第2814回 年の瀬の食



 年の瀬を迎え、今年も一年があっという間に過ぎてしまって、これといった事ができていない事を残念に思いながら、一年を無事に終える事ができると感謝しなければと思っています。一年をきちんと締めくくらなければと考えていると、最後に行う事といえば行事食の「年越し蕎麦」ではないかと思えてきます。

 日本人にとって除夜の鐘を聞きながら年越し蕎麦を食べるというのは、大晦日に行う定番の行事と思えるのですが、実際に蕎麦を食べる人は全体の6割に留まるとされ、意外と低い比率のようにも思えます。しかし、テレビ番組の視聴率を考えると6割というのは驚異的な定着率のようにも思え、一年を終えて新たな一年を迎えるにあたって日本人に欠かせないものとなっているとも感じられます。

 大晦日に年越し蕎麦を食べる事については、蕎麦が長い麺である事から「長寿を祈願する」、蕎麦はグルテンが少なく、切れやすい事から「労苦を断ち切れる」、金細工師が散らばった金粉を集めるために蕎麦団子を使った事から、「金運を呼び込む」、「運気が上がる」といった意味があるとされますが、いずれも後付けの縁起のように思えます。

 年越し蕎麦は江戸時代、一年の仕事納めとなり大変な忙しさとなる商家で、遅くまで仕事をする奉公人が仕事を終えた後、賄いとして振舞われていたものが広まったとされます。また、大晦日に限らず毎月、忙しくなる月末に三十日蕎麦として食べられていたものが、大晦日に特化されて広まったともいわれます。

 それ以外の由来としては鎌倉時代にまで遡るものもあり、1242年に承天寺を建立した聖一国師と宋の商人、謝国明が不況に喘ぐ博多の街の人たちに温かく新年を迎えてもらおうと蕎麦を振舞ったところ、翌年から日宋貿易が盛んになり、街が活気を取り戻し、「運蕎麦」と呼ばれて年越しに蕎麦を食べる習慣が広まったとされ、今日でも年越し蕎麦を運蕎麦と呼ぶ例を見掛ける事ができます。

 室町時代にも由来となる話が残されていて、関東で三大長者の一人とされた増淵民部が、大晦日に家人と蕎麦を食べて無病息災を祈願したものが広まったともいわれます。増淵民部については詳細な資料が残されておらず、謎の人物とされますが、前述の江戸時代の商家の話は、実は増淵民部の家の事とする説もあります。

 月末の三十日に蕎麦を食べる事についても、行われはじめたのは増淵家であったとする説もあり、少なからず増淵民部は年越し蕎麦の成立に関わっているように思えるのですが、蕎麦が麺の状態になる蕎麦切りの登場は江戸時代に入ってからの事となっているので、鎌倉時代や室町時代では「そばがき」を食べていたと考えられる事から、今日の年越し蕎麦とは趣の異なるものと思えてきます。

 鐘の音を聞きながら一年に思いを馳せ、新たな年を思いながらいただく年越し蕎麦ですが、108回撞かれる除夜の鐘の107回は旧年中に、最後の1回は年をまたいで新年に撞かれます。年越し蕎麦は旧年中に食べてしまわなければいけないとされるので、最後の鐘が撞かれる前に食べてしまわなければと思っています。


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第2813回 長寿の問題



 一番の願いは?と聞かれると、やはり一緒に暮らす猫の「坊ちゃん」の健康と長寿となるのですが、昔と比べて長寿となったといわれる猫たちにも人間と同じある困った変化が生じている事が判ってきています。

 推定では日本人の100万人余りが罹っているとされ、認知症の原因の半数を占めるとされるアルツハイマー病。いまだに有力な治療法は確立されておらず、長寿を謳歌する人間特有の病気と考えられてきましたが、猫もアルツハイマー病になる可能性がある事が東京大学大学院農学生命科学研究科の研究チームによって明らかにされています。

