第2638回 聖地と監獄



 猫と暮らしていると旅行へ行くという事が困難で、せいぜい行けても一泊二日程度、それも早めに帰宅するような急ぎ足の旅となってしまいます。若い頃はいろんな景色を見て回りたいという気持ちもあったのですが、今では旅行番組を見るだけとなっています。

 街並みの美しさや歴史には興味を持ちながらヨーロッパにはあまり魅力を感じていなかったのですが、世界遺産にも指定されているフランス西部のモン・サン・ミシェルには、名物のオムレツを食べてみたいという単純な理由で一度行ってみたいと思っていました。

 そんなモン・サン・ミシェルのオムレツが何かの番組の途中で紹介され、確かに名物といわれるだけの特大サイズではあるのですが表示された金額があまりにも高額で、観光客相手の商売という事が露骨に感じられて急速に興味を失ってしまった事が思い出されます。

 モン・サン・ミシェルは、元々は「モン・トンブ(墓の山)」と呼ばれる先住民のケルト人の聖地でした。大天使ミカエル(フランス語読みはミシェル)の啓示を受けたオベール司教によって708年に聖堂が建てられてキリスト教の聖地となるのですが、夢による啓示を悪魔のいたずらと考えたオベール司教の前には3度にわたって大天使ミカエルが現れ、3度目には司教の頭に指で触れて雷を落とし、司教が目覚めるとその部分に穴が開いていた事からようやく大天使の啓示だと信じたといいます。

 聖堂は966年にはノルマンディー公リシャール1世によってベネディクト会の修道院とされ、増改築を繰り返しながら13世紀にはほぼ現在のような形となり、中世以降、カトリックの聖地として多くの巡礼者を集める事となっています。

 百年戦争の際はイギリス海軍に対抗するための要塞として使われ、難攻不落を誇る事となります。モン・サン・ミシェルの付近は急速に潮が引く事から。大型の軍艦では攻略に時間が掛かると座礁してしまう危険性がある事も要塞としてのモン・サン・ミシェルの利点となっていました。

 その後もモン・サン・ミシェルの数奇な運命は続き、フランス革命後に修道院が廃止されると1863年までは監獄として使用され、荒廃の一途をたどる事となりますが、作家のヴィクトル・ユーゴーによってナポレオン3世に紹介されると1865年には修道院が再開され、今日に至っています。

 オムレツはそんな聖地を訪れる巡礼者にお腹いっぱいに食べてもらおうと始められたとされ、たくさん食べてもらうために特大サイズとなっています。

 パン屋の息子、ヴィクトル・プラールのもとに嫁いだアネットによって1888年に巡礼者のための宿が開かれ、当時のモン・サン・ミシェルは現在のような陸続きではなかった事から、限られた材料で栄養のある物をと考えた事が始まりなだけに、材料は卵とバターだけというシンプルなものといいます。

 最近、そんなモン・サン・ミシェルのオムレツの評判が悪くなってきています。店の入り口の看板には15ユーロと表記しておきながら、店内に入ると15ユーロのオムレツは子供用なので大人は注文できないとして、大人用の25ユーロの物を注文させられたり、内容が判りにくい表示にしておいて高価なロブスター付きのコースを注文させたりといった旅行者の書き込みが多く残され、旅のついでに名物をといった気軽な注文ができない様子が伝わってきます。

 実際に食べた人の高価な割には味気ないオムレツだったという感想も残されており、そのためだけに行ってみたいと思っていたのは間違いだったのかとも思えてきます。数奇な運命を辿ったモン・サン・ミシェルだけに、聖地なのか監獄なのかと考えたりもします。


スポンサーサイト

第2637回 難しい選択



 以前、知り合いが健康診断を受けた際、血液検査の尿酸値が異常な数値を示しており、何故、そのような高い尿酸値の人が普通に歩いて検査に来れたのかと担当医が首を捻るという事がありました。

 検査前日の夜から当日の朝まで食事をしないように指導されていますが、何らかの飲食を行い、それが影響したのではと思いながら、何を食べればそれだけ尿酸値を高められるのかについては、いまだに謎のままとなっています。

 血液中の尿酸値が日常的に高い状態が続くと、尿酸が関節などに蓄積され、それを異物と判断した白血球が攻撃する事で関節に炎症が起きて激しい痛みを生じます。

 特に重力に影響される事もあり、足の指の関節に症状が出る事が多く、激しい痛みは風が吹くという僅かな刺激にも反応して激しい痛みを生じてしまう事から、「痛風」と呼ばれて古くから知られた生活習慣病となっています。

