第2520回 重宝する白い粉(2)



 片栗粉と同量の水といわれると、典型的な水溶き片栗粉の作り方と思えてきます。通常、料理の場合は片栗粉と水の嵩を同じにして溶くのですが、重量を同じにすると少々濃いめの水溶き片栗粉になり、その液体は水溶き片栗粉ではなく「ダイラタント流体」と呼ばれる物となります。

 どこの家庭にでもありそうな片栗粉と水が急に仰々しい名前となってしまいますが、ダイラタント流体には特殊な性質があり、意外な利用法が可能な素材ともなっています。

 ダイラタント流体は液体と固体の粉末粒子の混合物なのですが、外側から圧力が加わると急に抵抗を生じ、一瞬にして固まってしまったような状態になります。液体の中で一定の隙間を持っていた粒子が圧迫される事で隙間を失い、抵抗を生じてしまう現象で、急な力で固まる反面、力を与え続けないと元の液体に戻ってしまいます。

 そんな性質を利用して作られているのが「ウーブレック」と呼ばれる素材で、片栗粉と水を同量で混合して防弾チョッキに使用されています。普段は濃いめの水溶き片栗粉なので、充填されたバッグ固さをを感じる事はないのですが、銃弾が当たるという急な力に対し、瞬時に固くなる事で着用者を守ってくれます。

 ダイラタント流体の性質はハイテク素材にも応用されていて、片栗粉よりも堅牢なセラミックの粒子が溶け込んだ液体をケブラー素材の上に塗り付け、通常は柔らかい布でありながら銃弾を受けると、銃弾が変形してしまうほどの堅牢さを発揮して、銃弾を弾いた後はまた柔らかい布に戻るという「リキッドアーマー」と呼ばれる防具も登場しています。

 SFのヒーローのような話で、どこか遠い未来の世界の事のような印象を受けますが、基本となっているのは水溶き片栗粉であり、子供の頃から握ると雪原を歩くような音がする物として親しんできた物と考えると、片栗粉を見る目が少しだけ変わってしまいます。


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第2519回 重宝する白い粉(1)



 片栗粉というと子供の頃、売られている紙の袋をギュッと握ると、まるで雪原を踏みしめて歩いているかのような音がする事が面白くて、サラサラの粉なのに何故こんな音がと不思議になりながら握って遊んでいました。

 まだ料理を始めて間もない頃、中華料理のトウモロコシのスープを作っていて、最後の仕上げに用意していた水溶き片栗粉の量が心もとなく思えて、量を継ぎ足して鍋に加え、トウモロコシのスープがドロドロになってしまうという事もあり、今でも必要量よりも少なめにしてしまう傾向があります。

 最近では、子供の頃から馴染みのある紙袋と同じデザインのビニール製の袋に入れられた物があり、袋の口の部分にチャックが付いていて密閉しやすい事から、紙袋の物より少々容量が多い物を購入しています。

 大きめの袋入りの物を購入すると、水溶き片栗粉のイメージから何年分に相当するのだろうと思えてくるのですが、意外と用途が多いという事もあり、適当なサイクルで使い切ってしまっています。

 料理にとろみを加えるという事が少ない事もあり、水溶き片栗粉として使う事は少ないのですが、エビやカキといった魚介類の下処理には重宝する存在となっていて、片栗粉を使って洗う事で汚れや臭み、ぬめりを上手に取り除く事ができます。

 肉を焼く際に表面にうっすらと片栗粉を塗しておく事で、肉をふっくらと柔らかく焼く事ができ、肉類全般的に使える事から、ステーキをふっくらと焼き上げる裏技としても知られています。

 表面にできた片栗粉の層が肉汁を閉じ込めてしまうからと考えがちで、片栗粉の層をつい厚くしてしまいそうなのですが、片栗粉の層が厚くなると表面に透明な膜が張ってしまって肉の食感を台無しにしてしまいます。片栗粉はあくまでも熱伝導を緩やかにして、肉の繊維が縮んで肉汁を絞り出してしまう事を防ぐという役割を意識して、必要最小限にする事が大事です。

 また、揚げ物の衣作りにも重宝していて、小麦粉と混ぜて使う事でサクサクの衣に仕上げる事ができます。片栗粉はデンプンだけが熱で固まる事に対し、小麦粉はデンプンとグルテンなどのタンパク質も一緒に固まっているので、片栗粉を加えてタンパク質の比率を下げる事でしっかりとしながらサクサクと軽い衣にする事ができます。