 認知症の原因となる疾患には脳血管性認知症やレビー小体型認知症が知られていますが、それらを抑えて最も多くの認知症の原因となっているのがアルツハイマー病で、日本の患者数は65歳以上の15%を占めているにも関わらず、予防法や根本的な治療法は見付かっておらず、認知機能の低下を遅らせるといった対症療法が行われるのみとなっています。

 そんなアルツハイマー病の患者の脳をCTやMRIを使って観察すると、精神機能に関係した「大脳皮質連合」や記憶を掌る「海馬」を中心に特殊なタンパク質であるアミロイドβが神経細胞に付着した「老人班」や神経細胞の脱落、高リン酸化タウタンパクが神経細胞内に蓄積した「神経原繊維変化」が確認でき、アルツハイマー病と診断する事ができます。

 今回の研究ではペットとして飼育されていた25匹の猫を対象に、死後に脳の組織を詳しく解析したところ、8歳を超えた頃から猫の脳にもアミロイドβの沈着が確認され、14歳頃から高リン酸化タウタンパクの蓄積も起きる事が観察されていました。

 高リン酸化タウタンパクの蓄積の結果としては神経原線維変化も認められ、病変が確認された猫では海馬の神経細胞の脱落も見られていました。

 アミロイドβの蓄積は犬などでも確認されていますが、タンパク質の形が同じなのは猫だけとされ、高リン酸化タウタンパクの蓄積が確認されているのは猫のみとされています。

 記憶や言動、性格の変化、場所や日時などの基本的な状況の理解といったアルツハイマー病特有の変化を確認する事が困難なために、ほとんど気付かれないままとなっていますが、長寿化が進んだ猫の間にも認知症といった困った問題が生じているのかもしれません。


第2812回 ノロの話(3)



 大好きな時代劇の中で、親友の婚礼を狙って襲撃を掛けようとする族を退治するために、主人公が仮病を使って婚礼を欠席するという場面が出てきます。その際、欠席の口実とされたのが生ガキによる食中毒で、今も昔も冬場の食中毒における生ガキの存在は大きいように思えてきます。

 ノロウィルスの感染による食中毒の報告は11月から3月に掛けてという時期に集中していて、その理由としてカキが旬を迎えて美味しくなる事が上げられています。

 カキは夏場に旬を迎えるイワガキを除き、海水温が高くなる5月から9月に掛けて産卵を行うために、産卵の直後から栄養を蓄え始め、産卵の直前まで肥り続ける事から11月から4月頃までが美味しいとされます。

 4月も遅い時期になってくると卵を持つものが出てくる事から、商品価値が落ちるとして出荷されなくなるために、実質的にカキを美味しく食べる事ができる時期は11月から3月とノロウィルスの感染拡大期と重なっています。

 カキがノロウィルスを媒介してしまう理由は、人間の下水処理によって河川に流入したウィルスを環境の浄化作用を持つカキやアサリなどの二枚貝が取り込んでしまうためで、ウィルスに感染する事のないカキは何事もなくウィルスを保有してしまう事になります。

 鮮魚売り場で見掛ける「生食用」と記されたカキは、そうした二枚貝の事情を考慮した形で一定期間飼育される事もあり、最近ではカキがウィルス感染の原因と特定される事は減ってきていて、その代わりに感染経路の特定が困難な人から人への感染が増えてきているといいます。

 ある研究では吐瀉した物を洗浄し、乾燥させた床でも2週間ほどは感染力を保ったままのウィルスが残る事があるとされていて、ウィルスが10~100個とわずかな量を吸引しただけでも感染し、発病してしまう事がある事から、乾燥した床から舞い上がった粉塵に付着したウィルスが感染を拡大させると考える事もできます。

 インフルエンザ流行の季節が訪れた事もあり、各所で消毒用のアルコールが常備されているのを見掛けますが、ノロウィルスにはあまり効果がない事を意識して、感染予防に努めなけらばと思えます。

 最近の研究では、同じカキでも「柿」に含まれる渋味の素、タンニンにノロウィルスの感染力を奪う働きがある事が示唆されていました。生食のイメージからウィルスと結び付けられてしまいがちなカキ(牡蠣)ですが、同じ響きのカキ(柿)が感染拡大を防ぎ、カキの不名誉をカキが挽回と、何やら難しげないい回しになってしまいます。


第2811回 ノロの話(2)



 ノロウィルスによる感染症は年間を通して見られていますが、特に11月から3月にかけての時期に多く見られ、インフルエンザの流行時期と重なる事から風邪の症状の一環と考えられてしまう事も多くなっていました。

 それが影響した事もあり、ノロウィルスの発見は1986年と、意外と最近の事となっています。アメリカ合衆国、オハイオ州ノーウォークの小学校において急性胃腸炎が集団発生し、患者の糞便の検査中にウィルスが発見された事から地名にちなんで「ノーウォークウィルス」と名付けられています。

 本格的な形態が明らかにされるのは1972年の事で、電子顕微鏡を使った検査でウィルス粒子の特徴が観察され、「SRSV(小型球形ウィルス)」と呼ばれるようになり、世界各地から胃腸炎や食中毒といった症例が報告されるようになっています。

 今日のようなノロウィルスという言葉の登場は2002年の第12回国際ウィルス学会小委員会において、ノーウォークの「Nor」に「Virus」を連結して名称とする際、ラテン語の文法によって「O」をはさんで連結する事から「ノロウィルス」となり、一連のノーウォーク様ウィルスがひとまとめにされて「ノロウィルス属」と呼ぶ事が承認されています。

 そのためノロウィルスは属名となり、ノロウィルスというウィルスは存在しない事になります。一連のウィルスによる症状はノーウォークウィルス感染症と呼ばれるべきものとなり、2011年に札幌で開かれた国際微生物学連合会議でもその呼び名を使う事が推奨されています。

 世界中には「ノロ」という姓が多く、子供がいじめやからかいを受けてしまう事も懸念されているため、ノーウォークウィルスの名称使用が進められてはいますが、ここまで定着してしまうと覆す事の難しさが感じられ、感染の流行以外にも困った問題を持つウィルスと思えてきます。


第2810回 ノロの話(1)



 冬場を迎え、寒さが本格化してくると、ノロウィルスの流行という怖ろしげな話を聞くようになって久しいように思えます。以前から冬場の魚介類の食中毒では中心的存在ではあったのですが、いつの頃からか魚介類を食べた本人だけの問題ではなくなってきていて、人から人へという感染症に変わってきています。

 元来、ノロウィルスは感染力が非常に強く、インフルエンザウィルスの1000倍の感染力を持つだけでなく、体内に入り込んだウィルスはインフルエンザウィルスが8時間後に一個のウィルスが100個になり、24時間で100万個にまで増殖して初めて発症する事に対し、ノロウィルスは10個~100個で発症するとされるなど、感染しやすいだけでなく感染すると発症するリスクも高くなっています。

 ノロウィルスの感染は経口感染となっていて、口から入り込んだウィルスは小腸へと進み、腸壁の粘膜に侵入して8時間ほどで数十万倍に増殖して小腸の腸壁を破壊します。そのため激しい嘔吐と下痢が生じるのですが、腸壁を破壊し尽くしたウィルスは増殖をストップさせて体外へと排出されていきます。下痢の症状にも関わらず下痢止めの薬を利用しない方がよいとされるのは、すでに増殖がストップしたウィルスを体外に排出するためで、止めてしまうと体内にウィルスが居座ってしまう事にもなりかねないとされます。

 通常、ウィルスの研究は適切な動物培養細胞を探して感染させ、増殖させる事で研究用のウィルスを得ていますが、ノロウィルスは実験室で培養して増殖させる方法が見付かっておらず、そのために検査や治療方法に関する研究が他のウィルスよりも大きく遅れてしまっています。

 研究が遅れている上にノロウィルスは数年ごとに新たなタイプが登場し、一旦、感染して免疫が確立されても1、2年で免疫の効果が失われてしまうとされ、ワクチンが開発できない上に感染した経験があるからといって安心できないという困った特徴を持っています。

 治療法も失われた水分を補って脱水症状を防ぎながら苦痛に耐え、ウィルスの排出が終わる事を待つしかなく、感染を防ぐ重要性を感じてしまいます。この冬は新型が登場し、大規模な流行が心配されています。何事もなく春を迎えられる事を願ってしまいます。


 

第2809回 左右測定



 病院や公共施設の中でたまに見掛ける血圧計があり、時間がある時に計ってみたりするのですが、気持ちを落ち着かせて正確な計測ができるようにという配慮から流されるナレーションとBGMがおかしくて、いつも笑ってしまって正確な数値か判らなくなってしまいます。

 最近では家庭用血圧計も進化して、簡易的な大きさの割にはかなり正確な測定ができるとの事なので、健康管理の意味からも定期的な血圧の測定をしておかなければとも考えています。

 家庭用の血圧計は手首や指先で簡単に計る事ができ、とても便利だと思うのですが、日常的に高血圧を気にしていて、より正確な数値を把握したい場合は上腕部で測定する血圧計の方が良いとされます。

 血圧は心臓が送り出す血液に掛けられている圧力である事から、できるだけ心臓に近い場所で計った方が正確な数値を得る事ができます。手首や指先は末端に近い事から、末端部から戻ってきた圧力波の影響を受ける事から、数値の正確さが阻害されてしまうともいわれます。

 心臓に近い位置で圧力を測定できそうな場所というと、頸動脈が最も近くて表面からアクセスできる場所となるのですが、血圧計は帯状のカフと呼ばれる計測帯を巻き、それを膨らませて血流を止める事から頸動脈では大変な事となるため、次に近くて計測しやすい場所という事で右腕の上腕部が最適とされます。

 心臓は左側にある事から左腕の方が近くて良いように思えますが、血液を全身に向けて送り出す左心室から出る最初の血管は上行大動脈となっていて、右斜めの方へと伸びているため、心臓から送り出された血液の最短の計測場所は右腕の上腕部となっています。

 血液が左腕へ向かうには頸動脈を通って幾つか分岐した後、下行大動脈を経由してからとなっていて、そのために右腕と左腕で計測された血圧は平均で2~5mmHgくらいの違いが生じるとされます。

 血圧を正確に把握するという点では右腕の上腕部だけの測定で事足りるのですが、左腕でも計ってみてその数値に大きな開きがある場合、何らかの血管の障害が隠れている事があります。

 加齢と共に進行する動脈硬化が典型的とされるのですが、血管の中を血液が流れにくい状況ができてしまっている事が考えられるので、医師の診断を受けたり、生活改善を行うなどの予防策を早期に採ることも可能となるので、左右の腕で血圧を計ってみる事はお薦めかもしれません。


第2808回 冷えの対処



 ありがたい事に冷え症とは無縁の体に生まれ付いたと思って生きてきたのですが、最近になって自分は冷えによる不快感に対する耐性が強いだけで、本当は冷え症なのではないかと思うようになってきました。

 人間は脳や心臓が良好に稼働するように体の中心部分の温度が37度程度に保たれるように作られていて、温度が高い時は末梢の血管を拡張して血流を促進し、体の中心部に溜まる熱を外へと逃がす。逆に寒い時は末梢の血管を収縮させて、体内の温度が外へ逃げてしまわないように調整しています。

 そうした働きは交感神経によって掌られているのですが、冷え症は交感神経に異常が生じて調整機能が充分に機能しない事によって起こるとされていて、一見、体が冷えるという同じような症状に見えながら、大きく分けると3つのタイプに分かれるとされます。

 一つ目のタイプは交感神経が過剰に働いて血管を収縮させてしまっている四肢末端型冷え症と呼ばれるタイプで、暖かい気温の中にいても末梢の血管が収縮したままとなっているため、手足の先端などが冷たくなってしまうという特徴があります。

 内臓型冷え症はその逆で、加齢などによって交感神経の働きが鈍くなると、気温が下がってしまっているのに末梢の血管が収縮せず、体からの熱の放散が続いてしまうために手足は温かいのにお腹や腰といった体の中心部に冷えが生じてしまいます。