 歩けなくなるほどの激しい痛みを伴う痛風ですが、悪い事ばかりではない事が最近になって判ってきています。先日、イギリスで行われた調査では、痛風の患者とそうでない人の追跡調査の結果、痛風の患者ではアルツハイマー病を発症するリスクが25%ほど低くなる事が判っています。

 尿酸には抗酸化作用があり、それによってパーキンソン病の原因となる神経の損傷を防ぐ働きがある事も示唆されており、血液中の尿酸値が高まる事によって、高齢者のQOL(生活の質)を引き下げる症状を防ぐ事に役立つ可能性が出てきた事になります。

 介護などの必要性や共有してきた思い出の欠損など、アルツハイマー病は家族を巻き込む悲劇としていわれる事も増えてきましたが、痛風と引き換えにというのは、かなり難しい選択のように思えます。


 

第2636回 新ジャンク



 ジャンクフードという食べ物のカテゴリーがあります。カロリーが高く、脂肪、塩分、糖分なども多く含まれている割にはビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素をほとんど含まない栄養的に価値のない食べ物として捉えられ、ガラクタを意味するジャンクという言葉が当てられて健康面へのマイナス要因が多くいわれています。

 安価なハンバーガーなどのファストフードやスナック菓子などがその典型例のように語られますが、改めて定義について考えてみると漠然としていて、意外と曖昧なものであるように思えてきます。

 カロリーが高く、高脂肪でビタミン類やミネラル類、食物繊維などのバランスを欠く物というとサシが大量に入った最高級のステーキ肉も含まれてしまいます。非常に高価な最高級の和牛肉はジャンクフードかと聞かれると、誰もジャンクフードの範疇には含めないと思います。

 健康的な食生活として推奨されているナッツ類も意外なほどカロリーが高く、塩分で味付けされている物が多い事から少しでも食べ過ぎるとカロリーと塩分の摂取量がオーバーしてしまう事になりますが、やはりナッツ類もジャンクフードには含まれません。

 そんな曖昧なジャンクの定義の中、新たなジャンクが私たちの生活に加わろうとしています。ジャンクスリープと呼ばれる質の低い睡眠で、ライフスタイルの変化によって急速に増えてきているとされ、今後、ジャンクフードに続く健康上の懸念事項になるともいわれます。

 ジャンクスリープはテレビや音楽を点けっぱなしで眠る事により、外的な刺激に睡眠後も脳が反応を続け、眠ってはいても休息できていないという質の低い睡眠状態を指し、ジャンクフードと同じように価値のない眠りとして捉えられています。

 寝室にテレビや音楽再生機器、パソコン、スマートフォンなどが置かれているという家庭は非常に多く、そうした機器類が気付かないうちに睡眠の質を下げ、不充分な休養を助長しているとされます。

 睡眠の質の低下が糖尿病や高血圧といった生活習慣病に繋がる事がいわれるようになってきた昨今、意外なところに健康を損なう要因が隠されているのかもしれません。


第2635回 田麸文化



 ずいぶん長い事、食べていないのですが、子供の頃は「田麩(でんぶ)」が大好きで、それだけでおかずはいらないとまで思っていました。今から思うと甘過ぎる味や食品らしくない鮮やかなピンク色など、よく親が食べさせたものだとも思えてきます。

 田麩は魚を三枚におろして茹で、骨や皮を除いた後に水気を搾って焙煎した後すり鉢でほぐして酒やみりん、砂糖、塩などで味付けをしながら煎り上げたもので、通常は鯛などの白身の魚を素材に食紅で色付けして仕上げられ、その色合いから桜田麩と呼ばれています。

 いつ頃、誰の手によって考案されたかについては謎となっていますが、一説には病気で食が細った夫を心配した妻が産土神のお告げに従って土佐節を粉にして酒としょうゆで味付けをして夫に食べさせたところ、夫の食が進み、病を克服する力が得られた事が由来になっているともいわれ、最初の田麩は白身魚ではなかった事が伺えます。

 中国にも田麩は存在していて、魚ではなく肉を使って作られています。肉の繊維を柔らかくほぐして仕上げられる事から「肉鬆(ろうそん)」と呼ばれ、豚肉か牛肉を使ったものが一般的に普及しています。

 日本の田麩がご飯にかけられるのと同じようにお粥のトッピングとして使われる事が一般的ですが、卵焼きに混ぜたり、総菜パンの具として使われる事もあるそうで、日本の田麩とは少し趣の違いを感じる事ができます。

