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第2755回 裸で出歯の特権



 ハダカデバネズミの名前を知った際は、あまりなネーミングと思いながらそれ以外はなさそうな変に納得させられるものを感じてしまいました。その名の通りげっ歯類特有の二本の前歯が大きく飛び出していて、体には感覚器官となる僅かな毛以外は生えておらず、お世辞にも可愛いとはいえない姿をしています。

 幸いにも地下に巣穴を掘って、ほとんどの生涯を巣穴の中で暮らすので、ほとんど人の目に触れる事はないのですが、もし、地上で生活していて、犬くらいの大きさがあったら有らぬ疑いを掛けられて駆除されていたような気がしてしまいます。

 そんな醜いハダカデバネズミですが、非常に興味深い生態をしていて、ゲノムの解析をはじめ、多くの研究の対象となっています。温度が安定した地下で暮らすためか、体温を調節する機能を持たず、ネズミのくせに変温動物である事や、蟻や蜂のような女王を中心とした社会構造を作って生活する事、他のネズミの寿命が2、3年程度となっている中、ハダカデバネズミの寿命は30年近くと桁外れに長い事など、多くの点で規格外の存在のように思えます。

 中でもガンに対する耐性は強力とされ、いまだにガンを発症している個体は見付かっていないとされます。一定のサイズに達した細胞群に新たな細胞を増殖させない「p16」と呼ばれる遺伝子がガンの増殖を防いでいるためと考えられ、p16よりも遅れて発動し、細胞の再生を阻害するp27遺伝子も二重の防壁としてハダカデバネズミをガンから守っているとされます。

 ガンを患う事がなく長寿というだけでも羨ましい感じがするのですが、最近の研究でハダカデバネズミは高齢になっても運動能力の衰えや血管機能の低下といった老化の兆候が見られず、老いる事なく天寿を全うする事が判ってきています。

 老化の原因の一つに細胞分裂の際、遺伝子の端の部分のテロメアが少しずつ切れて、やがて一定以下の長さになると細胞分裂が行われなくなり、新たな細胞が供給されなくなるというものがあります。ハダカデバネズミはこのテロメアを交換する能力を持ち合わせている事が、いつまでも老化しない理由と考えられています。

 人でもテロメアを再生する酵素、テロメラーゼが発見された際は不老不死が実現するのではと話題になった事があるのですが、テロメラーゼは損傷した本来であれば機能するべきではない遺伝子にまでテロメアを持たせて、細胞分裂に関わる能力を持たせてしまう事から、ガンを誘発するとして不老不死は夢のままとなっています。

 ハダカデバネズミはそのガンに対して強力な耐性を持つ事から、テロメアを再生しながら老化を防いでいると考える事ができ、自然の中の例外的存在と思えてきます。不老長寿という事はありがたいものですが、悲しいほどに可愛くない姿を見ると、天は二物を与えずという言葉を思い出してしまいます。


 
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