 もう一つは下半身型と呼ばれる冷えで、加齢などによって腰などの筋肉が硬くなり、交感神経を刺激してしまうために下半身の血管が収縮してしまって熱の循環が弱くなり、下半身に冷えが生じてしまいます。

 冷え症への対処はそうした症状を見極めて、自分がどのタイプに該当するのかで有効な方法が変わってきます。定番の靴下の重ね着は四肢末端型の場合、締め付けによって血行を阻害して、より症状を悪化させる事があり、血行を促進する生姜などの摂取は内臓型の場合、体外への熱の放出をより大きくしてしまいます。

 体質だからと諦める声も多く聞かれる冷え症ですが、冷えは万病の元。正しく理解して対処したいと思えてきます。


第2807回 筋肉痛の正体



 年末年始という事もあり、お酒を飲む機会も増えるという事を聞かされるのですが、いつもより多めにお酒を飲んだ翌日、筋肉痛に悩まされた事はないでしょうか。

 盛り上がった宴会ではしゃぎ過ぎてしまった。酔っ払って寝ている間に力が入っていた。憶えてはいないが暴れていたのではなどと考えて、単なる筋肉痛で済ませてしまうのですが、実はその筋肉痛は「アルコール筋症」と呼ばれる症状だったりします。

 アルコール筋症はアルコールを摂取した事によって生じる筋肉の損傷で、比較的お酒に弱い人の方が起こりやすいとされますが、誰にでも起こる症状となっています。

 筋肉は繰り返し負荷を掛ける事で筋繊維に損傷が生じ、その損傷が筋肉痛の原因となります。しかし、超回復とも呼ばれる筋繊維の修復が行われ、筋繊維はそれまで以上に太く頑丈になってより大きな力を発揮する事ができるようになります。

 アルコール筋症も筋繊維に損傷が生じるという点では筋肉痛に似たような感じがするのですが、メカニズムは大きく異なっており、アルコールの摂取が体に及ぼす悪影響の一つと考える事ができます。

 どれだけ楽しい宴会の席でも、高価なワインであっても、体内にアルコールが摂取されると体はすぐに毒物として捉え、毒素を無害な状態に分解して排出するように肝臓の働きを強めます。

 その際、必要とされるのが大量のタンパク質とビタミンB群をはじめとするビタミン類、水分とされ、お酒と共に食べた肴程度の栄養素ではすぐに不足してしまう事から、体内の備蓄分を取り崩して賄う事になります。

 その備蓄されている場所が筋肉であり、アルコールの分解を最優先するために筋肉が分解され、筋繊維は損傷を受ける事となって筋肉痛に似た状態となってしまいます。

 アルコール筋症の困ったところは、運動によって損傷を受けた筋繊維は修復されて太く育つのですが、アルコール筋症で生じた損傷は修復されても筋繊維に成長はなく、むしろ筋繊維が痩せてしまう事もあるという事にあります。

 最近、加齢と共に筋力が低下し、その分、内臓肥満が進むサルコぺニア肥満が問題化してきていますが、加齢によってアルコールの分解能力が低下すると、アルコール筋症を起こしやすくなるだけでなく、筋力の低下の原因ともなりかねないため、サルコぺニア肥満を助長し、生活習慣病へと繋がってしまう事も考えられます。

 お酒を飲んだ次の日、筋肉痛や体の動かしにくさといった症状を感じたら、過ぎた飲酒を少し反省すべきなのかもしれません。


第2806回 頭部強打



 小学校高学年の頃、短い期間で引っ越して行った転校生がいました。同じクラスというだけでなく、家が近くて学校の帰りに少しだけ遠回りをするとその子の家の前を通って帰る事ができるという事もあって、すぐに親しくなって一緒に遊んでいた事が思い出されます。

 ある日、近所の公園の砂場で遊んでいると公園の反対側からその子が走ってきて、砂場の前にある胸の高さくらいの鉄棒をしゃがんで潜り、通過したと思って立ち上がると鉄棒の真下にいたため、鉄棒で思いっきり頭を強打するという事がありました。

