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第2407回 梅干しと日本



 お気に入りの場所の一つにいろんな品種の梅がたくさん植えられた梅林公園があり、そこへ行けば品種によって花が咲く時期が違う事や花の色、全体の雰囲気の違いなどを一望にする事ができるのですが、今年も梅の花を見に行かなかった事を後悔しながら初夏を迎えようとしています。

 たくさん花が咲くという事はたくさん梅の実ができるという事なので、あの梅林公園の梅はどうなっているのだろうと改めて考えてみたりもします。

 以前、テレビで梅の実がたわわに実っても野生の鳥たちは、あえて食べようとしないという事をレポートしていました。理由は酸味が強過ぎて食用に適さないためとの事で、完熟しても梅の実は甘くならない事が伝えられていました。

 梅の実の酸味にはクエン酸が含まれ、古くから梅の果汁である「梅酢」は利用されてました。今日では梅酢は梅干しを作る際の副産物となっていますが、古くは梅酢を採る事が主目的として行われ、梅干しはその副産物となっていました。

 梅の実を収穫して塩に漬けておくと浸透圧によって果汁が梅の実から浸み出し、酸味のある梅酢を得る事ができます。そうした梅酢の利用は非常に古くから行われていた事が知られ、紀元前200年頃のものとされる馬王堆からも梅干しが入っていたと考えられる壺が出土しています。

 その頃の梅干しは今日のような食品としてでなく、黒焼きにして粉末にし、腹痛の治療や虫下し、解熱や解毒などの効能を持つ漢方薬として利用されていました。梅酢も食品というより消毒や金属加工などの工業的な用途に多用され、鍍金に用いられたり、青銅器や鉄器の表面に酸化被膜を作って錆びを防ぐなどに使われています。

 馬王堆から出土した梅干しが入れられていたとされる壺と同じ物が日本にも伝えられており、日本でも古くから梅干し作りが行われていたと考える事ができます。

 近年、縄文時代の遺跡から梅の実が出土し、梅は実際には考えられているよりも遥か以前に原産地である中国から伝えられていた可能性が浮上してきています。縄文人の食生活の豊かさも解明されてきており、経験的に保存技術として塩漬けも行われていた事から、梅干しの歴史は予想を遥かに超えて古い時代へと遡ってしまうのではと思えてきて、古代の食卓に思いを馳せてしまいます。


第2406回 うなぎの秘密



 ジクムント・フロイトというと誰もが知る精神分析学の父ともいえる存在で、後の世界に大きな影響を与えた人物として知られています。そのフロイトが若い頃、熱心に研究に取り組んでいて、初めて科学的な光を当てる事になったという研究対象がある事はあまり知られていません。

 その研究対象とは「うなぎ」で、フロイトは医学校時代、イタリアの研究所でうなぎの精巣を発見するための研究に熱心に取り組んでいました。彼の研究によって科学的な取り組みが行われるようになったうなぎですが、その後も生態は謎の部分が多く、ごく最近になるまで幼少期を過ごす場所まで知られずにいました。

 普段食べているうなぎのほとんどは養殖された物で、養殖物という響きから人為的に無尽蔵に繁殖させられる魚という印象が強かったのですが、養殖の元となるシラスウナギの減少で価格が高騰するようになってから、うなぎの養殖は卵をふ化させているのではなく、天然の漁獲資源として捕獲されたシラスウナギを肥育して出荷されている事が知られるようになってきています。

 うなぎというと和の食文化に根付いていて、もっとも暑さが厳しくなる土用に食べる蒲焼というイメージが強いのですが、世界中の広い地域で食べられている世界的な食材となっています。

 何故かアメリカでは、ヨーロッパから移住した当初は盛んに食べられていたようなのですが、南北戦争を境に食べる習慣がなくなり、イタリア系の移民以外には食べられなくなっているといわれますが、うろこがない魚として食べる事を禁じている宗教の影響がある地域以外ではうなぎは馴染み深い食材となって、地域の食文化に根付いています。

 アメリカやヨーロッパといった西欧の広い地域の河川や湖などに棲息しているうなぎは、すべて大西洋の中心部分、サルガッソ―地帯の深い海で生まれ、幼少期を過ごすとされ、日本や中国などに分布するうなぎは、太平洋の中心部の深い海で生まれ育つ事が判ってきていて、あまりにもうなぎが採れる場所からかけ離れ過ぎている事がこれまでうなぎの生態を謎としていた事に関わっていた事が判ります。

 大西洋や太平洋の中心部分の深い海で生まれたうなぎは、1~2年ほどをその辺りで過ごし、それぞれの種類によって定まった河川や湖、沼などを目指して3千キロ近い旅をする事になります。3年ほどの長旅を終えてそれぞれの地域に辿り着いたうなぎは、長旅の間に逞しく成長し、私達が普段見掛けるような姿になっています。

 馴染み深いうなぎとしてそれぞれの地域で生活したうなぎは、やがて産卵の準備が整うとまた長旅をはじめて、大西洋や太平洋の中心部へと帰っていきます。そうした壮大な生活サイクルがうなぎの生涯を謎に包まれたものとしていたのですが、生態が少しずつ判ってきた今日でもうなぎを人為的に安定的に産卵、ふ化させる事は困難とされています。

 人工的な繁殖の難しさや各店舗ごとの秘伝のたれなどの付加価値を考えると、今後も高値が続きそうなうなぎですが、産卵のために生れ故郷へと帰る旅を始めると何も食べなくなり、内臓はそれに合わせて変化し、それまで生活していた河川とは比べものにならない水圧にさらされる事から体の作りや色合いも変化してしまいます。

 そして生まれ故郷の遠く深い海に辿り着き、子孫を残すと自らは滅びていきます。そんなうなぎの大変な生涯を考えると、その途中でいただいてしまうのはとても申し訳ない事のように思えてきて、多少の高値がしても仕方ないように思えてしまいます。


 

第2405回 幸福ホルモン



 以前、知っている産科医が「いつでも都合に合わせられます」と、親の都合に合わせた出産ができる事を宣伝していて、充分に準備が整っていないのに陣痛促進剤を使って急かされて産まれてくる子供が可哀想に思えた事がありました。今では自然な分娩が大切と正反対の事をいわれるようになっていたので、そのような心境の変化があったのだろうと、その方が気になったりもします。

 陣痛を促して出産を開始させるのは脳の視床下部から下垂体後葉に運ばれて分泌されるホルモン、「オキシトシン」の働きとされています。1950年に発見され、その後、陣痛促進剤として利用されてきたオキシトシンは、子宮を収縮させて陣痛を誘発し、出産を開始させるホルモンとして知られています。

 母子共に出産の準備が整った際、オキシトシンが分泌されて子宮が収縮し、出産が開始されるのですが、出産が始まり無事に終了すると必要がなくなるはずのオキシトシンはその後も分泌が続き、むしろ出産の開始時よりも血液中の濃度は高まる傾向がある事が知られています。

 陣痛促進剤として知られたオキシトシンにはもう一つの大切な働きがあり、近年、その働きが解明されて愛情や信頼といった家族を形成していく上で重要な働きを担っている事が判ってきて、陣痛促進剤から「愛情ホルモン」や「幸福ホルモン」といった幸せな呼び方をされるようにもなってきています。

 母性の源ともいえるオキシトシンは、父性にも関わっている事が判ってきており、家族を形成する習性を持たないオスに投与する事で養育行動を採るようになる事も観察されています。また、オキシトシンには別な可能性も示唆されており、自閉症をはじめとするコミュニケーション障害の改善に役立つ事が期待されています。

 他人の気持ちが判らない、場の空気が読めない、相手の反応を理解できず、一方的に話を続けてしまうといったコミュニケーション障害の人にオキシトシンを投与する事で、コミュニケーション障害の症状が改善する事が判ってきています。

 コミュニケーション障害の人と健康な人を対象に、相手の表情と言葉が一致している場合と不一致の場合との脳機能の働きを映像化して観察したところ、コミュニケーション障害の人は相手の表情よりも言葉に頼って状況を判断している事に対し、健康な人は相手の表情に重きを置いている事が判り、そうした傾向は脳の内側前頭前野の活動低下が関わっていると結論付けられていました。

 オキシトシンを鼻にスプレーする事でコミュニケーション障害の人に見られていた脳の活動低下部位の働きの改善が見られ、オキシトシンの投与で対人コミュニケーションが改善される事が判ってきており、コミュニケーション障害が治療可能となる可能性が高まってきているとされます。

 閉ざされた世界に住んでいるとされる自閉症が、家族を思いやる気持ちの源となるホルモンの働きで治療できるとしたら、まさに「幸福ホルモン」ではないかと今後の研究に期待してしまいます。


 

