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第3104回 枯渇という悲劇



 簡単な筒状の機材に電気を流し、空気と水からアンモニアを作り出す技術が開発され、やがては水素を取り出すための化石燃料も大規模なプラントも必要なくなり、農地の一角で肥料が作れるようになるかもしれないという明るい未来が予想される反面、肥料という点からは非常に未来を不安視する要因も聞かれています。

 南太平洋にナウルという島国があります。バチカン市国、モナコ公国に次ぐ世界で三番目に小さい国で、その面積は東京都の港区とほぼ同じくらいだといわれます。目立った山もなく、川もなく、南太平洋らしさが感じられるビーチもない事から観光業などの産業が成り立たず、非常に貧しい国だといわれます。

 現状は貧しくてもかつては非常に裕福で、医療費や教育費、税金、公共料金は無料というだけでなく、ベーシックインカムとして生活費が政府から支給され、新婚のカップルには新築の2LDKの家が無償でプレゼントされていました。まるで産油国のようですが、そうしたナウルの豊かさを支えていたのがリンの鉱石で、岩礁に海鳥の糞などが堆積してできたナウルからは質の高いリン鉱石が豊富に産出されていました。

 リン鉱石は世界中で化学肥料の材料として使われていて、ナウルのリン鉱石は純度が高く良質な事で知られ、最盛期には170万トンものリン鉱石が採掘されていました。ナウルがリン鉱石で得た収入は5000億円以上ともいわれ、人口が5000人ほどであった事から国民一人当たり1億円にも達します。

 一時は島には主要な道路は1本しかなく、自転車でも1時間ほどで一周できてしまいそうな島なのにベンツやフェラーリが所有され、まさにバブルとも呼べるような状態となっていました。そんなナウルが破綻したのは、主要な産業であるリン鉱石を採掘し尽くしてしまったためで、潤沢な資産を使った海外投資なども試みられましたが尽く失敗してしまい、現在のような状況を迎えてしまっています。

 リン鉱石からは、肥料に欠かせない三大栄養素のアンモニア、リン、カリウムの中のリンが得られます。植物には欠かせないものであっても鉱石である以上、採掘を続けるといつかは埋蔵量が尽きてしまいます。アンモニアのような化合物であれば幾つかの元素を組み合わせて作り出す事も考えられますが、リンは元素である事から合成する事ができず、埋蔵量を使い尽くしてしまうと新たに得る事ができなくなっています。

 リン鉱石の枯渇はナウルに限った事ではなく、世界中の鉱山で埋蔵量の減少がいわれています。将来的な人口爆発を支えるための食糧増産に欠かせない肥料ですが、このままでは三大栄養素を揃える事ができなくなり、危機的事態を迎えてしまう事も考えられます。

 一説には2060年には世界中のリン鉱石が枯渇してしまうともいわれ、それ以降、近代的な農業が成り立たなくなるという怖ろしげな話もあります。農耕という食糧確保の術を手に入れた事で人は定住する事を可能にし、文明を築いてきました。その農業を失った時、何が起こるのか、とても怖い気がしてしまいます。


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