第2482回 味覚の正体?
食べ物は五感の全てを使って味わいなさい。食の世界の奥深さを感じさせてくれる言葉で、料理に向き合った際の季節感や盛り付けの美しさを感じる視覚、沸き立つ音や焼ける際の音、噛み砕く際の食感を感じる聴覚、漂ってきたり口に運ぶ際の香りを感じる嗅覚、口に含んだ際の味覚、料理に触れたり口に運ぶ際の触覚など、感性の全てを使って美味しさを感じ取るのですが、意外にも複雑な感性の中で最も重要となっているのは嗅覚で、直截的に味を感じていると思われている味覚は、食べ物の味を決める要因としては20%程度しか作用していないといわれます。
簡単な実験でそれを確認する事ができ、個性的で濃厚な味を持つカレーも鼻を摘まんで嗅覚が働かないようにして食べると、何を食べているのか判りにくくなってしまいます。
もっと顕著な実験としては、嗅覚が働かない状態で同じような大きさ、形に切り分けたリンゴとタマネギを食べ比べてみても違いが感じられず、嗅覚が働くようになると味が戻ってきたような感覚に捉われ、嗅覚が味の感じからに大きな影響を与えている事が判ります。
味の感じ方には嗅覚が重要とはいっても、食べ物を前に鼻から吸い込んでいる香りはそれほど大きく影響はしておらず、食べ物を飲み込む際に喉から鼻へと抜ける空気に含まれる香りが大きく作用しているとされます。
喉から鼻へとにおいを運ぶ空気の流れは、鼻へと抜けるという意味からレトロネイザルと呼ばれるそうですが、風邪をひくとレトロネイザルが弱まる事から味に感じ方が弱まってしまい、健康な時とは違った味に感じてしまう事になります。
以前、ミルクとチェリーとマスカットを一緒に噛むとイチゴになるという不思議な歌を使った駄菓子のコマーシャルがあったのですが、どのような化学変化を起こさせているのだろうと思うと、レトロネイザルを使って三つの食材の香りを混ぜてイチゴの香りを演出し、味を感じさせていた事が判ります。
味の感じ方のほとんどは嗅覚が占めている事は、さまざまな実験で確認する事はでき、理解できるのですが、これからも料理は五感の全てを使って味わっていかなければと思っています。
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