 自生しているカタクリの減少や明治時代に北海道の開拓が進んで、ジャガイモが盛んに作られるようになり、安価なデンプンが得られるようになった事から既に片栗の粉ではなくなっているのですが、中華料理の8割がお世話になるという片栗粉は意外と使いでのある素材だと思っています。


第2518回 小さな指輪



 化学の記号というと六角形の亀の甲羅の文様のような図形が出てきて、それだけで難解な感じがしてきます。原子の結合状態を示した六角形は「ベンゼン環」と呼ばれ、化学を象徴する図形のようにも見えてきます。そんな六角形を繋げて、指輪のように輪の状態にしたものは「シクロパラフェニレン」と呼ばれ、先日、京都大学で世界最小のシクロパラフェニレンの合成に成功したという報告が行われていました。

 これまで世界最小のシクロパラフェニレンは2012年に合成に成功した6個のベンゼン環を繋げたもので、今回はそれを上回る5個のベンゼン環での合成となります。

 6個と5個、わずか1個の違いでしかないように思えますが、ベンゼン環の数が少なくなれば少なくなるほど輪にするには急角度で接合部を曲げる必要があり、合成する事が困難になってしまうといいます。

 最小のシクロパラフェニレンの合成は難しい技術への挑戦というだけでなく、大きな意味があるとされ、ナノテクノロジーの発達によって知られるようになってきた炭素原子がサッカーボールのように結合してできたカゴ状の物質である「フラーレン」との関連性が高くなっています。

 フラーレンのカゴの中には何らかの元素を入れる事ができ、中の元素によってフラーレンはさまざまな機能を持つようになる事が知られています。シクロパラフェニレンはフラーレンとは異なり指輪のような形状である事から、包み込むのではなく中に通すというかたちで、より大きな元素を利用できる事が期待されています。

 素人考えでは3個あれば輪の状態にできる事から、今後も新たな最小単位の記録が登場してきそうな気はしますが、亀の甲羅模様のベンゼン環で作られる世界最小の指輪の未来に期待したいと思っています。


第2517回 変わる名前(2)



 大きさによって名前が変わる出世魚と違い、食べる時期によって名前が変化する物としてお彼岸にいただくお菓子、おはぎがあります。お彼岸は春と秋の二回、それぞれ春分の日と秋分の日に前後の3日間を加えた7日間行われ、春の彼岸には「ぼたもち」、秋の彼岸には「おはぎ」として食べられています。

 ほとんど同じ物に見えるぼたもちとおはぎですが、厳密に違いを探すと伝統的には、ぼたもちは牡丹の花に見立てて作られるのでふっくらと丸くて大きく、おはぎは萩の花に見立てられる事から小ぶりで楕円形という大きさと形状の違いが存在します。

 また、おはぎにはこしあんが使われ、ぼたもちには粒あんが使われるという違いを聞かされる事もありますが、どちらかというと高級イメージがあるおはがだからこしあん、庶民的な響きのぼたもちだから粒あんとされているらしく、本来はおはぎが粒あん、ぼたもちがこしあんとなっているともいわれます。

 これはかつて小豆を上手に保存できなかった頃の名残りで、秋の収穫直後の柔らかい小豆を使う事ができるおはぎは、そのまま小豆を使った粒あんとなり、厳しい冬を越して皮が固くなってしまった春の小豆を使うぼたもちは、皮を除いたこしあんが使われるという季節に応じた利用法が元になっているため、今日のように保存法も流通を発達して、年間を通して安定した品質の小豆が使える現代ではどちらでも好きな方を選ぶ事ができるようになっています。

 春と秋で名前が変わるおはぎには、実は夏と冬の呼び名も存在していて、夏は「夜船」、冬は「北窓」という名前が与えられています。春と秋はその時期を代表する花の名前が与えられているのに、夏と冬は花に由来しない事に違和感を感じてしまうのですが、二つの名前はおはぎの作り方に由来した名前となっています。

 おはぎの中の餅は、仕上がる少し前に手を止めた餅といった印象ですが、もち米と米を混ぜて炊いた物をすり鉢などで潰した物となっていて、餅のように杵で搗く事なく作られています。

 そのため、おはぎを作っていても杵で搗く音が響かない事から、「搗き知らず」と呼ばれ、着いた事に気付かないのは夜の船として、夏のおはぎを「夜船」、月を見掛けず、月の存在を知らないのは北側に面した窓として、冬のおはぎを「北窓」といずれも「つきしらず」の言葉に掛けて名付けられています。

 あまりに強引な展開の名付け方ですが、冬のお茶で「北窓でもいかがですか」といわれると、粋なものを感じてしまいそうな気がします。お彼岸におはぎを食べる理由の一つに、「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように気候が変化する時期に、栄養価が高く、邪気を払う色をしている小豆を食べる事で健康管理をと考えた生活の知恵という点では、夏と冬は余計なのかもしれません。


第2516回 変わる名前(1)



 成長が早く、同じ水域で棲息する魚の場合、一度の漁で一年目の魚と二年目の魚、三年目といったすべて同じ魚種でありながら大きさが異なる魚が獲れる事も珍しくはなく、成長の速度が一定であればそれぞれの年度の魚は大きさがほぼ一定という事があります。その場合、それぞれの大きさで名前を付ける事で、成長に応じた大きさを認識する事ができます。

 また、同じ魚でも成長によって棲息域が事なったり、生態が変化してしまうなどの理由で、成長による大きさ別で名前を付ける事で区別するという事もあり、そうして成長に応じて異なる名前で呼ばれる魚は出世魚として縁起物の一つとされる事があります。

 代表的なものとしてはブリの存在が知られ、15cmくらいまでのものを「ワカシ」、40cmまでを「イナダ」、60cmくらいまでを「ワラサ」、90cm以上を「ブリ」と呼んでいて、ブリは夏には味が落ちて商品価値が下がるといわれますが、大きくなるに連れて価格も上がっていきます。

 ブリの出世名は関東と関西では事なり、関西では「ツバス」「ハマチ」「メジロ」「ブリ」と変化し、それぞれの地域によっても途中の名前が微妙に変わる事があり、特に北陸や富山、九州では6段階に名前を変えるという大変な出世をする魚となっています。

 それに対し気の毒なのはコノシロで、「シンコ」「コハダ」「ナカズミ」「コノシロ」と大きさに応じて名前が変化する立派な出世魚ですが、商品価値は名前が変わるごとに低下を続けるという逆出世となっていて、そのため出世魚の仲間に入れてjもらえない場面も多々あります。

 コノシロという名前も災いしていて、江戸時代の武家社会ではコノシロを焼いて食べる事を「コノシロ(この城)を焼く」として、縁起が悪い事として嫌ったといいます。コハダは江戸前の寿司には欠かせない素材とされる事から、あまりの落差にはやはり気の毒になってしまいます。そのため私の中だけは出世魚の仲間に加えています。


第2515回 アナログ?



 身の回りをはじめ、さまざまなものがデジタル化されていった中、どこかアナログというと前時代的な昔堅気な感じがして、デジタルといわれると1か0かの両極端で、中庸を持たない極端な人という感じで、どちらとも呼ばれたくないと思えてきます。

 アナログとデジタルは方式を示す言葉で、エレクトロニクスの世界が中心の言葉のように思えるのですが、意外なところでその名で呼ばれている物があり、初めて聞いた時はどのような物なのか想像する事もできませんでした。

 私を驚かせてくれたアナログ製品はチーズで、チーズ自体が伝統製法で作られている事からアナログな存在であり、あえてそう呼ぶ必要はないのではと思える中、アナログチーズという食品が存在しています。

 アナログチーズとは、本来のチーズとは異なり、豆乳や米、酵母などを使って作られるチーズの代用品で、大豆が原料となる事から「豆腐チーズ」、紛い物である事から「イミテーションチーズ」と呼ばれることもあります。

 菜食主義者には肉だけでなく、動物由来の全ての物を受け付けない人がいますが、そんな純菜食主義者でも食べる事ができる反面、発酵工程を経ずに作る事ができるので、短時間で製造する事が可能であり、原材料も安価である事から本物のチーズよりも安価であり、溶け加減が良く焦げにくいなどの性質も扱いやすさに繋がって、意外なほど普及しているともいわれます。

 味や食感もほとんどチーズと見分けがつかない製品もあり、チーズの本場、ドイツではアナログチーズである事を明確にしないまま販売が行われて、問題になるといった事も起こっています。

 日本でもチーズの原料となる生乳不足が起こった2007年以降、普及が進んでいるともいわれ、外食産業を中心にピザやグラタンといったチーズが欠かせないメニューを中心に使われているといいます。

 それと気付かないうちに結構食べてしまっているのではと思いながら、生乳の不足とチーズの価格高騰は今後も続くとされる事から、さらに食べる機会と量は増えていくのではと思っています。できる事なら安価な代用品を使ってコストを下げ、お得な価格で提供しているように見せて集客を図るというビジネスモデルが、前時代的なアナログなものと呼ばれる時代が来てくれる事を願ってしまいます。


第2514回 意外な食中毒



 ズッキーニというとキュウリの親玉という感じがするのですが、実はカボチャといわれると変な感じがしたりもするのですが、素材として加える事で料理が地中海風に見えてくる事から、欧風野菜として重宝する事があります。そんなズッキーニで食中毒というニュースが飛び込んできて、ズッキーニに毒という事で大いに驚かされてしまいました。

 ズッキーニを食べた14人もの人が下痢や嘔吐といった食中毒症状を示し、料理自体は適切に調理されていた事やズッキーニを食べた際に強い苦味を感じたと話していた事から、ズッキーニに含まれていた苦味成分「ククルビタシン」が何らかの理由で多く含まれていたのではと考えられています。

 ククルビタシンについては、以前、オーストリア保険・食品安全局から「なぜヒョウタンは食べられないのか」という文書が公開され、その中に苦味成分としてククルビタシンが含まれていて、摂取量によっては死に到る事もあるとして記載されていた事があります。

 ウリ科の植物に広く含まれていて、キュウリやカボチャ、メロンなどにも含まれているのですが、いずれも含有量が少ない事から通常は食中毒を起こすような事はないとされます。栽培種として代を重ねるうちにより苦味は少なくなっている事から食用の栽培種では問題になる事はなく、観賞用の物を食べてしまった際に食中毒が起こるともいわれます。

 同じウリ科の強い苦味でもゴーやの苦味成分は「モモルデシン」であり、ククルビタシンとは異なるために強力な苦味にも関わらずたくさん食べても食中毒を起こす事はありません。

 苦味としては同じとしか思えないのですが、ククルビタシンには40種もの種類があるとされ、その中のククルビタシンB、D、E1、Qと呼ばれるものには抗ガン作用がある可能性が示唆されており、研究が進められています。

 思わぬズッキーニによる食中毒のニュースでしたが、大雨や猛暑、日照不足や台風など、多くの要因で野菜が不作な昨今、ズッキーニにも異変が起こっていたのではと、天候について改めて考えてしまいます。


第2513回 凶暴化の秋



 その名前の響きから、デング熱とはどこか遠い世界の病気のような感じがしていたのですが、昨今の広がりは国際化の影響か、地球温暖化の影響かといろいろと考えさせられてしまいます。最大の予防法が媒介する蚊に刺されないようにするという事なので、黒い服を着る事が多い私も気を付けなければと思っています。

 蚊は動物の血を吸うために動物が呼吸で発する二酸化炭素や、体温という熱を感知して近付いてくるといわれます。以前、車を停めた際、車の熱と排気ガスの二酸化炭素を目掛けて大量の蚊が寄ってきた事があり、生存のための貪欲さを感じさせられた事があります。

 通常、蚊は藪の中で植物の陰などに隠れて動物を待ち伏せしていて、動物の接近を感じると熱と二酸化炭素に吸い寄せられるように寄ってきて、血を吸うという比較的消極的な作戦を採って栄養に富んだ動物の血を狙っています。

 酸性の血を好むともいわれ、肉食が中心の食性や疲労が蓄積して血液中の乳酸値が高い状態、アルコールを飲んだ後などは特に蚊に狙われやすくなる事が考えられ、日常の生活によって蚊の被害を軽減できるような感じがしますが、多くの場合、待ち伏せている蚊にも選択の余地なく、近付いてきた獲物を襲う事になります。

 普段は消極的な待ち伏せに徹している蚊ですが、秋を迎えると次の世代を卵の状態で越冬させるために産卵のラッシュとなり、そのための栄養を確保するために積極的に動物を探して飛び回り、襲い掛かってくるようになります。

 そんな秋を迎え、デング熱の拡散も新たな展開を見せると考える事もできます。僅かな水溜りでも繁殖する事ができるので、都市部においても充分な注意が必要と思えてきます。


第2512回 日に向かう花


 夏の終わり、あまり見たくない物の一つにヒマワリがあります。夏休みが始まる頃は活き活きとして瑞々しく、色鮮やかな花びらに彩られた大輪の花は、いかにも太陽の季節の代表と思えていたのですが、それほど頑丈ではない茎は花の大きさと大量に実った種の重さを支え切れず、うなだれて鮮やかな色も失われ、とても物悲しさを感じさせてくれます。

 ヒマワリの種というと子供の頃、一時期だけハムスターを飼っていた事があり、その際、主食として与えていました。両手で種を抱え、上手に殻を割って美味しそうに中身を食べていたり、運搬するために頬を膨らませた姿が思い出されて、自分でも食べようという発想は希薄だったのですが、世界的に見ると結構な量が食べられています。

 ヒマワリは北米大陸が原産とされ、先住民は早くからヒマワリを食用としていたとされます。新大陸の発見以降、世界中へとヒマワリが伝えられるのですが、最もヒマワリを活用したのは中国ではないかと思えます。

 中国、特に漢方の世界では、ヒマワリは単に食用とするだけでなく、細かな効能も利用していました。可食部である種の中は「仁」と呼ばれヒマワリの仁は「向日葵子(こうじつきし)」と呼ばれて出血性の下痢に有効とされていました。

 仁を取り出す際に除かれる殻の部分も疎かにせず、「向日葵殻(こうじつきかく)」は煎じて飲む事でめまいや難聴に効果があり、たくさんの種が付いていた花托の部分は刻んで天日干しした物を煎じる事で、高血圧の症状を和らげる事にも使われていました。

 種や花の部分に限らず、茎や葉、根もそれぞれ別々の効能があるとして全草が利用されており、単に種実類の一環として終わらせない奥深い利用法をしていた事が伺えます。

 向日葵に関する研究は、栽培法や品種に関するものがほとんどで、食用としてはひまわり油としての研究ばかりが行われています。最近になって花から抽出された成分にコレステロール代謝を改善させたり、脂肪の吸収を抑えたりする働きがある事が知られるようになってきたので、これからヒマワリの利用が進むのではと思えてきます。

 中国でお茶を注文すると、小さめのボウルに山盛りのヒマワリの種が付いてきて、何事もないかのように食べている知り合いの姿に驚いた事があります。日本ではまだまだ食べ物という意識が薄いヒマワリ。先に効能の方が話題となるのかもしれません。


第2511回 東西夏バテ事情



 初夏、日中の気温が急に暖かくなって夏の訪れを感じ始める頃、夕方くらいになるとひどく疲労感を感じ、動けなくなる日が1、2日あります。もともと暑さが苦手なので、急に暖かくなった事に体がついていかないのだろうと考えながら、その日を乗り切るとそれ以降は夏バテらしき事も経験せず、毎年の夏を終える事ができます。

 夏バテは夏の暑さに疲れ果てた「夏はて」が訛ったとも、暑さで競走馬の足がもつれて歩けなくなる様子を指す競馬用語であったものが広まったともいわれ、語源は正確には判らないといわれます。

 また、西洋医学には夏バテという概念はなく、食欲不振や消化器官不調、自律神経の活動低下といった症状が個別に認識され、それぞれの治療法のみが確立されるに留まっています。

 それに対し東洋医学では夏バテは「注夏病(ちゅうかびょう)」と呼ばれ、治療の対象として捉えられています。古い文献にも注夏病に対して漢方薬が処方された事を示す記載があり、今日でも同じ漢方薬が夏バテに対し処方されています。

 最近では夏バテよりも熱中症の方をよく聞くようになったと感じられ、背景には地球の温暖化よりも体の熱を下げる力の低下があるように思えます。エアコンが普及して、その中で育つ子供は夏でも汗をかく事がなくなってきました。

 通常、体温が上昇すると人は汗をかいて、体の表面に生じる気加熱によって体温を下げようとします。そのために必要となる汗腺の量は2歳半頃までに決まるとされ、涼しいエアコンの室内で育つと汗腺の数は少なめになり、体は熱を逃がす機能が低い状態になってしまいます。

 夏の過酷な暑さの中、子供には可哀想な感じもしてしまいますが、将来的な熱中症のリスクが高まる事や夏の暑さを経験せずに育つ事で、平熱が低い低体温症となり、免疫力が低い状態になってしまう事を考えると、暑くても夏は汗をかいて過ごすべきだと思えます。紫外線と熱中症に気を付けながら、季節は季節らしく過ごすのが良いのかもしれません。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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