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第1919回 アバサー?



 以前、奄美大島を訪れた際、驚いた事の一つに小さな船着場で普通にハリセンボンが泳いでいるという事がありました。子供の頃、気に入ってよく眺めていた生物図鑑は、ふっくらと大きく膨らみ、たくさんの針を立たせるという過激な姿と愛らしい顔が対照的なハリセンボンが表紙を飾っていて、そのような珍しいものが手を伸ばせば届きそうな辺りに泳いでいるというのは、大変な驚きとなりました。

 その後、ハリセンボンは熱帯から温帯の海に広く分布するという事なので、熊本の海にはいなくても南西諸島や沖縄では珍しくないという事や、「針千本」といいながら実際の針の数は350本程度といった事を知り、普通に泳いでいてもそれほど驚くべき事ではないと判ったのですが、透明度が高い南のきれいな海の中をゆらゆらと泳ぐ可愛い姿は、思い出すたびに良いものを見たように思えてきます。

 浅い海の岩礁やサンゴ礁、砂底などに棲息し、数も多い事から沖縄や台湾などでは食用とされ、人気の食材となっていて、フグの仲間という事もあって、非常に美味しい白身の魚とされています。

 沖縄ではハリセンボンの事を「アバサー」と呼び、ハリセンボンを使って「アバサー汁」が作られます。ハリセンボンはフグと同じようにあっさりとした白身が特徴で、フグとは違い毒がない事から調理をするために「ふぐ調理師免許」が要らず、一般家庭で調理できるだけでなく、フグでは食べる事ができない肝も食べる事ができます。

 ハリセンボンの肝は泡盛と味噌で下味を付けた後、アバサー汁に溶かし込むと濃厚な美味しさを加えてくれるとされ、フグのようでフグにはできない食べ方をする事ができるようになっています。

 白身であっさりしていて、くせのない味わいのハリセンボンですが、アバサー汁にする際は「臭味消し」としてヨモギが加えられ、そのためにアバサー汁は緑色をしています。元々が淡白な味わいの魚なので、アバサー汁の風味はヨモギの方が勝っているという事もできます。

 ハリセンボンとヨモギ、豆腐を味噌で煮込んだアバサー汁は、沖縄の厳しい夏を乗り切る滋養食ともいわれ、暑気払いの食ともされています。千本ではなく350本ほどですが、丁寧に棘を抜いて湯引きにした皮も美味しいとされ、フグと同じようにから揚げにしても良いとされます。

 例外的に卵にだけは毒があるので、卵は食べられないそうですが、鋭い針に注意しながら調理すればフグよりも食べやすく、フグと同じくらい美味しい食材であるという事ができ、食材としての興味は湧いてくるのですが、船着場で見掛けた可愛い姿を思い起こすと食べる事に躊躇してしまいそうに思えてきます。


 
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