第2830回 情報把握



 最近、事前に遺伝子検査を行って、体質を正確に把握した上でダイエットに取り組むという事が話題になっています。これまでのダイエットは個人差が大きく、ある人は理想的に痩せられたのに、ある人には全く効果がないといった事が頻繁に見られていたので、体質の把握は効率的なダイエットに繋がると思えます。

 検査キットを購入し、頬の内側の細胞を採取してメーカーに送付すると遺伝子検査が行われるという手軽なもので、ダイエット市場もここまできたのかと技術の進歩に驚かされてしまいます。

 日頃、テレビを見ていてもDNA鑑定や遺伝子検査、染色体といった言葉が聞かれ、細胞の中の核に含まれる情報に触れる事が身近になったと感じられる反面、言葉としては知っていても漠然としていて、正確な意味として捉えていないようにも思えます。

 DNA鑑定と遺伝子検査に親から受け継いだ遺伝に関わる事を調査するという感じで、ほぼ同じ事のような気がするのですが、DNA鑑定は身体的特徴や遺伝情報を示さない部分を分析するもので、特定の遺伝子の内容を調べるものではなく、主に親子関係や個人の特定、血縁関係を調査する目的で行われています。それに対し遺伝子検査は遺伝情報を調べる事で将来的な病気のリスクや治療法、体質、皮膚や目の色などを調べる事ができます。

 DNAと遺伝子も同じものを指しているように思われがちですが、DNAは遺伝情報を記録するための媒体を指し、遺伝子はそこに書き込まれた情報を指しています。よく遺伝子の事を体の設計図といったいい方をしますが、その設計図を記録しておくものがDNAとなり、同じもののようで指しているのは違うものとなっています。

 DNAは複雑な遺伝情報を記録しておく事から意外なほどサイズが大きく、2メートル近くにも達してしまいます。そのままでは細胞の核に収まりきれない事から、特殊なタンパク質と結合して30ナノメートルという極小サイズになって核に収められ、極小サイズとなったDNAはクロマチンと呼ばれています。

 クロマチンのままでは遺伝情報を取り出す事ができないため、細胞分裂の際にはXの字に似た紐のような形状となり、その際、特定の薬品を使う事で色を染めて観察しやすくなる事から、「染色体」という名前で呼ばれるようになっています。

 体の中の事で身近であるといえなくもないのですが、何となく複雑に思えて馴染めないものを感じてしまうのですが、手軽に遺伝子検査が行えて、健康作りに役立てられるというのは良い技術のようにも思えます。


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第2829回 マイクロの驚異



 何かのセレモニーが開かれていて、その途中で一斉に風船が大空に向かって放たれ、風に流されながら空に向かって昇っていく姿を見ると、とても華やかなものを見たという感じと共にその後の展開を考えて暗澹たる気持ちになってしまう事があります。

 風船は空に向かって昇っていき、気圧が下がる事でさらに膨張してやがて破裂し、その破片は海を漂う事になるといいます。それを好物のクラゲと勘違いして海ガメが食べてしまい、消化されずに胃の中に残り続ける事があります。

 風船の破片に限らず、人の営みの中から出されたプラスティックの小片が海洋を漂い、環境に思わぬ影響を及ぼしている事が報告される事がありますが、プラスティックの小片の最小クラスの物、マイクロビーズが大変な事態を引き起こすとして注目を集めてきています。

 マイクロビーズは直径が0.5ミリ以下のプラスティックの粒子で、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどが原料としては多く使われているといいます。

 毛穴の汚れを落とす事ができるとされるスクラブ洗顔や歯垢の除去力が大きいという歯磨きなど、私達の生活の中にも広く使われていて、洗顔や歯磨きをした後、生活排水に混じって環境に放出されてしまいます。

 マイクロビーズの毒性は環境中を漂う内に農薬や重金属を引き付ける力が強いとされ、毒物を吸着した状態でプランクトンなどと間違われて小魚の体内に入り、それが食物連鎖によって生体濃縮される事にあると指摘されています。

 世界的にマイクロビーズを規制する動きが広がってきていて、数年中に世界中から姿を消すという予測がされていますが、環境中に放出された物を回収するには困難を極める事が考えられるので、抜本的な対策の登場を待たなければならない事になります。

