FC2ブログ

第3066回 はしか対策



 記憶が定かではないためはっきりとは判らないのですが、新三種混合ワクチンの対象となる「はしか」、「おたふく風邪」、「風疹」には縁がなく、感染する事なく過ごせています。ワクチンが効いているのかとも思えるのですが、ワクチンを接種した記憶もない事から、無防備でありながら運よく無事に過ごせているのかもしれません。

 三種のウィルスはそれぞれ強力な感染力を持ち、飛沫感染、空気感染、接触感染と多彩な感染経路で体内に入り込んでくる事や、ワクチンによって免疫を獲得しても10年ほどで失われてしまい、ブースター効果と呼ばれる追加免疫の効果も得られない事から、子供の頃にワクチンを接種したとしても現在では感染の可能性がある事が考えられます。

 そんな三種のウィルスの中で、はしかの原因となる麻疹ウィルスが人に感染する際、細胞に侵入する役割を担う「Fタンパク質」と呼ばれる特殊なタンパク質の構造が解明され、根本的な治療に繋がる抗ウィルス薬の開発に繋がるとして期待されていました。

 研究に当たったのは九州大学大学院医学研究院の橋口隆生准教授をはじめとする研究チームで、麻疹ウィルスは表面にあるFタンパク質が細胞同士を結合させて人の細胞に侵入する事が知られていますが、研究チームはFタンパク質の構造を原子一つひとつまで映像化する事で構造の解明を行っています。

 また、細胞膜の融合を抑える働きのある2種の阻害剤を加えると、Fタンパク質の特定の部位に結合して感染が抑えられるメカニズムを解明し、Fタンパク質の標的とするべき部位を特定して阻害剤の改良による治療薬の開発へと繋げています。

 橋口准教授はFタンパク質の構造情報を一般に公開しており、その研究者も自由に使えるようにする事で確実により良い薬を開発できる環境を整えていて、今後、九州大学に限らず新たな治療薬が開発される可能性が高まってきています。

 はしかというと子供が罹る病気という感じがして、高い熱と発疹をイメージしてしまうのですが、大人でも感染する事があり、感染の数年後に亜急性硬化性全脳炎を発症すると死に至る事があります。2016年の統計では全世界で推定約9万人が感染によって亡くなっており、その怖さが伝わってきます。いち早い治療薬の登場を望んでしまいます。

 
スポンサーサイト

第3065回 正しい除去方法



 あまり賛成したくはない事ですが、戦争はテクノロジーを進化させる起爆剤となるという意見があります。実際、戦争によって誕生したり、高度に進化を遂げた事例は多く存在し、日常を支える存在となっているものもあります。

 そうした戦争の中で生まれ、進化してきたものの中で、日常の生活に何の役にも立っていないものの一つに「地雷」というものがあると思います。安価で殺傷力の強い地雷は、世界中の紛争地帯で利用され、紛争終了後も現地に大きな災いを残し続けています。

 地雷がもたらす被害としては、人や車両、家畜などが除去されずに残っていた地雷に触れて被害に遭うという直接的被害に併せ、その地に地雷が敷設されている事でその土地の経済的価値が下がってしまうといった間接的な被害も存在するとされます。

 地雷と縁のない日本ではあまり知られていない事ですが、地雷はそんな二つの被害とは別に、埋設され続ける事でその土地を汚染してしまう土壌汚染という被害ももたらしてしまうとされます。爆薬として使われているTNT火薬から化学物質が漏れ出してしまい、土壌に浸透してしまうためですが、最近の研究によって「地雷は除去するよりも爆発させた方が環境に優しい」という意外な結果が報告されていました。

 スコットランドのダンディー大学とジェームズハットン大学、オーストラリアのチェムセンターとカーティン大学の研究者からなるチームが地雷を爆発させずに除去した場合と、爆発させた場合の土壌に残されているTNT量の違いを分析したところ、予想に反して爆発させた方が少ないという結果が得られています。

 理由としては、爆発によって周囲の土壌が動かされてしまい、土の中に隙間が作られる事で土壌の多孔性が向上し、微生物や菌類による有害物質の自然な分解が促進されるためとされ、研究者の一人、ニック・デイド博士によると「爆発のお陰で汚染を除去してくれるバクテリアが土壌に浸透しやすくなる事が原因」と説明されています。

 TNT火薬から漏れ出した有毒な化学物質というとどこか怖ろしげな感じがしてしまいますが、自然の力はそれさえも分解してしまうという事に大自然の偉大さを感じつつ、そうであるのならばドローンなどを使って上空から電磁波を照射し、地雷原を一気に片付けてしまえばと少々乱暴な事まで考えてしまいます。