第2404回 北国の酒事情



 ジャガイモが大好きで、ジャガイモから作られるほとんどの物がお気に入りとなっているのですが、ウォッカだけは縁遠い物となっています。白樺の炭で蒸留される事から無味無臭無色といわれるウォッカですが、それだけにアルコールのにおいが強く感じられ、消毒薬としか思えない印象があります。

 東欧や北欧でよく飲まれているウォッカですが、どの様に成立したのかについては定かではないともいわれます。蒸留酒を作る技術は中世のアラビアで確立された事から、交易などを通じて蒸留技術が伝えられ、それが洗練されてウォッカに至ったと考える事ができ、「スピリタスウォッカ」は98%のアルコール度数を誇る私が知る中では最強の蒸留酒となっています。

 アラビアで発明された蒸留酒はヨーロッパでは「命の水」という意味を持つ「アクア。ヴィテ」の名前で呼ばれ、当初は消毒薬として使われています。後に各地でウィスキーやアクアヴィット、ブランデーなどへと発展していくのですが、東欧では長い間、アクア・ヴィテを消毒薬、体臭の予防剤、皮膚感染症の治療薬、気付け薬として使用していて、14世紀にペストが蔓延した際、東欧では流行が見られなかった背景にはアクア・ヴィテを消毒に用いていた事が大きいとされています。

 中世のヨーロッパを震撼させたペストの大流行から東欧の人々を守ったウォッカですが、今日ではロシア人男性を若死にさせている要因として悪者視されています。

 過去30年の間にロシア人の死亡率は激しく変動を見せており、体制の変化やアルコールの消費量がそれに影響を与えているという指摘があり、実際に1985年に当時のゴルバチョフ政権による反アルコールキャンペーンでは、アルコールの消費量が25%も減少し、それに合わせるように死亡率も急激に低下した事が知られています。

 その後、ソ連が崩壊し、政治体制が大きく変動するという時代背景を受けてアルコールの消費量が上昇に転じると死亡率も急上昇を始め、両者の相関関係を強く印象付けてくれています。

 そうした傾向を裏付けるためにロシアのバルナウル、ビイスク、トムスクの3つの街で20万人の大人を対象に飲酒量に関する聞き取り調査を行い、500ml入りのペットボトルに換算して1本未満を少量、2~3本程度を中量、3本以上を大量として追跡調査を行っています。

 結果として少量グループの死亡率が16%である事に対し中量では20%、大量では35%という少量の倍以上の死亡率が観察され、ウォッカの消費量と死亡率の関係が明確に観察された事になります。

 ロシアにおけるアルコールの摂取量に関した死亡率の高まりは、飲酒量やウォッカそのものだけの問題ではないという意見もあり、確かに以前、ウォッカの不足からアルコールを摂取するためにアフターシェーブローションが飲まれたり、質の悪い自作のウォッカを作ったり、工業用のアルコールが飲用に使われているといった場面伝えられたり、酔い潰れて酷寒の街頭の雪の上で寝込んでしまったりという実情を見ると、飲酒量は関係してはいてもウォッカが悪者ではないとも思えてきます。寒いから飲まずにはいられないのか、酒好きに生まれ付いているのか、いずれにせよ適度な付き合いが長生きに繋がる事だけは確かな事といえるように思えます。


 

第2403回 根っこの力こぶ(2)


 マメ科の植物の根に共生する根瘤菌によって大気中の窒素が地中に窒素化合物として固定され、土地を肥沃にして植物の育成を助けてくれます。同じような働きを持つものとして「雷」の存在があり、稲妻、稲光と稲に関連付けた名前を持つ背景には、大気中の窒素の固定作用があるともいわれます。

 雷は大気中で起こる大規模な放電ですが、その光を稲妻、稲光と呼ぶ事については、稲が結実する頃に多く雷が発生するためといわれますが、雷の放電によって大気中にイオンの状態で漂っている窒素が大地に落ちて、雷が多く鳴ると稲の育成が良い事が経験的に知られていた事も稲と関連付けられる所以とされます。

 そうして地中に固定された窒素は植物に利用され、動物は植物によって作り出されたタンパク質などの窒素化合物を摂取する事で、アミノ酸合成に欠かせない窒素を得ています。しかし、タンパク質などの窒素化合物を分解すると副産物として有害なアンモニアが発生してしまうために、動物の体内ではアンモニアを無害な尿素に変換して尿から排出しているため、窒素は体内に貯蔵する事ができず、摂り続ける事が必要な物質となっています。

 生命の維持には欠かせない窒素ですが、物が燃える元となる元素、燃素を発見するための研究中に発見されており、誰が最初に単体分離を行って発見したのかは定科ではないとされています。

 窒素の名前は1772年にラザフォードによって単体分離が行われ、その中に生物を入れると窒息死してしまう事から「有害空気」と名付けられ、ドイツで「窒息させる」と「物質」を組み合わせた造語が作られ、それを日本語に直訳した事が元になっています。

 生命に欠かせない元素なのに失礼なと思えてくるのですが、同じ頃、単体分離を行ったシャーレには、酸素を「火の空気」と名付けた事に対して火を消してしまう窒素を「駄目な空気」と名付けられ、窒素が元素である事を発見したラヴォアジエには「生きられないもの」の名前が与えられています。

 初期の段階では呼吸に関与しない事で散々ないわれ方をされてしまう窒素ですが、その後、安定的な食料生産に欠かせない物となり、超高音、高圧という特殊な条件下では巨大な爆発力を持つ事が知られて、兵器としての研究も行われた事がありました。

 今ではあまりにも特殊な条件下でしか利用できない事から、兵器としての可能性は否定されていますが、SF小説の中では登場する事もあり、身近なようで馴染みが薄い物、いつも触れているのに大自然の力を借りないと直接は利用できない物という、どこか不思議な位置付けの物となっています。


第2402回 根っこの力こぶ(1)



 陽射しや気候が春めいてくる中、近所の畑には蓮華の花が咲いていて、新たな収穫の時期へと向けた準備が進んでいるようにも思えてきます。畑を休ませている間に蓮華を自生させ、後に畑の中へとすき込んでしまう事で畑は肥沃になるといわれ、春の訪れを知らせてくれる蓮華の花は重要な働きをしている事になります。

 蓮華が畑を肥沃にする理由は、蓮華が空気中の窒素を地中に固定し、植物が利用できるようにする働きを持つ事によります。蓮華のそうした力は蓮華そのものではなく、蓮華の根に共生しているバクテリアの働きによって作り出されていて、蓮華はバクテリアの力によって自生する土地を痩せさせる事なく繁殖する事ができるようになっています。

 蓮華の根に共生しているバクテリアは、共生する蓮華の根にコブを生じる事から「根瘤菌」と呼ばれ、蓮華をはじめとするマメ科の植物に共通する特徴の一つとなっています。

 マメ科の植物に特徴的に根瘤菌が共生する事については、太古の昔、地球上の大気が窒素の比率が非常に高かった頃の名残りともいわれ、バクテリアの存在が知られず、科学的な分析も行われていなかった古代ギリシャやローマでも経験的にマメ科の植物を緑肥とする事が行われていました。

 窒素は地球上の生物にとって非常に重要な物質であり、アミノ酸やタンパク質、核酸の塩基などを構成する生命の根幹にも繋がる元素となっています。しかし、ほとんどの生物は大気中で最も多い物質である窒素分子をそのまま利用する事ができず、バクテリアによって固定された窒素化合物を摂取する事で体内に窒素分子を摂り込んでいます。

 そのため窒素は植物の成長にも欠かす事ができず、リン酸、カリウムと並んで植物の育成を促す肥料の三大成分となっていて、根瘤菌との共生は同じ場所で繁殖を続ける植物にとって非常に有利な事である事が判ります。

 以前、このコラムで大豆を食べる習慣がないアメリカが世界最大の大豆の名産地となっている事について触れましたが、アメリカにおいて大豆の栽培が始まった主な理由は、主要な産物である小麦やトウモロコシの栽培によって低下する地力の回復のためにマメ科の植物である大豆を栽培し、土地にすき込む事で緑肥としていたとされ、緑肥としての「食べない大豆栽培」を食用にする「食べる大豆栽培」が上回るのは1940年代の後半という、意外なほど最近の事となっています。

 一見、地味なように思える根瘤菌の窒素固定という働きですが、その効果は絶大で、年間に1億8千万トンもの窒素が固定されていると試算されています。それに対し人間が工業的に作り出している窒素肥料は8千万トンとされ、肥料を作り出す事に電力が使われていて、その電力を作り出すために石油に換算すると1000億リットル以上もの石油が必要になるといわれています。

 根瘤菌には不思議な一面があり、闇雲に大気中の窒素を固定しているのではなく、地中の窒素分が多い際は固定作用を弱め、さらに窒素分が過剰になると根瘤菌自体が弱ってしまいます。また、根に共生しているのですが、葉の窒素含有量が多くなると固定作用を弱める事も知られていて、共生しているマメ科の植物が窒素過多にならないように調整しています。

