第2923回 海藻の香り

 ずいぶんと前の事になるのですが、老舗の海苔の製造販売を行う会社の人と話をしていて、海苔の意外な使われ方としてお茶に混ぜる事でお茶が美味しく感じられるそうで、お茶メーカーへの海苔の出荷量が多くなっていると聞かされた事があります。

 海苔とお茶、どちらも和食には欠かせない素材のように思えるのですが、あまり接点はないような感じがして、お茶うけとして海苔をいただいたり、巻き寿司を食べる際にお茶を飲む、お茶漬けの具材として含まれている程度の関わりしか思い着かないようにも感じられてきます。

 冬が終わりに近付き、日々春が来ている事を感じていた頃、何故か抹茶味がマイブームとなってしまい、抹茶味のブラウニーやチョコレート、アイスクリームなどを毎日のように食べていた時期がありました。その際、抹茶味のお菓子のバラエティーの多さに驚き、抹茶がブームになっている事を感じる事ができました。

 抹茶のブームという事もあり、抹茶好きが昂じて本場の京都を訪れ、実際に抹茶をいただいてその味の違いに驚く人も少なくないと聞かされます。お菓子の抹茶味にはミルクと砂糖が加えられている事が多いため、実際の抹茶ではクリーミーさも甘さもない事から「苦い」という感想が多いそうなのですが、そうした中に混じって「海藻のような味」という意見を聞かされる事があるといいます。

 抹茶は碾茶(てんちゃ)から作られます。碾茶はよしずなどを使って日光を遮って育てる事で、茶葉に含まれる旨味成分のテアニンが多くなるように工夫されていて、特に抹茶を点てる際は80度くらいのお湯を少量ずつ加える事でテアニンの抽出が行われるようになっています。

 そのため抹茶を粉末の状態で加える抹茶味のお菓子と比べると、抹茶には充分な量のテアニンが含まれる事となります。テアニンは同じく旨味のグルタミン酸と分子構造が非常に良く似ていて、グルタミン酸の受容体に反応してしまう事があります。

 グルタミン酸は海藻類の旨味成分でもある事から、本場の抹茶を味わって海藻のような風味を感じてしまうのかもしれないと思えてきます。海苔も同じ海藻であり、グルタミン酸を多く含む事からお茶に加える事でお茶の味をより美味しく感じさせていたのかもしれないと、後になって気付いてしまいます。



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第2922回 コーヒー実験



 簡単なドリッパーからコーヒープレス、サイフォンに本格的な高気圧を発生させるエスプレッソマシンと、かなりの種類のコーヒーを淹れるための器具が我家にはあります。豆もさまざまな種類を取り寄せて、挽き方や淹れ方を変えて試してみました。

 その結果として辿り付いた結論が私にはコーヒーの味は判らないというもので、ワイン同様、美味しさへの評価は愛好家の方にお任せする事となっています。コーヒー好きの方が語るような美味しさは判らないとしても、コーヒーが好きという事には変わりがなく、近年、評価が急上昇してきている健康効果の高さもあって、これからもコーヒーを飲み続けていく事と思っています。

 人とコーヒーとの関わりの始まりがどのようなものであったのかは判っていないのですが、幾つかの伝説で語られています。モカ王の娘の病気を治したにも関わらず、娘と恋に落ちてしまったために山中に追放されたイスラム教の聖職者、シーク・オマールが山中で赤い実を食べて颯爽と謳う鳥を見てコーヒー豆を発見し、スープにして飲んだ事で晴れやかな気分になり、王の娘と同じ病気が蔓延した町の人がオマールの事を思い出して探しに来た際にコーヒーを振舞った。

 山羊飼いの少年カルディが、山羊が興奮して飛び跳ねる事に困って修道僧に相談したところ、赤い実を食べた事が原因である事が判り、修道院で眠気覚ましとして利用されるようになった。

 イスラムの律法学者シェーク・ゲマレディンが体調を崩した際、エチオピアを旅した時の事を思い出し、気分が高揚するものとして紹介されたコーヒー豆の事が気になって、取り寄せて飲んでみると気分が晴れて体調が回復した事からコーヒーが気に入り、眠気を覚ます覚醒作用がある事に気付いて、人々に薦めた事で普及が進んだともいわれます。

 いずれもコーヒーのはじまりには薬効が伴っていて、今日のさまざまな効能の発見は必然的な流れであったようにも思えます。そんなコーヒーの健康効果について、最も顕著で最も怪しい実験の一つが18世紀にスウェーデンの国王、グスタフ3世によって行われたコーヒーの毒性の確認実験かもしれません。

 グスタフ3世はかねてよりコーヒーの苦味が苦手で、体質的にコーヒーが合わない事をコーヒーの毒性によるものと考えていました。コーヒーには毒性があり、長期間飲み続ける事は健康を害するという事を証明するために、死刑囚を使って毎日大量のコーヒーを飲み続けさせるという実験を行っています。

 毎日、大量のコーヒーを飲み続けた死刑囚の健康状態は良好なままで、やがて実験の経過を観察する役目の医師の方が先に死んでしまい、グスタフ3世自身も実験の結果を見届ける事なくこの世を去っています。

 結果的に死刑囚は、当時の平均寿命が40歳程度であった時代に80歳まで生き続け、コーヒーが日々の健康作りと長寿に役立つ可能性を示唆してくれました。

 かつては膀胱ガンを引き起こす物質を含んでいる可能性があるとWHO(世界保健機関)に指摘されていたコーヒーですが、最近になってそれも否定され、健康面での優れた効果だけが目立ってきて、これからも愛される嗜好品であり続けるのは確実と思っています。


第2921回 コクの世界(3)



 時折、無性にスープが食べたくなり、そんな際、インスタントのカップスープを買い置きしておくと重宝する事があります。いつも粉末をマグカップに入れて熱いお湯を注ぐのですが、お湯が多過ぎて薄くなり、どこか一味足りない雰囲気になってしまいます。

 もう少しコクがあればと思いながら、お湯を少なめにしてみるのですが、濃いめに作ると塩辛さが目立つだけでコクは感じられず、コストの制約から仕方のない事かもしれないと勝手に考えたりもします。

 カップスープに不足するコクを補い、濃厚なレストランのスープのように仕上げるには幾つかの方法があるとされ、その一つにお湯ではなく温めた豆乳で溶くと驚くほど美味しく仕上げる事ができます。

 牛乳でもコクのある仕上がりにする事ができるのですが、豆乳の方が牛乳に比べて僅かな苦味がある事から、味覚全体をい整える事ができ、よりコクを強く感じられるようになります。

 顆粒のコンソメを少量加える事も美味しく仕上げる事には有効とされ、カップスープは塩味がやや強めにされている事から、コンソメを追加する事で旨味を加え、味全体のバランスを整える働きが美味しさに繋がっていると考える事ができます。

 更にコクがほしいと思える際は少量の粉チーズを加える事がお薦めで、チーズに豊富に含まれる旨味成分が味のバランスを整えるだけでなく、とろみも加わる事でよりスープの仕上がりを濃厚な雰囲気に仕上げてくれます。

 その他にもさまざまな方法が考えられますが、重要なのは味覚のバランスを取る事でコクを感じられるようにする事で、コクという味覚の奥深さを感じてしまいます。


第2920回 コクの世界(2)



 砂糖に塩、酢といった基本的な調味料があり、それぞれを料理に応じたバランスで使い分けていきます。味が調い、美味しいと感じながら今一つコクが足りないといった時、重宝する調味料として「ガストリック」があります。

 ガストリックはフランス生まれの調味料で、フランス料理のシェフも使用しているといわれ、非常に汎用性が高く、さまざまな料理に加える事でコクのある美味しさをプラスする事ができるとされます。

 家庭でも比較的簡単に作る事ができ、日持ちも良い事から作り置きしておくと重宝するといえます。基本的な材料はグラニュー糖と米酢、水だけで、グラニュー糖の5分の1の米酢、半量の水となっているので、グラニュー糖が100gの場合、米酢20g、水50ccとなります。

 材料の全てを鍋に入れて強めの火で煮込んでいくのですが、グラニュー糖は上白糖や三温糖、黒糖などで代用する事ができ、米酢もワインビネガーやバルサミコ酢に置き換える事でより洋風の味わいにする事ができるともいわれます。

 鍋底に焦げ付いてしまわないように全体を混ぜながら5分も加熱すると、色合いが黒っぽく変色してブクブクと泡を立てながら煙が出始めるので、その状態で完成となるのですが、しっかりと焦げさせた方が美味しいガストリックとなるとされます。

 ガストリックの美味しさの秘密は黒く変色するメイラード反応にあるとされ、糖分が酢に含まれるアミノ酸を取込みながら褐色に変化する際に独特な香りや旨味が生じています。

 砂糖と酢といった材料から甘酸っぱい味わいを想像してしまうガストリックですが、直接味を見ても「苦い」と感じられるだけで、単体では美味しくない調味料だと思えてきます。しかし、一旦料理に加えられると飛躍的に美味しさが向上するという実力を備えていて、プロ級のコクが加えられるといいます。

