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第3077回 事業展開



 昔の自動車レースの画像を見ると、レースカーの車体には大きくタバコの銘柄のロゴが記載され、それが一つのデザインとなっていて、一般の車両との大きな違いのようにも見えていました。やがてロゴは形を残しながら文字では銘柄名を表記しないものに変わり、ヨーロッパを中心にはじまったタバコの広告規制の存在を感じさせてくれます。

 今ではレースを支える企業は通信会社やIT企業、エナジードリンクのメーカーなどに替わり、タバコメーカーの潤沢な収益がレースに注ぎ込まれるという事は過去のものとなったような感じがして、喫煙者の減少や喫煙可能な場所の減少、さまざまな規制などタバコメーカーには逆風が吹き荒れる時代が続いているようにも思えてきます。

 そんなタバコメーカーに、新たな事業展開の可能性を感じさせるような研究結果が発表されていました。タバコがインフルエンザのワクチン作りに利用でき、タバコを使う事でこれまでよりも早く安価にワクチンの製造が可能になるといいます。

 これまでワクチンは鶏の有精卵を使って作られてきました。卵の胚にウィルスを感染させ、卵の中に溜まる液体の中から抽出する事でワクチンは製造されています。うまく卵の中でウィルスを増殖させたとしても、成人男性一人分のワクチンを製造するには1、2個の卵が必要とされ、インフルエンザが流行する時期に向けたワクチン製造では、膨大な量の卵が消費されている事になります。

 また、卵を使ったワクチン製造では時間が掛かってしまう事から、その間にウィルスが変異してしまい、正しく製造されていたにも関わらず有効に作用しないという事も見られていました。タバコを使ったワクチン製造では卵に比べて安価なだけでなく、製造自体も早くできる事からウィルスの変異が起こる前に製造を終えられる事も可能とされます。

 卵の中でワクチンを作る際は、不活性化されたウィルスが用いられてきましたが、新たな製造手法では「VLP(ウィルス様粒子)」と呼ばれるインフルエンザウィルスの構造を持ちながら完全な遺伝子情報を持たない粒子を使う事で、ウィルスが変異しても感染した細胞を発見、排除できるような免疫細胞を作る事も可能とされ、より効果の高いワクチンを作る事ができるようになります。

 そうしたワクチンの製造を可能にするバイオリアクターを数年に渡って探し続けた結果、「ベンサミアナタバコ」に辿り着いたそうで、タンパク質を高速で生成する能力を持ち合わせている事から、卵を使った従来の手法では半年ほどの期間を掛けて作られていたワクチン製造が6週間にまで短縮できています。

 タバコを使ったワクチン製造の特許はカナダのバイオテクノロジー企業、メディカゴ社が保有していて、すでにメディカゴ社の株の40%はタバコ界の巨人、フィリップモリス社が所有しています。一見、斜陽に直面したように感じられたタバコメーカーですが、まだまだ世界経済の中心部に君臨し続けるのかもしれません。


 
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