第2377回 治療と抑制
先日、子供の気管支喘息の治療に広く使われているステロイド剤について、気になるニュースが報道されていました。ステロイド剤の使用によって、子供の身長の伸びが抑えられるという副作用の懸念があるとして、より慎重に使うように注意喚起が行われています。
小児喘息は15歳以下の子供の20人に1人の割合で、0~1歳までの乳幼児に発症例が多いとされます。アレルギー反応によって気管支に炎症が起こるのが原因とされ、激しい発作が治まった後も炎症が続く事から、治療は長期間に渡り、根気が要るものとなっています。
治療の際に良く使われているのが吸入型のステロイド剤で、吸入した薬剤を直接炎症を起こしている部分に触れさせる事で炎症を抑える働きがあります。そうした吸入型のステロイド剤の使用によって身長の伸びが抑制され、その影響は成人後にも続いたとする報告が3年ほど前から米国で相次いでおり、今回の注意喚起はそうした報告を受けての事となります。
ステロイド剤と骨との関係というと、以前、我家にいた猫の事が思い出されます。ある朝、猫が急に転んで置き上がってもまた転んでしまい、自分でも何が起きているのか理解できないらしく、パニックになっていた事がありました。
体の向きを変えようとすると急に下半身の力が抜けたように腰砕けになってしまい、その場に倒れこんでしまうのですが、継続的に力が入らない訳ではないので麻痺ではないと思え、脳に障害でも起きているのではと心配しながら獣医の下へ連れて行きました。
レントゲンを撮ってみると腰の部分の背骨の一部が異常なほど隆起していて、それが神経に触れて一時的な麻痺を引き起こしていた事が判りました。
高齢でもあったので手術によって骨を削るのは負担が大きいだろうという事で、副作用としてカルシウムが骨から流れ出す作用があるのでそれを利用しようといわれてステロイド剤が処方されました。
思えば若い頃に尿路結石を発症してしまい、それ以降、処方食としてリンを制限した食事が中心となっていました。リンを極端に制限した事でカルシウムの排出がうまくいかず、長年の間に骨を隆起させた事が解ります。
その際、隆起した骨を縮小させるほど骨のカルシウムに影響を与えるというステロイド剤が怖ろしくなったのですが、骨への影響を思うと身長の伸びを抑制する事は理解できます。
吸入型のステロイド剤は薬剤が患部にのみ触れる事から、影響は少ないと考えられていましたが、今回の発表を受けて身長の伸びに最も影響を受けやすい乳幼児の場合、最初に使う薬をステロイド剤以外にするなどの指摘がされています。
喘息に関しては、アレルギーの炎症を長期に渡って抑える新薬の報告もされています。吸入型ステロイド剤は治療の根幹を担ってきた薬剤だけに、新たな治療法の確立を願ってしまいます。
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