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第2822回 肉の未来



 田舎という土地柄、出掛ける際に牛や豚を荷台に乗せたトラックに出会ってしまう事がよくあります。大きく育った牛や豚の場合、その先の展開が解っているだけにとても申し訳ない気持ちになり、「絶対に無駄にせず、美味しくいただくからね。感謝する気持ちをずっと忘れないから許してね」と思わず心の中で呟いてしまいます。

 「人は命あるものを食べる事でしか命を繋ぐ事ができない、そこに人の悩みの根源がある」と、ある人に聞かされた事があり、運ばれていく牛や豚を見るたびに思い出してしまいます。そんな命と食べ物に関する概念が、やがて変わってしまうかもしれない可能性が高まってきています。

 先日、中国でクローン技術を応用した大規模な食肉工場の構想が発表されていました。優秀な肉質を持つ牛や豚のクローンを大量生産すれば、質の高い肉が安価に得られる事も可能となります。

 しかし、それではクローンとはいえ誕生した家畜を肥育し、やがては殺して肉とするという現在と変わらない流れが存在してしまいます。最近、注目を集めてきているのはそうしたクローン技術ではなく、良質な肉を培養して製造する「培養肉」の技術となっています。

 家畜から採取した幹細胞をバイオリアクタ―(生物反応装置)などを用いて培養し、好みの状態の肉を製造するというものですが、この方法では肉を得るために家畜を殺す事なく、少量の幹細胞を提供してもらう細胞バンクとして活用してもらう事となり、畜産のあり方を根底から変えるものとなります。

 家畜の役割が幹細胞の提供となる事から、これまでの畜産のように多数の家畜を飼育する必要がなく、「肉を得るためにその3倍の穀物を使い、肉食は食料不足を加速する」といわれた問題も解決する事となります。

 培養肉でステーキ肉を作る場合、血管状の構造や筋繊維などの複雑な組織を作り、肉の隅々にまで養分を送り届けられる状態を作り出す必要があり、多様な細胞を正確に配置する必要があるといった技術的な問題や、工場生産、培養といった事への嫌悪感が普及を阻むといった声も存在し、畜産の革命が起こる事はまだ先のようにも思えます。

 安定的な大量生産、コスト面など解決すべき問題は多数存在する事が考えられますが、家畜が殺され続けて現在と同じ肉を食べる未来と、何の怖れもなく牧場で悠々と暮らす家畜を眺めながら培養肉を食べる未来。選択を迫られたら、迷う事なく培養肉の未来を選ぶと思っています。


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