 苦いとだけ感じられてしまうガストリックですが、メイラード反応によって生じた芳香やさまざまな雑味を持ち合せていて、それが味覚の調和に繋がり、深いコクを演出してくれています。料理においてメイラード反応は美味しさに大きく貢献している事が知られていますが、事前に調味料として用意するというのも面白い発想と、新たに加わった調味料を活用しなければと思えてきます。


第2919回 コクの世界(1)



 味覚というと甘味、酸味、塩味、苦味、旨味が基本の五味として知られていますが、グルメ番組などを見ていると「コクのある美味しさ」といった感じの発言が見られ、感覚的には理解できても改めて考えてみるとどのような味覚なのだろうと思えてきます。

 コクのある味わいといわれると、どことなく濃厚な味覚のような感じがしてくるのですが、基本の五味が濃い場合はそれぞれ「甘ったるい」「酸っぱい」「塩辛い」「苦い」となり、どれもコクがあると表現するものではない事が判ります。

 旨味のみが五味の中で濃過ぎる場合の表現が見当たらない事から、濃厚な旨味を「コクがある」と表現するのかというと、そうでもないようにも思えてきます。

 人はどのような味にコクを感じているのかを味覚センサーで調べると、意外にも味の濃淡ではなく、バランスにあるという結果が得られるといいます。基本の五味が全体的に薄くても全体のバランスが取れているとコクがある味わいと感じられ、一つの味覚が突出してしまうとコクが感じられなくなるとされます。

 イメージ的にコトコトと時間を掛けて煮込む事によってコクが生じるような感じがしますが、たくさんの食材を時間を掛けて煮込む事で味覚のバランスが取れた状態に近付く事がコクを生んでいるともいえます。

 味覚の調和という意外なコクの正体ですが、「味覚の調和が取れていますね」ではどことなく味気なく、「コクがあって美味しいですね」の方がはるかに美味しく聞こえる事からも、これからも活躍し続ける言葉となる事と思えてきます。


第2918回 油炊きカット



 最近ではオリーブ油や亜麻仁油、ココナッツオイルなど、油分に注目が集まる事があり、以前のように油は健康に悪影響を及ぼす物という見方をされなくなってきて良かったと思っています。油が持つ働きについても理解が広まってきていて、これから健康作りを考える上でも欠かせない要素となってくるのではと考えています。

 少し前の事になりますがココナッツオイルの人気が高まり、ダイエットに最適としていろんなものにスプーン一杯を加えて愛用する声を聞かされていました。そんなココナッツオイルの利用法の応用編のような感じなのですが、ご飯を炊く際、小さじ1のココナッツオイルを加える事でご飯のカロリーを最大50%オフにできるという驚くべき話を聞かされ、ありえない事のように思えていました。

 情報の出処はスリランカにおいて行われた研究のようなのですが、ポイントとしてはお米一合に対して小さじ一杯のココナッツオイルを加え、通常通りに炊き上げる。炊飯後、ご飯は冷蔵庫で12時間以上冷却し、再び温めて食べるというものでした。

 お米にココナッツオイルを加えて炊き上げてもご飯のカロリーにココナッツオイルのカロリーが加わった熱量にしかならないので、最大50%もカロリーをカットできるのは何故と思っていたのですが、炊き上げた後、ご飯を冷すのであれば含まれているデンプンが難消化性の状態に変化する事から、消化吸収されない分のデンプンのカロリーがカットできたのかと手品のタネ明かしを見たような気がします。

 研究では日本のものとは違うスリランカのお米が使われていて、炊き方も日本とは異なり、沸騰したお湯にココナッツオイルを加えてからお米を入れて炊き上げるという方法が採られていて、日本の炊飯法では再現できないようにも思えます。

 幾つかの炊き方を試行したところ、理想的な炊き方ができた際が50%オフとなり、それ以外の場合は10%程度のカロリーの低減効果しかなかったともいわれます。

 10%でも削減効果としては大きいのかもしれませんが、ダイエットはカロリー制限だけでは成功しない事は明らかなので、別の方法を合せて利用する事が大事なのかもしれないと思えてきます。

 

第2917回 疲労除け



 店頭に大ぶりの綺麗な梅が並び始めると、つい購入してしまいそうになりながら、梅干を漬ける際の紫蘇の取り扱いや「三日三晩の土用干し」の大変さを思って、伸ばしかけた手が止まってしまいます。手間暇惜しまず漬けるからこそ良い梅干しとなる事は判っていながら、梅を塩で漬けただけでも充分に美味しい事を知り、この数年は梅の塩漬けを作る事に留まっています。

 昨年は購入した梅を風通しの良い場所に数日保管して追熟させてから水に漬けてアクを抜き、塩をまぶして漬け込みました。すぐに梅酢が上がって良い感じになったので、紫蘇ではなくバジルを加えて香り付けをして少し洋風の梅漬けに仕上げました。

 我ながら良くできたと思いながら小ビン分け、実家へ持っていって母親に夏バテ防止にと渡してきました。梅には酸味の元となるクエン酸が豊富に含まれていて、疲労を軽減する働きがあると古来からいわれてきています。

 かつて疲労とは、エネルギーを産出する解糖系の最終産物である乳酸が筋肉内に蓄積した状態と考えられていました。クエン酸はその乳酸に働きかけて乳酸を分解し、無害な二酸化炭素と水分に変える事で疲労を軽減させるとされていました。

 その後、研究が進み、疲労の定義が「活動によって生じた活性酸素によって細胞が損傷し、修復を必要としている状態」に変化し、疲労物質とされてきた乳酸も疲労を助長するのではなく、エネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)の再合成を助けるものと評価が一変すると、乳酸を分解するとされたクエン酸は疲労の回復を妨げている可能性まで疑われるようになってしまいます。

 乳酸が疲労の原因ではない事が判ると同時に、疲労の真の原因物質はカリウムイオンである事が確認されています。活動によって細胞外に流出したカリウムイオンによってナトリウムイオンの機能が阻害されてしまう事が疲労に繋がるとされています。

 乳酸はpHを下げる事でカリウムとナトリウムの働きを正常化させるとされ、疲労の早期回復に欠かせないものである事が判ります。クエン酸を加える事で筋肉内の乳酸の分解が早まる事が観察されている事から、クエン酸は乳酸の効果を増大させる、働きを促進するといった働きがある事が考えられ、これからも疲労を軽減させるものという評価は変わらないように思えます。

 そんな事を考えながら、今年も梅を漬けなければと思い、店頭の梅を眺めています。


第2916回 1g?



 子供の頃に社会の基本として「度量衡」を教わって以来、テレビCMの「タウリン1000mg配合」に「1g」ではと突っ込みを入れたくなってしまいます。最近では別なサプリメントでコラーゲンが多く含まれている事をより強くアピールするために、「30000mg配合」という言葉も使われているので、1000mgは可愛い方とも思えてきます。

 豊富に含まれている事がアピールされたり、その際に放映される回転する複数の試験管の映像から体に良い成分である事は想像できるのですが、どことなくタウリンについては捉えにくいものがあり、元気が出る成分、猫に必要な成分といった印象が強くなっています。

 よくタウリンについて説明する際、「アミノ酸の一種であり」という一文を見掛けますが、タウリンにはカルボキシル基が含まれない事からアミノ酸には分類されておらず、生体内で重要な働きを担うものでありながらビタミンやアミノ酸とは異なるものとなっています。

 タウリンは1827年、ドイツの解剖学、生理学者のティーデマンと化学者のグメリンによって牛の胆汁の中から発見され、その際、牛に由来したものである事からラテン語で牛を意味する「タウルス」を元にタウリンと名付けられています。

 広く知られた健康効果としては、体の状態を一定に保つ事を促す働きがあり、高くなった血圧を下げたり、血中コレステロール値を正常値に近付けたり、増え過ぎた体重を減らしたりといった働きがあるとされます。

 特に肝臓に対して良い働きを持つとされ、胆汁酸の分泌を促して肝臓の働きを助けたり、肝細胞の再生を促進したり、細胞膜を安定させるなどの働きを持つとされ、肝機能の回復によって慢性的な疲労感を軽減するともかんがえられています。

 不安を抑制するグリシン受容体やストレスをい軽減するGABA(γアミノ酪酸)の受容体を活性化する事で不安やストレスに対抗する力を高める事も知られており、疲労回復だけでなくダイエットやストレス軽減と現代人に必要な働きが凝縮されているようにも思えます。

 そのため医薬部外品をはじめとする栄養ドリンクに多く含まれているタウリンですが、合成されたものは医薬品扱いとなっていて、一般的な食品には使う事ができず、最近人気の海外ブランドのエナジードリンクも清涼飲料水である事から含んではいません。天然由来の抽出物は食品添加物としての使用が認められている事から、成長に必要な成分として育児用の粉ミルクにも添加されています。

 多くの効能を持ちながら過剰摂取による毒性は極めて低いとされる事から、多く含まれている事は良い事と思えるのですが、それをアピールするために使われる「1000mg」にはこれからも違和感を覚え続ける事と思えてきます。



第2915回 肉食のススメ



 以前、師匠から年齢と食性の変化をマグロに例えた話を聞かされた事があり、若い頃には大トロを好むが年を取るに連れて中トロ、トロと変化して、最後はカジキになるという事に納得させられた事があります。

 年齢と共に脂肪分の多いものを好まなくなるというもので、健康を考える上からも高タンパク低脂肪のものへと移行する事や、肉よりも魚を多く摂る事が推奨されていますが、実際には魚よりも肉を好む高齢者の方が元気だという事を聞かされます。

 脂肪分の多い肉は血中コレステロール値を高めてしまい、動脈硬化を進行させるとして高齢者には避けるべき食材のようにいわれてきましたが、最近では肉に含まれる脂肪分は血中コレステロール値には影響を与えず、逆に健康を保つ事に役立つという考え方も広まってきています。

 嫌われ者のコレステロールですが、細胞を構成する生体膜には欠かす事のできない物質であり、ステロイド骨格を持つホルモンを作る材料ともなっています。加齢によってホルモンの代謝が減る事を考えると、材料を確保する事は大切と思えます。

 また、肉には脳内物質のセロトニンの原料となるアミノ酸のトリプトファンが多く含まれている事から、セロトニンの不足による鬱状態や認知症を防ぐ事に役く立つともいわれ、QOL(人生の質)を高める上でも必要な食材という感じがします。

 そうした事が影響しているのか、統計上も肉をしっかりと食べている高齢者の方が元気で長生きという結果が得られている事からも、これからの人生、年を重ねてもしっかりとした食を保っていかなければと思えてきます。


第2914回 海のフォアグラ



 カワハギは夏に旬を迎える魚ですが、秋から冬に掛けての海水が冷たくなり始める時期にももう一つの旬があるという、二度の旬を持つ贅沢な魚となっています。

 淡白な白身には弾力があるため、刺身にする際は薄作りにされる事からフグを彷彿とさせ、フグとは違って毒が無い事から気軽に食べる事ができる白身の魚として人気があるのですが、何故か実家のある牛深では評価が低い魚でもあります。

 牛深よりも更に南、奄美大島では「カワハギなんて獲ってしまったら恥ずかしくて港に船を入れられない」といった発言を聞かされた事があり、棲息数が多くなる南へ行くほど評価が下がるのかとも思えてきます。

 カワハギの口は体の割には小さなものとなっているのですが、ペンチのように強力で、眠る際は海藻を咥えて流されないようにするといったユニークな習性を持っています。その強力な口を使ってゴカイやカニ、貝類などを食べるのですが、エサの食べ方が小さな口で削ぎ取るように食べる事から、釣り人にエサを食べられている感覚が伝わりにくく、釣り上げる難易度が高い魚という評価も得ています。

 夏に旬を迎える理由は、その時期に産卵期を控えているので脂がのるためですが、海水が冷たくなる秋から冬に掛けての時期に二度目の旬を迎えるのは、寒くなる事に備えて栄養を蓄え、肝が成長する事にあります。

 「カワハギを食べるのなら肝もいただくべし。肝を食べないのならカワハギを食べる価値なし」という言葉を聞かされた事があるのですが、それは肝に栄養が集中するために身の脂が減ってしまうためで、カワハギの肝の美味しさを評価しての事という事ができます。

 そんなカワハギの肝をより大きく育てた「フォアグラハギ」の販売が始まったというニュースを耳にして、大いに興味をそそられています。フォアグラハギは呉市にある県立総合技術研究所水産海洋技術センターが定置網などにかかった天然のカワハギを餌付けして、エサの内容や与え方を工夫して200g以上の体重中、肝の重量が10%以上になるように肥育させたもので、水曜と土曜にそれぞれ20匹ずつを販売しているといいます。

 まだまだ全国的な認知や流通が定着するには時間が掛かると思えてしまいますが、旬の評価を左右する程、美味しいとされる肝という特徴を最大化したフォアグラハギ、一度見てみたいと思ってしまいます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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