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第1870回 パンと鉄


 地震のニュースを聞くたびに日頃から備えておかなければと、活火山の周辺に暮す者としては考えてしまいます。緊急時に必要になる物や食料をまとめておき、家が倒壊した場合を想定して物置にでも用意しておかなければと思っています。

 備蓄しておく食糧は保存性が高くて栄養のバランスが良く、手のかかる調理をせずに食べられる物となるのですが、何が良いかと考えていくと、その中の一つに非常食の定番、「乾パン」が思い浮かんできます。

 乾パンは小麦粉に砂糖、塩、ショートニング、イーストなどを加えた生地を発酵させて150度のオーブンで焼き上げた物で、水分が非常に少なく、パンというよりビスケットやクラッカーに似た食感となっていて、小麦の香ばしさとほんのりとした甘味がひろがるという味はパンに近いものとなっています。

 乾パンの歴史は非常に古く、いつ頃から作られているのか正確には判っていません。軍用の食料として考案されたともいわれ、古代ローマでは兵士に支給していたという記録が残されていて、その歴史の古さを伺う事ができます。

 乾パンによく似た物に「堅パン」があり、乾パンは堅パンの亜種であるとされています。堅パンもいつ頃から作られているのかは判っていないのですが、極めて早くから軍隊の携行食糧とされていて、堅パンを栄養や保存性などの長所を残したまま食べやすく改良したのが乾パンであると考える事ができます。

 乾パンと堅パンでは乾パンの方が軟らかく、食べやすくなっていて、南北戦争当時、堅パンを携行食料として採用したところ「アイアンプレート」と兵士たちに呼ばれた事からも、堅パンが堅くて食べにくい物であるかが判ります。

 乾パンと堅パンの違いは堅さだけでなく、非常用の食料として作られる乾パンにはベントナイトが添加されていて、水分が加わると体積が増加して満腹感を持続させて腹持ちを良くするという工夫がされています。

 ベントナイトは熊本城築城の際、加藤清正の指示によって篭城戦を想定した造りにするため、乾燥した芋の茎や珪藻土と混ぜて非常時の食料とする事ができる土壁とした事でも知られ、非常時に役立つ物であるといえます。

 堅パンから派生した食品は乾パンだけでなく、ガルバルディと呼ばれるレーズン入りのお菓子があります。二枚の堅パンの生地の間にレーズンを挟み込んで押し固めて焼き上げた物で、日本へも製法が伝えられ、独自の工夫が加えられて堅パンの生地にレーズンを練り込んだお菓子は今日でも販売されています。

 堅パンが栄養的に優れている事は大正時代の末期、八幡製鐵所で働く職員の体力の消耗が激しく、一般的な食事では栄養が不足する事から、カロリー補給食として堅パンが普及し、当初は製鐵関係の店で売られていたものが後に一般にも販売されるようになり、八幡製鐵所がある北九州市の名物になったというエピソードに見る事ができます。

 乾パンも堅パンも栄養的にも保存性にも優れていて、そのまま食べる事ができる優れた非常食といえるのですが、現代の軟らかい食品になれてしまった身としては、食べやすい乾パンの方にしたいと思ってしまいます。

 缶入りにして保存性をさらに高めた乾パンは、5年もの賞味期限を持つとされます。たまに食べると素朴な美味しさを感じてしまう乾パンですが、できればそのありがたさを実感する場面には遭遇する事がないよう願いたいと思っています。


 
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