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第1953回 牛と方角



 我家の北側は阿蘇山へ向かって緩やかな斜面となっていて、その斜面に沿って田畑が作られています。田畑では作物が栽培されていない間に自生した雑草を使って、数頭の牛が放牧されている場面をよく見掛けます。

 斜面を有効に利用しているために付近の田畑は東西に長く、南北には短い長方形が基本的な形となっていて、その中で牛達はゆっくりと草を食べたり休んだりしているのですが、その牛達が特定の方角を向く傾向がある事は、結構な時間、牛達を見ていても気付かずにいました。

 ドイツのデュースブルク・エッセン大学の研究者がグーグルアースを使って世界中の牛が放牧されている様子が写された画像をダウンロードし、半年に渡って牧草地に自由に放たれた牛達がどちらを向いているかについて分析を行ったところ、世界中の牛が特定の方向を向いている事を発見したと報告しています。

 牛達が向いていたのは「北」の方角で、太陽の位置から知る事ができる「真北」ではなく、地磁気が示す真北である「磁北極」を向いていたとされます。地図上の真北となる北極と地磁気が示す真北の磁北極とは位置的に大きく異なり、現在の磁北極はカナダの北部に位置しています。

 牛達が正確に磁北極を向いていたという事は、牛達が地磁気を敏感に感じ取っていた事を示し、その磁気感覚が想像以上に高性能である事の表れという事ができます。さまざまな研究で予想を超えた多くの生物が磁気感覚を持っている事が知られるようになってきていますが、生体内の磁気センサーの解明に関する研究は困難を極めているとされています。

 生体内の磁気センサーについては、磁性細菌の細胞内での存在と働きが解明されたのが最初で、1970年代の事と比較的歴史も浅いものとなっています。

 磁性細菌は細胞内に強い磁気を帯びた酸化鉄の微粒子を持っており、微粒子を連ねた磁鉄鉱の糸を細胞内に複数持つ事で磁場に対する細胞の向きを感じ取り、生育しやすい環境を目指して泳いでいるとされています。

 磁性細菌の磁気センサーの解明がきっかけとなって、同じように動物達も体内に磁鉄鉱の微粒子を持つ事で磁気センサーとして機能する細胞を持っているのではないかという仮説が出され、生体内の磁気センサー解明に関する研究が活発化しています。

 サケやマスが地磁気を感じ取り、遡上する故郷の川を正確に見付ける事が知られていますが、最近の研究でニジマスは鼻に磁気センサーを持っていて、それを使って地磁気を感じ、自分の向きを察知していた事が判ってきています。

 ニジマスの鼻には磁鉄鉱の微細な塊が細胞膜の内側に細胞へのイオンの入り口を塞ぐように配置されていて、磁鉄鉱の塊がニジマスが正確に磁北極を向いている場合は細胞の入り口を塞ぎ、ニジマスが磁北極を向いていない場合は磁鉄鉱の塊だけが磁北極を向く事から細胞の入り口が開く構造になっています。細胞内にイオンが入り込んできたという情報が脳に伝えられる事で、ニジマスは自分がどちらの方角を向いているかを感じ取り、正確に遡上すべき川の位置を目指す事ができる仕組になっているとされます。

 そのようにして動物達が地磁気を感じ取り、自分の向いている方角を知るという不思議な力の存在と仕組に関する解明が進められているので、やがては牛のh体内の磁気センサーについても解明される事とは思いますが、遡上する川を探すサケやマス、生存に適した環境を目指す渡り鳥などに対し、牛が何故地磁気を感じ取って自分の方角を把握しなければならないのか、そちらの方が気になってしまいます。


 
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まとめtyaiました【第1953回 牛と方角】

 我家の北側は阿蘇山へ向かって緩やかな斜面となっていて、その斜面に沿って田畑が作られています。田畑では作物が栽培されていない間に自生した雑草を使って、数頭の牛が放牧され...

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