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第3087回 人食いアメーバ



 以前、酷い頭痛に悩まされ、その後、発熱、嘔吐も見られた事や少し前にアメリカから帰国していた事から、思わずフォーラーネグレリアの感染を疑ってしまった事があります。今から思うとフォーラーネグレリアへの感染は極めて稀な事なので、心配する必要はほとんどなかったのですが、とりあえず深刻な症状ではない事だけでも確認しようと、脳神経系で評判の良い病院で診察を受けました。病名はただの髄膜炎で、すぐに入院するようにいわれましたが、そのための準備をしてきていないといって一旦帰宅し、病院の方々に呆れられてしまうという事がありました。

 フォーラーネグレリア(学名ネグレリアフォーレリ)は、通常は25~35度ほどの温水環境に棲息しているアメーバで、湖や温泉などの温かい淡水の環境で繁殖しています。人に対し病原性を持つ事が確認されており、フォーラーネグレリアに感染した事で引き起こされる疾患は、「PAM(原発性アメーバ性髄膜脳炎)」と呼ばれます。

 PAMはフォーラーネグレリアが棲息する淡水を浴び、それが鼻に入った際に鼻粘膜や鼻腔組織を貫通してフォーラーネグレリアが体内に入る事によって感染が起こります。当初の症状は風邪に似ているとされますが、組織を溶解させる物質を分泌する事から、嗅球の著しい壊死によって鼻血が見られ、神経繊維をたどって脳に達すると髄膜炎特有の症状が発症する事になります。

 脳内に達したフォーラーネグレリアは細胞を溶解させる物質を分泌し、前頭葉の組織を溶かしながら口のような摂食器官を使って栄養を吸収するため、一部の例外を除いてほとんどの場合、症状が発症してから5日以内という早い時期に死亡するとされます。

 症状の進行が非常に早い事から、致死率も極めて高くなっていて、アメリカでは1962年以降に起こった143件の感染例のうち、生存できたのは僅かに4名とされています。その高すぎる致死率から「人食いアメーバ」とも呼ばれ、脳を食べるアメーバとして怖れられています。

 最近、地球温暖化の影響で徐々にフォーラーネグレリアの生息域が拡大しているともいわれますが、症状の深刻さや脳を溶かして食べられるという大きなインパクトの割には感染率は極めて低いともいわれ、フォーラーネグレリアに感染するよりも棲息している湖へ行く途中に交通事故に遭ってしまう方がはるかに確率が高いといわれます。

 日本での感染は1996年11月の佐賀県鳥栖市の女性が唯一の感染例とされる事から、万が一私が感染していたら稀な感染例として歴史に名を残す事になっていたと思えてきます。亡くなられた女性の病理解剖では、脳はすでに形状を保てないほど溶かされていたとされ、それを聞かされるとただの髄膜炎でよかったと、当時の事を思い出してしまいます。


 
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