第2983回 焼き芋変遷(1)



 今では和の食材としてしっかりと根付いた感があるサツマイモ。熱帯アメリカの原産とされる事から、世界デビューはコロンブスの新大陸発見以降となっていて、日本にもらたされるのも江戸時代の初期以降となっています。

 南方経由で最初は沖縄に伝わり、やがて九州へと広まってサツマイモの栽培は北上を続けます。各地で最初は飢饉への備えとしての栽培から始められますが、すぐに日常的な食材としての栽培に切り替わり、人気の食材となっていき、江戸や大阪、京都といった大都市圏で特に好まれる存在となります。

 特に関東地方での栽培が盛んになると、江戸の庶民に好まれるようになり、庶民の冬のおやつの定番ともなっていきます。

 江戸の街の随所で調理したサツマイモを販売する店が見られるようになり、安価な価格も手伝って気軽に食べられる軽食としての位置付けを得ていくのですが、人気の背景には焼き芋の登場が大きく貢献したともいわれます。

 当初、サツマイモの調理は蒸す事が主流となっていて、江戸の街にも蒸し芋屋が先に登場しています。その段階でもサツマイモは好まれてはいたのですが、焼き芋屋の登場は一気にサツマイモの人気に火を付けた事が当時のさまざまな資料から覗う事ができます。

 江戸の街では治安維持のために武家屋敷が集中する地域には「辻番」が、町人たちのエリアには「自身番」が置かれていました。それぞれの街には入口に木戸が設けられていて、「木戸番」が配置され、木戸番には給金が支給されていましたが、内職をする事が認められており、焼き芋の普及はそうした木戸番の内職として広まっていきます。

 木戸番の仕事は朝晩の木戸の開け閉めと火の番となっていたため、開いた時間を使って商売をする事が広く行われていて「商番屋」と呼ばれながら今日のコンビニエンスストアのような役割を果たしていました。

 当時の焼き芋は今日のような石焼きではなく、陶器の窯の中に並べて重い木の蓋をして焼かれる蒸し焼きの状態でしたが、燃料として古筵や古縄が使われていて、いずれも江戸に持ち込まれる大量の物資の梱包に使われていた事から安価に手に入れる事ができ、焼き芋の価格を引き下げ、多くの人に親しまれる原動力ともなっています。

 そうした安価で親しみやすいファストフード的な位置付けは第二次世界大戦直前まで続き、今日のように焼き芋の価格が高騰するのは第二次世界大戦以降の事となっています。


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第2982回 代替エネルギーの効用



 通常、脳はブドウ糖のみをエネルギー源として利用しています。何らかの理由でブドウ糖が不足すると、脳は緊急的なエネルギー源としてケトン体を利用するようになる事が知られています。

 最近、糖質制限ダイエットの流行で極端な糖質不足から、脳がエネルギー源とするブドウ糖の確保ができなくなる事から、ケトン体を利用するといった事が考えられ、ケトン体の存在が見直されてきています。

 ケトン体は中鎖脂肪酸から作られる事から、脂肪の分解によるダイエット効果もいわれていますが、それ以上にブドウ糖よりも脳のエネルギー源として優れていて、糖質を制限してケトン体を利用するようにした方が脳のパフォーマンスが向上するといった意見もあります。

 そんなケトン体について先日行われた研究では、60歳以上の認知症ではない高齢者にケトン体の生成が高まるように中鎖脂肪酸の配合を高めた特殊な粉ミルクを摂取してもらい、認知機能の高まりを調べる検討が行われています。

 中鎖脂肪酸の摂取量が多くなると血中のケトン体濃度が高まる事が確認され、作業記憶や遂行機能に関するテストや一連の認知機能の成績が好結果を得られる事が判り、将来的な認知症の予防に繋がる可能性が示唆されていました。

 中鎖脂肪酸というとココナッツオイルに多く含まれている事が話題となり、ダイエットに有効として一時的なブームとなっていましたが、今後、増加が懸念される認知症の予防としても人気が高まる事が予想されます。

 中鎖脂肪酸は乳製品にも多い事から、普段からチーズなどを食生活に採り入れていく事も良いのかもしれません。


第2981回 克服困難



 土鍋は熱伝導の関係で料理を美味しく仕上げてくれる事から、鍋物以外でもご飯を炊いたり、プリンを作ったりと幅広く活躍してくれ、お気に入りの存在となっています。

 そんな土鍋も子供の頃は恐怖の対象となっていて、熱源のコンロから離れてテーブルに置かれても沸騰し続けるという姿は、極度の猫舌のい身としては怖ろしげにしか見えていませんでした。

