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第1711回 大豆の防衛策(1)


 植物は光合成をはじめとしたさまざまな働きで、動物には真似のできない栄養素を作り出しています。動物は植物を食べる事によってそれらの栄養素を得ているのですが、植物としては動物のために準備しているのではなく、自分自身や次の世代のために用意した栄養素を守る必要があります。

 そうした動物に食べられないための工夫の一つが食べられない味にするというもので、苦味や辛味、臭味、えぐ味といった動物が嫌がる味覚を用意して動物から食べられないようにしています。

 ワサビやカラシ、大根のアリルイソチオシアネート、ニンニクのアリシン、タマネギの硫化アリルなどはその代表格ともいえ、細胞が傷付けられた際に空気に触れて活性化した酵素によって、それまでは存在していなかった防御用の成分が合成されるという地雷のような仕掛けとなっています。

 畑の肉と呼ばれるほど栄養豊富な事で知られる大豆は、人間だけでなく多くの動物に狙われる事が容易に想像できます。そんな大豆も当然無防備という事はなく、食べられないための地雷的仕掛けがしっかりと用意されています。

 大豆というとリノール酸やリノレン酸といった不飽和脂肪酸を多く含む事でも知られています。大豆の細胞内にはリポキシゲナーゼという酵素が含まれていて、大豆の細胞が傷付けられると瞬時に周りの酸素を使い、不飽和脂肪酸を一気に酸化させて過酸化脂質を作り出し、それを分解してアルデヒド類を発生させます。

 過酸化脂質が動物の健康にさまざまな弊害を及ぼす事は、昨今の多くの研究によって裏付けられていますが、動物は本能的にもその弊害を知っていて、過酸化脂質のにおいを毛嫌いする傾向があり、アルデヒド類は体内では毒物である可能性がある成分として判断されます。

 大豆を生で食べた際の嫌な青臭さやえぐ味は、潰された大豆の細胞の中で不飽和脂肪酸がリポキシゲナーゼの働きによって過酸化脂質やアルデヒド類となる事で、動物が本能的に嫌がるように演出されたものという事ができます。

 大豆を生で食べたり調理する前に砕いたりしない事は、経験的にリポキシゲナーゼが活性化する前に加熱して失活させ、嫌な臭味やえぐ味を発生させないようにするという工夫が行われてきた事によるものといえます。せっかく罠を用意していた大豆には申し訳ないのですが、やはり食材は美味しくいただきたいものです。


 
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