 見事な大自然の営みと思いながら、太古の昔から繰り返されてきた阿吽の呼吸がそこにはあるのかもしれないと、改めて大自然の力を感じてしまいます。


第2401回 光ダイエット



 さまざまなダイエット法が提唱され、その中の一部はブームとなりますが、やがては廃れていくというサイクルが繰り返されています。そんなダイエット法の中でもかなり楽な部類と思えるものが新たに発表されていたのですが、あまりにも楽過ぎるダイエットは定着しないという法則があるので、ブームとはならないかもと思ってしまいます。

 米国ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のキャサリン・リード洵教授をはじめとする研究チームは、ボランティアの被験者54人を対象とした分析の結果、痩せている被験者は必ずしも健康的な食生活を送っている訳でも、運動量が他の被験者よりも多いという訳でもない事が判り、他の被験者との違いを分析すると早朝の日光を多く浴びている事が判ったとしています。

 光を浴びる朝の時間が早ければ早いほど、BMI(体格指数)は低くなる傾向があり、逆に光を浴びる時間が遅くなれば遅くなるほどBMIが高くなる事も突き止められています。

 7日間に渡る実験の期間中、光の浴び方と睡眠サイクルを測定するためのセンサーを手首に取り付け、食事の記録も撮り続けた結果、運動のレベルやカロリーの摂取量、就寝時間、年齢、季節に関係なく、朝の光は人のBMIに影響を及ぼす事が観察され、朝の光を浴びる事で体内時計が整えられ、結果的にエネルギーのバランスも整えられていると結論付けられています。

 方法としては午前8時から正午までの間に明るい光を浴びるというもので、時間的には20~30分程度でも良いとされています。朝日を浴びる事は、その14時間後のメラトニンの分泌に影響を与えるともいわれ、メラトニンは睡眠を掌るだけでなく、体の修復や精神面の健康に欠かせないセロトニンの生成にも関わっているとされます。

 また、朝日を浴びるためには早く寝る事も必要で、早く寝ると成長ホルモンの分泌を高め、成長ホルモンは分泌自体にそれなりのカロリーを使うともいわれます。さまざまなメカニズムが複雑に絡んで結果に繋がっているように思えながら、ほぼ毎朝、朝日を浴びている身としては、体形を維持している一番の要因は朝日だったのかと改めて思ってしまいます。


第2400回 安心卵



 これまでに映画の「ロッキー」は複数回観ているはずなのですが、印象に残るシーンはと問われると、クライマックスの最後の部分で主人公のロッキーがボロボロになった顔で恋人の名を叫ぶシーンと、トレーニングの際、体作りのためにグラスに卵をたくさん割り入れて一気に飲んでしまう場面となっています。

 筋肉を育てるには良質なタンパク質が必要となるので、アミノ酸スコアに優れた卵を愛用している事や、昔から精が付くとされる事からスタミナを意識しての事と思えるのですが、そのシーンを撮影するために主演のS・スタローンには特別報酬が支払われた事はあまり知られていません。

 日本人には感覚的に理解しにくい事なのですが、日本以外の諸外国では卵を生で食べるという事への抵抗感が強く、かつて日本人が刺身を食べるのを見て、「魚を生で食べる」と驚かれた以上のインパクトが卵を生で食べる事にはあるといわれます。

 日本はメキシコに次ぐ世界第二位の消費量を誇る卵大好き国となっていて、いまだに血中コレステロールとの関連付けが信じられていて、一部には健康のために卵を控える声も聞かれますが、日常の食に卵という食材は深く根付いているという事ができます。

 かつて卵は非常に貴重で高価な食材であったものが、第二次世界大戦後、本格的な養鶏の普及によって徐々に庶民の食となってきています。大規模な養鶏が行われ、小規模な養鶏業者が淘汰されたり、安価な輸入穀物が飼料とされるようになった事、合理化などが行われていく事で上昇する物価の中でも価格が安定的に変わらないという「物価の優等生」という呼び名も定着し、気軽に食べる事ができる食材となっています。

 養鶏が合理化される中で鶏を無菌状態で育てるようになった事が生卵の安全性を向上させ、日本での卵の生食文化を形成するに至ったという事ができます。そうした日本独自の卵事情は卵の賞味期限の表示に見る事ができ、日本における卵の賞味期限は卵が品質を保持して美味しく食べる事ができる期間を表示しているのではなく、卵を生で食べる事ができる期間の目安となっていて、卵を生で食べる事を前提にしている事が判ります。

