第3048回 約束の行方(3)



 ガンの研究に関しては門外漢の理論物理学者、デービーズ教授がガンと関わるきっかけとなったのは2007年、国立ガン研究所(NIC)の副所長だった生物学者のアナ・パーカー博士からの連絡によるもので、当時、NICは異分野の知見をガン研究に取り入れるという試みを行っていました。

 2009年以降、更にその動きは強化され、12の研究機関がNICからの助成を受けて化学や地質学、物理学といった異分野からのガン研究へのアプローチが進められ、その助成対象の中にデービーズ教授の「ASU物理科学・ガン生物学融合センター」も含まれていました。

 理論物理学者としてのデービーズ教授は「宇宙はどのように始まったのか」、「生命はどのように誕生したのか」といった宇宙の根源的なテーマを扱っていました。ガン研究に関しても同じアプローチが採られ、「ガンとは何なのか」、「何故ガンは存在するのか」といった事が研究テーマとされました。これまで多くの時間が費やされ、膨大な数の論文が発表されてきましたが、いまだにその問いは謎のままとなっています。

 デービーズ教授が最初に着目したのはガンが多細胞生物の間では一般的な病気だという事実で、多くの動物がガンとは無縁ではないという事は人が地上に登場する以前から存在していた可能性が高くなります。

 2014年にはドイツのキール大学のポッシュ博士によってヒドラの2種からガンが発見され、ガンは地球上に多細胞生物が誕生したときから存在していたか塗性が示唆されています。

 また、ガン細胞は酸素がない状態でも活動する事ができ、糖をエネルギーに変える際に乳酸を作り出します。乳酸は酸素がない環境下で代謝が行われる際に生成されるもので、そうした特徴からガンは10億~15億年前の地球上に極端に酸素が少ない時期に誕生したとも考えられます。

 ガンが細胞の退行現象だとすると、何がそのきっかけとなるのか。パソコンに不具合が生じた際、セーフモードが起動するようにDNAの複製にエラーが生じると細胞は単細胞生物化を始め、分裂のペースを速める事で絶え間ないストレスへの適応力を確保しているとされます。

 ガンが非常に古い起源を持つ防衛システムだとすると、今日行われている療法の多くは更にガンにストレスを与えるものであり、新たな防衛システムの発動を促してしまうという悪循環を生んでしまう事が治療の困難さの正体のようにも思えてしまいます。


 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR