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第2692回 大王の不食



 行き付けのスーパーのいつもは使わない側の入口から入ると、通路に沿ってコインを入れてハンドルを回し、カプセルに入ったおもちゃなどを販売するガシャポンの機械が並んでいます。その中に一際異彩を放つものがあり、近付いてみるとダイオウグソクムシのフィギュアを販売していました。

 買ってみようかと少々心が揺れたのですが、ダイオウグソクムシ以外の生物のフィギュアも入っていて、ガシャポンにしては一回400円と高額であった事から、気に沿わぬ物が出てしまう事を怖れて素通りしてしまいました。

 ダイオウグソクムシは「具足」の名前が示すように背中が甲羅で覆われたダンゴムシの仲間で、とても虫とは思えない巨大な姿が話題になる事があります。大西洋やインド洋の深海底に棲んでいて、生物の死骸などを食べる事から「深海の掃除屋」などと呼ばれて巨体に似合わない穏やかな生活を送っています。

 そんなダイオウグソクムシが巨体やいかつい姿以外で話題となったのが、鳥羽水族館で飼育されていた「No.1」と名付けられた個体が5年を超える長きに渡って絶食を続けた事によります。飼育日数は6年と158日に上り、平成21年の1月2日に50gのアジを食べて以降、5年と43日もの間、何も食べずに生きていた事になります。

 残念な事に平成26年2月14日の午後5時半頃に死亡が確認されましたが、生前は飢餓の様子は確認されず、死亡した際も甲羅の内側の肉に痩せなどが見られず、色艶も良い事から死因は餓死ではないと見られています。

 5年を超える長きに渡り、何も食べずに生きられた事について死後解剖が行われ、その際、胃の中から謎の液体が見付かっています。褐色の液体はほぼ胃全体を満たすほどの量で、中からは酵母のような微生物が検出されました。

 過去に死亡したダイオウグソクムシを解剖しても、胃の中からは未消化の固形物か空っぽの状態しか見られず、今回のような液体が出てきたのは初めての事で、顕微鏡で液体を観察すると微生物は増殖しており、出芽や分裂で増える単細胞の酵母に近い存在である事が推定されました。

 現在のところ酵母に似た微生物の研究が進められ、ダイオウグソクムシの絶食との関連が調べられています。微生物はダイオウグソクムシと共生していた事も考えられ、共生関係を確立できたために何も食べる必要がなくなったのか、寄生されてしまったために食べる事ができなくなったのか。さまざまな謎を残しながらダイオウグソクムシは驚異的な絶食記録を確立し、静かな眠りに就いた事になります。

 人でもジャングルで暮らす部族にほとんどタンパク質を摂取せず、不足するはずのタンパク質を腸内細菌を消化する事で賄っているという例がありますが、完全な不食という事は過去に例がないと思えます。

 微生物との共生による不食の生活。どのようなものなのか想像が膨らんでしまい、深海のダイオウグソクムシに思いを巡らせてしまいます。


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