第1723回 世界三大食作法
日頃、私達日本人は箸を使って食事をしています。箸は二本の細い棒状の食器で、単純に食べ物をつまんで口へと運ぶだけでなく、塊りを解したり、飾付けや皮などを除いたり、切ったり割いたり、押さえたりと意外なほど多機能な食器となっています。
世界的に日本人が器用とされる事には箸の使用が関わっているとされ、二本の細い棒を片手だけで操り、微妙な指の動きと力加減を幼い頃から習熟するからといわれます。上手に使う事にある程度の熟練を要する箸は、世界的に見るとあまり使われていないのではとも思えてくるのですが、意外にも世界の人口の約30%は日常的に箸を使っています。
箸以外の食器として一番に思い浮かぶナイフとフォーク、スプーンの使用は箸と同じ約30%とされ、残りの約40%は手で直接食べ物を掴んで食べていて、その三つが世界の三大食作法となっています。
箸を使う「箸食」は、日本をはじめとした中国、朝鮮半島、台湾、ベトナムなどで行われ、粘りがあり食器にくっつきやすい米や油を使い、高い温度で調理された熱い料理を食べる事に向いている事が箸食が中心となった理由として上げる事ができます。
ナイフやフォーク、スプーンを使う「フォーク食」は、ヨーロッパ、南北アメリカ、ロシアなどで行われ、塊りの肉を皿の上で切り分けて食べる事や、それほど温度が高くない料理を食べる事に向いています。
手で食べる「手食」は、インディカ米のようなパサパサした米を食べる事に向いているだけでなく、食べ物は神から与えられた神聖な物で、箸やフォークなどの穢れた物では触れず、最も清浄な手で食べるという宗教的戒律も手食が行われる大きな理由の一つとなっています。
箸食文化圏の中でも箸の最大の弱点である「液体をすくって口へ運ぶ」という事を補うため、スプーンがセットになっている事も珍しくなく、中国や朝鮮半島などの広い地域で箸とスプーンが一緒に配膳されています。器を口元へ持ってきて食べるという作法を持つ日本では、液体をすくって口へと運ぶ必要がない事から、箸だけの完全な箸食文化となっていてスプーンは添えられていません。
フォーク食においても皿の上で切り分けて、突き刺して口元へ運ぶ事が難しいパンだけは手で直接掴んで食べられていて、手食以外は意外と曖昧な状態という事ができます。
最近では箸を上手に使えない子供が増えたとよく言われます。小さいうちに基本を覚えてしまえば、それほど難しくなく使う事ができ、皿の上のゴマ粒をつまめるという世界有数の食器をマスターした事になります。せっかくの完全箸食文化なだけにしっかりと継承してほしいと願っています。
スポンサーサイト