 走ってきていたという勢いもあり、かなりの強さで頭をぶつけてしまって相当な痛みがあったと思われます。鈍い音が辺りに響き、心配そうに見守る私たちの方へたどたどしくゆっくりと少し歩いた後、立ち止まって急に両手を横に広げ、手首は直角に下に向けて体で「T」の字を書くようなポーズを採りました。

 何が起こっているのか意味が判らず、呆気にとらわれていたのですが、後になってその時の事を聞くと、「あの時は、そのポーズを採る事で痛みが和らぐような気がした」と説明され、後々、友達とその時の事を思い出して笑ってしまうという事がありました。

 頭を強打した事で意識を失ったり、放心状態や錯乱状態に陥る「脳しんとう」は広く知られた症状であり、多くの場合、15分程度で意識が戻る事もあって、出血を伴うような外傷がない場合は治療の必要を感じないという軽い見方をされてしまいます。

 しかし、脳しんとうを起こした脳は不安定な状態になっていて、後になって頭痛や目まい、鬱状態や不安などの症状が出る事があるとされます。その状態で再び頭を強打してしまうと、脳細胞に変化が生じて認知症に似た症状を引き起こす事もあるそうで、頭を強打してしまうという事には充分な注意が必要となっています。

 スポーツをしている最中に頭を強打し、意識を失う事はないのですが、しばらく放心したような状態になり、すぐに正常に戻って競技を続けるという事はありがちなのですが、そうした軽い脳しんとうでも甘く見てはいけないともいわれます。最近ではサッカーをする子供が増えていますが、米国サッカー協会が10歳以下の子供にヘディングを禁止しているほど、脳しんとうには危機感を持って接しなければいけない事を頭の片隅に置いておかなければと思っています。


第2805回 報告の意味



 肉加工品、赤身肉でガンを発症するリスクが高まる。前々からいわれていた事で、それほど目新しい情報ではないのですが、情報の出処がIARC(国際がん研究機関)というWHO(国際保健機関)の附属機関であった事から、WHOが肉類の発ガン性を認定したという捉えられ方がされて大きな騒ぎとなっていました。

 日本ではそれほどの騒ぎとはならなかったようなのですが、ヨーロッパでは肉類の売上が2割近くも落ち込んだとして、狂牛病パニック以来の衝撃となったともいわれています。

 ソーセージやハムなどの肉加工品には肉の発色や風味を良くし、肉同士の結着性を上げて食感を良くするという事から亜硝酸ナトリウムが使われていて、それが体内でアミノ酸の一種であるアミンと反応すると発ガン性のある物質、ニトロソアミンとなる事や、赤身肉の色素の素となる鉄分には活性酸素を発生させてガンのリスクを上げてしまう事は繰り返しいわれてきました。

 今回、そうした情報が何故、今頃いわれているのかと不思議に思えてくるのですが、IARCでは一年に3回、「モノグラフ」と呼ばれる調査報告書を出していて、毎回、特定のテーマを設けて特集しています。

 モノグラフではテーマごとに専門家が集められ、世界中から入手可能な研究論文を探し出して内容を検討、どのくらいの論文が結果として発ガン性を指摘しているかという見地から発ガンの確実性を判定しています。

 10月に出されたモノグラフのテーマが肉加工品や赤身肉であった事が、今回のタイミングでの騒動の発端となったという事ができます。

 今回のモノグラフによる報告では、肉加工品は「グループ1」、赤身肉は「グループ2A」に分類された事も、肉類の危険性を示されたような印象を受けてしまうのですが、モノグラフでのグループ分けは危険度を示すものではなく、論文の結果の一致度を示すものとなっていて、グループ1だから強力な発ガン性を持つという事ではなく、多くの論文の結果がグループ1に分類されたものの発ガン性を同じように示しているというだけで、発ガン性の強弱は関係なくなっています。

 肉加工品や赤身肉については、以前から発ガン性は指摘されてきてはいますが、それだけを食べ続けるという事はなく、一緒に食べている物に含まれている成分によってリスクは相殺されている事も考えられます。必要なのはバランスだと改めて思わされてしまいます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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