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第1819回 一皿文化



 ある特定の地域では普通に食べられていて、その地域内では多くのレストランでメニューに載せられ、住民たちにとっては馴染み深い味となっていながら、その地域を出るとほとんど見られなくなり、全国的に知られた食べ物と思い込んでいた住民たちを驚かせてしまう。そんなご当地グルメは日本中に多く見られますが、その代表格の一つが「エスカロップ」ではないかと思えます。

 エスカロップは北海道根室市特有のご当地グルメで、みじん切りにされたタケノコが入ったバターライスの上にトンカツを乗せ、ドミグラスソースをかけて仕上げられます。一皿で一食が賄えるように、通常は皿の端にはサラダが添えられています。

 エスカロップというどこか異国の香りのする名称については諸雑があるとされますが、フランス語で肉を薄く切った切り身を「エスカロープ」と呼ぶ事から、それが語源となったというものが有力視されていますが、開発に当たってイタリア料理のシェフの力を借りている事や、イタリア語にもエスカロップに似た薄切り肉を指す言葉がある事から、イタリア語が語源というのが正しいようにも思えます。

 根室市内の洋食店、「モンブラン」のシェフが1963年に考案したものが瞬く間に根室市内に広まったとされ、開発の動機についても地元のグルメをうならせるメニューを作ろうとしたというものや、根室市は漁師町であった事から、手早く漁師たちの空腹を満たせるメニューとして開発したともいわれます。

 開発に当たっては、シェフ自身が各地のさまざまな料理を食べ歩き、新メニューに関する研究を行っていますが、その後、取引のあった横浜の食器店からの紹介で横浜で働いていたイタリア料理のシェフを招き、エスカロップは完成されました。

 開発された当初は、仔牛の肉をソテーした物またはカツレツにした物がナポリタンスパゲティの上に乗せられ、ドミグラスソースをかけて仕上げられていましたが、仔牛の肉は高価であった事から豚肉に変わり、スパゲティは漁師たちにも受け入れられやすいケチャップライスへと変わって、今日のスタイルに近いエスカロップが誕生しています。

 ケチャップライスのエスカロップを基にバターライスを使ったエスカロップが考案され、「ホワイトエスカロップ」としてバリエーションの一環として供されますが、後に評判となり、エスカロップといえばホワイトエスカロップを指すようになっていきます。一部にはケチャップライスのエスカロップも残されていて、親しみを込めて「赤エスカ」「白エスカ」と呼ばれています。

 バターライスの具材も、当初はマッシュルームやタマネギが使われていましたが、食感がよく食べ応えに繋がるタケノコへと代えられて今日のスタイルが完成します。

 根室には、エスカロップの他にもスタミナライスやオリエンタルライスといったワンプレートの料理が存在し、手早く一皿で食事を完了できるという食文化が根付いている事が伺えます。

 白いご飯の上にトンカツを乗せ、その上に野菜炒めと目玉焼きか生卵を乗せるスタミナライス、ドライカレーの上に焼いた牛肉を乗せ、ドミグラスソースをかけるオリエンタルライス、共にエスカロップから派生したものである事が明白ですが、忙しい漁師町特有の食文化が感じられ、興味深いメニューとなっています。



 
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