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第3002回 膨らみの粉



 パンがふんわりと焼き上がるのは、小麦粉に含まれているグリアジンとグルテニンが反応してできる粘りのあるグルテンが発酵によって発生した炭酸ガスを封じ込めていて、それが焼き上げる際の熱で膨張してたくさんの気泡を作ってくれるためです。

 そのためパン作りにはグルテンの量が多い強力粉や準強力粉といった小麦粉が使われるのですが、お菓子作りにはグルテン量が少ない薄力粉が用いられる事が多くなっています。

 薄力粉を使ってふわふわのスポンジを焼き上げるには、生地の中にたくさんのきめ細かな気泡が必要となるのですが、炭酸ガスを封じ込めるグルテンも少なく、炭酸ガスを発生させるための発酵もお菓子作りでは行われない事から生地を上手に膨らませるためにベーキングパウダーが使われています。

 ベーキングパウダーはベーキングソーダとも呼ばれる重曹を主成分としていて、重曹に水分と熱が加わる事で分解され、その際に炭酸ガスが発生する働きを使って生地を膨らませています。

 重曹とベーキングパウダーの最大の違いは、重曹が純粋な炭酸水素ナトリウムである事に対し、ベーキングパウダーは重曹の分解を促進する酸性の助剤や使用する前に重曹と助剤が反応しないように両者を遮断しておく分散剤が含まれている点にあります。

 ベーキングパウダーと重曹の使い分けは、生地を作ってすぐに焼き上げる場合、重曹と助剤の反応が充分に進まないために重曹の方が向くとされ、チョコレートやヨーグルト、はちみつなどの酸性の素材が多く含まれていて重曹の分解を促す助剤の必要がない場合も重曹が使われます。

 重曹には特有の苦みや風味がある事から生地に使うとかすかな苦味や風味が残される事となり、また生地が重曹の作用で黄色く焼き上がるという特徴があります。その事をうまく利用したのがどら焼きで、しっとりとした黄色い生地は重曹の働きによって作り出されています。

 ベーキングパウダーは重曹のそうした特徴を打ち消して利用しやすくされており、助剤の酸性によって重曹の分解によって生じた苦味の素の炭酸ナトリウムを中和し、雑味のない白い生地に仕上げる事ができます。

 職人やパティシエによっては両者には膨らみ方にも違いがあるとされ、ベーキングパウダーは生地を縦方向に膨らませる力が強い事に対し、重曹は横方向へと膨らませる力が強いとされています。

 ベーキングパウダーは高名なドイツの化学者、リービッヒの弟子であったホースフォードによって研究が進められ、今年は研究開始からちょうど160年となります。お菓子作りでしか見掛けないような少々縁遠いような印象もありますが、「膨らし粉」という別名を使うと急に懐かしい物のようにも思えてしまいます。


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