 東南アジアにも田麩という食文化は見られていて、中国の肉田麩と同じようなものがタイやマレーシア、シンガポールなどで作られています。豚肉や牛肉、鶏肉、魚肉以外にカエルの肉で作る田麩も見られ、ミャンマーにはエビを使った田麩も存在しています。

 炒飯のトッピングや具材として使ったり、揚げたお焦げ状のご飯に乗せて食べるといった食べ方以外に、ベトナムの代表的な食文化であるフランスパンを使ったサンドイッチのバインミーの具としても使われ、食文化に溶け込んでいる事が判ります。

 日本では巻き寿司の彩りに使われているのを見掛ける事が多く、ピンク以外に緑色の物も見られ、中国、東南アジアの物と比べると独自の発展を遂げたものと思えてきます。懐かしく思い出しながら、巻き寿司の彩り程度で良いかと大人になった今は思えてしまいます。


第2634回 ばらとちらし



 子供の頃、我家では寿司飯に細かく刻んで甘辛く煮込んだ具材を混ぜ込んだ物を「ばら寿司」と呼んでいました。ばら寿司とは主に西日本で使われている言葉で、東日本では「ちらし寿司」と呼ばれる事を知り、最近ではインスタント商品のテレビCMの影響もあって全国的にちらし寿司が定着しているように思えます。

 ばら寿司の語源はにぎり寿司が一つの塊りになっている事に対し、バラバラの状態にあるためとされ、にぎり寿司を基本とした言葉という事が感じられます。寿司とは本来、バラバラの状態であった事を考えると、ばら寿司という言葉はにぎり寿司が誕生し、普及する江戸時代の後期以降のものという歴史の浅さが感じられます。

 ちらし寿司とは寿司飯の上に寿司ネタを散らして飾り付けた事が語源となっていて、江戸前の寿司屋で考案されたといいます。具材は寿司ネタが中心となる事から生の海鮮がほとんどで、細かく刻んで寿司飯に混ぜるという事は行われず、寿司ネタや刺身の状態の物を寿司飯の上に飾り付けられる事になり、ちらし寿司は海鮮丼に酷似したものという事ができます。

 ちらし寿司と海鮮丼の計画な違いは、盛り付けられる器がちらし寿司の場合、皿や重箱である事に対し海鮮丼では丼が使われる事、それ以上の違いとしてちらし寿司は寿司飯、海鮮丼は普通のご飯となっています。

 こうしてみると同じ物とされてきたばら寿司とちらし寿司の間には違いがある事が判ってきて、本来は別物であった事が伺えます。江戸前の寿司が普及する中、にぎり寿司ではないメニューとしてちらし寿司が親しまれ、刻んだ具材を混ぜ込むばら寿司の影響が及んでちらし寿司の寿司飯にも具材が入れられるようになった事が考えられます。

 ちらし寿司の中にはばら寿司に刺身をトッピングした豪華な物も見られ、ばら寿司とちらし寿司が完全に融合している事を感じさせてくれます。より美味しいものを求めた結果として、二つの食文化の融合を歓迎したいと思えてきます。


第2633回 ジェルへの注意



 昨年のヒット商品のランキングの中に洗濯用のジェルボール型洗剤がるのを見てやはりと納得しながら、洗剤の量を細かく指示してくる我家の洗濯機には合わないかもしれないと思っていまだに試せずにいます。

 洗濯を始める際に洗剤を計量する必要がなく、液だれもしないという手軽な便利さが人気との事ですが、透明感がある柔らかなジェルボールはインテリアの一部としてもお洒落な存在となるように思えます。

 手軽さから欧米ではすでに人気となっていたジェルボール型洗剤は、日本でも発売されると順調に売上を伸ばし、今後の洗濯用洗剤の在り方を変えるとまでメーカーが豪語するほどとなっていて、粉末から液状へと大きく変わっていった洗濯用洗剤の歴史を見ると、大きな変化が起こる可能性も感じてしまいます。

 今後も人気が続く事が予想されるジェルボール型洗剤ですが、急速に普及するものにはトラブルも付きもので、これまでの粉末や液体の洗濯用洗剤による事故の発生が年間25件程度であったものが、ジェルボール型洗剤の発売後10カ月で152件もの事故が起きています。

