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第1892回 鼠?人参?キュウリ?


 父親は比較的早い時間に帰宅して晩酌をする人でした。そんな父親のために毎日違った肴が用意されていたのですが、寒さが本格化してくるとその中にカボスなどの柑橘系を搾った「ナマコ」が加わり、冬らしさを感じさせてくれていました。

 世界中には約1500種のナマコがいて日本の近海には200種ほどがいるそうですが、食用とされるのはその中の30種とされ、主にマナマコが流通しています。

 マナマコはその色合いから赤ナマコと青ナマコと呼ばれ、青ナマコのうち特に色合いが濃いものは黒ナマコと呼ばれる事もあります。近所の魚屋では赤ナマコの方が柔らかくて美味しいとして値段が高く、青ナマコの方が安価となっていました。

 それが漁港の牛深では青ナマコの方が柔らかくて美味しいと高価で、赤ナマコの方が安価となっています。そうした赤と青の評価の違いは日本全国で見られ、実際のところはどうなのだろうと思ってしまいます。

 よくグロテスクな食材について、「最初に食べた人は度胸がある」という言い方がされますが、ナマコもその一つとなっていて、文豪の夏目漱石も「ナマコを初めて食べた人の胆力には敬服すべきものがある」と書き残しています。

 その最初の一人がどのような思いで食べたかは知りようもありませんが、ナマコは非常に古くから食用とされていました。古事記にもナマコは登場していて、ナマコのギザギザの口が天孫降臨の際、アマノウズメノミコが海に生きる魚を集めて「私達の食べ物となって仕えるか」と問い掛け、ほとんどの魚が「喜んで」と答える中、ナマコだけが答えなかったので、「この口は答えられない口か」といって小刀で裂かれた結果という物語として描かれ、ナマコが意外とプライドが高い生き物として表現されています。

 古来、ナマコは「コ」と呼ばれていました。生で食べる際、生のコという事でナマコとなっていたのが今日の名称として定着し、ナマコをコと呼ぶ名残りはナマコの内臓の加工品である「このわた」や「このこ」、ナマコを塩水で煮た後、乾燥させた「煎海鼠(いりこ)」などに見る事ができます。

 日本では乾燥させた姿がネズミに似ている事から、海のネズミと書いて「海鼠」と表記しますが、中国ではナマコの強力な生命力が注目され、精力剤として珍重された事から「高麗人参」に匹敵する海の人参という事で「海参」と呼ばれています。英名は「シーキューカンバー」となっているので海のキュウリとなり、ナマコの姿を思い浮かべるとどことなく納得してしまいます。

 私の中では高価な食材というイメージが強いのですが、以前、奄美大島を訪れた際、海岸を散歩しているとナマコがたくさんいて、ナマコが多い海は豊かな海だと聞かされていた事を思い出していると、潮干狩りに来ていた近所の方々に奄美大島には、「ナマコを獲る生活」という言葉があるという話を聞かされました。

 台風の通り道ともなっている奄美大島では、台風によって一日にしてすべてを失ってしまう事も珍しくはなく、それでもしばらく待てば畑に芋ができるし、それも待てない時は海に出れば魚が手に入る。ナマコを獲る生活とは、そうした手段がすべて失われ、浜辺にいるナマコを獲るしかない最低の生活の事と教えられ、ナマコのあまりの評価の低さに驚かされた事があります。

 コリコリとした独特な固い食感を持つナマコですが、その食感の元となっているのがコラーゲンでコンドロイチンも豊富に含まれています。カルシウムやカリウム、マグネシウムといったミネラル類もバランス良く豊富に含んでいて、コラーゲンやコンドロイチンを含む健康食品が人気を集める中、注目されて乱獲されたり高値とならない事を願ってしまいます。


 
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