 最近、猫舌は食べ方に問題があり、熱に敏感な舌の先端部分を先に食べ物に触れさせないようにして、比較的鈍感な奥の方へ食べ物を運ぶようにすると克服できるといった事が流布され、私の猫舌を知る人から幾度となく食べ方を工夫するようにいわれたのですが、現実的には舌に限らず口の中のどの部分でも熱いものは熱く、食べ方によって克服するという事は困難と思えます。

 猫舌は温度を感じる温点が人より多いために過剰に温度を感じてしまって起こるともいわれますが、これまで何度も人が普通に飲んでいる飲物を一緒に飲んで、口の中を火傷して皮が剥がれてしまうといっために遭っている事から、構造的な問題のようにも思えます。

 口の中の粘膜が弱く、その事を体が理解できている事から温点が多めに配置されている。猫舌の正体はそのような事ではないかと考えられ、無理に克服する事は困難とも思えてきます。

 食材を加熱調理するのは人間だけという事もあり、出来たての鍋や揚げたての天ぷらを頬張るという火を使う事を獲得した人間だけの特権を享受したいとも思ってしまいます。


 

第2980回 時を止める店



 近所の田舎ならではのコンビニエンスストアでは、中華まんをレジ横の保温庫以外にパンを売るコーナーで入荷したままの4個入りのパックの状態で販売しています。店側としては温めて管理する手間が省けるのかもしれませんが、購入する側としても温かいものを購入して、帰宅する間に湯気で生地が水浸しになるという事がないというメリットがあり、わざわざ温めてないものを購入したりしていました。

 ある時、パンコーナーに中華まんがなかった事から店員さんに温めてないものはないのかと尋ねてみると、店員さんは近くの冷凍庫の中から冷凍したパックを取り出してきてくれました。

 その際、二人の視線がパッケージの隅に記載された賞味期限に止まり、すでに期限が過ぎてしまっている事に気が付いてしまったのですが、「冷凍して時が止めてあるので大丈夫ですよ」と説明をされ、メルヘンチックな発現に変に納得させられて購入するという事がありました。

 冷凍可能な食品を冷凍すると時間が止まる訳ではないのですが、飛躍的に保存性を高める事ができます。本来であれば傷みやすい乳製品も冷凍する事によって安定した品質を保つ事から、賞味期限の記載が存在しない食品となっています。

 保存している食品には大きく分けて4つの変化が起こる事で品質が劣化し、食べる事ができない状態になってしまいます。一つ目は微生物による内容成分の分解が起こる腐敗で、二つ目の食品に含まれている酵素による自己分解も同じく腐敗として扱われる事があります。

 三つ目は食品に含まれる成分の酸化が進むという化学的変化で、特に油脂類の酸化が顕著に食品の品質を劣化させます。

 四つ目は水分を失う乾燥という物理的変化で、食品によってはある程度の乾燥を施す事で風味を増したり、旨味を凝縮したりといった良い変化に繋がる事もありますが、過ぎた乾燥は食品の品質劣化となってしまいます。

 そうした品質劣化の要因に対し、冷凍する事によって微生物は活動を抑制されてしまい、酵素も活性を失う事から腐敗を防ぐ事ができ、低温によって化学的活性が下がる事から酸化も最小限に抑える事ができます。

 冷凍によって乾燥してしまうイメージもあるのですが、急速冷凍してその後、温度変化を抑える事ができれば乾燥を最小限に留める事ができるので、食品の劣化を抑える事ができるという事ができます。

 その後、そのコンビニへは行っていないのですが、食品管理が厳しくなってきている昨今、今でも中華まんの時を止めているのか、何となく気になってしまいます。


 

第2979回 伝統的止血法



 子供の頃、よく鼻血を出す友達がいて、気が付けば鼻血が出ているという場面に遭遇したのですが、大人になってからは自他共にほとんど見掛けていないように思え、縁遠いもののように思えているのですが、とっさの場合は驚いてしまうようにも思えて、対処法は知っておかなければとも思えます。