 海流によって日本の近海はアジアの浮遊物が集まりやすく、日本人は魚を食べる量も多いとされます。いつか大変な問題として取り上げられ、それがスクラブ洗顔によってさっぱりとした報いといわれると、何だか複雑な気持ちになってしまいます。


第2828回 血管の若返り

 以前、仕事でご一緒させていただいた事もあり、タレントの阿藤快さんのファンだった事から、突然の訃報にはとても驚いてしまいました。

 最初にお会いした際、同行されたマネージャーの方から、「見たままの人です」と紹介され、確かにいつもテレビで見たままの気さくな方で、二日間の仕事をとても楽しく終える事ができた事が思い出されます。

 無くなられた後、身近な方からの証言として阿藤さんは普段から全身の痛みを訴えられていて、日によって痛む場所が違うと話しておられたそうで、その原因が動脈硬化と聞かされると脂質異常症の私も他人事ではないように思えてきます。

 動脈硬化は広く知られているようにコレステロールが血管に溜まって起こる生活習慣病ですが、イメージされるように血管の内壁にコレステロールが付着していくのではなく、コレステロールは血管の壁の中に溜まっていきます。

 喫煙や飲酒、脂肪分の多い食生活などがリスクを高めるとされる事から、適切でない生活習慣を持つ中年男性の疾患と思われがちですが、血管壁の中にコレステロールが溜まりはじめるのは0歳からとされ、誕生直後から老化が始まるように動脈硬化の進行も始まっているとされます。

 血管壁の内側にあるため、パイプクリーナーのような薬剤で溜まったコレステロールを溶解して流してしまう事ができない事や、誕生直後から進行している事を考えると動脈硬化は治療できないように思えますが、血中コレステロール値を抑える薬剤の臨床試験で総コレステロール値に占める悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)の比率が小さい状態では血管壁内のコレステロールの塊であるプラークが小さくなる事が確認されています。

 悪玉の数値を善玉の数値で割り、2.0以下が正常値とされますが、1.5以下で冠動脈内のプラークの退縮が確認されている事から、善玉コレステロールが増えるようにすれば動脈硬化の改善がはかれる事が判ります。

 血管壁内のプラークは最終的にはカルシウムが沈着して石灰化するとされ、そうなると血管が脆くなってしまう事から、日頃の生活を見直して血管年齢の若返りに努めなければと考えています。


 

第2827回 帽子の効用



 株式市場や世界経済には混乱をもたらしているそうですが、生活者としては原油価格が下がっているというニュースは歓迎してしまいます。特に冬場は暖房の熱源を灯油を使ったストーブやファンヒーターという家庭も多い事から、原油価格の低下による石油製品の値下げは恩恵が大きい事と思います。

 南阿蘇へ引っ越した当初、暖房はファンヒーターを使っていたのですが、徐々に値上がりをはじめていた灯油に見切りを付け、効率の良い200Vで稼働するエアコンを使うようにしていました。

 その後、灯油の価格は高騰を続け、ピーク時には購入していた頃の倍以上の価格になってしまい、石油ストーブやファンヒーターを使っている家庭では仕方なく購入はしても、節約するという事が行われているのではと考えていました。

 そんな中、記録的な寒波が訪れ、暖かいはずの九州でも水道管の凍結や破裂による水不足や、交通の麻痺によってスーパーやコンビニの店頭からパンが消えるといった事が見られていましたが、低体温症の被害があまりいわれていない事には安堵しています。

 日本では無事にやり過ごせた感のある今回の寒波ですが、海外ではアメリカや中国、台湾などでも観測史上最低とされる気温が記録され、特に普段は暖かく、寒さに慣れていない台湾では高齢者を中心に多くの人が低体温症を引き起こしたとされます。

 高齢者が低体温症を引き起こしやすい理由は、加齢によって基礎代謝が下がっている事や、体温の素となる筋力が低下している事。暑さや寒さを感じる機能が下がっている事に加え、処方されている薬の種類によっては低体温症のリスクを上げる可能性がある事などが考えられ、糖尿病などの一部の疾患もリスクを高めるといわれます。

 先日、アメリカの医療研究機関である国立衛生研究所から高齢者が低体温症にならないようにするための対策が公式サイト上に公表されていましたが、幾つかの対策の中で最も効果的なものは、帽子の着用ではないかと思えました。

