第3010回 人工の思考(3)



 初めてAI(人工知能)に触れたのは、さまざまな家電製品への応用が広がった第一次AIブームの頃で、最も身近だったのはテレビゲームのNPC(ノンプレイキャラクター)だったと思います。

 仮想の世界の中を冒険して回るロールプレイングゲームの中に、直接操作する事はできませんが共に旅を続けながら自分で考えて手助けをしてくれるキャラクターとして登場するのですが、あまり賢い感じはせず、どことなく間の悪い仲間という感じだった事が思い出されます。

 そんなAIが人を凌駕するとまでいわれるようになった背景には、ディープラーニングと呼ばれる高度な学習機能があるといえます。発達したコンピューター技術は、膨大なデータの記録や保管、高速で必要な情報を呼び出し、解析処理を施すといった事を可能にして使えないAIから人を超えるAIへと変貌を遂げさせています。

 非生物が記憶や学習をするとなると高度なテクノロジーの集積のような感じがして、最先端の事のように思えてしまうのですが、意外なほど単純な物でも経験的な記憶と学習による反応を示すという研究結果が発表されていました。

 カナダのオンタリオ州、ローレンシャン大学のルーロー博士を中心とする研究グループによる実験では、一般的なパン生地にも学習能力がある可能性が示唆されていて、高度な記憶装置や集積回路を用いなくても物は学習するという衝撃的な結果が報告されています。

 研究では小麦粉に水、少量のレモン果汁、塩、植物油を使ってごく普通のパン生地を作り、電極を接続して電気ショックを与えられるようにした上で、パン生地の横でLEDを発光させた直後に電気ショックを与えられるようにしています。

 何度かLEDの発光と電気ショックを流すという事を繰り返していると、電気ショックを与えられたパン生地ではスペクトル密度(周波数特性)が著しく変化する事が観察され、しばらくLEDの発光に続く電気ショックを経験し続けたパン生地では、いつの間にかLEDが発光するだけで電気ショックを与えなくてもスペクトル密度の変化が現れるようになり、パン生地が発光と電気ショックを結び付けて記憶するという学習が行われた事が判ります。

 同じような反応は「パブロフの犬」として理科の授業で学ぶのですが、犬のような動物でもなく生命体でさえもないパン生地が学んで反応を示すという事が画期的な発見のようにも思えます。

 パン生地の発酵に関わるイースト菌が一連の反応に関わっているのか、小麦粉を練っただけのものでも反応が起こるのか、ごく普通のパン生地としながら通常のレシピとは少々異なる配合の意味など、いろんな事が気になりながら、あらゆるものに魂が宿るという日本古来の世界観が裏付けられたようで、とにかく興味深い研究結果だと今後の展開に注目したくなってしまいます。


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