 鼻血が出てしまった際、上を剥いて後頭部をトントンと軽く叩いたり、安静に横になるといった事を行いますが、実はやってはいけない事だと聞かされた事があります。出血が喉へと流れ込んでしまう可能性があるためで、喉で出血が固まって呼吸を妨げたり、胃に流れ込んで固まってしまうと嘔吐する事があるとされ、意外と危険な行為が一般的な対処法として広まっていると思えてきます。

 鼻血が出た場合は、まずティッシュやガーゼを鼻に詰めて小鼻の部分を軽く押さえ、椅子に座ってうつむいている事が最も良いとされ、有名なロダンの彫刻、考える人のポーズが速やかに鼻血を止めるとされます。

 意外なところでは、アメリカの学会の会報誌で発表されていた論文によると、ベーコンを適度な大きさに切って鼻に詰める事が鼻血を止める事に有効とされ、血が固まりにくいという機能障害であるグランツマン血小板無力症の患者の鼻血を24時間以内に止め、72時間後には退院させる事ができたと華々しい効果が報告されています。

 鼻にベーコンという発想自体が驚きなのですが、意外にもアメリカでは一般的に知られた対処法ともいわれ、約70年ほど前にはその手法と効果について医学論文も発表されていました。

 医療技術の発達に伴い実践する人はいなくなったともいわれますが、今回の論文でもベーコンの何が作用して鼻血を速やかに止めるのかについては言及されておらず、謎のままとなっています。

 有効成分や作用の詳細なメカニズムが判っていないだけでなく、アメリカのベーコンと日本で売られているベーコンの違いも考えてしまうのですが、やはり慌てず鼻にティッシュを詰めて考える人になる方が良いようにも思えます。


 

第2978回 卵の秘密(3)



 保管にそれなりの気を使う事が大切な卵。充分に気を使って殻が剥けやすくなる4日ほどを過ごさせた後、茹でて仕上がる事となるのですが、茹で方によっても仕上がりに差が出てくる事と思います。

 以前、試してみたのは基本的な多めの水に卵を入れて火に掛け、時折、菜箸やスプーンなどで卵を回転させて黄身が偏る事を防ぎながら茹でるという方法と、鍋に1cmほどの水を張り、完全に沸騰させたところへそっと卵を置いて蓋をし、高温の蒸気を使って一気に蒸し上げるという方法でした。

 たっぷりのお湯で茹で上げる方法は黄身を中心付近に持ってくることができ、気泡の窪みも偏りなくきれいな仕上がりになるのですが、黄身の方が白身よりも硬化する温度が低い事から、黄身を半熟にするという仕上げには不向きなように思え、逆に高温で蒸し上げる方法では外側から一気に高温にする事から白身が固まっても黄身はまだ固まっていないという状態にする事はできるのですが、黄身や気泡の位置は偏ってしまいます。

 新たな良い茹で方はないかと調べていると、イギリスの三つ星シェフであり、最新の調理技法の一つでもある分子ガストロノミーに詳しいブルメンタール・シェフが科学的観点から美味しい卵の茹で方を提唱していました。

 卵の白身が固まる温度は75度から79度、黄身はもっと低くて65度から70度とされます。そのため茹で卵を作るには100度に沸騰させたお湯で茹でる必要はなく、むしろ茹でてしまうと白身に火が入り過ぎて硬い食感になってしまうといいます。

 ブルメンタール・シェフによると、茹で卵にする卵は冷蔵庫から出したものを使う方が良いそうで、これは変動する室温ではなく常に一定の温度に保たれた状態からスタートするためとされます。

 冷蔵庫から出した卵を一旦鍋に入れて浸る程度の水を入れ、水の量を決めた上で卵を取り出し、火に掛けてお湯を沸かします。お湯が沸くまでの間に卵の底の部分を硬く平らな面に軽くぶつけて、卵の底に直径5mm程度のへこみを付けておきます。

 通常だと茹でる前に殻にひびなどを入れてしまうと、茹でる途中で中身が飛び出してきたり、ひびに沿った筋などが入って仕上がりが汚くなってしまうのですが、ブルメンタール・シェフの方法ではこのへこみが重要になるといわれます。

 鍋のお湯が完全に沸騰したら卵を入れ、火を止めて蓋をし、好みの茹で加減に合せて6分から10分ほどおいて卵を取り出し、冷水にさらせば出来上がりとなります。6分では白身はふんわりと固まり、黄身はトロトロの状態に茹で上がり、10分では硬茹での状態に仕上がります。

 茹でない茹で卵というのは少々違和感を覚えてしまいますが、卵をタンパク質の塊りと考えると、最適な温度設定を求めた調理法だと思えてきます。


 

第2977回 卵の秘密(2)



 卵を買いに行くと通常は、卵は常温の売り場に並べられていて、常温での販売が行われています。そのため卵はわざわざ冷蔵庫に入れる必要はないと考えがちになるのですが、卵は冷蔵庫に入れるべき食品で、低温で保管する事が好ましいという事がいえます。冷蔵庫に入れるか入れないかでは、品質の劣化が4倍にも及ぶという意見もあります。

 低温で保管した方が良い卵が常温で売られている理由としては、卵自体の構造に大きな理由があり、殻によって外界から隔絶されたように見える卵ですが、一枚板のような殻は小さな穴が開いたメッシュ状になっていて、卵を冷蔵にしてしまうと消費者が購入して持ち帰る際に結露が着いてしまい、水の浸透圧を使って大気中に浮遊していた細菌が殻の網の目を潜って卵の中に入ってしまいます。

 購入後、家に持ち帰るなり卵を洗って冷蔵庫などに保管するという意見もありますが、洗ってしまうと結露が着いた際と同じ理由で細菌が卵の中に入ってしまうリスクが高まる事から、卵は洗わずに冷蔵庫に保管する事が好ましくなっています。

 冷蔵庫に保管する際も卵を保管する穴の開いたホルダーがドアポケットのある事から、ドアポケットに卵を保管してしまうのですが、ドアポケットは開け閉めの際に温度の変化が大きく、長く開けておく事で卵に結露が付着したり、開け閉めの際の振動でデリケートな卵の味に影響が出るともいわれます。

 温度変化の少ない冷蔵庫の中に保管する事にした卵は、購入した際の透明なパックに入れた方が品質を保持しやすいとされ、その際、尖った方を下にするというパック詰めされた状態のままがより美味しくいただけるコツとなっています。

 卵の尖った方を上にしてしまうと、反対側の丸い方にある気泡が舌になってしまい、中に含まれている二酸化炭素に上に移動する力が加わってしまい、二酸化炭素が白身に溶け込む原因となってしまいます。白身に溶け込んだ二酸化炭素は加熱によって膨張し、白身に細かな気泡を生じてザラつきの元となって卵の食感を悪くしてしまいます。

 意外なほど細かな気遣いが要求される卵ですが、かつては病気にでもならない限り食べられないといった高級食材であった事を考えると、充分に注意して扱わなければとも思えてきます。


第2876回 卵の秘密(1)



 卵を茹でて殻を剥き、細かく潰してポテトサラダに加えたり、そのままマヨネーズで和えてたまごサラダにしたりと、比較的我家では茹で卵の登場頻度が多いように思えるのですが、相変わらず殻が上手に剥けずに困っています。

 潰してしまうので問題はないのですが、殻に張り付いて層状に剥がれてしまう白身のお陰で黄身とのバランスが変わったり、生ゴミの量が増えたりという弊害があるだけでなく、おでんや煮卵などのそのままの姿で出てくる料理にはとても使えないと思えてきます。

 以前、コンビニエンスストアの店長は、研修としておでんで使うために店で茹でて用意する卵の剥き方が伝授され、独自のノウハウが存在するという都市伝説を聞かされた事があるのですが、実際に店長経験者に伺ったところでは、そのようなノウハウも研修も存在しないとの事でした。

 定説としていわれている事では、卵は鮮度が高い、新しいものほど殻が剥きにくいとされ、しばらく買い置きしていた卵を茹で卵に使う方が仕上がりが綺麗になるので良いとされます。

 そのしばらくという時間はどのくらいなのかと気になってしまうのですが、卵の大きさや茹で方、剥き方などによっても違いが生じる事とは思われますが、購入後、4日以上保管する事で剥け方に違いを感じる事ができるとされます。

 また、茹でる前に室温に戻しておく事も重要とされ、茹で上がったら全体に軽くひびを入れて冷水にさらし、茹でられた卵が冷えて収縮する際に殻の内側に水分を入れておく事も剥きやすさを向上させるといわれます。

 冷水にさらした後は平らな面で全体を転がすようにして細かなひびを満遍なく入れ、無理に薄皮まで一緒に剥かないようにすると綺麗に殻を取り除けるそうなのですが、無理に剥かないようにした薄皮を除く際にも白身が剥がれて表面が荒れてしまった事もあります。

 なかなか上手な茹で卵の剥き方に関するノウハウに出会えない中、気になっていろいろと調べていると、意外と卵を扱う作法というものが存在する事に気付いてしまいます。


 

第2975回 胡麻の効用(2)



 燃料として使われる事が主流となっていたかつての胡麻ですが、食用としてもしっかり利用されていて、米粉や小麦粉を使った古い時代のお菓子、唐菓子には揚げて仕上げる際の揚げ油には胡麻油が使われています。

 精進料理の普及も食材としての胡麻の位置付けに大きく関わっていて、江戸時代初期に中国から「普茶料理」が伝えられれると、日本の精進料理も様変わりし、胡麻豆腐の原点ともなる葛の根から採った葛粉に細かくすり潰した胡麻を混ぜて固めた「麻腐」が作られるようになると、貴重な脂質を得られる料理として禅僧の健康を支える事となります。

 胡麻は燃料、食材としてだけでなく薬用としても利用されていて、中国の最古の薬物書とされる「神農本草経」には、胡麻を食べる事で心臓や肝臓、脾臓、腎臓、肺の機能を高め、肌や骨、脳にも活力を与え、長期に渡って食する事で体が軽くなって老化も防げるとしています。

 日本でも同じように胡麻の健康効果の高さは意識されており、「黒胡麻は腎に作用し、白胡麻は肺に作用する。共に五臓を潤し、血脈を良くし、腸の調子を整える」と「本朝食鑑」には記され、貝原益軒の「菜譜」には「朝夕食すべし、身を潤し、虚を補い、気を増し、肌肉を長じ、耳目を明らかにす、中風によし」と記されており、胡麻の万能薬ぶりが覗えます。

 今日でも胡麻を使ったサプリメントは人気となっていて、身近にも利用している人を多く見掛ける事ができます。中国の諺に「毎日、年齢と同じ数の胡麻を食べなさい。そうすれば病気知らずになれる」というものがあり、食を通した健康作りの先駆的食材、それが胡麻だと思えてきます。


第2974回 胡麻の効用(1)



 ごまかすという訳ではないのですが、出来上がった料理の上に少量のゴマをふると香ばしい風味が加わり、見た目にも美味しそうに仕上げる事ができます。

 ごまかすの語源はいまいちな出来の料理にゴマをふる事で料理の不出来を感じさせず、美味しそうに見せられるという事が元になっていて、ゴマが料理を美味しく演出してくれる事が覗えます。

 ゴマというと和食に完全に定着した和の食材という感じがするのですが、原産地はアフリカのサバンナと考えられています。そこから世界中へと広まっていったのですが、日本へは紀元前1200年頃の縄文時代後期、中国、もしくは朝鮮半島を経由して伝えられたとされます。

 ゴマを漢字で書いた際の「胡麻」は、「胡」が中国の北方や西方の異民族を表し、「麻」は植物の麻を示している事から、中国の西方から伝わった麻のような植物というのが胡麻の語源となっていて、胡麻という言葉が使われ始めた頃から外来植物である事が意識されていた事が判ります。

 胡麻が初めて日本の文献に登場するのは、正倉院に伝来した文書を整理した「正倉院文書」に天平6年(734年)の記載として、税に関する収支決算書の類として書かれた「正税帳」に「胡麻子」として登場しています。

 具体的な例としては、その3年後の天平9年に豊後国の正税帳として「三石四斗四升の胡麻子を購入した」との報告が書かれており、現在の数字に換算すると550リットル近い量となる事から、胡麻が広くたくさん栽培されていた事が確認できます。

 当時の胡麻は食料としてだけでなく、灯りをともす燃料としても使われ、非常に高価な油として流通していました。その価値は胡麻油一升が45升の米と交換されていたとされ、比較的安価な菜種油が出回るまで燃料としての役割の方が胡麻には求められていました。

 胡麻の利用法が燃料ではなく、食用としての方が多くなるのは明治時代に入ってからの事となっており、今日のように胡麻油を見て食材としてしか見なくなったのは意外と歴史の浅い事と思えてきます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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