第2598回 デッド・オア・アライブ



 少し前ならプロバイオティクス、最近では菌活でしょうか。有用な菌類を体内に積極的に摂り込んで、健康作りに役立てようという健康法が行われています。特にこれからの時期は花粉症対策にも有効という事で、菌活が盛り上がってくるのではと思えます。

 健康作りに有用な細菌の代表格の一つに乳酸菌が上げられます。腸内細菌との関わりも深い事から、乳酸菌の働きによって腸内細菌の状態を良くして免疫系を整える事で、過剰な免疫反応であるアレルギーの症状を和らげて花粉症の症状を緩和したり、体内に生じた異物を発見し、排除する事によってガンの発症を抑制したりとさまざまな働きを期待する事ができると思えてきます。

 乳酸菌に関してはよく知られたヨーグルトや飲料、サプリメントなどで手軽に摂取できるという広告を見掛けますが、特徴として「生きて腸まで届く」という事が強調されていて、場合によっては生きて腸まで届かない乳酸菌は役に立たないといった印象を受けてしまうものもあり、生きて腸まで届く乳酸菌が独り歩きしてしまっているように思えます。

 以前から指摘されていた事ですが、乳酸菌は生きて腸まで届かなくても乳酸菌が活動していた時に作り出していた物質や、乳酸菌の死骸そのものも健康作りの役に立ち、必ずしも生きて腸まで届かなくても乳酸菌は健康作りの役に立つとされています。

 先日行われた殺菌した乳酸菌を使った研究では、殺菌した乳酸菌の摂取期間で腸内の酢酸やコハク酸、乳酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸の増加が観察され、逆にインドール、フェノール、パレクレゾールといった腐敗産物が減少していた事から、腸内の状態が改善された事が確認されています。

 短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性にする事で有害な悪玉菌の増殖を抑える働きがある事から、腸内環境が改善された事。腐敗産物の減少から、腸の蠕動運動が活性化された事が判ります。

 また、摂取期間内には腸内のビフィズス菌の増加や悪玉菌のウェルシュ菌の減少も確認されており、腸内細菌のバランスが整えられた事や便の重量や水分量も増加した事から、排便の促進効果も確認できたとされます。

 生きて腸まで届く事を意識するあまり、乳酸菌の菌株を限定してしまいがちになりますが、乳酸菌は菌株によって働きが異なるとされる事から、自分に必要な菌株を改めて探してみるのも良い菌活になる事と思えます。生きて腸内に届くという事にこだわらず、広い視野で菌活してみるべきなのかもしれません。


 
スポンサーサイト

第2597回 餡の世界



 和菓子の餡について、つぶ餡かこし餡かと聞かれると、断然つぶ餡派だと思えてきます。元々柔らかく煮られた小豆の風味や食感が好きなので、あまり潰してなく、皮もしっかり含まれているものの方が好きだと思えてきます。

 餡が中国から日本へ伝えられたのは聖徳太子の頃とされ、当初は肉や野菜を煮込んだ塩味の物であった事から、今日の中華まんを思い浮かべてしまいます。

 今日のような小豆を用いた小豆餡が作られるようになったのは鎌倉時代の事とされ、伝来当時と同じく小豆餡ではあっても塩味となっていました。甘い味付けの小豆餡の登場は安土桃山時代以降の事となりますが、砂糖が高級品であり続けた事から庶民が甘い小豆餡を食べられるようになったのは、随分と後になってからと考えられます。

 一般的に餡というと小豆を使った小豆餡が思い浮かび、それ以外というと白インゲン豆を使った白餡、緑エンドウ豆を使ったうぐいす餡、赤インゲン豆を使った赤餡、枝豆を使ったずんだ餡などが思い浮かんできます。

 普段はつぶ餡かこし餡くらいしか意識しない小豆餡ですが、細かく見てみると加工法や加工度合いなどによる分類が存在し、興味深く思えてきます。

 小豆を柔らかく煮て、水分量が60~65%と多いものは「生餡」と呼ばれ、生餡を乾燥させて水分量を5%程度にしたものは「さらし餡」となります。さらし餡は水で戻すなどして使われ、生餡やさらし餡に砂糖を加えて練り上げたものが「練り餡」となります。

 馴染み深いつぶ餡はつぶ餡とつぶし餡に分ける事ができ、小豆を柔らかく煮て粒を残しながらできるだけ潰さないように砂糖を加えて練り上げたものが「つぶ餡」。粒を潰して皮を取り除かないものが「つぶし餡」となり、加工度合いによる両者の境は曖昧なようにも思えます。

 つぶ餡、もしくはつぶし餡を裏ごししたものが「こし餡」となるのですが、完全に粒がなくなるまで潰して練り上げられたつぶし餡とこし餡の境は皮の有無だけのように思えて、つぶ餡とつぶし餡ほどではありませんが、こちらも違いが判りにくいもののようにも感じられます。

 小豆餡の事を「小倉餡」と呼ぶ事がありますが、厳密には小倉餡は大納言の小豆と普通の小豆という2種類の小豆を使って作られるもので、煮崩れしにくく、粒が大きい大納言のつぶ餡と普通の小豆のつぶし餡、もしくはこし餡を混ぜる事で小豆の粒感や風味を愉しむ事ができるように工夫されています。

 つぶ餡の事を小倉と呼ぶ例も見られているのですが、小倉餡の由来が空海が中国から持ち帰った小豆の種子を京都の嵯峨、小倉山付近で栽培した事という事を考えると、小豆であれば小倉であっても良いように思える反面、その小豆を使って作った餡が御所に献上された事を思うと、厳密に区別しなければという気もしてきます。

 小豆を使った餡には、こし餡に米粉を加えてそぼろ状に仕上げる「村雨」と呼ばれる変わったものや、しっかり煮込んだ「煮くずし餡」、小豆の皮を剥いた「むき餡」などもあり、そのバリエーションの広さには驚かされてしまいます。

 奥深い世界を感じてしまう小豆餡ですが、和菓子という世界の奥深さを思うと当然の事とも思えてきて、久々に美味しい甘酒饅頭でも探しに行こうかと思えてきます。


第2596回 流行と理論



 しっかりと食べる派を貫きながら、相変わらず朝食は必要かという議論の決着を見ないままとなっています。最近の傾向を見ていると、パンケーキやグラノーラといった朝食向きの食品の流行という事もあり、朝食を摂る派が増えてきているのではないかと思えてきます。

 パンケーキの流行は専門店のオープンやカフェのメニューとして普及した事が原動力となり、甘くないパンケーキといった食事としてもしっかりとした内容のものも見られていて、朝食だけでなくランチメニューとしても見掛けるようになってきています。

 ふんわりと焼き上げ、お洒落で栄養のバランスが取れた内容にトッピングや付け合わせを用意するとなると、それなりに手間が掛かってしまうパンケーキに対し、比較的手軽に食べる事ができるグラノーラは朝食人口の拡大に貢献したようにも思えます。

 オーツ麦などの穀物とドライフルーツ、ナッツ類などを基本とするグラノーラは、美味しさの割には食後の血糖値が上がりにくい低GI食品ともいわれ、しっかりとした食べ応えにも関わらず肥りにくいという点が評価されて、朝食や間食を中心に普及してきています。

 そうした朝食向けの食品の普及以外にも最近では「朝活」と称して、夜の自由な時間を朝に回す形で出勤前などの早朝を使ってスポーツジムや英会話などに勤しむ事が定着してきており、早朝の活動に合せて朝食のニーズも高まり、それに対応する形で外食産業が朝食メニューを充実するという流れも生まれています。

 その反面、アスリートの世界では栄養士の指導によって朝食を摂らないとう動きが広まってきていて、理論的な裏打ちがされている事から、一考の余地があるとも思えてきます。

 アスリートが朝食を摂らない理由は、朝という時間を排泄に専念するという捉え方によるものとされ、昼と夜に取った食事を消化吸収し、就寝中は消化器官のクリーニング、朝から不要な物を排出という流れを作り、勝てる体を作っていくと聞かされています。

 充実を続ける朝食事情、理論的なアスリートの朝食抜き、どちらを選択するのが良いのか判らないまましっかりと朝食を摂るライフスタイルを継続しています。

第2595回 平たい麺の秘密(2)



 名古屋名物の薄く平たいうどん、きしめん。きしめんを漢字で表記すると「碁子麺」となります。文献上、碁子麺の記載が見られるようになるのは、南北朝時代の後期頃の「庭訓往来」に素麺と共に禅寺で食べられる軽食の点心として紹介されています。

 残念な事に「庭訓往来」には碁子麺がどのようなものであったのかに関する記載はないのですが、江戸時代に入って天保14年(1843年)に刊行された「貞丈雑記」には小麦粉を水で練って薄く伸ばし、竹筒を使って型抜きして茹でた物という解説があり、黄粉を塗して食べていた事が書かれています。

 竹筒で型抜きされている事から碁子麺は、文字通り碁石のような丸い形のおやつであり、雉肉を使ったうどんとは遠くかけ離れた物であるように思えてきます。

 碁子麺を作る際、竹筒を使って型抜きをすると、今日の金属製の生地の型抜き器と比べて歩留りが悪く、何度も生地を捏ねて平たく伸ばしては型を抜くという作業を繰り返さないと多くの生地が無駄になってしまいます。

 そうした手間を考えた場合、竹筒で抜いて成型するより切り分けた方が早く、無駄を出さずに一度の調理で全ての生地を使う事ができます。実際、麺の本場、中国にも碁子麺と呼ばれる麺が存在した事があり、四角く切り分けられた麺だったと伝えられています。

 切り分けた碁子麺は餅と同じように汎用性が高い食材である事から、黄粉で味付けして食べる以外にも汁物に入れられた事が考えられ、茹でられると麺特有の艶と弾力によって箸では食べにくい物となる事も想像できます。

 そのため当初は、碁石をイメージして小さく切り分けられていた碁子麺も食べやすさを考慮して少し長さを持たせるようにして、箸への持ちやすさを考慮した形になり、細い平打ち麺の芋川うどんと同化していったような事も考えられてきます。

 いまだにきしめんの成立には諸説があって明確な答えが見付かっておらず、碁子麺と今日のきしめん、ひもかわとの関連付けも謎のままとなっていますが、竹筒で型を抜く事をやめて切り分けるようになり、芋川うどんの雉麺と接近していったところに答えがあるように思えます。


 

第2594回 平たい秘密(1)

 イタリアのパスタを見ていると、そのバリエーションの多さや形状のユニークさ、細かな部分に施された工夫など非常に興味深いものを感じます。日本における小麦の利用はと比較してみると、日本における麺の形状の変化は美味しさを追求する方向へと向かっていて、楽しさは加味されていないようで、生活を楽しむという文化的な違いを伺う事ができます。

 規格上、日本の麺は太さによってうどん、冷麦、素麺と分ける事ができるのですが、その中にあって「きしめん」は特殊な存在であると思えてきます。日本の農林規格(JAS)では、乾麺については幅を4.5mm以上、厚さを2mm未満の帯状に成型した物と規定していて、薄く伸ばしたうどんという位置付けになっています。

 きしめんの由来は、雉の肉を入れたうどんが藩主に献上されており、高価な雉肉の代わりに油揚げを使う事で安価に提供されるようになったところ、気軽に食べられる事から庶民の間に広まったとされ、名称も「きじめん」が後に「きしめん」となったとされます。

 雉肉を使ったうどんについては、三河の池鯉鮒宿で評判となっていたものが名古屋に伝えられたとされます。また、きしめんには「ひもかわ」という別名があり、三河の芋川で作られていた平打ち麺が広まって、当初は「いもかわうどん」と呼ばれていたのですが、後に平たく長い形状から「ひもかわ」と呼ばれるようになったともいわれ、現在は名古屋名物となっているきしめんの発祥の地は名古屋以外と考えられています。

 いもかわうどんが原形であった場合は、きしめんは当初から薄い平打ち麺であった事になりますが、雉麺由来の場合、うどんとして完成形であった物が平打ち麺へと変化する必要が生じてしまいます。

 平打ち麺となった理由については、有力なところでは客に素早く提供するために薄くして茹で時間を短くした、店主が光熱費を節約するために早く茹で上がるように工夫したといわれ、雉肉から油揚げというコストダウンで生まれたきしめんが更なるコストダウンで今日の姿となったとも思えます。

 茹で時間の短縮のために細くならずに薄くなった事で独自の位置付けを確立したきしめん。その名前には更に深いものが残されていたりもします。


第2593回 そば湯の不思議



 子供の頃、そばが食卓に上るという事はほとんどなく、考えてみると暮れも押し迫った大晦日の年越しそばが唯一の事だったように思えます。そうした環境で育ったためかそばを食べたいと思う事はなく、選択の余地があるのであればうどんを選ぶといううどん派になっていました。

 そば自体をそれほど美味しいとは思えなかったのですが、それは美味しいそばに出会っていなかっただけだという事を後に知る事となり、今ではそば好きを自認するほどになっています。

 一番のお気に入りの店が店主の高齢を理由に閉店して以来、あまりそば屋へ足を運ぶという事も減ってしまったのですが、そば屋の楽しみの一つに「そば湯」があると思っています。

 そばを食べ終えた後に残った麺つゆにそば湯を加え、そばの香りに満ちた吸い物としていただくのも美味しく、そば湯そのものをいただいてそばの風味を愉しむのも美味しいそばをいただいた後の醍醐味と思えるのですが、そこでふと何故そばだけが茹で汁をそば湯として飲むのだろうと思えてきます。

 穀物を粉に挽いて練った物を茹でて麺として調理する際、茹で汁を利用するのはそばとパスタだけに限られた事で、うどんやラーメン、素麺などは茹で汁を味わうという発想すらないといえます。

 そばとうどんを比較した場合、うどんはグルテンの生成を促すために加えられた塩分がお湯に出ていて、塩辛さを感じてしまうためという考え方もできるのですが、うどんを茹でたくらいでは塩分を感じるほどの辛さにはならず、塩辛さを感じるのであればパスタのように調味料の一環として利用するという方法もあったように思えます。

 そばは加工してそば茶にできるほど香ばしい風味を持っているので、単純に味的なものが関係していて、小麦粉や米粉を茹でた物が美味しいと感じられるかと考えると、そば以外の茹で汁を飲用にしない事にも納得してしまいます。

 そばを食べた後にそば湯を飲むという習慣は江戸時代の中期頃から広まったとされ、それまでは信州の一部の地域でのみ行われていたローカルな楽しみ方だったといわれます。

 「粋」を重んじる江戸の街の人たちによって始められたような感じがするのですが、そば湯が普及するまでの江戸では、そばの後は豆腐の味噌汁と決まっていたらしく、麺の毒を出す事に有効といった考え方も定着していました。

 当時の信州では、そばの後にはそば湯をいただく事で胃腸の働きが助けられ、例え食べ過ぎたとしても胃もたれしないといわれていて、その事が江戸に伝えられ、江戸の街の人はその効能に少々疑問を持ちながらもそば湯の美味しさに味噌汁よりもそば湯を好むようになり、今日に至っています。

 そば湯が入れられてくる特殊な容器は、湯桶(ゆとう)と呼ばれる本来は懐石料理で使われる食器であったとされます。懐石料理でご飯を炊いた際のおこげを煎じて、香ばしい風味のお茶として出す際に使われていたそうですが、調理の際に副次的に出る美味しさも逃さないという点では共通するものを感じます。

 すでに新そばの時期は逃してしまいましたが、美味しいそば屋を目当てに出掛けてみるのも良いかもと思えてきます。


第2592回 寒さの伝播



 冬本番となり、日毎に寒さが募っていくと、景色も寒々とした感じになっていきます。寒々とした景色や寒い中でも薄着をしている人を見掛けた時に「見ているだけで寒い」といった表現を使う事がありますが、実際に見ているだけで寒くなってしまう事が確認されています。

 イギリスで行われた実験では、健康な男女に氷水が入った容器に手を入れる画像を3分間見せながら手の温度の変化を観察したところ、最大で0.2度ほど変化する事が確認され、他人の冷たいという体験が伝播する事が示唆されていました。

 逆に湯気が立ち上るヤカンから容器にお湯を注ぎ、その容器に手を入れる映像では体温の変化は認められなかった事から、単に温度の感覚が伝播するのではなく、冷たい、寒いといった危機的な事の方が伝わりやすい事が考えられます。

 そうした無意識の共感は人の社会性に深く関わっているともいわれ、集団生活の中で相手の状態に即座に共感する事で、相手の感情や考えなどを速やかに予測できるようにしているという事ができ、社会生活を成立させていく上で有効な機能となっていたと考える事ができます。

 相手の気持ちを理解する上でより良い働きではあるのですが、寒さは伝播するものと思って、見るものも暖かくしておくのが厳しい冬を乗り切る工夫の一つとなるのかもしれません。


第2591回 軽い白への仮説



 母親の実家が鹿児島の出水市という事もあり、お土産としてかるかん饅頭をもらう事が多く、子供の頃から鹿児島のお菓子として接してきました。中に餡が入れられた丸い饅頭が普通と思っていたので、初めてカステラのような感じで中に餡が入らず、長方形の形状の物と出会った時は大きな違和感を覚えてしまいました。

 かるかんは「軽羹」と表記され、羊羹のような物でありながらスポンジ状で重量が軽い事からその名が付いたともいわれ、山芋、砂糖、卵白、米粉などによって作られています。

 かつてはかるかんの製法を考案したのは、明石より薩摩藩に招かれた菓子職人の八島六兵衛と考えられていましたが、六兵衛がかるかんを考案したとされる安政元年(1854年)よりもはるか以前となる正徳5年(1715年)の藩主の献立に関する記載に「軽羹」の記述がある事から、かるかんは六兵衛が鹿児島を訪れる前から存在していた事が判ります。

 今のところ六兵衛以前に存在していた事は判っているのですが、どのようにして誕生し、誕生当初の状態や六兵衛によって何らかの工夫が加えられたのか、いつ頃から今のスタイルとなったのかについては不明のままとなっており、六兵衛考案説が覆された事によって謎が深まってしまった事になっています。

 鹿児島は火山灰のシラス台地がよく知られ、地質的に山芋の栽培に適していた事や、琉球や奄美諸島などを支配下に置いた事で当時貴重な存在だった砂糖を比較的容易に入手できる環境にあった事など、かるかんが誕生する素地は供えていたと思えます。

 鹿児島を中心とした地域で、古くから「ふくれ菓子」と呼ばれる蒸しパンに酷似した伝統菓子が作られています。小麦粉や黒砂糖、重曹、卵黄などを使って作られるふくれ菓子は、黒砂糖由来の褐色を呈した素朴な外観が特徴となっているのですが、かるかんの成立に影響を与えた事が考えられます。

 藩主の献立に記載されたかるかんは、羊羹と共に書かれている事から、羊羹の黒に対してかるかんは白を演出するという役割があったのではと思えます。伝統的なふくれ菓子から素朴さを除き、山芋、砂糖、米粉、卵白といった白の食材を使って、美味しいだけでなく純白の彩りを添えるというニーズがかるかんの誕生に繋がったという事をかるかんの白さに思ってしまいます。


第2590回 一個のススメ



 世界で最も栄養価が高い果物、世界一カロリーが高い果物といわれると、あまり果物という感じはしないのですがアボカドの事と思えます。アボカドはその栄養価の高さから「森のバター」とも呼ばれるほどで、多くの脂質を含んでいる事でも知られています。

 以前、「森のバターというくらいだからバターの代わりに使えないだろうか」と考え、試しにスコーンを焼いてみた事があります。バターを使わず全量をよく熟れたアボカドを柔らかく練ったものと置き換えたのですが、焼き上がったスコーンはほんのりと緑色を帯びてわずかにアボカドの香りが残るだけで良い仕上がりとなり、アボカドは本当に森のバターだと思えた事が思い出されます。

 脂質を多く含み、カロリーが高い事でも知られるアボカドですが、脂質の内容を見るとオレイン酸が多く、健康に良い働きを持つと考えられてきました。最近行われた研究ではアボカドの健康効果が確認されており、一日一個のアボカドが血液の状態を良くする事が裏付けられています。

 アメリカで行われた実験では21~70歳の持病がない肥満の男女45人を対象に、まず総カロリーの34%が脂質、51%が炭水化物、15%がタンパク質となるような平均的な食事を2週間摂ってもらい、その後、アボカドを含まない低脂肪食、アボカドを含まない中脂肪食、アボカドを含む中脂肪食をそれぞれ5週間ずつ摂ってもらい、経過を観察しています。

 アボカドは平均的な大きさの物を一日一個とし、低脂肪食の総カロリーに占める脂質の量が24%、中脂肪食が34%と設定した中、アボカドを含む中脂肪食で顕著に悪玉とされるLDLコレステロールの数値の低下が見られ、体重の減少こそ見られませんでしたが、アボカドが血液関連のリスクを低下させる可能性が示唆された事になります。

 今回の結果については、アボカドに含まれる脂肪酸以外の栄養素や生理活性成分が関与している可能性が高いともいわれる事から、今後、新たな成分化発見される事も考えられます。

 アボカドは我家の猫、通称坊ちゃんが子供の頃、種を転がして遊ぶのがお気に入りだったので、定期的に食べて種を新しくしてあげていました。最近では大人になったのか興味を示してくれないようですが、今度は私の健康のために買ってこなければと思っています。


第2589回 中毒と効能



 「生き腐れ」といった言葉に象徴されるように、サバは鮮度が落ちやすく、食中毒を起こしやすい魚とされてきました。サバの鮮度が問題にされる理由は、サバが浅い水域を泳ぐ魚である事から身が柔らかい事、消化酵素が多く含まれていて自己を分解する速度が早めな事などが考えられるのですが、それ以上に身に含まれるヒスチジンが細菌によってアレルギー物質であるヒスタミンに作り変えられてしまうという事が考えられます。

 ヒスチジンを多く含んでいるのはサバに限った事ではなく、マグロやイワシ、サンマ、アジ、ブリなどにも多く含まれている事が知られていて、水揚げ後、常温の環境に長く放置するなどで鮮度が落ちる事に伴って細菌の働きによってヒスタミンへと変化していきます。

 一旦、ヒスチジンがヒスタミンに作り変えられると、加熱調理後もほとんどが残されてしまう事から、充分に加熱したからといってヒスタミンによる食中毒のリスクは変化しないとされます。

 先日もブリの加工品から高い濃度のヒスタミンが検出され、回収するといったニュースが報じられていて、ヒスチジンの存在は厄介なもののように思えるのですが、アミノ酸の一種であるヒスチジンは健康を維持するために欠かす事のできない成分ともなっています。

 人は大人になると体内でヒスチジンを生成する事ができるようになるのですが、子供の頃は生成できないため、子供にとってヒスチジンは食を通して摂取しなければならない必須アミノ酸となっています。

 ヒスチジンが不足すると成長に影響が出るため、子供には欠かせないアミノ酸と思えるのですが、シミやソバカス、皮膚ガンの予防、ストレスの軽減、慢性関節炎の症状緩和、食欲を抑えてダイエットに有効といわれると、大人にも重要な成分とも思えてきます。

 また、近年、ヒスチジンの不足によって不安感が生じる事も判ってきているので、漠然とした不安感を抱く事が多い現代人には欠かせない栄養素という事もできます。

 ヒスチジンをヒスタミンに変えないためには、変化に携わる細菌の活動を抑える事が重要なので、低温下において鮮度の維持に努める事や、調理するまでに時間が多く掛かるようなら思い切って冷凍してしまう事も必要とされます。

 魚食の減少がいわれる中、魚食の重要性を感じさせる成分がまた一つ増えたようで、魚との付き合い方を改めて見直さなければと思えてきます。


 
プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR