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第3103回 水と空気から



 今後、世界的な問題となるとされる事の中に人口の増加があります。日本では少子高齢化と人口の減少がいわれていますが、日本人が減少したくらいでは追い付かないほどの勢いで世界の人口は増え続け、さまざまな問題へと繋がっていくと考えられています。

 人口の増加に対応するために欠かせない事の一つとして、食料の確保が重要となります。食料を増産しなければ増え続ける人口を支える事ができなくなってしまうのですが、そのために必要となるものがアンモニアといわれます。

 アンモニアというと蜂に刺された時に必要になるものという事が思い浮かび、試合中に意識が朦朧としたボクサーに特有の刺激臭を嗅がせ、その刺激によって意識をはっきりさせるという用途を聞かされた事が思い出されます。

 それ以外の用途というとあまり浮かんでこないのですが、アンモニアは農業には欠かせないものとなっていて、化学肥料の原料として広く使われています。その生産量は年間で1億7千万トンが世界中で生産されているとされ、その8割が肥料の原料として使われているとされます。

 地中に含まれているミネラルなどの栄養素は、植物の成長によって植物中へと移動し、収穫する事でその土地から奪われてしまいます。そのため、どんなに肥沃な土地でも畑として繰り返し植物の栽培、収穫を繰り返す事でやがては植物を育てる事ができない痩せた土地へと変わってしまいます。

 土地が痩せてしまう事を防いだり、不足する栄養素を添加して植物の成長を円滑にするために必要なものが肥料であり、その歴史は極めて古いとされます。今から1万年ほど前、旧石器時代に農耕がはじまり、人々が定住するようになると、食料を生産するために畑が作られ、切り開いた平野で刈り取った雑草などが燃やされ、その灰が最初の肥料となったと考えられています。

 肥料に欠かせない三大栄養素といわれるのが窒素、リン、カリウムの三成分で、その窒素の供給源として肥料作りに使われているのがアンモニアとなっていて、肥料作りに欠かせないものといわれる所以となっています。

 現在、アンモニア生産はハーバー・ボッシュ法と呼ばれる鉄の触媒を使って高温高圧で水素と窒素を反応させる方法で行われています。高温高圧という環境を作り出す事や、水素を化石燃料から作り出している事からそれなりにコストが掛かっているとされ、製造施設も大規模なものが必要になっています。

 そんなアンモニアを簡単に、しかも水と空気から作り出せるという夢のような技術が開発されています。開発者は九州工業大学大学院生命体工学研究科の春山教授で、春山教授は気体と液体の境界で起こる反応を研究している中、水の表面では水素原子が他の原子と反応しやすくなる性質に着目。空気に電気を流しながら刺激を与え、空気中の窒素原子と水の表面の水素原子が結合して水中にアンモニアが溶け出すという仕組みを考案しました。

 まだ実験室レベルではありますが、筒の中に水と空気を入れ、電気を流す事でアンモニアが得られる反応器を完成させ、すでに世界各国へ特許の出願が行われています。使用するエネルギーが小さい事や設備も簡単に済む事から、将来的に普及すればインフラの整備が遅れている地域で直接肥料の製造を行うという事も可能になると考えられ、人口爆発が懸念される未来を支える技術となるといえます。

 化石燃料から水素を取り出す必要もなくなり、二酸化炭素の削減に繋がる事も考えられ、植物に必要なものを植物と同じように水と空気から作り出すという事は、どこか夢のある技術のようにも思えてしまい、未来の農業というものを考えてしまいます。


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