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第3021回 巨匠のパスタ



 発想力が貧困なので、決定的に才能が欠如している事は自覚しているのですが、どのような職業にでもなれるとすると、思わず工業デザイナーと答えてしまいます。

 日々接する工業製品の中には機能的なだけでなく、その機能をより良く発揮できるように工夫されながら美しさも同時に表現された機能美に溢れるものがあり、思わずそんなデザインを手掛けた人を尊敬してしまいます。

 そんな工業デザイナーの頂点の一人がイタリアのジョルジェット・ジウジアーロ氏で、数々の名車を世に送り出したデザイナーとして世界的に広く知られています。

 ジウジアーロについて驚かされるのは、優れた感性から生み出されるデザインの素晴らしさもさる事ながら、その活動期間の長さで、最初に注目されたゴードンGTが発表されたのが1960年のジュネーブモーターショーとされる事から、実に57年もの長きに渡ってデザイナーとしての活動を続けています。

 彼の長いキャリアは特異なスタートに関係していて、画家を志して美術学校に在籍していた際、たまたま描いたフィアットの500のイラストが500を設計したダンテ・ジアコーザの目に止まり、高く評価された事で高校を中退し、17歳でフィアットのデザイン部門に入社しています。

 その後、多くの名車を手掛けて自動車デザインの第一人者として君臨し続けるのですが、1981年には自動車以外のデザインを手掛ける会社としてジウジアーロ・デザイン社を設立し、幅広い活動を開始しています。

 日本でも一眼レフのカメラやスキーブーツ、カセットテープや徳利、猪口なども手掛けたそうなのですが、変わったところではパスタのデザインも手掛けるという多才さを見せています。

 彼が手掛けたのはパスタのパッケージではなくパスタそのもので、世界的なパスタメーカーの傘下のブランド、ヴォイエッロ社から「マリッレ」の名で発売されています。

 ヴォイエッロ社は昔ながらのブロンズ製の金型にこだわったメーカーで、近代的なステンレスや樹脂コートを施した金型にはできないパスタ表面のザラつきによるソースの絡みやすさを大切にしています。

 ジウジアーロはそんなこだわりのザラつきを活かしながらパスタの断面を「β」の形に似せたものにして、単に美しいだけでなく茹で上がったときのしっかり感やソースの絡みやすさ、連続生産のしやすさといった事を高い次元で実現しています。

 現在ではマリッレは生産終了となってしまっているのですが、マリッレを手掛けた30年後、パスタプロジェクト30周年を記念し、そして彼と共に45年に渡って仕事を続けてくれた従業員に感謝して、第二作となるパスタ、「グスト」が製作され、従業員に配られています。

 グストの製作に当たったのはナポリにある老舗のメーカー、アフェルトラ社で、ヴォイエッロ社同様にブロンズの金型にこだわり、筒型のパスタを二つくっつけたような「∞」の断面を持つグストを生産しています。

 グストは関係者を中心に配られたそうですが、実際に茹でて食べてみると他のパスタとは少々異なる独自の弾力を感じるそうで、ソースの絡みもよく、茹でムラもほとんどないといわれます。

 ジウジアーロのデザインというと、世界的な高級品という感じがしてしまいますが、巨匠が手掛けたパスタ、一度食べてみたいと憧れてしまいます。


 
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