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第1837回 食と色



 食品添加物というといかにも悪い物、不要な物と思えてきて、その中でも着色料は特に不要な物のように思えます。着色料とは文字通り食品に色を着けるための物で、よく言えばその食品をより美味しくいただけるように演出してくれる物、悪く言えば安直にきれいな色合いを作り出す物という事ができます。

 現代の工業的食品製造の申し子のようにも思える着色料ですが、その歴史は非常に古く、古代インカ帝国ではカイガラ虫から赤や黄色の色素を取り出す今日の「コチニール色素」の存在がすでに知られており、古代エジプトやローマでも食品に色を着ける例は見られています。

 日本では、古い時代にはあまり食品に色を着けるという例は見られず、奈良時代の小豆を使って赤く色付かせた「赤小豆餅」や、平安時代の宮中儀式の中で小豆などの穀類やゴマ、栗といった物を使って色付けした米や餅、粥などが登場する程度に留まっています。

 室町時代の後期、南蛮貿易によって海外の文化が流入し、また、茶の湯の発展に伴い和菓子の加工技術が急速に発達するようになると、食品を色付けする例も多く見られるようになり、庶民の生活が向上した事による加工食品の需要の増加も、それまでの儀式的な意味合いの着色から色合いを楽しむための着色へと変わり、ベニバナ、クチナシ、シソ、大豆、小豆、ウコン、米粉、ヨモギ、ブドウ、黒ゴマなどが着色料として用いられています。

 そうした天然の着色料に対し、化学的に合成された合成着色料は1856年、イギリスのウィリアム・バーキンによって発明され、アニリンを使った実験中に濃い紫色を発色するものとして発見されています。

 その後、1869年にカール・グレーベとカール・リーバーマンによって、古くから使われてきたアカネ色素のアリザリンが合成され、1880年にはアドルフ・フォン・バイヤーによって藍の色素であるインディゴが合成されて、安価な合成着色料が天然色素に取って代わる時代が本格化したといえます。

 以来、多くの合成着色料が登場し、多くの着色料が食品にも使われるようになっています。そうした中には安価にきれいな色合いが得られる半面、安全性が不確かなようにいわれる物や原料が石油系である物もあり、着色料という言葉をどこか危険なものとして感じさせてくれるようになっています。

 食品添加物は今日のような美味しい物が安く、手軽に手に入り、それほど保管にも気を使わなくて済むというライフスタイルを維持するには欠かせない存在となっています。過去にはわずかな危険性を懸念して使用を禁じたために、より危険度の高い物が代わりに使われてしまうという例もあり、単純に否定だけしておけば良いという物でもないといえます。

 そんな中、着色料は食品に色を付けて美味しそうに見せ、購買意欲をそそるためだけの物だからと否定的な意見がいわれそうですが、かつて店頭販売される弁当で、購入者のニーズを考え、着色料を一切使用しなかったところ大幅に売り上げを落としてしまったという事例があり、消費者が着色料の添加を支持しているという奇妙な事実も存在します。

 着色料一つにしてもかなりの数があり、個別に危険性や効用を理解する事は難しい上に、他の成分と合わさった際の相乗効果となると途方もない事になっていまいます。天然だから安全、合成だから危険と単純に判断するのではなく、何故それを使っているのか、本当に必要なのかという点から考えてみないといけないのかもしれません。


 
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