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第3013回 大顎の秘密



 子供の頃、クワガタムシには序列があって、希少性が高く、姿も派手なミヤマクワガタを頂点にノコギリクワガタ、小さくて地味なヒラタクワガタという順に評価されていました。

 個人的には派手なミヤマクワガタよりも曲線が綺麗に見えるノコギリクワガタの方が好きだと思えたのですが、ミヤマクワガタ一匹とノコギリクワガタ三匹が交換されている場面を見ると、ミヤマクワガタの価値の高さを見せ付けられたような感じがしていました。

 そんなクワガタムシには幼虫期の栄養状態によって最大の特徴ともいえる大顎の大きさが変化するといった現象が見られるそうなのですが、未解明だった詳細なメカニズムが最近の研究によって明らかにされています。

 東大で行われた研究では、遺伝子のさまざまな働きを制御する「エピゲノム」と呼ばれる仕組みに着目し、エピゲノムの働きを順番に弱めるという方法を繰り返し、エピゲノムのスイッチとなっていた「HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)」が大顎の大きさを決定する遺伝子を制御している事を突き止めています。

 大顎に関係したHDACは2種類あり、一方の働きを弱めると大顎が小型化して羽が大型化、もう一方を弱めると大顎が大型化する代わりに羽が小型化する事が観察されています。

 幼虫期の栄養状態で2種類のHDACの働きが決まり、大顎の大きさも決まってしまうのですが、この仕組みは栄養状態が良い環境下では大顎という武器を巨大化させて競争力を確保し、栄養状態が悪い環境下では羽を発達させる事で移動能力を高めて、新たな環境へと移動する事に適した体になる事を示していて、クワガタムシの種の保存や生存に適した能力と思えてきます。

 大きな顎は如何にも強そうで歴戦のつわものという感じがするのですが、解明された仕組みを考えてみると、意外に坊ちゃん育ちだったのかと思えてしまいます。


第3012回 キャビア事情



 世界の三大珍味というと「フォアグラ」と「トリュフ」、「キャビア」が上げられます。その中で日本人に人気が高い物というとキャビアとされ、魚食文化の影響が色濃く出ているようにも思えます。

 普段から高価な食材とは縁がない事もあり、キャビアも我家の食卓に上る事はないのですが、非常に良く似た感じで売られているランプフィッシュ・キャビアであれば手が届きそうな価格と思えてきます。

 ランプフィッシュ・キャビアは文字通りランプフィッシュの卵で、本来は薄いピンク色などのキャビアには似ていない色合いなのですが、大きさや味わいが近い事から着色してキャビアの代替品として流通しています。

 キャビアの素となるチョウザメが乱獲や環境破壊などによって漁獲高が激減している事に対し、ランプフィッシュは生命力が旺盛という事もあり、かなり多くの漁獲高が確保されていて、そのお陰かランプフィッシュ・キャビアはキャビアの10分の1くらいの価格で購入する事ができます。

 以前、水族館でランプフィッシュを見掛けた際、チョウザメとのあまりのイメージの違いに衝撃を受けた事があり、こんなにも違う魚の卵が同じキャビアと呼ばれてもよいものかと考えてしまったのですが、ヨーロッパでは魚の卵全般がキャビアと呼ばれる事を考えると、ランプフィッシュ・キャビアでも良いと思えてきます。

 キャビアの本場となるロシアでは、キャビアとは呼ばずに「黒い魚卵」もしくは「魚卵」と呼ばれていて、現地の言葉では魚卵の事は「イクラ」と呼ばれ、日本で鮭の卵を指すイクラの語源となっています。

 私の中では醜い魚というイメージのランプフィッシュで、あまり食欲の湧く魚ではなかったのですが、先日、天草で撮影されたダンゴウオの可愛らしさに魅了され、ランプフィッシュも同じダンゴウオ科という事を知って見方が変わってきています。

 チョウザメは世界各地で養殖が行われていますが個体数の減少は深刻とされ、キャビアの価格が高騰、密猟が横行して更に個体数が減少という悪い連鎖が続いています。ランプフィッシュ・キャビアによって価格が低迷し、密猟の減少に繋がってくれないかと期待してしまいます。


第3011回 猫の禁忌



 坊ちゃんはあまり食には興味がないらしく、私が食べている物を確認する事はあっても、それを食べたがるという事はありません。これまで二人が共通して食べた物というと、私が食べていたので興味を持ち、一口だけ齧って飲み込んだ食パンのみで、魚や鶏肉、カニカマなど猫が好みそうな物を用意しても、ことごとく食べないといわれてしまいます。

 二人で共通した物を美味しくいただくという事は、ペットを飼う人なら普通に願望として持ってしまいそうに思えるのですが、人は大丈夫でもペットには毒になる物があり、その一環としてネギやチョコレートは広く知られています。

 そんな人は普通に食べている物で、猫には毒となってしまう食べ物の一つに「イカ」があります。イカは魚介類であるだけでなく、猫が好きそうな食感をしている上に猫に欠かせない栄養素のタウリンが豊富なので食べさせたいと思ってしまうのですが、昔から「猫にイカを食べさせると腰が砕ける」と伝えられていて、イカを食べてしまった猫は「腰砕け」と呼ばれる歩行困難な状態に陥るといわれます。

 イカには猫を歩行困難にしてしまうような神経毒は含まれていないのですが、チアミナーゼと呼ばれる酵素が含まれていて、大量に摂取してしまうと体内のビタミンB1を破壊されてしまいます。

 ビタミンB1が破壊されてしまうと、ビタミンB1の欠乏症である脚気の症状が出てしまい、猫は歩行が困難になってしまう事が考えられ、昔からの言い伝えは根拠のないものではない事が判ります。

 チアミナーゼは漁獲後、イカの鮮度が落ちる際に生成されるので、新鮮なイカであれば安全とされ、酵素としての活動ができないように加熱する事でも無害化する事ができると考えられています。

 とびきり新鮮なイカを選び、充分に火を通せばタウリンが豊富なイカを食べさせる事ができるとなれば、牛深へ行った際にイカを購入し、私は刺身で坊ちゃんにはボイルしてと思うのですが、いつものように嫌われそうで、少々ためらってしまうものがあります。


第3010回 人工の思考(3)



 初めてAI(人工知能)に触れたのは、さまざまな家電製品への応用が広がった第一次AIブームの頃で、最も身近だったのはテレビゲームのNPC(ノンプレイキャラクター)だったと思います。

 仮想の世界の中を冒険して回るロールプレイングゲームの中に、直接操作する事はできませんが共に旅を続けながら自分で考えて手助けをしてくれるキャラクターとして登場するのですが、あまり賢い感じはせず、どことなく間の悪い仲間という感じだった事が思い出されます。

 そんなAIが人を凌駕するとまでいわれるようになった背景には、ディープラーニングと呼ばれる高度な学習機能があるといえます。発達したコンピューター技術は、膨大なデータの記録や保管、高速で必要な情報を呼び出し、解析処理を施すといった事を可能にして使えないAIから人を超えるAIへと変貌を遂げさせています。

 非生物が記憶や学習をするとなると高度なテクノロジーの集積のような感じがして、最先端の事のように思えてしまうのですが、意外なほど単純な物でも経験的な記憶と学習による反応を示すという研究結果が発表されていました。

 カナダのオンタリオ州、ローレンシャン大学のルーロー博士を中心とする研究グループによる実験では、一般的なパン生地にも学習能力がある可能性が示唆されていて、高度な記憶装置や集積回路を用いなくても物は学習するという衝撃的な結果が報告されています。

 研究では小麦粉に水、少量のレモン果汁、塩、植物油を使ってごく普通のパン生地を作り、電極を接続して電気ショックを与えられるようにした上で、パン生地の横でLEDを発光させた直後に電気ショックを与えられるようにしています。

 何度かLEDの発光と電気ショックを流すという事を繰り返していると、電気ショックを与えられたパン生地ではスペクトル密度(周波数特性)が著しく変化する事が観察され、しばらくLEDの発光に続く電気ショックを経験し続けたパン生地では、いつの間にかLEDが発光するだけで電気ショックを与えなくてもスペクトル密度の変化が現れるようになり、パン生地が発光と電気ショックを結び付けて記憶するという学習が行われた事が判ります。

 同じような反応は「パブロフの犬」として理科の授業で学ぶのですが、犬のような動物でもなく生命体でさえもないパン生地が学んで反応を示すという事が画期的な発見のようにも思えます。

