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第2876回 鍋の王様(2)



 あまり鍋料理という認識はないのですが、湯豆腐もシンプルで奥深い鍋料理ではないかと思えてきます。まる鍋のような強烈なインパクトはありませんが、具材は豆腐のみで、出汁も昆布のみ。鍋に昆布を敷いて水を張り、温めるだけというシンプルさは素材の持ち味にこだわった究極の鍋料理のように思えます。

 湯豆腐というと土鍋の中に白い豆腐と黒っぽい昆布が入れられ、湯気を上げながらコトコトと煮込まれている場面を想像してしまうのですが、実はその食べ方は間違いとされ、繊細な豆腐の風味や昆布出汁の香りが飛ばないように、豆腐が硬くならないように鍋が沸騰しはじめて、豆腐が揺らいだ時が食べ頃といわれます。

 豆腐が硬くならないように少量の塩か大根おろしを加えると良いとされますが、いずれも量が少しでも多くなると風味を損なってしまう事から、あまり加える事は推奨されないともいわれています。

 昆布に関しても、表面の汚れを濡らした布などで拭き取った後、鍋に入れて水を張り、30分から1時間ほど置いてから火に掛け、沸騰する前には取り出してしまわないとエグ味やぬめりが出てしまうとされ、シンプルではありながら意外と手が掛かる料理だとも思えます。

 豆腐の味付けをする調味料となるタレには醤油にみりんと酒、かつお節を加えて一煮立ちさせて濾した土佐醤油が良いとされ、土佐醤油に刻んだ万能ネギと少量の鍋の出汁を加えて濃度を調整したタレが最適とされます。

 煮過ぎない事を意識し過ぎると食べる分だけ豆腐を鍋に入れ、沸騰するタイミングを見計らう事の繰り返しとなり、かなり忙しそうな感じがするのですが、同じ事を考慮したのか江戸時代に書かれた豆腐料理の専門書、「豆腐百珍」には絶品の豆腐の食べ方として「湯やっこ」の記載があり、湯豆腐の出汁の代わりにくず湯が使われています。

 くず湯を使う事で保温性が高まり、鍋が沸騰して火から降ろしても長く温度を保つ事ができるので、湯豆腐よりもゆっくり豆腐の美味しさを保つ事が考えられます。その反面、くず湯は出汁よりも沸点が高くなる事から、豆腐に火が入り過ぎないかと心配になってしまうのですが、あまり神経質になり過ぎて、こだわり過ぎてしまうと鍋料理というものは楽しめないのかもしれません。

 シンプルに豆腐の美味しさを楽しむ事を追求した湯豆腐ですが、家族で囲むというイメージがあまりない事から、私の中では鍋物の王様とはなれないと勝手な事を考えています。


 
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