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第1895回 脂肪酸への懸念



 「諸外国ではすでに行われている事だから」、何か新たな事を行う際、よく聞かされる言葉ですが、諸外国ではすでに健康への悪影響が認められ、規制も行われているにも関わらずトランス脂肪酸に対して日本ではそれほど問題視される事も規制も行われていません。そんなトランス脂肪酸について、日本人の食生活では摂取量自体が少ないため、健康上の問題はないという報告が行われていました。

 報告を行ったのは内閣府の食品安全委員会の専門調査会で、独自にリスク評価を実施したところ多くの日本人はWHO(世界保健機関)が提唱する総エネルギー摂取量の1%未満という目標基準を下回る量しかトランス脂肪酸を摂取していないため、健康への影響は小さいとしています。

 脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸は水素結合の形から「シス型」と「トランス型」に分ける事ができます。そのトランス型の脂肪酸がトランス脂肪酸と呼ばれ、動脈硬化や心臓疾患のリスクを高める物として、食品中の含有量の表示や規制が求められています。

 トランス脂肪酸は人間にとって不可欠な物ではなく、油脂類の加工、特に常温では液体の不飽和脂肪酸を常温で固体の状態にするための水素添加などの加工を行う際に副産物としてできてしまう事から、「狂った油」「プラスティックオイル」と呼んで極端に危険視する例も見られます。

 植物から採られる不飽和脂肪酸にはほとんど含まれていない事から、「天然には決して存在しない物」「不自然な加工を行った結果生じてしまう物」といった意見もありますが、実際には牛などの反芻動物の体内にいる微生物がシス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変化させてしまうため、牛乳や肉などにも含まれていて、食用油も酸化などに伴ってトランス脂肪酸が生成される事から、自然界にもトランス脂肪酸は存在していて、一時期、ダイエットに役立つとして話題になった「共役リノール酸」も天然に存在するトランス脂肪酸の一種となっています。

 また、トランス脂肪酸は人工物である事から体内で正常な代謝を行う事ができず、代謝異常を起こす事で免疫系に悪影響を与えてガンやアレルギー、1型糖尿病を発症させるという意見もありますが、EFSA(欧州食品安全機関)の「栄養製品・栄養・アレルギーに関する意見書」の中で「トランス脂肪酸もきちんと代謝され、エネルギーを供給している」という報告が行われ、ガンやアレルギー、1型糖尿病などの発症に関する疫学的な根拠は不充分とされています。

 かつて「植物油から作られるので健康的」とされていたマーガリンは、不飽和脂肪酸を多く含む油脂に水素添加を行って固形化する事から、副産物として生じるトランス脂肪酸を多く含む食品となっていて、マーガリンと同じ工程で作られるファットスプレッド、ショートニングなどにもトランス脂肪酸は多く含まれています。

 同じように植物油に水素添加を行って作られるカレールーにもトランス脂肪酸が多く含まれている事が考えられ、何度も火を通して熟成されて美味しくなったカレーには、加熱による油脂の酸化からさらに多くのトランス脂肪酸が含まれていると考える事もできます。

 そのように日本人の食生活にもトランス脂肪酸を含む食べ物が多い事から、本当に基準値を下回っているのだろうかと疑問を感じつつ、拒絶派の意見のような怖ろしげなリスクはないにしても、過剰摂取によって心臓疾患や動脈硬化、認知機能の低下といったリスクを高める事は確実とされているので、摂取量に充分気を配りたいと思っています。


 
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