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第3064回 毒の利用



 かなり記憶は薄れてはしまいましたが、熊本県民にとって郷土食でもあり、子供の頃から見掛けていた「辛子蓮根」で食中毒事件が起こり、死者まで出てしまったという事はショッキングな出来事でもありました。

 その際、食中毒菌として一気に名前が広まったのがボツリヌス菌で、嫌気性細菌である事から真空パックに入れても増殖を続けられるという事も、それまで真空パックに入れれば食品の日持ちをある程度確保できると考えていた事が、油断以外のなにものでもなかった事を意識させてくれました。

 そんなボツリヌス菌の名前に再び出会うのは、食品衛生の現場ではなく医療に関する事でした。ボツリヌス菌が作り出し、辛子蓮根による食中毒事件の際は死者まで出してしまった毒、A型ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)は神経伝達物質であるアセチルコリンの伝わりを弱めるという働きが医療分野で応用され、眼瞼痙攣をはじめとする痙攣を止める薬剤として使われています。

 美容分野へも応用は進み、しわを伸ばす働きがあるとして「ボトックス注射」と呼ばれて美容整形では効果を発揮していました。最近では顎の部分の筋肉を細くする事で、すっきりとした小顔に見せるといった目的でも使われている例を多く見掛けるようになってきています。

 そうした生物毒の医療分野への応用に新たな毒素が加わろうとしています。つい先日、その毒を使う蜂の存在を知ったばかりだった事もあり、もうそんなところまで研究が進んでいるのかと驚かされながら、研究成果を待ちたいと思ってしまいます。

 その蜂は「エメラルドゴキブリバチ」と呼ばれるもので、ゴキブリをゾンビ化して操るという驚くべき生態を持つ蜂として紹介されていました。

 エメラルドゴキブリバチは宿主としてゴキブリを確保する際、まずゴキブリの胸部を刺して毒液を注入します。注入された毒液によってゴキブリは5分ほど肢が麻痺した状態になります。その麻痺して動けない簡に脳を刺すと、ゴキブリは30分ほど活発に身繕いをした後、動かなくなり自分の意思では動く事ができない「寡動」と呼ばれる状態になってしまいます。

 ゴキブリは動けないといっても麻痺している訳ではなく、蜂の誘導があれば動く事ができ、自らの意思では動けないだけの状態にあるとされます。その状態になったゴキブリを蜂は触覚を引っ張って誘導し、自らの巣穴まで歩かせて移動してゴキブリの体内に卵を産み付けます。

 一週間もすると卵は孵化して、幼虫はゴキブリの体内を食べ尽くしてしまうのですが、卵を産み付けなかった場合、ゴキブリは正常な状態に戻って、自らの意思で逃げ出す事ができるともいわれます。

 カリフォルニア大学リバーサイド校の昆虫学と神経科学の教授であるアダムス博士は、エメラルドゴキブリバチから毒液を採取して成分を分析した結果、ドーパミンとこれまで知られていなかったアミノ酸が幾つか繋がった状態のペプチドが含まれていたと発表しています。

 新発見のペプチドは「アンピュレキシン」と名付けられ、蜂がゴキブリを操る上で重要な役割を担っていると考えられると同時に、寡動が主な症状一つであり、ドーパミンが深く関わっているパーキンソン病の治療の足掛かりになるのではと期待されています。

 蜂はアンピュレキシンを用いてドーパミンの生成を妨げる事によってゴキブリを寡動の状態にして操っていると考えられ、アンピュレキシンがターゲットとしている細胞を見つけ出して、詳細なメカニズムを探る事ができれば、ドーパミンを生成する細胞の変性によって発症すると考えられているパーキンソン病の治療方法が見付かるかもしれません。

 当初、ゴキブリをゾンビ化して自らの巣穴へ誘導するという話を聞いた際は、少々背筋が寒くなるものを感じてしまったのですが、パーキンソン病の治療に繋がるかもしれないと知らされると、思わず応援してしまいたくなってしまいます。



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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
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