FC2ブログ

第3090回 存在の是非(1)



 父親、母親、妹ともに盲腸(急性虫垂炎)を患い、切除手術を受けているので、家族の中では私だけが虫垂の保持者となっています。子供の頃から「盲腸を予防するから」といわれて、コンニャクをたくさん食べていたお陰かと、何の根拠もない事を思ったりもします。

 盲腸は、虫垂に急性化膿性の炎症が起きる病気で、原因ははっきりしないとされますが、虫垂がねじれたり、虫垂の内部に便や粘液などが詰まったりして血行が悪くなり、そこへ大腸菌などの腸内細菌やウィルスなどが侵入して発症すると考えられています。

 症状が起こる誘因としては、暴飲暴食や過労、不規則な生活といった生活習慣や便秘、胃腸炎などがあげられていて、そうした事にあまり縁がなかった事もいまだに虫垂保持者でいられる事に繋がっているのかとも思っています。

 虫垂は退化した末の「痕跡の臓器」とも呼ばれ、それ自体には生理機能がない無用の臓器と考えられていました。役に立っていないだけなら良いのですが、炎症を起こすと盲腸となってしまう事から、何らかの疾患によって開腹手術を行う際、ついでに虫垂を切除して盲腸の予防を図るという事も行われていました。

 ところが最近になって虫垂は何の役にも立たないどころか、とても重要な役割を担っていた事が判ってきています。抗生物質などをはじめとする抗菌剤を服用した際、正常な腸内細菌叢が破壊されてしまい、そこへクロストリジウムなどの毒性が高い細菌が繁殖してしまうと「偽膜性腸炎」となってしまいます。

 虫垂を切除してしまっている人の場合、この偽膜性腸炎になってしまう頻度が切除していない人よりも高い事が報告されており、虫垂が善玉の腸内細菌の住処となっていて、腸内細菌叢のバランスが崩れた際、正常に戻すバックアップの働きを担っている事が考えられています。

 大阪大学の研究チームが行った研究でも、虫垂を切除すると大腸の腸内細菌叢のバランスが崩れる事が確認され、同時に腸内細菌叢を正常に維持し、腸管免疫でも重要な働きを担っている免疫グロブリン、「(Ig)A」と呼ばれる抗体について調べると、虫垂を切除すると大腸の(Ig)Aが減少した事から、虫垂にあるリンパ組織が(Ig)A陽性細胞を産生していた事が判ります。

 しかし、逆の例も報告されており、虫垂を切除した後、潰瘍性大腸炎が改善したという事例があり、虫垂は潰瘍性大腸炎の元凶で、虫垂では悪玉の細菌が育つという意見もあります。表面抗原を持つリンパ球の中には、活性化する事で炎症を悪化させてしまうものがありますが、虫垂にはそうしたリンパ球が多いともいわれます。

 虫垂の切除手術が可能となって随分と時が経ち、その間ずっと何の役にも立っていないと考えられていた虫垂の真の働きが明らかにされ、本当は必要なのか、リスクの素なのか、これから判るとなると、とりあえず保持していてよかったと思えてきます。


 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR