進行する認知症が見られ、発症後、1~2年ほどで死に至る怖ろしい病として奉告されているクロイツフェルトヤコブ病は、ヒト乾燥硬膜に含まれていた異常型のプリオンが原因として引き起こされるプリオン病として知られています。

 ヒト乾燥硬膜を介して体内に入り込んだ異常型のプリオンが引き金となってクロイツフェルトヤコブ病が発症するのであれば、同じく自己触媒型の神経変性症の一つであるアルツハイマー病も同じメカニズムで感染するのではないか、一抹の不安が過ぎってしまうのですが、その心配はない、そういっても差し支えのない研究結果が報告されています。

 クロイツフェルトヤコブ病は人の乾燥された硬膜を開頭手術によって移植するという、日常生活ではありえない経路によって感染が起こっており、おそらく経口感染は起こらないというか、人の硬膜を口にする事自体がありえない事なので、極めて特殊な状況下において感染が行われたという事ができます。

 アルツハイマー病においてそうした特殊な状況が起こった場合、感染が引き起こされるのかについて先日行われた研究は興味深い結論を導き出していました。

 アメリカでは1963年から死後の脳下垂体由来の成長ホルモンの注射が行われていました。1985年に遺伝子工学によって作り出された成長ホルモンが登場するまでの約20年間に渡って7700人ほどのアメリカ人が注射を受けたとされ、そのうちの200人以上がクロイツフェルトヤコブ病を発症したとされ、脳下垂体提供者にクロイツフェルトヤコブ病患者が含まれていて、死後下垂体由来の成長ホルモンに異常型のプリオンが混入していた事が原因として考えられています。

 そうした事態を受け、その後30年に渡って追跡調査が行われた結果として、クロイツフェルトヤコブ病を発症した人はいてもその他の自己触媒型神経変性症を発症した人がいない事から、クロイツフェルトヤコブ病以外の神経変性症に関わる異常型のプリオンには感染性がないという結論が得られています。

 アルツハイマー病を引き起こす異常型のアミロイドタンパク質に感染性がないという事は一安心という感じがするのですが、そうなると異常型のアミロイドタンパク質はいつ、どこからやって来るのか、新たに気になる事が増えてしまったようにも思えてきます。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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