第3020回 コーヒーの不思議



 伝説では9世紀のエチオピアでヤギ飼いの少年、カルディが夜も寝ずに興奮して飛び跳ねるヤギに手を焼いて修道僧に相談したところ、山に自生している木に成る赤い実を食べた事が原因と判り、その後、修道院で眠気覚ましとして利用されるようになったというのがコーヒーの歴史の始まりとされます。

 しかし、コーヒーの果実は食用にできる事から赤く実った果実を食べていた事は、もっと古い時代から行われていた事が考えられ、コーヒーと人との関りはさらに古いものとなっていきます。

 高原地帯にコーヒーが自生しているエチオピアでは古くから果実を食用とするだけでなく、種子も「ボン」と呼んで煮て食べていました。葉は乾燥させたものは「アメルタッサ」、炒ったものは「カティ」と呼んでお茶として飲んでいます。

 やがてボンはアラビア半島に伝わってアラビア語で「バン」と呼ばれるようになり、バンを煮出した煮汁の「バンカム」が飲まれています。バンカメに関する記述で最古のものはイランの哲学者であり医学者でもあったアル・ラーズィーによるものとされ、9世紀の事とされるため、カルディ少年のエピソードと時期的に近くなってしまいます。

 記述によるとバンカムの淹れ方は、乾燥させたバンを臼ですり潰して粉に挽いたものを熱湯に入れて煮出しており、まだ豆を事前に焙煎するという事は行われていなかった事が窺えます。

 コーヒー豆が焙煎されるようになるのは13世紀になってからの事で、香ばしい風味が加わった事で広く好まれ、かつてイスラム神秘主義者の秘薬とされていたコーヒーは嗜好品としての色合いを濃くしていきます。

 コーヒー豆が焙煎されるようになった経緯については不明となっていますが、15世紀のものとされる焙煎用の道具がトルコやイラン、エジプトなどで発掘されている事から焙煎したコーヒーの美味しさは急速に広まった事が判ります。

 日本におけるコーヒーの始まりは1804年に長崎の出島で太田蜀山人が飲んだのが最初とされ、随筆、「瓊浦又綴(けいほゆうてつ)」に「焦げ臭くてとても味わえるものではない」という感想を述べています。そんな日本で後に缶コーヒーという独自の文化が花開くのは、コーヒーが持つ不思議な縁の一つと思えます。


 
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