 ジェルボール型洗剤に関連した事故で最も多いのは、洗剤が目に入ったというもので、全体の3分の1近くにも及んでいます。ジェルボール型洗剤は特殊なフィルムで高濃度の洗剤を包んでいるのですが、綺麗な色合いと柔らかな感触で幼児がおもちゃと勘違いしてしまい、遊んでいるうちにフィルムが破損して中の洗剤が飛び出してしまう。フィルムは水に溶けるように作られているため、濡れた手で洗剤を扱っているうちにフィルム同士がくっついてしまい、それを剥がそうとしているうちにフィルムが破損して洗剤が回りに飛び散るといった事例も見られています。

 ゼリーなどのお菓子に似ている事から、誤飲といった事故も起こっていて、いずれの場合もジェルボール型洗剤による事故はこれまでの洗剤よりも重症化する傾向があるとされ、これまでの洗剤以上の注意が必要ともいわれています。

 ジェルボールの中に入っている洗剤の濃縮度が高いために、一旦事故が起こるとこれもでの洗剤よりも重症化しやすいとされ、誤飲や目に入った場合、従来では見られなかったような症状も発生する事が考えられます。

 今後、普及が進めば消費者の側の接し方も定着してきて、事故の発生も少なくなっていく事は考えられるのですが、身近なところに潜む危険という認識は持っておかないとならないのかもしれません。


第2632回 回転と固定



 「固定寿司」、最初にその呼び名に出会った時、何を指しているのかはすぐに理解できたのですが、あまりの事に思わず笑ってしまった事が思い出されます。

 店内に設置されたコンベア上に乗せられた小皿の寿司を、客が好きな物を選んで食べる回転寿司に対し、固定されたカウンターで寿司職人から直接寿司を供される従来の寿司屋のスタイルを固定寿司と呼ぶそうで、元々はたくさんの客に寿司を効率よく提供するための亜流であった回転寿司が、いつの間にか本流になっていたという印象も受けてしまいます。

 回転寿司は1980年代以降に急速に増えてきた印象があるのですが、歴史はそれよりも古く、1958年、大阪に最初の回転寿司店となる「元禄寿司」がオープンしています。

 立食い寿司店を経営していた白石義明がビール工場で見掛けたコンベアシステムにヒントを得て考案したもので、たくさんの客に効率よく寿司を提供する装置として「コンベア旋廻食事台」が製作され、1962年には「コンベア附調理食台」の名称で実用新案出願が行われています。

 基本的にセルフサービスであるために人件費を低く設定できる事や、チェーン店では一括した大量仕入れが可能な事から食材のコストも下げる事が可能で、それまで高価なイメージが強かった寿司を安価に食べる事ができるだけでなく、好きな物を好きなだけ食べられるという気軽さも人気となり、回転寿司は急速に数を増やしていきました。

 最近の傾向として他店との差別化から寿司以外のサイドメニュー充実が図られ、回転寿司店に来店しながら寿司以外の物を食べるといった事や、食べたい物をタッチパネルのモニターで注文し、届けられた物を食べる事からコンベア上の寿司には目もくれないといった事が見られ、回転寿司という食文化は変貌を遂げつつあるように思えます。

 回転寿司店が急速に増え始めた頃、回転焼き肉などの回転寿司のシステムを応用した例も見られましたが、いずれも定着はせず、寿司に特化された独自の文化となっている事が興味深く、再編が進んでいるともいわれる業界の向かう先について注目しています。


 

第2631回 謎の耐性



 無味無臭である事から、密かに食べ物や飲み物に混ぜて徐々に相手を弱らせ、原因不明の病のように見せ掛けて殺害する事ができる事から「賢者の毒」と呼ばれ、後に体内に蓄積して容易に検出でき、犯行がいつ頃から誰の手によって行われたのかを推察できるため、「愚者の毒」と呼ばれたヒ素。現在でも生物に対する毒性から農薬や防虫剤、半導体やLEDの素材として使われています。

 ヒ素の怖ろしさはその毒性というよりもヒ素は元素であり、それ以上分解する事ができないため、自然に無毒化されるという事がない点にあるように思えます。一度、土壌が汚染されてしまうと、時の経過によって安全性が回復するという事はなく、有効な回収手段がない限り将来に渡って危険性が続く事となってしまいます。

 また、自然界にも広く分布している事から、土壌や湧水などに混入している事があり、知らずに生活しているとヒ素中毒を起こしてしまうという事も見られています。

 アルゼンチンの北部、標高4000メートルにある村では、近くにある火山の岩盤から漏出したヒ素が地下水を汚染し、WHOが定めたガイドラインの20倍ものヒ素が村人が使う生活用水に含まれているといいます。

 それでも村人にヒ素中毒の症状は見られておらず、村で見付かった7000年前のミイラからもヒ素が検出された事から、村でははるか昔からヒ素汚染が続いていたと考えられています。

 村人を対象とした研究では、ヒ素を無害化するDNA情報が発見されており、他の地域に棲む人よりも明らかにその遺伝子情報を持つ人が多い事からも、村人はヒ素に対する耐性を獲得していた可能性がある事が判っています。

 現時点ではその働きによってヒ素が無害化されているのか、長い時間を掛けて耐性を獲得したのかなどについては不明とされていますが、声明の可能性について深く考えさせられる事例となっています。


 

第2630回 移ろうもの(2)



 リノール酸を豊富に含むエサを与えたところ、ラットの毛艶が急によくなった事からリノール酸が健康によい影響をもたらす事がいわれるようになり、リノール酸神話と呼ばれるものがはじまりました。

 食用油やマーガリンなどの原料にもリノール酸が豊富なベニバナなどが使われ、ヘルシーな素材を使っている製品としてアピールが行われていました。

 オレイン酸が血中の悪玉コレステロールだけを比較的長時間低下させる事に対し、リノール酸は総コレステロールを短い時間だけしか下げない事が知られるようになると、リノール酸がヘルシーであるという事が揺らぎはじめ、最終的にアラキドン酸に変化する事がいわれるようになるとリノール酸神話は崩壊する事になってしまいます。

 アラキドン酸は体内に存在する脂肪酸ですが、炎症の悪化を助長したりアレルギーを悪化させてしまうとされ、ガンに罹患するリスクを高めてしまうともいわれます。

 そのため、リノール酸の摂取を控える事がいわれるようになり、豊富に含んでいるとされるベニバナも品種改良でリノール酸をほとんど含まないものへと変化させられていました。

 脳細胞の柔軟性を保ち、学習効率を高めるとしてDHA(ドコサヘキサエン酸)が話題となり、DHAがどのように脳細胞の柔軟性を高めるのかという事が知られるようになると、DHAと共に脳細胞の柔軟性を確保している重要な存在がアラキドン酸である事が判り、かつてリノール酸の最終産物として健康に悪影響をもたらすとされたアラキドン酸は、脳を活性化する成分として注目を集め、サプリとして製品化もされています。

 一つの神話を崩壊させるほど危険視されたものがサプリとして製品化される、かなりの扱いの違いのようにも思えますが、新たな一面が発見されて、必要な物が必要とされるという事には大いに賛成してしまいます。


 

第2629回 移ろうもの(1)



 健康に関する情報は時代と共に大きく変化する事がよく見られ、かつて悪者視されていたものが高評価されるようになったり、それほど意識されていなかったものが敬遠されるようになったりという事があり、その都度興味深く思えてきます。

 かつて脂質は食べ物のカロリーを引き上げ、肥満に繋がったり生活習慣病を助長したりと弊害の多いものとして捉えられていました。単に油や脂として扱われていたものが、体内で吸収される際の状態、脂肪酸として細かな分類が行われるようになると、脂肪酸の中にもヘルシーなものとそうでないものがある@事が知られるようになります。

 不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らして心臓病のリスクを下げ、飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増やすので摂取量を制限すべきといった事がいわれていたのですが、飽和脂肪酸が血中コレステロールに影響を与えない事が確認され、脂質はそれほど悪者視すべきものではない事が知られるようになってきました。

 逆に脂肪酸の不足やバランスの欠如によって代謝機能が低下するため、健康を意識して脂質の摂取を避ける事は健康やダイエットに悪影響を与えてしまう事も判り、健康作りには脂質は欠かせないものとなってきています。

 それに対し、最近悪役となってきたのが糖質(=炭水化物)で、糖質制限ダイエットの流行以降、糖質の摂取が肥満や生活習慣病をはじめとする健康面のマイナスをもたらすものとして、かつての脂質のような扱いをされるようになってきています。

 中には人類の歴史の中で農耕を行うようになった事が僅かな期間である事から、人は糖質を摂取する事には慣れておらず、糖質に日常的に接する事に体が対応できていないとする極端な意見も見られ、脂質以上の悪者となってきているようにも感じられます。

 雑食性である人は、果実や種実類を通して糖質に接してきていて、決して糖質の摂取に体が対応できないという事はないため、糖質をそれほど悪者視する必要はないと思いつつ、今日のように食べ物の選択の幅が広がった時代も稀といえるので、何かの成分が悪いというよりバランスを欠いてしまった事が最大の問題のように思えてきます。


 
プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR