第2995回 実と恐怖



 知り合いからお土産として蓮の実をいただいたのですが、それまで蓮は根を食べるものとだけしか認識していなかったので、実を食べるという発想が全くなく、実が成る事自体考えた事もなかったので、手渡されたどんぐりくらいの大きさの緑色の実が何かも判らず、オリーブのようなのでとりあえず食べてみるかと口に運び、慌てて止められて食べ方を教わる事となりました。

 蓮の実は軽く噛んで外側の皮に割れ目を作り、そこから皮を剥いて中の白い部分を食べます。「苦味があるので気を付けて」とアドバイスを受けながら噛み砕いてみると、構えていた苦味はなく、コリコリとした面白い食感とかすかに青臭い風味が口に広がります。

 後になって知ったのですが、白い実の中心部分には緑色の芽が準備されている事があり、その芽が苦味の素らしいのですが、私がいただいたのはまだ未熟だったらしく、芽の不在が食感以外あまり特徴的なものを感じられなかった事に拍車を掛けていたように思えます。

 蓮の実は、蓮の花が散った後、茎が分厚くなった花托(かたく)と呼ばれる部分にできます。秋を迎えて花が散ると徐々に花托が大きくなり、表面に開いた通気口の穴の中に実が育っていくのですが、その姿がグロテスクとしてネット上にはたくさんの画像を見る事ができます。

 蓮は茎や根の部分が水中にある事から、花托を通して空気を送り込み、呼吸をしています。そのため、花托の表面には通気口となる穴がたくさん開いていて、根の部分、レンコンに直結しているのですが、その姿が「気持ち悪い」と感じられたり、気分を害したり、中には吐き気やめまいを覚える、パニック症状を引き起こすという事も見られるといいます。

 花托の姿に恐怖を覚えてしまうのは「トライポフォビア(集合体恐怖症)」と考えられ、毒を持つ生物を本能的に避けるために柄などに対して生理的な嫌悪感を持つ機能が過剰に反応しているとされます。

 集合体恐怖症と名前が付いてしまうと特殊な病気のようにも思えてくるのですが、20%程度の人がその症状にあるとされる事から、実が育ち始めた花托に恐怖を覚えてしまうのは特異な事ではないようにも思えます。

 育つ姿は恐怖の対象となるのかもしれませんが、蓮の実は栄養価が高く、生薬としても使われています。改めて効能について知ってしまうと、美しい花、美味しいレンコン以外の新たな恵みとして、広く根付いてくれる事を願ってしまいます。


 
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