 以前耳にした情報では、3ドル(USドル)の地雷一つを処理するのに200ドルから1000ドルの費用が必要になるといわれ、紛争が片付いて戦闘が行われなくなったばかりの地域では経済的に費用の捻出が難しいともいわれます。

 危険を冒しながら一つひとつ手作業で探して除去するよりも、遠隔操作で爆破した方が環境にも優しいとなると、地雷の除去がさらに進んでくれないかと願ってしまいます。


第3064回 毒の利用



 かなり記憶は薄れてはしまいましたが、熊本県民にとって郷土食でもあり、子供の頃から見掛けていた「辛子蓮根」で食中毒事件が起こり、死者まで出てしまったという事はショッキングな出来事でもありました。

 その際、食中毒菌として一気に名前が広まったのがボツリヌス菌で、嫌気性細菌である事から真空パックに入れても増殖を続けられるという事も、それまで真空パックに入れれば食品の日持ちをある程度確保できると考えていた事が、油断以外のなにものでもなかった事を意識させてくれました。

 そんなボツリヌス菌の名前に再び出会うのは、食品衛生の現場ではなく医療に関する事でした。ボツリヌス菌が作り出し、辛子蓮根による食中毒事件の際は死者まで出してしまった毒、A型ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)は神経伝達物質であるアセチルコリンの伝わりを弱めるという働きが医療分野で応用され、眼瞼痙攣をはじめとする痙攣を止める薬剤として使われています。

 美容分野へも応用は進み、しわを伸ばす働きがあるとして「ボトックス注射」と呼ばれて美容整形では効果を発揮していました。最近では顎の部分の筋肉を細くする事で、すっきりとした小顔に見せるといった目的でも使われている例を多く見掛けるようになってきています。

 そうした生物毒の医療分野への応用に新たな毒素が加わろうとしています。つい先日、その毒を使う蜂の存在を知ったばかりだった事もあり、もうそんなところまで研究が進んでいるのかと驚かされながら、研究成果を待ちたいと思ってしまいます。

 その蜂は「エメラルドゴキブリバチ」と呼ばれるもので、ゴキブリをゾンビ化して操るという驚くべき生態を持つ蜂として紹介されていました。

 エメラルドゴキブリバチは宿主としてゴキブリを確保する際、まずゴキブリの胸部を刺して毒液を注入します。注入された毒液によってゴキブリは5分ほど肢が麻痺した状態になります。その麻痺して動けない簡に脳を刺すと、ゴキブリは30分ほど活発に身繕いをした後、動かなくなり自分の意思では動く事ができない「寡動」と呼ばれる状態になってしまいます。

 ゴキブリは動けないといっても麻痺している訳ではなく、蜂の誘導があれば動く事ができ、自らの意思では動けないだけの状態にあるとされます。その状態になったゴキブリを蜂は触覚を引っ張って誘導し、自らの巣穴まで歩かせて移動してゴキブリの体内に卵を産み付けます。

 一週間もすると卵は孵化して、幼虫はゴキブリの体内を食べ尽くしてしまうのですが、卵を産み付けなかった場合、ゴキブリは正常な状態に戻って、自らの意思で逃げ出す事ができるともいわれます。

 カリフォルニア大学リバーサイド校の昆虫学と神経科学の教授であるアダムス博士は、エメラルドゴキブリバチから毒液を採取して成分を分析した結果、ドーパミンとこれまで知られていなかったアミノ酸が幾つか繋がった状態のペプチドが含まれていたと発表しています。

 新発見のペプチドは「アンピュレキシン」と名付けられ、蜂がゴキブリを操る上で重要な役割を担っていると考えられると同時に、寡動が主な症状一つであり、ドーパミンが深く関わっているパーキンソン病の治療の足掛かりになるのではと期待されています。

 蜂はアンピュレキシンを用いてドーパミンの生成を妨げる事によってゴキブリを寡動の状態にして操っていると考えられ、アンピュレキシンがターゲットとしている細胞を見つけ出して、詳細なメカニズムを探る事ができれば、ドーパミンを生成する細胞の変性によって発症すると考えられているパーキンソン病の治療方法が見付かるかもしれません。

 当初、ゴキブリをゾンビ化して自らの巣穴へ誘導するという話を聞いた際は、少々背筋が寒くなるものを感じてしまったのですが、パーキンソン病の治療に繋がるかもしれないと知らされると、思わず応援してしまいたくなってしまいます。



プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR