FC2ブログ

第3001回 硬く長いパンの決まり事



 初めてフランスパンと出会ったのは、小学生の頃、いつも朝食で食べていた食パンの代わりとしてテーブルに上った大手製パンメーカーのものでした。今から思うと日本人向けにアレンジされた「ソフトフランス」と呼ばれる類の物だったのですが、それでも食パンと比べると随分と硬く、子供の力では細かく千切って食べるのにも苦労した事が思い出されます。

 日本ではもちもちした食感が好まれる事から、大手製パンメーカーから発売されているフランスパンの多くはグルテンの多い小麦粉を使って、粘りを活かした製法が用いられるために食感が本来のフランスパンよりももちもちした弾力があり、厳密なフランスパンとは味わいが異なっています。

 元々フランスでは気候や土壌の影響によってグルテンの含有量が少ない、本来であればパン作りには不向きな小麦が栽培されていて、他の国のようにふっくらとしたパンを焼く事が難しくなっていました。

 グルテン量が少ない小麦を粉に挽いて生地を作っても粘りが少ないものしか作る事ができず、内部に発酵によって生じた気泡を閉じ込める事ができない事から、硬い外側とサクサクした食感の中身を持つパンしか作る事ができません。

 また、伝統的にパン生地を発酵させるイースト菌のようなパン酵母を用いなかった事から、生地を一気に混ぜて直焼きするといった製法が用いられ、今日のようなフランスパンの登場には酵母菌や小麦粉を製粉する技術が向上する19世紀を待つ事となります。

 フランスパンといって真っ先に思い付く細長いバゲットが普及するのは20世紀になってからの事で、1920年代に施行された法律によってパン職人が午後10時から午前4時までの深夜帯に働く事が禁止されたため、朝食までにパンを焼き上げる工夫として早く火が通るように細長い形にした事が元になっています。

 フランスパンを見掛けた際、細長いとバゲット、丸いとブール、楕円形だとバタールと呼んでしまいますが、フランスでは厳密に大きさによって呼び方が決められていて、バゲットは重さが300gから400g、長さは70cmから80cmとなっています。

 クープと呼ばれる外側に入れられる切れ目の数も決まっていて、バゲットでは6ないし7本、バタールでは3か4本、ブールでは十文字に切り込みを入れるようになっています。

 クープは焼き上がる過程で大きく広がり、独特な形を構成するのですが、クープの開き加減も職人の腕やパン焼き窯の質の良さに関係するといいます。

 そうして焼き上げられたバゲットの中には、大小の不揃いな気泡がたくさんできているのですが、この不揃いな気泡を作り出すのも職人の腕といわれます。

 細かな決まり事やこだわりが存在するバゲットですが、パリっと焼き上げられた外皮と柔らかな内側、小麦の香ばしい風味を思うと、難しい事は抜きに楽しみたいと思えてきます。



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR