第2500回 熱量概念

 ずいぶんと前の事になりますが、このコラムで食品の酸性、アルカリ性は意外と古い概念で、その食品を燃やした後の性質によって決められていて、必ずしも体内での状態には当てはまらないという話題に触れた事がありました。

 食品を体内で消化吸収して、エネルギーに変えて活用する事を燃焼と呼ぶ事から、食品を燃やす事で近い状態になるようにも思えてしまいますが、酵素などを使った複雑な化学変化である消化と、物の燃焼は途中の過程も結果も異なる反応で、単純な比較はできないという事ができます。

 食品の酸性、アルカリ性に限らず、食品のカロリーについても同じ事がいえるという指摘がされるようになり、これまで健康の指標の一つとされてきた摂取カロリーに関する理解も大きく変わろうとしています。

 今でもその場面をよく憶えているのですが、初めて食品のカロリーという概念と出会ったのは小学校の5年生の時で、理科の教科書に針金の先に刺したピーナツが燃やされ、すべての食品には熱量があるという事が書かれていて、ピーナツがとてもカロリーが高い食品である事を知って、驚いた事が思い出されます。

 それから低カロリーの食品は比較的ヘルシーで、高カロリーの食品は食べる量に気を付ける必要があるといった食品の接し方が続き、どちらかといえば高カロリー食品を敬遠する傾向が身に付いていました。

 改めていわれると、確かに物を大気中で燃焼させる事と消化吸収、エネルギー代謝は別ものであり、単純に割り出す事ができない事が解ります。カロリーが高い食品の代表格であった脂質も最近では見直しが進み、持久力を支える重要なエネルギー源であり、摂り過ぎた脂質は吸収されずに排出されてしまうといわれるようになってきています。

 単純なカロリーの比較ではなく、体を作っているものが何であり、体内で合成できるもの、合成できずに食を通して摂取しなければならないもの、生活習慣から自分に不足しているもの、そういった事を考えながら何をどのように食べるかを決める必要があり、健康的な食の実現がさらに難しくなってしまったようにも思えます。


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第2499回 返り咲きの・・・



 初めてその素材と出会ったのは、新手のダイエットグッズとしてインドから持ち込まれた際の事でした。海外から聞き覚えのない植物を持ち込み、現地では肥った人がいないとか、生活習慣病に悩まされる人がとても少ないので、生活習慣を調べてみて発見されたという筋立てで新発売の健康食品を売り込むという手法が終焉を迎えてきていた時期で、あまり興味を持てなかった事が思い出されます。

 その素材の名前は「サラシア」で、糖分の吸収を阻害してダイエットに有効な成分を含んでいるとの事でした。体内での糖分の吸収阻害はすぐに体感する事は難しいとは思うのですが、サラシアの面白いところは事前にサラシア茶を飲んでおくと糖分の存在が感じられなくなるという事で、うっかり食前に飲んでいつもと明らかに違う料理の味に驚かされた事があります。

 その後、単純に海外産の珍しい素材というだけでなく、その素材が製品化されるに至った物語などが販売の重要なカギを握るようになると、サラシアは古くからインドの王族の間で愛用されていて、サラシアの木で作った容器で飲み物を飲み、サラシアの有効性を利用していたという話と共に木製のゴブレットの映像が見られるようになったり、最古の医学書でもあるアーユルヴェーダにもその有効性と重要さが書かれているといわれるようになってきました。

 アーユルヴェーダにはサラシアの効能がいろいろと書かれているのですが、最も重要な働きとして糖尿病の治療が書かれており、現代の科学でもその効能の正しさが裏付けられています。

 体内に入った糖分は消化酵素によって分解され、糖の分子が二つで構成される二糖の状態になります。体内に吸収されるには、さらにそれを小腸の表面にある酵素を使って分割し、単糖にしてから吸収されています。

 サラシアに含まれるサラシノールやコタラノールといった成分は、二糖が分解される事を阻害して単糖の生成を抑え、体内に吸収させないようにする事から血糖値の上昇抑制に働き掛けて糖尿病を緩和させるとされます。

 また、小腸で分解されずに大腸へと向かった二糖は、大腸内で善玉の腸内細菌のエサとなり、腸内細菌の状態を改善する事で体質を改善したり、免疫力を高めたりする働きがあるとされ、アーユルヴェーダの中でも重要とされた理由が解るように思えます。

 最近になって肥満は血糖値の急激な上昇と、血糖値を安定させるために血糖が脂肪細胞へと取り込まれ、脂肪細胞を成長させてしまう事が原因といわれるようになり、血糖値をいかに上昇させないかがダイエットにおける重要事項となってきていて、サラシアの出番のように思えます。ずいぶんと時が経ってしまいましたが、また主役に返り咲いたという感じがしています。


第2498回 白く滑らかな謎(3)



 先日、生ハムに関するセミナーに出席させていただいた際、0.5mmと0.3mmの厚さに切り分けられた生ハムを試食し、0.2mmという僅かな違いなのに薄い方が風味をしっかり感じる事ができ、ふんわりとした食感と合せて美味しいと思えました。

 その0.3mmの生ハムでマスカルポーネチーズを包んで食べてみるように促され、試してみると生ハムの風味と塩味、マスカルポーネのほんのりとした甘味と滑らかな食感が一体となり、それまで生ハムは前菜、マスカルポーネはお菓子の材料としか思えず、別々の世界の物と思っていた事がとても残念に思えて、イタリアの食文化の奥深さを感じる事ができました。

 マスカルポーネはティラミスのブームの際に材料として紹介され、一気に知名度が高まりました。1970年代にチーズケーキが紹介された際のクリームチーズ、1990年代のティラミスによるマスカルポーネと、日本は二度のクリームチーズブームを経験する事となりましたが、新顔となったマスカルポーネは意外にも最も歴史が古いクリームチーズとされています。

 もともとはロンバルディア地方の冬の特産品として作られていたそうですが、乳脂肪分が80%と非常に高く、その事がバターと生クリームを彷彿とさせる滑らかな食感やコク、ほんのりとした甘味に繋がっています。

 熟成させない事から酸味や塩味がほとんどないため、そうした特徴を活かして濃厚な味わいの青カビタイプのチーズと混ぜたり、果物と一緒に食べたり、意外なところではエスプレッソコーヒーに浮かべたりという利用法がされていて、チーズという枠を少しはみ出した感じのレシピも存在しています。

 マスカルポーネの名前の由来は、一説にはスペインの総督がイタリアを訪れ、マスカルポーネを食べて「何と素晴らしい」と絶賛した事が元になっているといわれ、12世紀の事とされます。12世紀というとヌーシャテルチーズの100年戦争よりも遥かに古い時代となり、クリームチーズとはどこまで時代を遡るのだろうと途方もなく思えてきて、いつの日か答えを見付けなければと思えてきます。


第2497回 白く滑らかな謎(2)



 クリームチーズの歴史は1872年、アメリカの小さな乳製品製造業者によって開発され、スタートしたとされます。これまでにない風味を持つチーズとして発明され、当初は品質が安定せずに大きな普及には繋がっていませんでしたが、技術力のある大手メーカーに開発者の乳製品製造会社が吸収された事で品質が向上し、大手メーカーと家政学者との共同研究によるレシピの開発によって一気に普及する事となっています。

 ヌーシャテルチーズのハート形に関する言い伝えが実際の事とすると、100年戦争の終結はボルドー陥落の1453年の10月19日となり、終戦によって本国へと撤退するイギリス兵にフランス人の娘がプレゼントしたとしても419年もの時間の隔たりが、同じ製法で作られるチーズの間に存在する事となります。

 クリームチーズがアメリカ発祥ではなく、すでに製法としてはヌーシャテルチーズのように100年戦争当時から確立されていたとすると、1616年に没したシェークスピアの好物であったという説にも信憑性が出てきます。

 アメリカにおいてクリームチーズが初めて作られたのが1872年とすると、それだけでも充分に古い歴史を持つ食べ物と思えるのですが、クリームチーズが歴史の浅い新しい食べ物と感じられる理由は、日本に紹介され、チーズケーキのブームと共に普及したのが1970年代と最近である事や、水分が多く、冷蔵を流通の前提とした製品であるという印象を受ける事にあると思えます。

 クリームチーズの代表的なレシピであるチーズケーキの歴史を見てみると、紀元前776年の古代ギリシャにまで遡ってしまい、第一回オリンピックのアスリート用の食がルーツとなり、非常に古い歴史を持つものとなります。しかし、当時、食べられていたチーズケーキは現在のものとはかなり趣が異なり、原材料もクリームチーズではないチーズが使われています。

 古代ギリシャの文化を引き継ぎ、発展させたのがローマ人で、古代ローマは領土の拡張に合わせてそうした文化を近隣諸国へと伝えていき、チーズケーキもローマ人によってヨーロッパへともたらされています。

