第3071回 街の癒し



 子供の頃、どのくらいの頻度だったのかは憶えていないのですが、御用聞きの方が定期的に来られていて、一軒は家からそう遠くない所にある酒屋さん、もう一軒は店がどこにあるのか知らないしょうゆ屋さんで、今でもお二方の顔は懐かしく憶えています。

 今から思うと酒屋さんはともかく、しょうゆ屋さんはしょうゆだけに特化して各家庭を回り、販売されていたのですが、よくそれで商売が成り立っていたと、昔は良かった的な気分になってしまいます。最近ではしょうゆ専門店など見掛ける事はなく、酒屋さんでさえも激減してきていると聞かされます。

 街の情報に詳しかった印刷会社の営業の方に聞かされた話によると、「酒を扱うようになったコンビには栄えるが、コンビニになった酒屋は潰れる」との事で、同じ品揃えのコンビニエンスストアであっても、それまでの商品に加えて酒類を扱うようになった事で顧客層や利便性が広がり、売り上げが向上するコンビニエンスストアと売り上げの不振が続き、コンビニエンスストアのチェーンに加盟して打開策を模索する酒屋とでは雲泥の差があるとされます。

 立地的な事を考えても、集客に有利な場所に開設されたコンビニエンスストアと、たくさんのお客さんが車で買いに来るといった前提がなかった街の酒屋とでは、同じチェーン店ではあっても利便性という点では別物といえると思えてきます。

 大手スーパーやホームセンターでも酒類が安売りされるといった競合の存在や、重い商品を扱えなくなるといった高齢化もあり、街の酒屋が激減する中、新たな活路を求めて購入した酒をその場で飲む事ができる「角打ち」スタイルの酒屋も見られるようになってきているといわれます。中には肴として缶詰の販売もされている店もあるらしく、安価に本格的な酒を愉しめる場所ともなっていると伝えられています。

 以前、某駅の入り口に面した商店街の入り口で昔懐かしい雰囲気の「角打ち」の看板を見掛けた事があり、夕方には数名のお客さんが立ち飲みをしておられるのを見た事があります。角打ちというと、どこかレトロで昭和の香りが漂ってしまうのですが、昭和に栄えた町の酒屋の新たなスタイルとして、癒しが求められる昨今、町の酒屋さんが角打ちとなって癒しを与える場所となるというのも一つの良い流れのように思えてしまいます。


 
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