 人は体温の6割を頭から失うとされ、暖かい帽子を着用している事は効果的な低体温症の予防と思えます。普段から帽子を被る習慣がないと着用に違和感を覚えたり、似合わないと思えたりもするのですが、低体温症が死に到る可能性もある事を考えると、簡単にできて有効な寒さ対策とお薦めしたくなってきます。


第2826回 舌下の効果



 「一番好きな季節は」と聞かれると、すぐに冬が思い浮かぶのですが、最近になって冬が近付いてきて、これからの季節に思いを巡らせる秋や、冬の間に暖かくなってきたらといろんな予定を考える春も好きな事に気が付きました。

 特に雑草に悩まされる事も苦手な虫が家の中に入ってくる事もない冬の後半、春の気配を日々強く感じている頃が好きだと思えるのですが、回りにいる多くの人がその頃から悩まされはじめる姿を見ていると、あまり春が良い季節ではないようにも思えてきます。

 すでに社会問題化しているともいえる花粉症は、本来であれば体を守るべき免疫反応が過敏に生じたものであり、治療には原因となるアレルゲンである花粉のエキスなどを使った薬によるものが主流となっていて、アレルゲン免疫療法の名前で行われています。

 アレルゲン免疫療法には大きく分けてアレルゲンを注射するタイプと飲用するタイプがあるのですが、飲用するタイプの一種で1年ほど前に保険適用となった「舌下免疫療法」に注目が集められています。治療を受けた患者の8割もの人が効果を実感しているともいわれ、中には完全に治ったという人もいて、その効果の高さを覗う事ができます。

 花粉症の場合、アレルギーの症状を緩和させる対症療法では症状を完全に治す「治癒」には至らず、根本的な治療に繋がる可能性があるものとして「減感作療法と呼ばれるアレルゲン免疫療法が上げられていました。

 アレルギーの原因となる花粉のエキスを少しずつ体に入れていく事で、花粉に対する過剰な反応を起こさないようにする療法ですが、アレルギーの原因が一つの場合、特に効果が高いとされ、治療を継続していくうちに薬の必要がなくなるまで症状が改善する事もあるとされます。

 舌下免疫療法は2014年10月に保険適用となり、アレルゲンとなる花粉のエキスを文字通り舌の下に垂らして2分ほどそのままにし、飲み込むというものですが、皮下免疫療法に比べて注射針を使用しない事から痛みがないだけでなく、患者自らが行う事ができるので通院の回数も大幅に減るというメリットもあります。

 保険適用から1年が経過しますが、9割近い患者が舌の下にエキスを垂らす治療を負担とは感じていないとされ、8割近い患者が効果を実感しているという事や患者の99%が今後も治療を続けたいと回答している事から、今後は花粉症治療の主流となる事が考えられます。

 舌下免疫療法は花粉の飛散中やその前後は治療を始められないそうなので、まだ春が遠く感じられる冬には医師への相談を開始しておかなければならないのかもしれません。


第2825回 グルテン危険?(2)



 以前はグルテンの危険性を語る際、グルテンが急激に血糖値を上げてしまう事や、アレルギー反応を引き起こして小腸の壁を壊して栄養の吸収を妨げたり、毒素を吸収して体に悪影響を与えるという事がいわれていたのですが、最近では麻薬のような働きをして、強い依存性を発揮するとするものが増えてきたように感じています。

 グルテンが分解される際に生成される成分に麻薬様作用があり、そのために依存性が生じてしまうというのですが、小麦粉のタンパク質であるグルテンを抽出したような食品、麩によって幸福感や高揚感が得られたり、中毒になって麩なしでは生きられなくなったという話は聞いた事がありません。

 急激な人口の増加を危惧して食料増産を目的に行われた小麦の品種改良、「緑の革命」によって遺伝子操作された小麦に含まれるグルテンの前駆体であるグリアジンに原因があるとも言及されているのですが、やはり麩やパンの中毒者はいないように思えます。

 麻薬が作用するには脳神経に存在するオピオイド受容体が深く関わっていて、オピオイド受容体とモルヒネやアヘンなどの成分が結合する事で神経を興奮させて鎮静作用や高揚感、快楽感などが生じています。

 オピオイド受容体は日常的には内因性オピオイドとも呼ばれるエンドルフィンと結合し、疼痛などを和らげる働きをしています。エンドルフィンはアミノ酸が複数連なったペプチドと呼ばれる物質で、ペプチドにはホルモンなどのさまざまな生理作用を持つものがある事が知られています。