 そうしてチーズケーキはヨーロッパへと伝わり、中世のポーランドで今日のものに近いセルニックと呼ばれるチーズケーキが誕生しています。セルニックはトゥファルクと呼ばれる生乳を発酵させて酸味を持たせたチーズを使って作られ、ポドハレ地方の郷土食となりました。

 ポドハレ地方の近郊では人類最古のチーズが発見されており、それまで中東や地中海周辺と考えられていたチーズ発祥の地という定説が覆されており、チーズの製造や利用の最も古い歴史を持つ地域という事ができます。

 アメリカにおいてクリームチーズが生まれた背景には、本場のヌーシャテルチーズを再現しようとしてできた、移住が進んでいたチーズ作りに長けたポーランド移民が関わっていたという可能性を感じる事ができ、クリームチーズという製品はアメリカで作られましたが、クリームチーズに分類されるチーズはそのはるか以前に各地で作られていたように思えてきます。


第2496回 白く滑らかな謎(1)



 以前行き付けだったスーパーは、一時期だけチーズの品揃えがとても充実していて、しかも手頃な小分け品が多く用意されていた事から、プロセスチーズで育った身としては、一気に世界の食文化に触れられたような気がして、眺めているだけでもとても楽しい気分になれていました。

 そんなチーズ売り場に、明らかに天然の色ではなさそうな気になる褐色のチーズがありました。四角く切り分けられた小片は、厚手のビニールパックが施されていて、触れた感じではクリームチーズの仲間のようなのですが、色合いはチョコレートのようで、ミルク分を多くして少し色が薄めになったチョコレートという印象でした。

 ある日、気になって購入し、試食してみると、まるでケーキのような味わいで、クリームチーズにカカオ分と糖分を加えて作られた物という感じがします。ラベルには「ヌーシャテルチーズ」と書かれていたので、フランスやベルギーなどのチョコ作りが盛んな地域で伝統的に作られてきたのだろうと勝手な解釈をしていたのですが、後に本来のヌーシャテルチーズとはまったく異なる物である事を知りました。

 ヌーシャテルチーズはフランスのノルマンディ地方で伝統的に作られてきたチーズで、世界的にはハート形のチーズとして知られています。100年戦争の際にイギリス軍の兵士に恋をしたフランス人の若い女性が贈ったという言い伝えが残されていて、今日でもその形状からバレンタインデーの贈り物として使われる事もあります。

 表面に白カビの被膜を持つ事から、熟成が進むとクセが強くなる傾向がありますが、通常は製造の際に発酵させない事からクセが少なく、塩分が多めなのでパンやワインと一緒にいただくといわれ、私が出会ったチョコ風味の甘い味とは程遠い物である事が判ります。

 ヌーシャテルチーズはハート形がよく知られていますが、それ以外の形もあり、円筒形や四角形、長方形などがあり、重さによって形が変わるという面白い決まりがあります。ハート形の物には200gと600gがあり、小さいハートは200g、大きいハートは600gと外見だけでサイズを判断する事ができます。

 タイプ的には白カビのチーズではあるのですが、他の白カビのチーズとは違いクリームチーズと同じ手法で作られているのでクセが少ない素直な味が特徴とされ、後に知る事となったのですが、私が最初に食べた物はヌーシャテルの名前が付いてはいますが「ヌーシャテルチョコレート」と呼ばれる物で、ヌーシャテルチーズとは別物である事が判りました。

 製法についてクリームチーズと同じとされる事や、白カビの部分を剥がすと酷似している事などを見ていると、チーズとチョコレートといったヌーシャテル違いは解決されたのですが、新たな謎へと引き込まれて行ってしまいます。


第2495回 沖縄事情(2)



 沖縄料理の代表格でもあるチャンプルーは、さまざまな素材を上手に採り込んで一つの完成した料理に仕上げるという特徴を持った炒め物です。沖縄料理には揚げ物も多く、豚は鳴声以外はすべて食べるといわれるほど豚肉を無駄なく工夫して食べてきています。

 調味料の一環として豚の脂を入れた壺が食卓には常備され、そのせいもあって1980年代の前半には一日の一人当りの脂質摂取量が全国平均の10%近くも多く、脂質の摂取過多が肥満を引き起こし、生活習慣病を招くと考えられた当時は問題視されたりもしました。

 食の和食化によって動物性タンパク質、脂質の摂取量の減少、食物繊維の摂取量の増加によって見られたのは、働き盛りの世代の脳卒中の増加という深刻なもので、沖縄の長寿の郷としての評価を一変させるものとなりました。

 沖縄で起こっていた事、それは体の組織を作り、修復する材料となる動物性タンパク質と脂質の減少、更に食物繊維の摂取による組織の柔軟性の確保に必要なコレステロールの吸収の阻害と血中量の減少などによって血管の柔軟性が失われて細くなり、破損しやすい状態を作り出してしまうという結果でした。

 そのため今、沖縄では肉を積極的に食べようという健康法が提唱されてきています。体の組織を修復する材料となる動物性タンパク質を積極的に摂取する事で、丈夫で健康的な体を作り出すという考え方では肉や卵、チーズといった食品が推奨され、時間を掛けて食べる事ができ、体を修復する成長ホルモンが睡眠中に分泌される事から、夕食での肉食が最適とされています。

 肉食や油脂を上手に食文化に採り入れてきた沖縄ならではという感じもするのですが、最近の肥満は炭水化物によって作り出され、過剰に摂取した脂質は排出されるのみというダイエット理論にも繋がる部分があり、実践してみる価値はあるのかもしれないと思えてきます。


第2494回 沖縄事情(1)



 かつて長寿の郷というと、真っ先に沖縄が思い浮かんできました。南の海に囲まれ、暖かな気候と大らかな気質は長寿を実現するには理想的な環境のように感じられます。しかし、今では長寿の日本一は長野に奪われてしまい、平均寿命という点では大きく後退してしまっています。

 沖縄について以前、聞かされたところでは、ファミリーレストランのチェーン店が開店した頃から平均寿命が低下し始めたそうで、健康問題について盛んにいわれる食の欧米化が影響したようにも思えます。

 魚食を中心とした和食から肉食を中心とした欧米の食へと変化した事が生活習慣病の蔓延に繋がり、世界的にヘルシーな食として評価される和食を中心とした食生活へと回帰する事が健康長寿を確保する秘訣であるという事が裏付けられたように感じられるのですが、沖縄に関してはそうではないという事がいわれています。

 もともと沖縄では仏教による肉食をタブーとする食文化の浸透が少なく、豚肉を中心とした食文化が根付いていました。第二次世界大戦後はアメリカの占領下に置かれた事から、食の欧米化も進んだ状態となっていて、関税の関係から安価に流通した牛肉の普及も進んでいました。

 本土復帰後、沖縄で起こったのは食の欧米化ではなく食の和食化であり、その頃を境に平均寿命の低下が始まったともいわれ、食肉の消費量の低下とも符合するという意見も出されています。

 また、日中の気温が高温になる事や交通機関の整備の遅れ。アメリカの影響によるモータリゼーションなどから移動に自家用車が使われる事が多く、運動不足の傾向からメタボリックシンドロームの比率が比較的高いという傾向があり、平均寿命の低下が意識されるようになってからメタボリックシンドローム対策が本格的に採られるようになっています。

 その結果、動物性タンパク質と脂質の摂取量の低下、食物繊維の摂取量の増加が見られ、沖縄の平均寿命の低下は抑制される方向へと向かう事が考えられました。ところが実際に起こったのは働き盛りを中心とした年齢層での脳卒中の増加で、その事が平均寿命という指針に更に深刻なダメージを与える事となりました。


 

第2493回 パンケーキ症候群



 子供の頃、レストランに食事に連れて行ってもらいメニューにホットケーキがあるのを発見し、それが食べたいといったのですが、今日は食事に来ているのだからと却下され、少し離れた席に近所の子供も来ていて、その子はホットケーキを食べていた事から、親によって食に対する考え方が違うものだと思った事があります。

 最近ではホットケーキはパンケーキと呼ばれる事が多くなり、カフェなどで食事を意識した甘くないパンケーキも出されている事から、今なら却下される事はないだろうと考えたりもしています。

 また、パンケーキを家庭で手軽に焼く事ができるパンケーキミックスもかなり発達していて、ダマにならずにすぐに水や牛乳などで溶く事ができ、焼き上がりも綺麗に仕上がってくれます。そんな便利なパンケーキミックスの普及に伴い、困った症状が報告されるようになってきています。

 パンケーキシンドロームと呼ばれるその症状は、小麦粉やパンケーキミックス、お好み焼き粉などのミックス粉を使い残して保存しているうちに、中でダニが発生してしまい、気付かないうちに食べてしまう事で起こるとされます。

 主にイエダニなどが中心となるそうですが、小麦製品を食べた後にアレルギー症状として発生する事から、小麦アレルギーと間違えられてしまい、原因の特定が遅れてしまったり、海外では重篤なアレルギー反応であるアナフラキシ―ショックを引き起こして死亡した例も報告されています。

 小麦粉は加熱してから食べるために危険性を意識しにくいという事もあるのですが、ダニのアレルゲンは加熱しても残されてしまう事から、焼いても危険性は変わらないため、小麦粉の管理には充分に気を使う必要があるといえます。

 毎回、使い切ってしまう事が最良の対策とはいわれますが、どうしても使い残してしまうので、そんな際は密閉して冷蔵庫などに保存し、ダニが好む高温多湿な環境にしない事が重要といわれます。家の中のダニの数も小麦粉への混入と繁殖を左右するともいわれますので、日頃からダニが増えないようにする事も大切とされ、安全確保にはいろいろと気を付けておくべき事が多いと思えてきます。


第2492回 意外な卒中理由


 整体やカイロプラクティックなどで、関節を捻ってポキっと音を立てて矯正を行うという施療を見掛ける事があります。スラスト法と呼ばれる矯正治療ですが、以前から賛否両論が存在していました。中でも首の部分は非常に重要な部位でありながら無防備に近いという事もあり、安易に行うのは危険性が高いともいわれてきました。

 あまり関連性は高くはなさそうな感じがするのですが、スラスト法は脳卒中のリスクを高めてしまう可能性があると米国心臓協会と米国脳卒中学会が医学誌に声明を出していた事から、日常的に自分でやっている人は控えるべき事と思えてきます。

 両団体の声明によるとスラスト法が直接脳卒中を引き起こすのではなく、スラスト法によって起こる頸動脈解離が引き金になるとされています。血管の最も内側は内膜と呼ばれる層で構成され、スラスト法によって頸動脈に急激な圧迫が生じると内膜に傷ができ、その傷から血液が流れ込んで内膜が剥がれてしまい、頸動脈解離が起こると考えられます。

 スラスト法による解離は首の骨にある椎骨動脈で起こると考えられ、以前、発表されていたスラスト法の危険性を伝える論文では、45歳以下の脳卒中のうち、スラスト法の施療を受けていた人の比率は、受けていない人の5倍にも上ると指摘されていました。

 あくまでもリスクは低いとされてはいますが、施療時は説明を行うべきという意見もあり、また、脳卒中との関連ではありませんが、日本の厚生労働省もスラスト法を危険な施療としている事から、少なくとも自分でやる事は避けるべきなのかもしれません。


 

第2491回 スイッチ探し



 大きな駅で電車を降り、駅舎を出て駅前の公園を横切ろうとするとそれを遮るように近付いてきた人がいて、何事かと思うと袋を手渡されました。袋の中には自殺を予防する事が書かれたチラシとキャンペーンのロゴが入ったボールペンが入れられていて、死にそうに見えたのかなと一人で笑ってしまいました。

 警察の発表によるとこの3年は連続して全国の自殺者が3万人を切っているとの事で、自殺者は減少傾向にあるとされますが、明確な自殺でなく不審死と判定されている中にも自殺者が含まれていて、相変わらず高い水準を保っているという意見もあり、ハリウッドの有名な俳優の自殺のニュースなどもあって、とても深刻な問題と思えてきます。

 以前、聞かされたところでは、自殺をする人には「自殺スイッチ」が備わっていて、スイッチがない人は何が起きても自殺しないし、スイッチがある人で一旦スイッチが入ってしまうと、周囲の状況なども考慮せずに自殺してしまうといいます。先日、そんな自殺スイッチの見付け方に関する研究成果が発表されていました。

 自殺した人とそうでない人の脳の標本を調査したところ、SKA2と呼ばれる遺伝子に違いがある事が判り、体内のSKA2の量や状態によってリスクの高さが左右される事が観察されています。

 SKA2は悲観的な考え方や衝動的な行動を抑制する働きがあるとされ、自殺した人はこのSKA2の体内での発現量が少ないか、メチル化している事が確認されました。DNAのメチル化は複雑なDNAの働きに関係した現象で、メチル化したDNAは働きが抑えられる事から、ストレスや不安などによってSKA2がメチル化されて働きが抑えられていると考えられます。

 SKA2の減少やメチル化は血液検査でも観察する事ができるので、血液検査でリスクの高さを判定する事が可能とされ、血液検査の結果と実際の行動を照合したデータでは80%の精度で予測できた事から、検査方法が普及すれば事前の血液検査で悲劇を未然に防ぐ事ができます。早めにスイッチを見付けて、作動しないようにケアしておく事、大切な事だと思います。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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