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第2729回 怖い動物(2)



 大柄で屈強な感じがする雄の種豚を除き、通常はふっくらと丸く、穏やかなイメージがある豚ですが、そのイメージを一変させてくれたトリュフの話は、あくまでもトリュフが発するフェロモンのなせる事で、普段、見掛ける豚はそれほど怖ろしいものではないと思えます。

 そんな豚の姿を変えてしまうような研究が行われ、その研究成果ともいえるマッチョな豚は、食や豚のイメージを変えるだけでなく、食や環境という事に対して新たな問題を提起もしていました。

 中国と韓国の共同による研究チームが「ゲノム編集」と呼ばれる新たな手法によって筋肉の発達を抑制する因子、ミオスタチンに関する遺伝子の働きを抑さえ、筋肉がしっかりと発達する、質の良い赤身が得られる豚の品種改良に成功しています。

 同じような肉質と収量の改善手法は質の良い赤身肉を多く得られる事で知られる牛種、ベルジアン・ブルーでも行われた事があるのですが、ベルジアン・ブルーの場合、何代にもわたって必要な形質を持つ牛を掛け合わせ、農業的に行われる品種改良の結果として誕生しています。

 今回の改良は交配よりも確実で短期間で結果が得られるゲノム編集技術が使われてはいるものの、これまでの品種改良と変わらないものであると研究チームは説明していますが、異論もあり、今後、食の安全や生態系の保全といったさまざまな観点から充分な検討が行われるべき事と思えてきます。

 これまで行われてきた遺伝子組み換え技術は、遺伝子の一部を切り取り、必要な機能を持つ遺伝を組み換える事で人に都合の良い形質を持つ生物を作り出すというものでした。

 組み換えによって作り出された遺伝子は明らかに自然界には存在しないものであり、自然界に放たれてしまうと従来の生物の遺伝子を変更させてしまい、在来の生物を絶滅させてしまうという事も危惧されています。

 それに対しゲノム編集は遺伝子を組み換えるのではなく、必要な遺伝子の働きを活性化したり、不要な遺伝子を抑制したりする事で必要な形質の生物を得るというもので、自然界に起こる突然変異を人為的に行うものと考えられています。

 そのためゲノム編集では遺伝子組み換え技術によって可能となっていた「蛍の光を放つマウス」といったような、本来はあり得ない形質を生物に持たせる事はできませんが、体が大きく育つ、成長の速度が速い、病気に強いなどといった都合の良い品種を作り出す事は可能となっています。

 ゲノム編集は人の都合によって自然界にあり得ないものを作り出す遺伝子組み換えよりも、本来の遺伝子の働きを都合よく操作するものである事から、消費者の抵抗感が少ない事が予想され、遺伝子組み換えよりも普及する可能性が高いと見られています。

 今後、食の世界にも応用される事が確実といえるゲノム編集技術ですが、自然界でも起こっている突然変異を人為的に行うという見方ができる反面、これまでの進化の過程で起こらなかった変異を人の都合で強制的に実行すると考える事もでき、安全性や自然環境への汚染など、多方面からの詳細な検証が必要といえます。存在しなかったものは存在しない方が良いように思えるのは、臆病な性格ゆえなのかと考えてしまいます。


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