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第3117回 静かな危機に



 我家の地下から水を汲み上げているポンプが壊れてしまい、しばらく家の水道が使えなくなった際、近所の水源には随分と助けてもらいました。毎日、水を汲みに行きながら良質な水が必要なだけ手に入る事にとても感謝していました。

 いつも水を汲みにいくと水源のすぐ近くにある神社にお賽銭を上げ、感謝の気持ちを伝えた後に無尽蔵とも思えるほど滾々と湧いてくる水を容器に入れていたのですが、今、世界では多くの水源に危機が迫っているといわれていて、少なくとも近所の水事情を見ているとどこか遠い世界の事のようにも思えてしまいます。

 世界各地の地下には大量の地下水が隠されていて、それらは「地下帯水層」と呼ばれています。地球上に存在する淡水で最も多いのは氷床とされますが、地下帯水層はその氷床に次ぐ水量を誇るとされ、世界中の川にとって重要な役割を果たしています。干ばつの際にも川の水量が大きく変化しないのは、地下帯水層から供給される地下水のお陰とされます。

 10月に学術誌の「Nature」に発表された論文によるとそうした地下水が人類によって何十年も大量に汲み上げられてきた結果、「ゆっくりと干からびかけている」とされています。地下水が汲み上げられている地域の15~21%がすでに重大な閾値(しきいち)を超えているとされ、その比率は2050年までに40~79%に急増する恐れがあるともいわれます。

 閾値とは、その値を超えてしまうと川の水が足りなくなり、流域に棲息する動物や植物の生存が危機にさらされる値に設定されていて、閾値を超えるという事は川の水の恵みによって育まれてきた生態系を維持できなくなる状態に陥る事を指しています。

 川の水は雨や上流の雪解け水に由来するイメージを持ってしまうのですが、実際はほとんどが地下水によるものとなっていて、地下水を大量に汲み上げる事は川の水量を減らすだけでなく、流域に暮らす湿地や植物、動物にも影響を及ぼす事になります。

 現代の生活の多くは地下水によって支えられているといっても過言ではなく、世界の食物の約40%は地下水によって育てられているとされます。そんな地下水の供給源である地下帯水層に水が満たされるには時間が掛かる事が判っていて、今、地下水を汲み上げている影響は未来に生じる事が考えられ、閾値に近付いてから危機感を持っても間に合わない可能性もあります。

 地下水の過剰な汲み上げによって川の水が完全に枯れるという事はほとんどないとされますが、流量が10%減っただけでも流域の淡水系の動植物へは大きな危険が及ぶともいわれます。

 今後、人口の増加によってさらに地下水の需要が高まる事が考えられます。20世紀は石油を巡って人々が争い、21世紀は水を巡って争うともいわれる時代に生きる者として、水の利用について厳しく見直す必要を感じてしまいます。


 
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