第2963回 つけ麺文化



 熊本の名物の一つに、豚骨スープをベースにした熊本ラーメンがあります。子供の頃から熊本のラーメンで育った事もあり、ラーメンというと白濁した濃厚な豚骨スープでなければという感じがして、それ以外は別な料理のようにも思えてしまいます。

 日本で地域に根差しながら独自の発展を遂げたラーメンは、その多様性から時として同じ料理名で呼んでもよいものだろうかと思えるほど、異なる内容ののものが存在し、それぞれの地域でたくさんの人に愛されてきています。

 そんな多様性を見せるラーメンの中でも独自の世界観を持つものが、冷水でしめた麺を熱いスープに浸して食べる「つけ麺」ではないかと思えます。

 古くから北海道では「ざるラーメン」、東北では「ざる中華」という形でラーメンの中華麺をつけだれを用いて食べるメニューが存在していたのですが、今日、つけ麺として食べられているラーメンはそれらとはルーツを異にし、1955年に誕生したとされます。

 大勝軒中野店の店長だった山岸一雄氏が、修業時代にまかないで食べていた残った麺をしょうゆを加えて味を濃くしたラーメンのスープをつけだれにしたまかない食を食べていたところ、常連客の関心を買い、試食してもらったところ高い評価を得た事から商品化へ踏み切ったといわれています。

 大勝軒中野店は山岸氏が「兄貴」と慕い、共に修行した坂口政安氏が独立開業し、後に代々木上原に本店を開いた事で本店の店長を坂口氏、支店となった中野店の店長を山岸氏が担当する事となっていて、中野店から最初のつけ麺となる「特製もりそば」が発売された3年後に本店からは、独自に考案された「つけそば」が発売されています。

 1961年に山岸氏が暖簾分けをする形で独立し、東池袋大勝軒を開くと、独自のたれと弾力のある麺、ボリュームのある盛り付けで人気となり、つけ麺は一つのカテゴリーとしての地位を確立する事になります。

 つけ麺という名称は山岸氏の手によるものではなく、1973年頃に人気となった「元祖つけ麺大王」によるものとされ、今日、呼称の主流となっていますが、山岸氏が使っていた「もりそば」や坂口氏の「つけそば」、「中華盛り」などの呼び方も存在しています。

 年号が平成に改まった頃に山岸氏はそれまでの方針を転換し、弟子を取るようになり、1990年代の中頃には修業後に暖簾分けによって独立した山岸氏のつけ麺を受け継ぐラーメン店が見られるようになり、人気の高まりを受けて埼玉県川越市を中心に自家製の極太麺や魚粉、濃厚つけだれを使うという独自の派生種を生み出す事となります。

 新たなつけ麺は「濃厚魚介豚骨系」や「豚骨魚介系」などと呼ばれ、インパクトの強さや極太麺の食感、麺に絡みやすい濃厚スープなどで人気となり、その後の息の長いつけ麺ブームに繋がる事となります。

 2010年5月、新横浜ラーメン博物館は独自に行った取材や調査、データ分析の結果としてつけ麺はラーメンとしての確立された一つのジャンルという結論を出し、単なる一過性のブームではなく食文化として定着したものという見解を示し、つけ麺はラーメンの一カテゴリーであるという認識が広まっています。

 熊本にも暖簾分けされた大勝軒が存在し、かつては豚骨以外のラーメン店は生き残れないといわれた土地柄でも評判店となっていて、ラーメンという食文化の多様性を感じる事ができます。


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第2962回 皮に非ず



 数年前の夏、ニンジンの糠漬けが気に入っていて、ほぼ毎日食べるという事がありました。二日漬け込んだものが自分的に最適な漬け加減と思えていた事から、ニンジンをたくさん買ってきて食べる量を計算しながら漬け込んでいました。

 その際、上手に漬けるためのコツとして、表面の皮を厚めに剥いておくという事があります。ニンジンの表面部分には酵素が含まれていて、そのままでは表面が黒く変色して漬け上がってしまいます。

 黒くなっても食べる分には問題はないのですが、あまり見た目は良いとはいえず、カロテンなどの栄養素は表面に多い事は意識しながらニンジンの表面の皮を剥いていました。

 ニンジンを使った料理のレシピを書く際、最初に「皮を除いて」と記載してしまうのですが、判りやすさを優先した記述で、本当は正しくないという事ができます。

 普段、ニンジンを調理するために剥いている表面の部分は実は皮ではなく、スーパーなどで売られているほとんどのニンジンは皮を剥いた状態で売られているので、本来は表面を剥く必要はないとされます。

 ニンジンの皮は「内幹細胞」と呼ばれる非常に薄い膜で、ニンジンは表面を洗浄しても鮮度が落ちにくい事から、収穫後、土を落とすための船上の際に皮は剥がれてしまっています。

 そのため皮が剥けた状態でニンジンは流通する事となるのですが、表面の形成層などの硬い部分を除いて食感を良くする皮を剥いて使うという事が浸透しているために、ニンジンの調理の始まりは表面を剥く事からとなっています。

 最近では節約メニューの流行から剥いた表面も再利用される事もありますが、そのまま捨ててしまう事を考えると、調理に一手間発生する時間や栄養豊富な部分を除いてしまう事、食べる部分が減ってしまったり生ゴミの量が増えてしまうなど、考えて見ると多くのもったいない損失を増やしていた事となります。

 あまりに一般化しているニンジンの皮剥きですが、次にレシピを書く際はどのように記載したものかと、少々考えてしまいます。


 

第2961回 蝶と蛾の狭間



 夏がくると子供の頃、友達と一緒にカブトムシを求めて林の中へ入って行った時の事を思い出してしまいます。クヌギの木にできた穴から染み出す樹液に集まるという事で、クヌギの木を探して回るのですが、樹液が染み出す場所にはカブトムシだけでなく、さまざまな他の虫たちも集まっていて、中には大きめの蛾がいて怖くなって逃げ出すという事もありました。

 その頃、聞かされていたのは夜行性で夜に飛んで回るのが蛾で、昼行性で昼に見られるのが蝶という事だったので、昼に元気にクヌギの木に集まる蛾は蛾ではないのかと疑問を持ったりしたのですが、今でもその境は曖昧なままのようにも思えます。

 蛾も蝶も良く似た生物で、便宜上美しいものが蝶で醜いものが蛾と呼ばれているようにも思えるのですが、昆虫図鑑などを見ると蝶よりも美しい蛾がたくさんいる事に驚かされてしまいます。

 姿という点では蝶は羽が大きく、胴体が細い印象があり、逆に蛾は羽に対して胴体が太い感じがするのですが、胴体が太い蝶や細い蛾の存在はそうした区分が誤りである事を教えてくれます。

 触角の形が蝶は細くカールした可愛い形状である事に対し、蛾は鳥の羽のような形という事も思い浮かんでくるのですが、それも間違いである事は昆虫図鑑を眺めるとすぐに理解できます。

 何かにとまった際に蝶は羽を閉じてとまり、蛾は羽を開いてとまるともいわれますが、調べてみると羽を開いたままとまる蝶や閉じてとまる蛾もいて、それで区別する事もできない事が判ります。

 英語では、蝶はバタフライ、蛾はモスと呼ばれて日本と同じように区別が存在しますが、ドイツ語やフランス語には区別は存在せず、実のところ明確な違いはないという事が真実である事に気付かされてしまいます。


第2960回 塩分テスト



 本格的な夏が始まる前、観測史上最も暑い夏になるのではという声も聞かれていた事から、それなりの不安を抱きながら夏が始まり、本当に暑いと思いながら過ごす日々を送っています。

 厳しい暑さを反映するからのように熱中症による救急搬送といった事も日常的に聞かれ、暑さを避けるだけでなく小まめな水分補給も推奨されています。

 汗によって失われる水分は意識して補給しますが、一緒に失われるミネラル分の補給が疎かになると思わぬミネラル不足に陥ってしまう事があるため、暑さ対策としてミネラル分、特に塩分を補給できるような商品も多く見掛ける事ができます。

 そうした塩○○といった商品が増えた事で、水分だけでなく塩分の補給も手軽に行えるようになっているのですが、利用の度合いが多くなり過ぎると塩分の過多という困った状態になってしまう事も懸念されています。