 パン生地の発酵に関わるイースト菌が一連の反応に関わっているのか、小麦粉を練っただけのものでも反応が起こるのか、ごく普通のパン生地としながら通常のレシピとは少々異なる配合の意味など、いろんな事が気になりながら、あらゆるものに魂が宿るという日本古来の世界観が裏付けられたようで、とにかく興味深い研究結果だと今後の展開に注目したくなってしまいます。


第3009回 人工の思考(2)



 AI(人工知能)は大きく分けて実際の知能を作り出す事と、まるで知能があるかのように振る舞う機能を持たせる事、その二つに分けられるといいます。その後者の方が主に研究が進められてきているそうですが、膨大なデータを使って学習し、最適な答えを導き出すディープラーニングの手法によって前者の確立も同時に可能になっているようにも思えます。

 大量のデータを保存し、高速で処理する事は発達したコンピューターの得意とする分野となり、人では及ばない事ともなりつつあります。柔軟な発想というのは人ならではと思えていたのですが、それもパターン化して解析する事によって再現が可能となってしまい、AIは人をすでに超えているともいえます。

 そうした発達したAIとロボット工学が結び付き、自ら考えて最適な行動ができるロボットの登場がやがて人の多くの仕事を代行するようになり、人は職を奪われてしまうというショッキングな報道を見掛ける事が多くなってきました。

 中には8割近い職種がAIに奪われてしまうというレポートもあり、未来は多くの人が職に就く事ができないという悲観的な事も聞かされています。最初に必要となるロボットを購入する初期投資を行えば、後はバッテリーを充電する電気代と定期的なメンテナンス費用だけとなり、企業にとって負担となっている人件費を大きく削減できるとなればその方向へ動く事は容易に想像する事ができます。

 一部の経営者だけが大幅に経費を削減して利益率を向上させ、巨額の収入を確保する反面、多くの人が職を失って貧困に喘ぐ、そんな超格差社会が未来の姿としていわれているのですが、それに対しては少々疑問を持っています。

 8割もの人が職を奪われて収入が途絶えた時、もしくは近い将来に職を奪われかねないという不安にさらされた時、顕著に見られるのは個人消費の停滞だと思えます。個人消費が停滞すると多くの企業が売り上げを確保する事ができなくなり、更なる経費の削減を迫られ、AIの導入をさらに加速させて社会的な不安がより大きく消費行動を低下させてしまいます。

 国の税収も低下する中、生活保護の受給者は拡大を続け、政府は税収を増やそうにも所得税、消費税、住民税といった個人に関係する税収は全く期待する事ができなくなります。利益を上げている企業への課税しか税収を確保する事ができなくなり、高額な法人税として確保した税収が生活保護として個人へ渡され、それが消費されて企業の利益となって税収を支えるという歪な経済構造となる事が想像されます。

 ある意味、人は労働という義務から解放されたともいえるのですが、無理やり継続されている社会の流れを管理する側にも導入されたAIはどのように考えるのか、その先にあるものを見てみたいようにも思えます。


 

第3008回 人工の思考(1)



 初めてのAI(人工知能)との出会いは1990年代、さまざまな家電製品やテレビゲームに搭載された事が話題となり、自ら考えるプログラムという事が、大きな技術革新のようにも思えて、とても便利な未来が訪れるように感じられました。

 1997年にはチェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフをチェス専用に作られたコンピューターのディープブルーが打ち負かし、AIが人を凌駕する日がそれほど遠くないといった事もいわれるようになっていました。

 あまり話題にはなっていませんでしたが、最初の湾岸戦争において部隊のスケジューリングにもAIが用いられいて、それによって大幅に削減されたコストは1950年代以降、アメリカ政府が投資してきたAI研究のための投資総額を上回り、AIの開発は元が取れる投資とも見られるようになっています。

 以降、研究が進められ、最先端の技術の結晶、発達したコンピューターテクノロジーの恵みとして1990年代に登場した技術といった感じがするAIですが、その歴史は意外なほど古く、AIの原点となる概念は17世紀の初め、「機械論」で動物の体が複雑な機械であるとしたルネ・デカルトにまで遡るとされます。

 1642年にはパスカルによって最初の機械式計算機が作られ、チャールズ・バベッジとエイダ・ラブレスによってプログラムする事ができる機械式計算機が開発されると、計算をするという知能は人工的に作り出す事が可能となったといえます。

 1943年にはウォーレン・マカロックとウォルター・ビッツによって「神経活動に内在するアイデアの論理計算」と題した論文が発表されたりもしていますが、AIにとって大きな流れが変わっていくのは1950年代、ジョン・マッカーシーによって「人工知能」という言葉が作り出されて以降という事ができます。

 今年の3月にはチェスよりも複雑とされ、AIが人に勝つには時間が掛かるだろうといわれていた囲碁においてAIが勝利し、その際に用いられたディープラーニングという手法が大きな話題となっていました。

 ディープラーニングは多層化されたニュートラルネットワークを用いて膨大な量の情報を元に学習させ、最適な結論を導き出すといった手法が採られ、この技術によってAIは多くの場面で人を凌駕すると考えられています。

 思わぬ新たなAI元年となりそうな一年の終わりが近付き、この年の事を今後、どのように振り返るのかと考えながらAIとAIがもたらす未来について思いを巡らせてしまいます。


第3007回 オーラルケアの今昔(2)



 知り合いは朝起きるなり歯磨きに向かうので、最初は奇異な習慣のように思えていたのですが、後に健康面での意外な効果を知る事となり、驚かされてしまいました。

 「食べたら磨く」といった歯磨き関連の製品の宣伝の影響もあり、物を食べたらすぐに歯を磨く事が正しい習慣のように定着しています。食べ物の残り滓を取り除く事によって歯周病菌の繁殖を抑え、口の中の状態を良好に保つという発想ですが、それが間違いである事が最近になって指摘されてきています。

 食事の際、直截的な酸味ではなくても歯は酸性の状況下にさらされてしまいます。一見、硬くて頑丈そうな歯ですが、酸性化では歯のエナメル質を構成しているカルシウムやリンが溶け出してしまい、表面が柔らかい状態になってしまいます。

 その状態で歯磨きをしてしまうとブラシによって歯の表面が摩耗してしまい、知覚過敏を引き起こしてしまったり、イオン化したカルシウムやリンを唾液ごと除いてしまい、歯が再び硬さを取り戻す再石灰化を台無しにしてしまいます。

 そのため、脱灰と呼ばれる食事によるエナメル質の軟化が終了し、再石灰化によって硬さを取り戻す行程が終了する食後30分から1時間ほどは歯磨きをしない方が良いともいわれるようになってきています。

 知人の習慣についても、夜、寝ているうちは唾液の循環が低下する事から歯周病菌が増加している事が考えられ、朝起きて増殖した歯周病菌を飲み込んでしまう事がさまざまな内臓の疾患に繋がっているともいわれます。

 海外の歯科医が食後の歯磨きという習慣について、「菌が増え切った状態でエサを与えるのか」と食前の歯磨きの方が正しいとしたコメントもあり、いつやるべきなのか正しい結論が欲しいとも思えてきます。


第3006回 オーラルケア今昔(1)



 私の中で歴代最強の陸上の生物というと、すぐに恐竜のティラノサウルス・レックスが思い浮かびます。大きな体はほとんどが筋肉といった感じの強靭な姿で、鋭い牙と強力な顎の力を思うと、空前絶後の戦闘力と思えます。

 特徴的な姿は捕食者としての究極形のようにも思えるのですが、太く発達した脚や尾に対し手の貧弱さが目立ち、退化したとはいえあまりにも不似合いな感じに違和感を覚えたりもします。

 戦力としてはあまり役立たないように見えるティラノサウルス・レックスの腕ですが、獲物を捕えたり、鋭い爪で引き裂くといった事ではない重要な役割を担っていたといいます。

 鋭い爪こそついてはいますが、その頑健な体にはあまりにも貧弱な腕が担っていた大切な役割とは、強力な顎の力で獲物に噛み付き、肉を引きちぎる際に牙に挟まってしまう肉の繊維の処理で、鋭い牙を良好な状態に維持するためのオーラルケアに役立っていたと考えられています。

 ティラノサウルス・レックスが活躍したのは中生代の白亜紀末期と、恐竜時代の終わり近くですが、それでも人間が登場する遥か昔という事ができ、そんな古い時代からオーラルケアは重要だったのかと、日常生活の中での大切さを再認識してしまいます。


第3005回 スプーン効果



 たまたま購入したそうめんに付録として金属製の円盤のような物が貼り付けてありました。説明書によるとその円盤を鍋の中心に置いておくと、そうめんを茹でる際に鍋が噴きこぼれにくくなるといいます。

 気になってさっそく試してみると、説明書に書かれていたように噴きこぼれず、いつもは鍋に付きっきりで茹でていたものが、鍋を放置して薬味の準備もできてしまいます。

 便利な物もあるものだと思いながら仕組みを調べてみると、円盤が鍋の中心部にある事で通常では鍋の真ん中から上へ向かって水の対流が上昇し、鍋の外側に向かってしまうものが逆に鍋の外側から中心へと流れが変わるために、噴きこぼれにくくなるとされ、同じような効果は大きめのスプーンを入れておいても得る事ができるとされます。

 そうめんやうどんなどの麺を茹でる際、溶け出した小麦の成分も手伝って鍋のお湯は噴きこぼれやすくなってしまいます。鍋のお湯が盛り上がり、今にも噴きこぼれそうになると登場するのが「差し水」で、少量の水を加える事でお湯の温度を下げる事で噴きこぼれを防いでくれます。

 また、差し水をする事で麺の茹であがりにコシが出るともいわれますが、麺を茹でる際は一旦沸騰させたらその温度を維持し続ける方がより美味しい麺に仕上がるとされます。麺を茹でる際にたっぷりのお湯を使った方が良いとされるのは、お湯の温度変化を最小限に抑える目的もあるといえます。

 差し水をしてしまう事は大きくお湯の温度を下げてしまう事から、麺を茹でるという事に関してはあまり良い事ではないと考えられ、差し水は火力の調整が利かない釜戸による調理の名残りとも思えてきます。

 急に噴きこぼれる鍋の事を考えると、差し水で一気に事無きを得たいとも思えてきますが、麺の仕上がりを思うと事前にスプーンなどを沈めておく方が良いのかもしれません。


第3004回 生焼けの理由



 以前、秋が深まって風が冷たくなってくると、コンビニエンスストアのレジの横に設置されている温蔵庫の中の中華まんが気になっていました。中でも大好きな食材であるトマトの風味が利いたピザまんが好きで、チェーン店の系列による味の違いを楽しんだりしていました。

 年度によってもレシピが微妙に変化しているらしく、この冬はどこの系列の方が自分の好みに合って美味しいという事もチェックしていたのですが、その冬、気に入っていたチェーン店の近所の店に行くと、急に寒くなったせいか売り切れてしまっていたという事がありました。

 在庫はあるらしく、これから温めますとの事なのですが、私としては購入後、すぐには食べず、家に持ち帰ってから食べるため、温かいピザまんだと袋の中が湯気で水浸しになってしまう事や、冷めたものを再び電子レンジで温める事から温かくない方が良いように思えて、冷たいままのものを購入したい旨を伝えると意外な顔をされながら、理由を理解されるとその後は私に対しては温めてないピザまんを販売してくれるようになっていました。

 先日、似たような理由で食文化を大切にする国、フランスのパン職人が困惑しているというニュースがありました。日常の食であるフランスパンのバゲットが顧客の嗜好によって完全に焼き上がっていない生焼けの状態で売られるようになっているといいます。

 バゲットは夜中の時間帯の労働が禁止されたパン職人によって、早朝から焼き始めて周辺の顧客が朝食用のパンを買い求めに来る開店時に間に合うように、早く火が通るように細長い形にした事が紀元とされ、パリッと焼き上がった表面の皮は美味しさの重要な要素の一つとされます。

 それが来店して焼き上がって並べられた店内のバゲットを眺め、焼けていない色の白いものから売れるようになり、徐々に焼き上げる時間を短くした生焼けのバゲットが増えたといわれます。

 職人からは、自分で焼いた販売用のバゲットは食べたくない、本来ならばあと数分は焼かないとダメだといった声も聞かれていますが、完全に焼き上げると売れないという現実の前ではどうする事もできないといえます。

 消費者が生焼けのバゲットを好む理由としては、柔らかい食感のものを好む現代人がバゲットの硬さを好まなくなったともいわれますが、購入したバゲットを食べる際に温めるために焼くといった事が行われるために、完全に焼けてない方が良い焼き上がりになるためとも考えられています。

 パン屋に行って焼き上がったバゲットの香ばしい風味を楽しめないというのは少々寂しい気もしますが、家で一手間加えて完成させ、焼き立ての香りを家族で楽しめるというのは良い事のようにも思えます。

 冷えたままのピザまんに生焼けのバゲット、似たような合理的な理由がそこにはあるように思えて、パン職人の嘆きを複雑な思いで聞いてしまいます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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