第2994回 辛味の旅



 コロンブスの新大陸発見によってヨーロッパへともたらされた唐辛子ですが、すぐに忘れ去られてしまい、食の歴史に華々しくデビューするという事はできませんでした。その後、ブラジルを訪れたポルトガル人によって再発見され、再び唐辛子は海を渡ってヨーロッパを目指す事になります。

 ポルトガル人は唐辛子を観賞用の植物ではなく、自分たちの国でも栽培する事が可能な胡椒に代わるものとして捉えた事が、辛味系の調味料として世界中の食文化に影響を与えるきっかけとなっています。

 辛味に関わる調味料は胡椒のような熱を伴うもの、山椒のように痺れを伴うもの、シナモンのように痛覚を伴わない刺激を持つものに大きく分ける事ができるのですが、唐辛子は熱を伴う辛味でありながら、その他の辛味とも置き換わる形で世界へと広まっていきます。

 輸入に頼るしかなかった胡椒に比べ、唐辛子は自国で自給できる事から南欧を中心に栽培が広がり、16世紀にはそれまでは大規模な胡椒の輸入元だったインドへも伝えられ、胡椒、ショウガ、ターメリックが中心となっていたカレーの味付けにも影響を及ぼしています。

 日本へ伝えられた唐辛子は、当初は観賞用として栽培されていましたが、あまりの辛味に毒があると考えられ、その後の乱世では戦に利用されるようになります。

 特に朝鮮出兵の際は城攻めに用いられ、籠城する敵に対して唐辛子を燃やしてその煙を城や砦に送り込むといった利用法が行われています。

 また、血流の増進作用も知られていて、朝鮮半島の慣れない寒さのために凍傷にならないようにも利用され、それが現地に根付いて今日の韓国のキムチ文化に繋がっています。

 激辛ブーム以降、新手の品種も見られるようになり、辛さの基準のスコビル値も認知されるようになるなど、近年、唐辛子への関心が高まってきているように思えますが、ポルトガル人による再発見以降、世界はカプサイシンの辛味に翻弄され続けているようにも思えます。


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