 ペプチドはタンパク質を消化吸収する際、完全にアミノ酸の状態にまで分解されず、幾つかが連なった状態でも吸収される事から、普段、食べている食品の中にもペプチドとして吸収され、オピオイド受容体と結合するタンパク質があるのではないかという仮説の下に研究が行われた事があります。

 多くの食品由来のタンパク質を分解してペプチドを得る実験が繰り返された後、小麦のグルテンの元になるグリアジンと牛乳のカゼインからオピオイド受容体と結合するペプチドが得られる事が判り、小麦や牛乳のタンパク質が完全に分解されずに吸収された場合、麻薬様作用が生じるのではと考えられました。

 小麦や牛乳のタンパク質が実際に完全に分解されずに小腸から吸収される事が確認されたため、そのままの状態を保って脳内へ届く事ができればオピオイド受容体と結合して、何らかの生理作用が得られるという期待の下に多くの研究が行われています。

 しかし、多くの研究によって得られた結論は、グルテンやカゼイン由来のペプチドが脳内に届き、オピオイド受容体と結合するという事を実証する事はできずに終わっています。

 おそらくグルテンの麻薬様作用や強い依存性の話は、そうした研究が存在していた事に由来すると思うのですが、やはり荒唐無稽なように思えてきます。


第2824回 グルテン危険?(1)



 食べるべきか、食べないべきか、そう思わせてくれる食材はそれなりにあるのですが、日常的に接しているパンに含まれるグルテンもその一つとなっています。

 自他共に認めるパン好きで、パンを食べる機会が多いというより食べない日がないような状態なのですが、パンをふんわりと焼き上げる事に欠かせないグルテンが健康を害するとする意見があり、グルテンを含まないグルテンフリーの食品も増えてきています。

 グルテンを悪者視しているサイトなどを拝見していると、必ずといって良いほどグルテンに対する不耐性を示す症状のセリアック病の話が出てきます。セリアック病の罹患率は0.7%とされますが、それが程度の差こそあれ一般人の間でも広く症状が生じているような論調になり、グルテンが危険なものであると印象付けられてしまいます。

 セリアック病への罹患率についても昔と比べて3倍に増えたともいわれ、グルテンを多く含む小麦に接する事の危険性を感じさせてくれるのですが、病気に関する認知度が上がった事や検査や診断の精度が向上した事などは考慮されているのだろうかと疑問にも思えてきます。

 また、グルテンにはアヘンのような作用があり、パンを食べる事で幸福感が生じ、強い依存性に繋がる事も言及されるようになったり、急激に血糖値を上昇させて体に大きな負担を掛けたり、上昇した血糖値が急速に下げられる事から空腹感が生じて、食べても食べてもお腹が空いて間食に走る原因となるといった事もいわれるようになってきています。

 経験的に美味しいパンに出会った時、幸福感は感じているのですが、麻薬によって脳の受容体を刺激されたような特別なものではなく、他の食品が美味しかった際と大差ないように思えています。

 依存性についてもパンをはじめとするグルテンを含む食品を食べない期間が続いても渇望を感じた事はなく、食べやすくて好きというレベルを超えた事は一度もないため、何をもって強い依存性としているのかは不思議に感じられます。

 血糖値の上昇にしてもグルテンが多いデュラム小麦を使ったパスタよりもグルテンをほとんど含まない白米の方が、食後の血糖値の上がりやすさを示したGI値が高く、その点も疑問となっています。

 そうした思いの中、グルテンを危険視するサイトや書籍が多数存在し、グルテンフリーの食品の市場が拡大している事を見ると、正しい結論はどうなのだろうと思えてくるのですが、未だに納得のいく回答が見付けられないままとなっています。


第2823回 エンドウ豆の長い旅



 「エンドウ豆についての話題は尽きる事がありません。まずはそれを口にするまでのもどかしさ、それを食べた喜び、そしてまた食べたいという渇望。私の王子たちはもう四日もの間、その3点についてずっと話し続けています」ルイ14世の愛人の一人であったマントノン夫人が1695年の手紙に書いた手紙の一節ですが、それだけエンドウ豆に魅了されている事については理由が存在します。

 人がエンドウ豆を食べ始めたのは少なくとも1万年前と考えられていて、スイスの湖上住居跡や新石器時代の農村の跡などから炭化したエンドウ豆の食事の残りが発見されています。

 当時のエンドウ豆はデンプン質の硬い塊りで、焼いてから皮を剥いて中を食べるといった栗のような食べられ方をしていたと見られています。

 その後も長く硬いエンドウ豆が食べられていて、農家の食卓を中心に、保存するために乾燥させたものを茹でて粥やスープにするといった食べられ方が続けられ、品種改良によって甘味を品種が登場してからもそれは変わらず行われていました。

 そんなエンドウ豆の食べ方に変化が訪れるのは15世紀に入ってからの事で、青く未熟な豆を食べる「ガーデンピー」が登場した事によります。それまでの硬いエンドウ豆と比べてガーデンピーは柔らかく、甘味も強い事から上流階級へも一気に普及し、美食家として知られたルイ14世も魅了する事となっています。

 フランス中の人々を魅了したガーデンピーですが、現在の品種と比べるとやはりデンプン質が強く、美味しさという点では劣るものとなっていました。そんなエンドウ豆に更なる変革が訪れるのは、18世紀末、植物学者のトマス・アンドリュー・ナイトが偶然、シワのあるエンドウ豆を発見した事が元になります。

 ナイトはシワのあるエンドウ豆を交配して「マローファット」と呼ばれる品種を作り出し、「ナイトのシワのあるマロー豆」として一気に広まっていきます。アメリカの第3代大統領のトマス・ジェファーソンもマローファットの大ファンで、年に二回も庭に植えて、収穫したものをスープに入れて食べる事を楽しみにしていたといわれます。

 シワのあるエンドウ豆を使ったナイトの研究は続けられ、シワのある品種とない品種を交配させたり、背の高さや白や紫といった花の色、緑や黄色の種子の色などの特徴をまとめ、膨大な量のデータを残し、監察結果を詳述した学術論文も発表しています。

 ナイトの研究から50年が経過した頃、オーストリアの聖トマス修道院の司祭がそれまで続けていたネズミの研究を辞めるようにいわれ、代わりに庭にあったエンドウ豆の研究を始めています。

 司祭はナイトと同じ交配実験を数多く行いましたが、ナイトとは違い実験結果の中に特定のパターンを見出し、原因の仮説を検証して遺伝に関する法則を発見する事となりました。

 司祭の名はグレゴール・メンデル。今日、私達が教わるメンデルの法則は、エンドウ豆の美味しい進化と結び付いている事が判ります。

 その後、更に時代は進み、1990年になって分子生物学者の手によってエンドウ豆のシワの秘密が解き明かされる事となります。シワのある豆の中には糖をデンプン化する酵素が欠損していて、糖がデンプンとならずに残されています。糖分が多い豆は成長の過程で多くの水分を取り込み、乾燥する際に多くの水分を失う事でしぼんで表面にシワを作ってしまいます。

 1万年前から始まり、分子生物学によって秘密が明らかにされたエンドウ豆ですが、食べる若さの違いによってサヤから豆までさまざまな食のバリエーションを与えてくれる事には感謝しなければと思えてきます。



第2822回 肉の未来



 田舎という土地柄、出掛ける際に牛や豚を荷台に乗せたトラックに出会ってしまう事がよくあります。大きく育った牛や豚の場合、その先の展開が解っているだけにとても申し訳ない気持ちになり、「絶対に無駄にせず、美味しくいただくからね。感謝する気持ちをずっと忘れないから許してね」と思わず心の中で呟いてしまいます。

 「人は命あるものを食べる事でしか命を繋ぐ事ができない、そこに人の悩みの根源がある」と、ある人に聞かされた事があり、運ばれていく牛や豚を見るたびに思い出してしまいます。そんな命と食べ物に関する概念が、やがて変わってしまうかもしれない可能性が高まってきています。

 先日、中国でクローン技術を応用した大規模な食肉工場の構想が発表されていました。優秀な肉質を持つ牛や豚のクローンを大量生産すれば、質の高い肉が安価に得られる事も可能となります。

 しかし、それではクローンとはいえ誕生した家畜を肥育し、やがては殺して肉とするという現在と変わらない流れが存在してしまいます。最近、注目を集めてきているのはそうしたクローン技術ではなく、良質な肉を培養して製造する「培養肉」の技術となっています。

 家畜から採取した幹細胞をバイオリアクタ―(生物反応装置)などを用いて培養し、好みの状態の肉を製造するというものですが、この方法では肉を得るために家畜を殺す事なく、少量の幹細胞を提供してもらう細胞バンクとして活用してもらう事となり、畜産のあり方を根底から変えるものとなります。

 家畜の役割が幹細胞の提供となる事から、これまでの畜産のように多数の家畜を飼育する必要がなく、「肉を得るためにその3倍の穀物を使い、肉食は食料不足を加速する」といわれた問題も解決する事となります。

 培養肉でステーキ肉を作る場合、血管状の構造や筋繊維などの複雑な組織を作り、肉の隅々にまで養分を送り届けられる状態を作り出す必要があり、多様な細胞を正確に配置する必要があるといった技術的な問題や、工場生産、培養といった事への嫌悪感が普及を阻むといった声も存在し、畜産の革命が起こる事はまだ先のようにも思えます。

 安定的な大量生産、コスト面など解決すべき問題は多数存在する事が考えられますが、家畜が殺され続けて現在と同じ肉を食べる未来と、何の怖れもなく牧場で悠々と暮らす家畜を眺めながら培養肉を食べる未来。選択を迫られたら、迷う事なく培養肉の未来を選ぶと思っています。


第2821回 眠気の理由



 日中に耐え難いほどの眠気に襲われる事があり、時間的には充分に眠っているはずなので、おそらく睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害を起こしているのではないかと考えています。

 睡眠時無呼吸症候群であれば単に眠気に襲われたり、疲れが抜けなかったりというだけでなく、高血圧や糖尿病などにも繋がってしまうとされる事から気にはなるのですが、坊ちゃんに聞いてみるという訳にもいかず、診察を受ける気にもならず、放置したまま今日に至っています。

 また、睡眠障害以外にも貧血によっても眠気が引き起こされる事から、子供の頃から健康診断のたびに貧血をいわれ続けた身としては思い当たる節が多いという事にもなってしまいます。

 貧血と眠気とは、あまり関連のない事のように思えますが、貧血によってヘモグロビンが充分な酸素を運搬できていないと脳は活性が下がってしまって眠気を引き起こしてしまう事になります。

 高校生の頃、医師の前に座るなり、「君は貧血だ」といわれ、瞼をめくって「やはりそうだ。君には何をしても無駄だから、薬は出さないね」といって治療そのものを拒否されただけでなく、詳しい状況も教えてもらえなかった事から未だに自分の貧血がどのようなものなのか解らずにいます。

 多くの場合、貧血は鉄分の不足から起こる鉄欠乏性貧血で、ヘモグロビンを生成する素材となる鉄分が不足して作る事ができなくなり、ヘモグロビンの量が少なくなって貧血の症状を引き起こしています。

 血球を作っている骨髄の細胞が何らかの障害が生じて、血球が充分に作られない状態になると貧血が起こり、再生不良性貧血となってしまいます。再生不良性貧血は原因や治療法が明確にされておらず、厚生労働省による難病指定を受けています。

 約120日ほどの寿命を持つ赤血球が通常よりも短い期間で壊れてしまい、新たな赤血球の生成が間に合わない場合も貧血の症状が生じ、赤血球が壊れていく事から溶血性貧血と呼ばれています。

 溶血性貧血の場合、何らかの疾患が関係している以外に、マラソンやサッカーなどのように足に強い衝撃が掛かるスポーツをしている人も足の裏に掛かる衝撃によって、そこを流れていた赤血球が破壊される事があり、溶血性貧血となってしまう事があるとされ、元気な人がなりやすいという意外な特徴があります。

 赤血球が生成される際は、鉄分以外にもビタミンB12や葉酸も必要となっていて、それらが不足すると赤血球の前段階の細胞が通常よりも巨大な「巨赤芽球」と呼ばれる状態になり、そこから作られる赤血球も異常な状態のものとなってしまいます。

 巨赤芽球からできた赤血球は正常に働かず、寿命も短い事から鉄欠乏性貧血や溶血性貧血を合せたような状態ともいえ、巨赤芽球性貧血と呼ばれます。巨赤芽球性貧血の中で、胃の粘膜が委縮してビタミン類を充分に吸収できなくなってしまって起きたものを悪性貧血と呼んでいます。

 貧血にはさまざまな原因があり、どれが自分に当てはまっているのか未だ謎ではありますが、強い眠気や抜けない疲れが伴うといわれると、何とかしなければと思えてきます。


 
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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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