 水分の不足は喉の渇きとして現れてくるのですが、塩分の不足はかなり状況が深刻化してからしか目に見えてこないため、自分では把握しにくいものとなっています。

 そんな塩分の不足をチェックする簡単な方法があります。水100ccを用意して、そこへ小さじ半分、5gの塩を溶かします。

 完全に塩が溶けた状態になると5%の塩水ができるので、それを飲んでみて、塩辛いと感じる場合、体の塩分は不足していない状態にあるとされます。

 塩水が美味しく感じられたり、逆にほんのりとした甘味を感じる場合、体は塩分不足の状態にあり、塩分の補給が必要と判断する事ができます。

 日陰にいても汗をかいてしまう時節柄、水分や塩分とは上手に付き合っていかなければと思えます。


第2959回 食の都の震災



 二度に渡った震災の発生から四ヶ月が過ぎ、震度1以上の余震が2000回を超えたと聞かされながら、どことなく地震に慣れてきてしまっている自分を感じていました。

 そんな中、イタリアの中部で大きな地震が発生し、多くの犠牲者が出ているというニュースに、また大自然は無防備な人に牙をむくのかと腹立たしくも思えてきます。

 震災で大きな被害が出ているのはイタリアのほぼ中心部、アマトリーチェの街とされ、日本でもパスタメニューのアマトリチャーナの発祥の地である事や、古く歴史を感じさせる石造りの町並みなど、馴染み深い街だけに崩壊した街の様子に心を痛めています。

 アマトリーチェの歴史は非常に古いとされ、肥沃な大地や豊かな水に恵まれた事もあり、有史以前から人が生活していた跡が残されています。大自然の恵みによって牧畜が盛んに行われ、良質な畜肉やチーズを産出する街として知られていましたが、豊かな食材の存在は豊かな食文化を育み、アマトリーチェからは数多くの教皇専属の料理人を輩出しています。

 豊かな食文化を持つアマトリーチェでは、伝統料理として豚の頬肉を塩漬けにしたグアンチャーレと羊の乳のチーズであるペコリーノ・ロマーノを用いたグリーチャと呼ばれるパスタ料理が作られており、それにコロンブスの新大陸発見によってヨーロッパにもたらされたトマトが加わる事でアマトリチャーナが誕生しています。

 アマトリチャーナが一般に広まるきっかけとなったのは19世紀、大変な牧畜不況のために街を離れ、職を求めて多くの人がローマに移住してアマトリーチェ風の料理を出すレストランや宿屋が増えた事や、ローマ出身の俳優、アルド・ファブリツィがラジオやテレビでしばしばアマトリチャーナに言及していたためで、アマトリーチェの伝統料理はローマの伝統食ともなり、全国的に知られた存在となっています。

 当初はシンプルなレシピであったものがローマに根付いた際にはタマネギが加わり、オリーブ油を使ったりにんにくや唐辛子を加えるといった工夫も見られ、グアンチャーレの代わりにパンチェッタを使うなどのバリエーションも増え、今日では世界中で愛される料理となっています。

 世界中に美味しいアマトリチャーナを届けてくれたアマトリーチェの街。被害が最小限度に収まる事と、一刻も早い復興を切に願っています。


第2958回 Mgの効用



 マグネシウムといわれると、子供の頃に見せられたリボン状のマグネシウムの燃焼実験や、かつては写真を撮る際の光源となるフラッシュとして使われたという事を聞かされた事もあり、激しく燃焼する危険な物質という感じがしてしまいます。

 実際は動物や植物の生命を維持する事には欠かせない必須ミネラルとなっていて、特に植物では光合成をするクロロフィルを構成する重要な物質となっています。

 そんなマグネシウムの血圧を調整する働きに注目した研究が行われ、マグネシウムのサプリメントには高血圧の治療の際の選択肢の一つとなりえるという研究結果が報告されていました。

 研究を行ったのはアメリカ、インディアナ大学の研究チームで、歯や骨を作る栄養素であり、神経の興奮を抑えたり、体温や血圧を調整する働きに着目して2000人以上のデータを解析し、3カ月に渡って368mgのマグネシウムを毎日摂ってもらい、血圧の低下と血中濃度の上昇を確認しています。

 血液中のマグネシウムの濃度の上昇は、血圧の低下に繋がる血流の改善にも作用している事が考えられ、研究チームでは一日300mg程度のマグネシウムを一ヶ月間摂取する事で血圧低下が期待できるとして、高血圧の治療や将来的なリスクを持つ人の予防に使えるとしています。

 日本で推奨されているマグネシウムの摂取量は年代によって違いがありますが、約350mg程度となっており、推奨通りであれば高血圧を予防できる可能性が出てきます。

 それに対し、実際の摂取量は250mg程とされる事から、マグネシウムの不足が生活習慣病を助長していた。そんな事も今回の研究結果には思ってしまいます。


第2957回 紫の愛



 学生の頃、パルフェ・タムールという名のリキュールに出会い、その美しい色合いがお気に入りとなっていたという事がありました。その当時はスミレを使ったリキュールと聞かされていた事もあり、正式にはバイオレット・リキュール、もしくはクレーム・ド・バイオレットという名前だろうと思っていたのですが、後にパルフェ・タムールが正式な名前であり、商品名ではない事を知りました。

 パルフェ・タムールは「完全な」という意味のパルフェとパルフェの綴りの最後の一文字の「T」をリエゾンしたアムール(愛)からなる言葉で、「完全なる愛」というのは随分とすごい名前だと思えていました。

 1760年頃のフランス、ロレーヌ地方で誕生したとされ、地中海沿岸で採れる柑橘系の果実をベースにスイートバイオレットとも呼ばれるニオイスミレ、バラ、アーモンド、バニラなどを使って独自の風味を出しています。

 中でもニオイスミレは重要な素材とされ、他の種類のスミレを使っても特有の香りを出す事はできないそうで、重要、不可欠な存在となっています。

 美しい色合いと「飲む香水」とまで呼ばれた香りのお陰で、誕生当時は多くの貴族たちに愛され、25度という高めのアルコール度数もあって媚薬の効果があると考えられた事がパルフェ・タムールの語源となったともいわれます。

 そのままストレートやロックでという飲み方もされるそうですが、日本ではカクテルとして使われる事が一般的なように思えます。中でも綺麗な色合いを活かしたバイオレットフィズは良く知られたカクテルとなっていて、炭酸で割る事からアルコール度数も下がって、比較的接しやすい飲み方ではないかと思います。

 そんなパルフェ・タムールを最も愉しむ事ができるカクテルといわれると、「ブルームーン」ではないかと思えます。ドライジンとパルフェ・タムール、レモン汁を2:1:1の配合で混ぜたシンプルなものですが、ブルーと名の付くカクテルのほとんどがブルーキュラソーを使うのに対し、あえてパルフェ・タムールを使った月を表現する色合いにカクテルという文化の粋を感じてしまいます。

 残念な事に酒とは縁遠い事から、かなり長い間、ブルームーンそのものを見るという事はないのですが、フランスの貴族に愛された気高い紫色は、今も鮮烈に思い出の中に残されています。


第2956回 老化と寿命と若返り(3)



 長寿や若返りとの関連が否定的となったサーチュイン遺伝子ですが、その後も研究は続けられ、長寿や若返り、不老といった面以外でも体にとって良い働きがある事が知られるようになってきます。

 特に不老長寿と関係が深いと見られていたSIRT1は、その働きを欠損させてしまうと記憶障害が起こる事が確認され、認知症の発症を防いでいるという可能性が示唆されています。

 健康な体の中でも日々5000個ほどのガン細胞が発生し、免疫細胞がそれらを排除する事で健康が保たれていますが、加齢に伴って免疫細胞の働きにエラーが生じやすくなり、ガン細胞が見逃されて成長してしまう事となりかねないのですが、サーチュイン遺伝子は免疫細胞の働きを補佐して健康体を守る働きをしているともいわれます。

 それ以外にも糖尿病の発生を防いだり、食べ過ぎによるストレスから体を守ったり、細胞のミトコンドリアを活性化してエネルギー代謝を円滑にする事から、ダイエット効果ももたらしてくれるのではとも考えられています。

 そのためサーチュイン遺伝子は、不老長寿をもたらすのではなく、幸せな老後へと繋げていく存在ではないかといった考え方がされるようになり、QOL(生活の質)を高める上では必要不可欠なものともいわれるようになってきています。

 そんな中、最近になってやはりサーチュイン遺伝子は長寿に関わっている可能性が示唆されるようになり、健康的な老後をもたらすだけでなく、寿命自体も延長する可能性が出てきています。

 人でも摂取するカロリーを制限する事で体内の炎症マーカーが低下する事が確認されていますが、その減少にサーチュイン遺伝子が関わっている事が考えられ、カロリーを制限した事でサーチュイン遺伝子が活性化され、老化やさまざまな疾患の原因となる炎症を抑えている事が考えられます。

 今後、さらに研究が進めばより細かなメカニズムや、その恩恵にあずかる効果的な方法が明らかにされ、老後のあり方も変化する事になるのかもとも思えてきて、できれば私もその恩恵にと考えてしまいます。


第2955回 老化と寿命と若返り(2)



 老化防止、若返り、寿命延長といった事に関し、最近良く耳にするのは長寿遺伝子とも呼ばれるサーチュイン遺伝子ではないでしょうか。サーチュイン遺伝子のスイッチが入って活性化された状態になると、体の修復機能が向上されて老化が抑制されたり、身体機能が活性化されて若返ったり、寿命が延びるといった事がいわれてたりもします。

 サーチュイン遺伝子は、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士をはじめとする研究チームによって1999年に発見され、活性化させる事で酵母の寿命を50%も延長する事ができるとして、世界中の研究者に大きな衝撃を与える事となりました。

 その後、線虫やショウジョウバエにも存在する事が判り、活性化させる事で寿命が延長される事が観察されたため、人にも存在するのか、存在するのならどのようにして活性化させるのかといった事が話題となっています。

 人をはじめとする哺乳類にも幅広く分布する事が確認されており、人には「SIRT1」から「SIRT7」までの7種類のサーチュイン遺伝子が存在する事が判っていて、酵母で発見され、「Sir2」と名付けられたものと人のSIRT1が酷似している事から、人にも長寿の恩恵が得られる可能性が指摘されていました。

 多くの研究結果によって、動物は摂取カロリーを制限する事で寿命が延長される事が確認されています。それは充分なエサが得られるという生存に適した状況では、一気に子孫を増やして繁殖する方が良く、充分なエサが得られない劣悪な状況下では子孫繁栄に使うエネルギーを身体の修復に回して長寿となり、繁殖に適した状況が訪れるのを待つという生命に営みに適したものとなっています。

 その役割を担うのがサーチュイン遺伝子と見られていて、摂取するカロリーを制限する事でサーチュイン遺伝子は活性化され、寿命が延長されると考えられました。

 しかし、2011年にロンドン大学のデイビッド・ジェムズ博士が率いる研究チームによって、「虫やショウジョウバエの寿命には、Sir2の過剰発現の効果はない」という論文が発表されるとSir2に酷似しているとして長寿に関わる事が期待されていたSIRT1の効果も前提から覆されてしまう事となります。


第2954回 老化と寿命と若返り(1)



 アンチエイジングが話題になる際、「老化防止」か「若返り」、もしくは「寿命延長」のどれかが中心となりながら、それらの違いが曖昧なまま話が進められている事を感じさせられる事があります。

 老化防止は文字通り老化させない事を指していて、40歳で老化防止に取り組んだ人が50歳になっても40歳の頃の身体機能を維持し続けている事を指しています。

 若返りは40歳の人が若返りに取り組み、40歳以下の頃の身体機能や身体的特徴を供えるようになる事を指し、寿命延長は年齢相当の身体でありながら、天寿を全うすると考えられた期間を超えて生存するという似ているようで三つの言葉の意味には大きな違いが存在します。

 現在、最も身近で現実的なように思えるのが老化防止で、老化の要因となる物事の排除や生理機能の活性化等、さまざまな手法が提唱されています。

 老化の防止を図る際、老化によって起こる事に対抗する事が重要なようにも思えます。老化によって起こる、もしくは老化に繋がる現象として体細胞の減少、ホルモンレベルの低下、炎症によるダメージ、酸化、糖化などがいわれています。

 体細胞の減少に関しては、遺伝子の端の部分にあり、細胞分裂の度に少しずつ切れていって細胞分裂できる限界数を決めているテロメアが関わっている事から、自己の努力による改善は難しいように思えますが、それ以外の事に関しては生活習慣の組み合わせによっては実現可能と思えてきます。

 適度な運動や正しい生活習慣の実施、ストレスを避けて生活にメリハリを持たせ、脂肪酸のバランス、抗酸化作用のあるものの摂取、糖化に繋がる食べ物の排除などが考えられるのですが、老化が複合的な要因で進んでいく事から、老化防止の決め手となる事を見付ける事は難しいともいえます。

 また、一定期間行ったからその先も効果が維持されるというものでもない事から、いかに良いと思える方法を見付けて、それを継続するかが大切とも思えます。

 誰もが等しく感染している病といわれる老化だけに、一筋縄ではいかないものなのかもしれないとも感じられてしまいます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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