 そのため卵の賞味期限は実際よりもかなり短く表示され、卵は傷みやすい食品という誤解を受けてしまっています。卵の機能を考えるとヒナが充分に育つまでは腐敗菌をはじめとする雑菌の繁殖を許す訳にはいかず、殻の表面のクチクラ層や卵白に含まれるリゾチウム、卵白自体の粘度などが卵を大切に守っています。

 卵の保存性の高さは、かつて卵が生鮮食料品店ではなく保存食を扱う乾物屋で扱われていた事にも見る事ができ、そのままでは保存食、殻を割ると生鮮食料品という卵の特殊な性質が理解されていたという事ができます。

 卵が身近な食材となって行く中で、いろんな事が忘れられてしまったようにも思えます。悪い卵の典型とされた素手や箸でつまめる、楊枝が何本も立てられる黄身が今では優れた卵のようにもいわれています。身近過ぎるが故の悲劇という感じがしながら、当然の事のように生卵を食べる事ができる幸せを満喫しています。


 

第2399回 運びのラッパ



 古代史にはそれほど詳しい方ではないのですが、古代史の謎といわれると急に興味が湧いてきて、謎の解明に繋がる事や新説の登場などをとても楽しみにしてしまいます。そんな古代史の謎の一つに南米、ボリビアのティワナク遺跡群の中心から少し外れた位置にあるプマ・プンク遺跡があります。

 プマ・プンクは破壊がひどく、在りし日の姿を留めてはいませんが、一部残された基壇から低いピラミッド構造を持っていた事が推定されています。建築の一部には数トンもある一枚岩でできた物が残されていて、鉄器もなかった時代にどのようにして今日の器材を使っても困難とされるほどの高度な加工を行い、石材の運搬や建築が行われたのだろうという事が大きな謎として残されています。

 いい伝えでは石材の運搬にはラッパが使われたとされ、どのような使い方をすれば管楽器が重機顔負けの働きをするのだろうと、首を傾げたくなってきます。しかし、その答えとなりうるかもしれない実験が、東大の研究チームによって行われていました。

 今回の実験では、285個の音響トランスデューサーと呼ばれる装置を組み込んだ超音波スピーカーで囲まれた空間内で、プラスティックのビーズを浮かべて上下左右に思いのままに動かす事に成功しており、世界初の成功となっています。

 超音波によって物体が空中の一定の位置に保持される事は既に知られており、2013年にはアメリカのアルゴンヌ国立研究所で超音波を使って空中に浮遊させた野菜や塩、オイルを使ってサラダを作るという実験が行われ、成功しています。

 そうした装置を大規模化すれば数トンもある巨石も音波によって運搬できるようになるのかと思えてきて、ラッパを使って巨石を運んだという事が急にリアルに思えてくるのですが、巨石の加工技術以上に高度なテクノロジーはどこからと新たな謎に直面してしまいます。


第2398回 子供と塩分(2)



 子供と塩分摂取に関する衝撃的な話題をもう一つ。肥満の状態にある人が塩分を摂り過ぎている場合、10代の子供でも細胞に老化を示すサインが見られた事が米国心臓協会の年次集会で報告され、年齢に関係なく生活習慣によって老化が進行する事が確認されています。

 14~18歳の男女を対象に行われた研究では、一日の塩分摂取が平均で10.5gと多いグループと平均6.1gと少ないグループに分けて、白血球の染色体の端にあるテロメアの長さの測定を行っています。

 テロメアは細胞分裂に深く関わっていて、細胞分裂のたびに端の部分が少しずつ切れて短くなっていき、一定の長さを下回ってしまうと細胞分裂ができなくなる事から、寿命や老化との深い関係がいわれています。

 測定の結果、肥満の子供で塩分の摂取量が多いとテロメアが短い事が確認され、染色体レベルでの老化が進んでいる事が確認されています。標準体重の子供では塩分の摂取量が多くてもテロメアの短縮化は見られていない事から、肥満と塩分摂取過多という組み合わせが老化を促進している事が判ります。

 肥満は体内の炎症を引き起こすリスクが高いとされ、炎症がテロメアの短縮に関わっている事が知られているだけでなく、塩分がさらにテロメアへの影響を増加させている事が考えられ、生活習慣への配慮は若くて健康な世代にも不可欠な事が裏付けられた事になり、健康を意識するのに早い、遅いはない事が改めて感じられます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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